2010-07-30 (Fri)
「さよならのつぎを、」
津軽×サイケ+静雄×臨也
小説/18禁/A5/84P/800円/カラーピンナップ有
表紙・原案 静岡おでん様
※静岡おでん様のピクシブの漫画を元にしたお話です
常に孤独だったサイケが外へ出るが出会ったのはサイケの体を狙う男達で…
そこに現れ助けてくれた津軽を同じ顔した静雄と勘違いしてサイケは恋をする
すれ違い多角関係恋愛です
津軽×サイケ話が中心ですが静雄×臨也話もあります
※モブサイケ・津軽×臨也表現がありますのでご注意ください
続きからサンプルが読めます
>> ReadMore
「いいよ上手いよ。もっともっと声にして、綺麗でかわいい声を聞かせてよ」
「あ、っ……あぁ、は、っ……あれ、っん、なんか、あつ……くて……?」
諭されるように優しく言われて、すっかりその気になっていた。そのうえほめられたのが嬉しくて、喘ぐような変な声をを出すのは本当は嫌だったけれど喜んでくれるならそれでいいと考えるようになっていた。
するとすぐに全身から力が自然と抜けていって、手や足を支えるように押さえられながら下半身がビクビクと麻痺しだした。おかしいなと思いつつ、自分では全くコントロールできなくて止められなくなっていく。
「ぬる、ぬる……って、してえ……う、んっ、あ……はぁ、ん」
あまりにも同時にいろいろなことが全身に起こっていて、それだけで頭がショートしそうなぐらいだった。そしていつのまにか全身を這う指が、信じられないところに及んでいた。
体のつくりや構造は人間と一緒だが、基本的に食事もいらないしそれに伴う行為も必要ない。汗が出たり涙もこぼれるが、根本的な作りが違う。だから当然今まで指が添えられたそこには関心さえなかった。
「えっ、そこ……なに?なに、するの?ん、ぅ……っあ」
「ここにちんこを突っ込むんだよ。まぁいくらアンドロイドとはいえかわいそうだから媚薬をたっぷり塗りこんであげるよ」
「え?え?は、んうぅ……ッ!?は、はっ、ゆびっ、な、これ……ッ!!」
前触れもなくぬるついた指が一本ぬるりと後ろの入り口に当てられて、戸惑っている間に強引にこじ開けるようにしながら入り込んできた。
はじめて味わう異物感に、全身が拒絶を示していた。しかし粘液で滑るので、こっちのことはお構いなしにどんどん指が奥へ奥へと進んでいった。
「あ、あぁ、や……っ、はぁああ、あっ……」
「随分色ぽい声出すようになったなあ。もうこっちもガチガチだしこのまま指だけでイくか?」
耳元で息を吹きかけられながら、なにかを囁かれていたがよく理解できなかった。そうしてよくわからないままに首を縦に振って頷いてしまった。
すると下の塊を上下に動かしていた手の速度が、一層早くなると同時に胸元を弄る指も、中に入ってしまっている指もくねくねと蠢きはじめた。これまでとは性質が違う、何かに向かって追い上げるような動きに、腰が激しく揺れて喘ぎも大きくなっていく。
「んひ、ぃあ……っ、あ、あやら、っ……ふ、うぅん、な、んかくるっ……」
「精液がもう出るかな?それはね、イくって言うんだよ。ほら自分で言ってみなよ、イく、イくって」
「ん、ぇ?」
今の姿を自分で鏡で見たら卒倒してしまいそうなぐらい、淫らになっていることはわかっていた。ここまでくるとさすがに自分が人間の性欲処理の対象にされていて、今まさにはじめての射精を経験させられようとしているのがわかりはじめていた。
普段は絶対に使わないだろう意識の場所から検索し、やっと結論に辿りついた。
さっき告げられた言葉も、イくがどういう意味の言葉なのかもしっかりと認識している。経験をしていないだけで、どういう結果が待っているか鮮明に脳裏に浮かんできていた。
(でも、みえない……なにもみえない……)
なのに視界はぼんやりと白く霞み、機械的に状況を探り出した頭が、感情を置いてきぼりにして事実だけつきつけているようだった。
甘く喘いでいるのは、気持ちがいいから。
腰が好き勝手にくねっているのは、感じきっているから。
体の内からわきあがる熱が解放されたがっているのは、快楽に素直になっているから。
「イ、く……っ」
試しに深く息を吸い込んで吐き出しながら口からこぼすと、胸に直接ズキンッと響いてきた。
淫らな行為に没頭して羞恥を抱きながらも卑猥な言葉を宣言するように口にするという背徳的な行為が、こんなにも衝撃を与えてくるとは思わなかった。一度はっきりと認めたものが、一気に襲いかかっていた。
「んあぁ、っ、イく……っ、だめ、これ、イっちゃう、あ、んあ、はあぁん……」
至る所からぐちゃぐちゃと粘液と指が混ざり合う音が響いていて、それが余計に密かに眠っていた悦楽を煽ったようだった。
「イくぅ……でる、もらし、ちゃう、ゆるして……っ、んあ、はんうううっぅ……!!」
気が付いた時にはありったけの謝罪の言葉を呟きながら、泣き叫んでいた。もう目元はぐっしょりと涙に濡れていたが、構っている余裕もなくそのまま痛いぐらいに硬くなっていた先端から精液が派手に飛び散った。
おもったよりもあっけなくビチャッと目の前の男や、シーツにこぼれていくのを薄目を開けて眺め続けた。
「ふぅ、っ……っあ、はぁ、あ、あぁ……」
肩で息をしながら呆然と現状を見つめた。はじめてだというのに、前も後ろも胸までもさわられながら、果ててしまったというのだ。
とても信じがたくて、ショックで自然と全身の力が抜けていった。唇はわずかに震えているが、喘ぎはまだとまらない。
「あ……あぁ、もらし、て……っ、やだ、あ……みないで、っ、んあ……やあっ……」
完全に投げだした手足をがっちりと掴まれながら、繰り返し唇からやだやだとこぼした。媚薬でこうなってしまったとか、強要されて吐き出してしまったことはすっかり忘れて、みっともない姿を晒してしまったことが情けなくて恥ずかしくてしょうがなかった。
しかも見境なく飛び散った為に、目の前の人が汚れてしまってそれに対して怒られてしまうと恐怖を感じていた。
けれども投げつけられた言葉は、予想とは違っていた。
「見られて感じてる癖にこれかよ。今更恥ずかしがってるなんて初々しすぎるぜ」
「これからもっとひでえことになるのにな」
周りとの男の人たちの言葉の応酬に鼻の奥がツーンと熱くなり、瞳からまたはらりと涙が落ちていった。アンドロイドも心が傷つかないわけではないのに、どうしてこんなことを言うのだろうと当惑していた。
* * *
「メンテナンス……ですか?」
「あぁ、俺はもう午後から仕事だから二人で行ってきたらいい。まぁアイツに会ったらびっくりするかもしれねえが……ほら、服も乾いたみてえだから」
「あ、はいありがとうございます」
疲れもだいぶ落ち着いて自分で立てるぐらいには回復したところで、メンテナンスをしてきたらいいと言われた。俺を拾った静雄さんならどんな酷い状態か知っているはずだったのに、それには一切触れずにいてくれた。
どろどろに汚れていたおれのコートも丁寧に洗ってくれていたみたいで、手渡される。さすがにコート一枚では外も出歩けないので、ズボンとシャツは津軽が買いに行ってくれていた。
二人とも本当に優しくて、涙が出そうだった。
でも人間の……静雄さんの前では泣くわけにはいかずに、ぐっと堪えた。
コートを受け取りながら、話の中に出てきた人物のことがふと気になって尋ねてみた。
「あの……びっくりするってどういうことですか?」
しかしその瞬間、それまで穏やかに笑っていた静雄さんの表情が硬直しパッと視線を反らされてしまい、とても驚いた。何か聞いてはいけないことを、聞いてしまったのだろうかと焦ってしまったぐらいだ。
避けられたのかと戸惑っていたら、たばこをポケットから取り出し火をつけているのが目に入った。俺からは顔が見えない位置で煙を吐き出して、まるで自分を落ち着かせているように思えた。
「悪いな、ちょっと動揺しちまって。先に話しとかねえとびっくりするだろうから言うけどな、その……アイツとお前も顔が瓜二つなんだよ?」
「え、ええっ!そうなんですか!?」
振り向いて話し始めた表情は、微妙にまだ困惑しているようだった。でもおれにはなんだか照れているようにも見えて、不思議な感じがした。言葉の端からも親しそうな雰囲気がわかって、もしかしておれを助けてくれたのもその人と似ているからかもしれないと思った。
はじめから優しくしてくれたのも、ここまで面倒をみてくれるのも、きっとそれが関係していたのだと確信した。
ほんの少しだけチクリと胸が痛んだ。
「いやでも顔が一緒なだけで性格は全然違うんだよ。アイツの方が最低で卑劣だし、うざいことをしゃべるし、チョロチョロと逃げ回るし……」
なんだかおれとは全然違う性格なのは本当のことらしいが、内容よりもその人のことを嬉しそうにしゃべる静雄さんが気になった。眉間に皺を寄せて傍目には怒っているようにも見えるが、落ち着きなくたばこを口の端に咥えたまま上下に動かしていた。その意味ありげな仕草に、きっとおれと同じようにその人に恋をしているのだろうと直感で思った。
それを直接的に聞くのはさすがにはばかられたので、遠回しに尋ねてみた。
「でもすごくなかよさそうですね。おれずっとひとりだったから……うらやましいな」
しかしその一言を告げた途端、ハッとしたようですぐに真剣な顔をしながらおれの前に近づいてきた。持っていたタバコも瞬時に消して、立ったまま向かい合ってそれだけで鼓動が早くなった。
また言ってはいけないことを口にしたのかとオロオロしていると、スッと自然に手が伸びてきた。
「もう一人じゃねえよ。俺もいるし……津軽もいる。なにがあったかとか聞かねえから、サイケが満足するまで好きなだけここにいろ」
「えっ、あの……」
「命令だ、っつたら卑怯か?でも気にすんな。津軽を拾ったのも俺だし今更増えてもなんの問題ねえ」
さっきと同じように頭を優しく力強く撫でてくれた。さすがに照れ臭くなってきたので少し俯いたが、頬が熱くなっているのは自分でも理解していた。
これが本当はおれに対する優しさではなくて、静雄さんの想い人への優しさをわけてもらったものであっても、手放したくないと思った。
卑怯なのはおれの方だと、心の中でだけ思った。
「ありがとうございます」
でも感謝の気持ちだけは本物だったので、最高の笑顔を浮かべてお礼を言った。
助けてくれて、優しくしてくれて、ずっと居てもいいって言ってくれてありがとうと。
「ってやべえ、そろそろ仕事行かねえと……」
その時壁にかかっていた時計の方を見ながら静雄さんが急に慌てだしたのだが、タイミングよく玄関の扉が開いて外に出ていた津軽が帰ってきたようだった。おれの上に頭を置いたまま変にうろたえているのを見ても動じていなかったので、同じアンドロイドなのに落ち着いているなと感心するぐらいだった。
「じゃあ後は津軽にまかせるから、メンテ行って来いよ」
ポケットの中に携帯や財布類を詰めた後にテーブルの上に置いてあったサングラスを掛けた。途端に表情が見えなくなって、一瞬別人のように見えた。きっとすごい仕事をしているんだろうな、と勝手に思った。外で見掛けたら、絶対におれからは近寄らないようなオーラを漂わせている気がした。
急ぎながらそのまま津軽と入れ替わりに出て行って、すっかり二人が取り残された状態でポカーンとしていた。
「服買ってきたから、とりあえず着替えたほうがいい」
「そ、そうだよね」
けれど思ったより向こうは動じていなくて、どのぐらい静雄さんと過ごしているのかなあと聞いてみたかったのだが、さっきの失言のこともあったので黙っておいた。
服の入った袋を手に取って、そのまま中を開けると偶然にも前におれが着ていたようなシャツとズボンでなんだか嬉しかった。じゃあとりあえず着替えようかと何気なく足元を見て、そこで驚愕した。
「あっ……」
さっきまで布団に入っていたので全く気が付かなかったが、シャツでは隠しきれない部分から覗いている太股に、無数の赤い跡が残っていた。それを見た瞬間に、前のマスターの元から飛び出して来てからのことが全部頭の中を過ぎていって眩暈がした。
「……?サイケどうした」
すぐ傍で名前を呼ぶ声が聞こえるのに、急に息が苦しくなって罵倒されて散々に犯された言葉が次々とよみがえってくる。
壊れた、使えない、歌も歌えないと頭の中でぐるぐると回りはじめて、急速に不安に陥ってしまう。
「そうだ、おれうた……うたわ、ないと」
歌を歌うことに特化したアンドロイドなのに、もし歌が歌えなくなってしまっていたら存在価値がなくなってしまう。だから震える喉から必死に声を絞り出そうとした、けれども犯される最中にも歌うことを強要された時のことが蘇って、なんの音も出なかった。
「うた、えない……うたわない、と……うた……」
「おい、サイケしっかりしろ!!」
受け取っていたはずの服がどさりと床に落ちて、ガクガクと肩を揺らされる衝撃にすぐに我に返った。白く歪みかけていた視界が、一気にクリアになってそこには心配そうに見つめてくる津軽の姿があった。
津軽は人間じゃない、おれと同じアンドロイドだと再認識した途端ふっと力が抜けて、瞳から涙がこぼれていた。
「ふっ……うぅ……」
人間の前では、静雄さんの前では泣いてはいけないと思っていた気持ちが緩み、どっと熱い雫が頬を濡らした。
正気を取り戻したのに向こうも安堵したのか、ため息を吐いた後に意外な行動に出てきた。
「え……?」
「泣きたければ泣けばいい。いくらでもつきあってやる」
短い言葉だったけれど、そこに言葉では現せない優しさが感じられて驚きに目を見開いた。そして背中に手をまわされて引き寄せられたかと思うと、いつの間にか津軽の胸元に顔を埋めていた。そのままゆっくりとした仕草で背をさすられて、慰めてくれているのだと思った。
突然のことに戸惑いはあったが、素直にその好意を受け取ることにした。それぐらいには切羽詰っていて、誰にも打ち明けられなかった苦しさや悲しさを吐き出せることができるのは彼だけなのだ。
「……っ、う……ひ、うぅ……」
みっともない掠れた泣き声しか出なかったがもう気にならなかった。今はただこうしてくれているのが本当に嬉しくて、すべてを吐露するようにずっと泣き続けた。
* * *
静雄×臨也
「……ッ、つめた……っ、なにしてんの!?」
「目隠しされたぐらいでそんなに怒らなくてもいいだろが。それともびびってんのか?やっぱり臨也くんでも、俺になにされるかわかんねえじゃ怯えて当然だよな」
「そ、そんなわけないだろう!冷たいのがびっくりしただけで、別にどうってことないね。だいたいシズちゃんのやりそうなことはわかるしねえ、単純だから」
この場合は絶対に怒らせてはいけなかったのだが、売り言葉に買い言葉というかこれまでの二人の関係性から素直に言えるはずもなく、虚勢を張るしかなかった。しかしすぐにやっぱり黙っていればよかったと後悔することになった。
多分ローションであろうそれは俺の反応すら示していない部分と、後ろの穴周辺に塗りこむように手でぐちゃぐちゃと広げられた。卑猥な水音だけが耳に届いてきて、確かにいつもされるよりはドキドキしていると思っていた。
「っ、あ……!う、っいきなり入れるっ、なんてぇ……んぅ」
「なんだいつも通りじっくりほぐしてやってるのに文句を言うつもりなのか?あぁ?」
「ぐ、っう……あ、あはぁ……っ、やめろって……!」
そうなると予想していたが意外にあっさりと体の中に指が一本侵入してきて、腰から下がビクンと跳ねた。抑えきれない喘ぎ声が時折漏れて、必死に唇を噛んで耐える。
しかし一度抗議した瞬間から責めが強くなって、しっかりと奥の方まで塗りこむように指を蠢かしながら、僅かに性急に、乱暴に出し入れをしてほぐし続けた。
「やっぱりいつもより興奮してやがるじゃねえか。まだ弄ってるだけなのにすげえ締めつけてんぞ、ド淫乱」
「ふ、うぅっ……ね、え俺は断じてそんなんじゃないって、いつも言って……は、あぁ」
こうやって好き勝手に淫乱だとか罵るのはいつもの手段だった。たしかにそう言われるのは非常に屈辱的だったが、今となってはもうすっかり当たり前になっていて特に感じなくなっていた。
言葉に出すこと自体をステータスとしている節があるが、迷惑極まりない行為だった。こんなに淫らにしたのは全部シズちゃんのせいだし、例えば昔からこういう性行為を仕事の道具として使ってきたというのならわかるが、そんなことは一切ない。
こんなさわられたらすぐに感じる体になってしまったのは、全部全部野獣のように襲い掛かってくる池袋の喧嘩人形のせいだった。
つきあうようになってその日からもう俺は体を割り開かれて、毎晩のように仕事が終わったら会いに来て、もうほとんど半同棲のような状態だった。さすがにそれでは俺の方がもたないと文句を言って、回数は減っていたがそれでも酷いものだった。
それが落ち着いてきたのはつい最近で、津軽をシズちゃんが拾った頃からだった。あれでも面倒見がいいし、それはアンドロイドであっても変わらないのだろう。同じ顔をした機械人形を世話するなんて到底俺には無理だ。
メンテナンスをする立場ぐらいの方がいろいろ都合もいいし調度よかった。
(あぁそうか……じゃあエッチするのも結構久しぶりだったんだ。俺は仕事が忙しかったし忘れてたけど)
それに気が付いた途端に、少しだけ全身が強張った。ローションを塗られているそこも収縮して反応を示しだし、自分でも驚くぐらいだった。
「なんだ?急にいい反応しだして、もしかしてもう入れて欲しいのか?」
「ちがう」
「欲しいなら今すぐ入れてやるよ。お願いしますって手前が頼み込んだらだけどな」
そう言ってククッと喉の奥で低く笑った。完全に俺のことを馬鹿にして挑発しているのだ。瞬時に頭に血が上り、怒鳴り散らしていた。
「ふざけるな!誰が……誰がそんなことを言うもんか……ッ、あ、え!?」
おもいっきり叫んだ直後に、強引に指が引き抜かれていって代わりになにか硬いモノが押し当てられた。それがなにかはすぐにはわからなかったが、少なくともシズちゃんの勃起したペニスではないようだった。
うろたえながらそわそわと腰を動かして逃れようとしたが、手足を縛られていてはどうにもできなかった。
「やっぱりそうでなくちゃ話にならねえ。はじめから自分で入れてくれっていうような性格だったら、とっくに別れてるな俺は」
「なに?それってもしかして俺のこの性格が好み……っ、あ、やだ、待ってってはぁ、んうぅぅああ……!」
ぽろっと口からこぼした言葉を見逃さずに詳しく聞き出してやろうとしたら、後孔に当てられていたモノがズプリと侵入してきて、盛大なあえぎ声が部屋に響いた。本当に俺の家が防音設備が完璧でよかったと、どうでもいいことを考えて刺激を紛らわそうとした。
「まぁ、わかってるだろうがこんなの序の口だ。ちょっと準備に手間取るからそれで遊んでおけ。臨也なら二回ぐらいはイけるだろ?」
「は、っ……誰が、そんな……っ、あ、はああぁ、っ……な、これっバイブ……うぅっ」
一気に根元までその無機質な塊を飲み込んだかと思うと、すぐにカチッとスイッチを入れる音がして、中に入ったそれが動き始めたのだ。そこでやっとさっき俺の机の方に行っていた意味がわかった。確かに遊び半分で何度か使ったことがあって、きっと仕舞っている場所を覚えていたのだろう。
前の時はそんなに楽しくなくてすぐに飽きたのだが、今日はいつもと状況が違うので、規則的な動きにもかかわらずすぐに下半身が反応し始めていた。
「くそ、っ……バカにしてっ、あぁ、それに時間掛かるって……なに、するんだよっ」
むしろ心配なのはそっちの方だった。俺の知らないところで何かされるのは、本当に困る。きっとこれまでにないマニアックなプレイでもしたいのだろうが、それはやめてくれと願うばかりだった。
しかし希望に反して答えどころか、返事すら返ってこなくて悔しさに歯軋りをした。
「うっ、あ……ほ、んとあとでおぼえて、ろ……んあ、あっ、はああぁ、ん……」
普段だったら鋭く睨み付けながら言うところだったが、睨むどころか相手もなにも見えないのだ。中をのたうちまわる存在を意識してから、視界が奪われたことの真の恐怖を味わっていた。
視覚が失われているということは、もう後は嗅覚と聴覚に頼るしかない。そしてそっちに神経を傾けると、いつも以上に激しい快感を得ている気がするのだ。
(あつ……くそっ、こんなの……バイブなんかに、弄ばれるなんて……だれが、イくもんか……っ)
なんとかこのままの体勢で動かせる程度に腰をずらして、なるべく蠢くおもちゃを感じないようにしようと思った。けれども位置を変えれば変えるほどに、奥に進んできているような気はするし、これではまるで自分から足りなくて刺激を得る為にずれているように見えた。
「んぅ……っ、あ、はぁ……ぁ、う、んぅ……」
それにしても、さっきからシズちゃんの気配が全く感じられないのに苛立ちを隠せなかった。少なくとも近くにはいないだろうことは、視界が奪われて敏感になった感覚が訴えていた。
居ないはずなのに、実は近くに立っていて見ているのではないかという疑惑が拭えなくて、どうしたらいいかわからない。
だから好き勝手に声を出すわけにも、自分からバイブと遊ぶことも、勃起しているそれを解放することもできなくて最悪だった。
必死に神経を研ぎ澄まして物音がしないか聞き耳を立てるが、バイブの機械的な振動音が邪魔をしてそれさえもできない。なにを準備するのか知らないが、よからぬことに決まってる。
「うぅん、っ……は、っ……っ、う、んんっ」
やがて刺激にもちょうどよく慣れてきて、このぐらいなら何分かイかずに持ちそうだなと呼吸を整えながら安堵していた。人間の突きとは違い、一定の速度と振動を与え続けることしかできないのは好都合だった。
「なんだもっと声聞かせろよ」
「な……ッ、あ、あぁあ……っ、ひ、やあああぁん、うぅ、あ、ぁ……んはぁあ」
完全に安心しきっていた瞬間の責めに、心の奥を抉られたような感じだった。どこにいるのかと確認する間もなく、埋め込まれたバイブが抜き差しされて、下半身がビクンビクンと何度も跳ねた。
Return <<
「あ、っ……あぁ、は、っ……あれ、っん、なんか、あつ……くて……?」
諭されるように優しく言われて、すっかりその気になっていた。そのうえほめられたのが嬉しくて、喘ぐような変な声をを出すのは本当は嫌だったけれど喜んでくれるならそれでいいと考えるようになっていた。
するとすぐに全身から力が自然と抜けていって、手や足を支えるように押さえられながら下半身がビクビクと麻痺しだした。おかしいなと思いつつ、自分では全くコントロールできなくて止められなくなっていく。
「ぬる、ぬる……って、してえ……う、んっ、あ……はぁ、ん」
あまりにも同時にいろいろなことが全身に起こっていて、それだけで頭がショートしそうなぐらいだった。そしていつのまにか全身を這う指が、信じられないところに及んでいた。
体のつくりや構造は人間と一緒だが、基本的に食事もいらないしそれに伴う行為も必要ない。汗が出たり涙もこぼれるが、根本的な作りが違う。だから当然今まで指が添えられたそこには関心さえなかった。
「えっ、そこ……なに?なに、するの?ん、ぅ……っあ」
「ここにちんこを突っ込むんだよ。まぁいくらアンドロイドとはいえかわいそうだから媚薬をたっぷり塗りこんであげるよ」
「え?え?は、んうぅ……ッ!?は、はっ、ゆびっ、な、これ……ッ!!」
前触れもなくぬるついた指が一本ぬるりと後ろの入り口に当てられて、戸惑っている間に強引にこじ開けるようにしながら入り込んできた。
はじめて味わう異物感に、全身が拒絶を示していた。しかし粘液で滑るので、こっちのことはお構いなしにどんどん指が奥へ奥へと進んでいった。
「あ、あぁ、や……っ、はぁああ、あっ……」
「随分色ぽい声出すようになったなあ。もうこっちもガチガチだしこのまま指だけでイくか?」
耳元で息を吹きかけられながら、なにかを囁かれていたがよく理解できなかった。そうしてよくわからないままに首を縦に振って頷いてしまった。
すると下の塊を上下に動かしていた手の速度が、一層早くなると同時に胸元を弄る指も、中に入ってしまっている指もくねくねと蠢きはじめた。これまでとは性質が違う、何かに向かって追い上げるような動きに、腰が激しく揺れて喘ぎも大きくなっていく。
「んひ、ぃあ……っ、あ、あやら、っ……ふ、うぅん、な、んかくるっ……」
「精液がもう出るかな?それはね、イくって言うんだよ。ほら自分で言ってみなよ、イく、イくって」
「ん、ぇ?」
今の姿を自分で鏡で見たら卒倒してしまいそうなぐらい、淫らになっていることはわかっていた。ここまでくるとさすがに自分が人間の性欲処理の対象にされていて、今まさにはじめての射精を経験させられようとしているのがわかりはじめていた。
普段は絶対に使わないだろう意識の場所から検索し、やっと結論に辿りついた。
さっき告げられた言葉も、イくがどういう意味の言葉なのかもしっかりと認識している。経験をしていないだけで、どういう結果が待っているか鮮明に脳裏に浮かんできていた。
(でも、みえない……なにもみえない……)
なのに視界はぼんやりと白く霞み、機械的に状況を探り出した頭が、感情を置いてきぼりにして事実だけつきつけているようだった。
甘く喘いでいるのは、気持ちがいいから。
腰が好き勝手にくねっているのは、感じきっているから。
体の内からわきあがる熱が解放されたがっているのは、快楽に素直になっているから。
「イ、く……っ」
試しに深く息を吸い込んで吐き出しながら口からこぼすと、胸に直接ズキンッと響いてきた。
淫らな行為に没頭して羞恥を抱きながらも卑猥な言葉を宣言するように口にするという背徳的な行為が、こんなにも衝撃を与えてくるとは思わなかった。一度はっきりと認めたものが、一気に襲いかかっていた。
「んあぁ、っ、イく……っ、だめ、これ、イっちゃう、あ、んあ、はあぁん……」
至る所からぐちゃぐちゃと粘液と指が混ざり合う音が響いていて、それが余計に密かに眠っていた悦楽を煽ったようだった。
「イくぅ……でる、もらし、ちゃう、ゆるして……っ、んあ、はんうううっぅ……!!」
気が付いた時にはありったけの謝罪の言葉を呟きながら、泣き叫んでいた。もう目元はぐっしょりと涙に濡れていたが、構っている余裕もなくそのまま痛いぐらいに硬くなっていた先端から精液が派手に飛び散った。
おもったよりもあっけなくビチャッと目の前の男や、シーツにこぼれていくのを薄目を開けて眺め続けた。
「ふぅ、っ……っあ、はぁ、あ、あぁ……」
肩で息をしながら呆然と現状を見つめた。はじめてだというのに、前も後ろも胸までもさわられながら、果ててしまったというのだ。
とても信じがたくて、ショックで自然と全身の力が抜けていった。唇はわずかに震えているが、喘ぎはまだとまらない。
「あ……あぁ、もらし、て……っ、やだ、あ……みないで、っ、んあ……やあっ……」
完全に投げだした手足をがっちりと掴まれながら、繰り返し唇からやだやだとこぼした。媚薬でこうなってしまったとか、強要されて吐き出してしまったことはすっかり忘れて、みっともない姿を晒してしまったことが情けなくて恥ずかしくてしょうがなかった。
しかも見境なく飛び散った為に、目の前の人が汚れてしまってそれに対して怒られてしまうと恐怖を感じていた。
けれども投げつけられた言葉は、予想とは違っていた。
「見られて感じてる癖にこれかよ。今更恥ずかしがってるなんて初々しすぎるぜ」
「これからもっとひでえことになるのにな」
周りとの男の人たちの言葉の応酬に鼻の奥がツーンと熱くなり、瞳からまたはらりと涙が落ちていった。アンドロイドも心が傷つかないわけではないのに、どうしてこんなことを言うのだろうと当惑していた。
* * *
「メンテナンス……ですか?」
「あぁ、俺はもう午後から仕事だから二人で行ってきたらいい。まぁアイツに会ったらびっくりするかもしれねえが……ほら、服も乾いたみてえだから」
「あ、はいありがとうございます」
疲れもだいぶ落ち着いて自分で立てるぐらいには回復したところで、メンテナンスをしてきたらいいと言われた。俺を拾った静雄さんならどんな酷い状態か知っているはずだったのに、それには一切触れずにいてくれた。
どろどろに汚れていたおれのコートも丁寧に洗ってくれていたみたいで、手渡される。さすがにコート一枚では外も出歩けないので、ズボンとシャツは津軽が買いに行ってくれていた。
二人とも本当に優しくて、涙が出そうだった。
でも人間の……静雄さんの前では泣くわけにはいかずに、ぐっと堪えた。
コートを受け取りながら、話の中に出てきた人物のことがふと気になって尋ねてみた。
「あの……びっくりするってどういうことですか?」
しかしその瞬間、それまで穏やかに笑っていた静雄さんの表情が硬直しパッと視線を反らされてしまい、とても驚いた。何か聞いてはいけないことを、聞いてしまったのだろうかと焦ってしまったぐらいだ。
避けられたのかと戸惑っていたら、たばこをポケットから取り出し火をつけているのが目に入った。俺からは顔が見えない位置で煙を吐き出して、まるで自分を落ち着かせているように思えた。
「悪いな、ちょっと動揺しちまって。先に話しとかねえとびっくりするだろうから言うけどな、その……アイツとお前も顔が瓜二つなんだよ?」
「え、ええっ!そうなんですか!?」
振り向いて話し始めた表情は、微妙にまだ困惑しているようだった。でもおれにはなんだか照れているようにも見えて、不思議な感じがした。言葉の端からも親しそうな雰囲気がわかって、もしかしておれを助けてくれたのもその人と似ているからかもしれないと思った。
はじめから優しくしてくれたのも、ここまで面倒をみてくれるのも、きっとそれが関係していたのだと確信した。
ほんの少しだけチクリと胸が痛んだ。
「いやでも顔が一緒なだけで性格は全然違うんだよ。アイツの方が最低で卑劣だし、うざいことをしゃべるし、チョロチョロと逃げ回るし……」
なんだかおれとは全然違う性格なのは本当のことらしいが、内容よりもその人のことを嬉しそうにしゃべる静雄さんが気になった。眉間に皺を寄せて傍目には怒っているようにも見えるが、落ち着きなくたばこを口の端に咥えたまま上下に動かしていた。その意味ありげな仕草に、きっとおれと同じようにその人に恋をしているのだろうと直感で思った。
それを直接的に聞くのはさすがにはばかられたので、遠回しに尋ねてみた。
「でもすごくなかよさそうですね。おれずっとひとりだったから……うらやましいな」
しかしその一言を告げた途端、ハッとしたようですぐに真剣な顔をしながらおれの前に近づいてきた。持っていたタバコも瞬時に消して、立ったまま向かい合ってそれだけで鼓動が早くなった。
また言ってはいけないことを口にしたのかとオロオロしていると、スッと自然に手が伸びてきた。
「もう一人じゃねえよ。俺もいるし……津軽もいる。なにがあったかとか聞かねえから、サイケが満足するまで好きなだけここにいろ」
「えっ、あの……」
「命令だ、っつたら卑怯か?でも気にすんな。津軽を拾ったのも俺だし今更増えてもなんの問題ねえ」
さっきと同じように頭を優しく力強く撫でてくれた。さすがに照れ臭くなってきたので少し俯いたが、頬が熱くなっているのは自分でも理解していた。
これが本当はおれに対する優しさではなくて、静雄さんの想い人への優しさをわけてもらったものであっても、手放したくないと思った。
卑怯なのはおれの方だと、心の中でだけ思った。
「ありがとうございます」
でも感謝の気持ちだけは本物だったので、最高の笑顔を浮かべてお礼を言った。
助けてくれて、優しくしてくれて、ずっと居てもいいって言ってくれてありがとうと。
「ってやべえ、そろそろ仕事行かねえと……」
その時壁にかかっていた時計の方を見ながら静雄さんが急に慌てだしたのだが、タイミングよく玄関の扉が開いて外に出ていた津軽が帰ってきたようだった。おれの上に頭を置いたまま変にうろたえているのを見ても動じていなかったので、同じアンドロイドなのに落ち着いているなと感心するぐらいだった。
「じゃあ後は津軽にまかせるから、メンテ行って来いよ」
ポケットの中に携帯や財布類を詰めた後にテーブルの上に置いてあったサングラスを掛けた。途端に表情が見えなくなって、一瞬別人のように見えた。きっとすごい仕事をしているんだろうな、と勝手に思った。外で見掛けたら、絶対におれからは近寄らないようなオーラを漂わせている気がした。
急ぎながらそのまま津軽と入れ替わりに出て行って、すっかり二人が取り残された状態でポカーンとしていた。
「服買ってきたから、とりあえず着替えたほうがいい」
「そ、そうだよね」
けれど思ったより向こうは動じていなくて、どのぐらい静雄さんと過ごしているのかなあと聞いてみたかったのだが、さっきの失言のこともあったので黙っておいた。
服の入った袋を手に取って、そのまま中を開けると偶然にも前におれが着ていたようなシャツとズボンでなんだか嬉しかった。じゃあとりあえず着替えようかと何気なく足元を見て、そこで驚愕した。
「あっ……」
さっきまで布団に入っていたので全く気が付かなかったが、シャツでは隠しきれない部分から覗いている太股に、無数の赤い跡が残っていた。それを見た瞬間に、前のマスターの元から飛び出して来てからのことが全部頭の中を過ぎていって眩暈がした。
「……?サイケどうした」
すぐ傍で名前を呼ぶ声が聞こえるのに、急に息が苦しくなって罵倒されて散々に犯された言葉が次々とよみがえってくる。
壊れた、使えない、歌も歌えないと頭の中でぐるぐると回りはじめて、急速に不安に陥ってしまう。
「そうだ、おれうた……うたわ、ないと」
歌を歌うことに特化したアンドロイドなのに、もし歌が歌えなくなってしまっていたら存在価値がなくなってしまう。だから震える喉から必死に声を絞り出そうとした、けれども犯される最中にも歌うことを強要された時のことが蘇って、なんの音も出なかった。
「うた、えない……うたわない、と……うた……」
「おい、サイケしっかりしろ!!」
受け取っていたはずの服がどさりと床に落ちて、ガクガクと肩を揺らされる衝撃にすぐに我に返った。白く歪みかけていた視界が、一気にクリアになってそこには心配そうに見つめてくる津軽の姿があった。
津軽は人間じゃない、おれと同じアンドロイドだと再認識した途端ふっと力が抜けて、瞳から涙がこぼれていた。
「ふっ……うぅ……」
人間の前では、静雄さんの前では泣いてはいけないと思っていた気持ちが緩み、どっと熱い雫が頬を濡らした。
正気を取り戻したのに向こうも安堵したのか、ため息を吐いた後に意外な行動に出てきた。
「え……?」
「泣きたければ泣けばいい。いくらでもつきあってやる」
短い言葉だったけれど、そこに言葉では現せない優しさが感じられて驚きに目を見開いた。そして背中に手をまわされて引き寄せられたかと思うと、いつの間にか津軽の胸元に顔を埋めていた。そのままゆっくりとした仕草で背をさすられて、慰めてくれているのだと思った。
突然のことに戸惑いはあったが、素直にその好意を受け取ることにした。それぐらいには切羽詰っていて、誰にも打ち明けられなかった苦しさや悲しさを吐き出せることができるのは彼だけなのだ。
「……っ、う……ひ、うぅ……」
みっともない掠れた泣き声しか出なかったがもう気にならなかった。今はただこうしてくれているのが本当に嬉しくて、すべてを吐露するようにずっと泣き続けた。
* * *
静雄×臨也
「……ッ、つめた……っ、なにしてんの!?」
「目隠しされたぐらいでそんなに怒らなくてもいいだろが。それともびびってんのか?やっぱり臨也くんでも、俺になにされるかわかんねえじゃ怯えて当然だよな」
「そ、そんなわけないだろう!冷たいのがびっくりしただけで、別にどうってことないね。だいたいシズちゃんのやりそうなことはわかるしねえ、単純だから」
この場合は絶対に怒らせてはいけなかったのだが、売り言葉に買い言葉というかこれまでの二人の関係性から素直に言えるはずもなく、虚勢を張るしかなかった。しかしすぐにやっぱり黙っていればよかったと後悔することになった。
多分ローションであろうそれは俺の反応すら示していない部分と、後ろの穴周辺に塗りこむように手でぐちゃぐちゃと広げられた。卑猥な水音だけが耳に届いてきて、確かにいつもされるよりはドキドキしていると思っていた。
「っ、あ……!う、っいきなり入れるっ、なんてぇ……んぅ」
「なんだいつも通りじっくりほぐしてやってるのに文句を言うつもりなのか?あぁ?」
「ぐ、っう……あ、あはぁ……っ、やめろって……!」
そうなると予想していたが意外にあっさりと体の中に指が一本侵入してきて、腰から下がビクンと跳ねた。抑えきれない喘ぎ声が時折漏れて、必死に唇を噛んで耐える。
しかし一度抗議した瞬間から責めが強くなって、しっかりと奥の方まで塗りこむように指を蠢かしながら、僅かに性急に、乱暴に出し入れをしてほぐし続けた。
「やっぱりいつもより興奮してやがるじゃねえか。まだ弄ってるだけなのにすげえ締めつけてんぞ、ド淫乱」
「ふ、うぅっ……ね、え俺は断じてそんなんじゃないって、いつも言って……は、あぁ」
こうやって好き勝手に淫乱だとか罵るのはいつもの手段だった。たしかにそう言われるのは非常に屈辱的だったが、今となってはもうすっかり当たり前になっていて特に感じなくなっていた。
言葉に出すこと自体をステータスとしている節があるが、迷惑極まりない行為だった。こんなに淫らにしたのは全部シズちゃんのせいだし、例えば昔からこういう性行為を仕事の道具として使ってきたというのならわかるが、そんなことは一切ない。
こんなさわられたらすぐに感じる体になってしまったのは、全部全部野獣のように襲い掛かってくる池袋の喧嘩人形のせいだった。
つきあうようになってその日からもう俺は体を割り開かれて、毎晩のように仕事が終わったら会いに来て、もうほとんど半同棲のような状態だった。さすがにそれでは俺の方がもたないと文句を言って、回数は減っていたがそれでも酷いものだった。
それが落ち着いてきたのはつい最近で、津軽をシズちゃんが拾った頃からだった。あれでも面倒見がいいし、それはアンドロイドであっても変わらないのだろう。同じ顔をした機械人形を世話するなんて到底俺には無理だ。
メンテナンスをする立場ぐらいの方がいろいろ都合もいいし調度よかった。
(あぁそうか……じゃあエッチするのも結構久しぶりだったんだ。俺は仕事が忙しかったし忘れてたけど)
それに気が付いた途端に、少しだけ全身が強張った。ローションを塗られているそこも収縮して反応を示しだし、自分でも驚くぐらいだった。
「なんだ?急にいい反応しだして、もしかしてもう入れて欲しいのか?」
「ちがう」
「欲しいなら今すぐ入れてやるよ。お願いしますって手前が頼み込んだらだけどな」
そう言ってククッと喉の奥で低く笑った。完全に俺のことを馬鹿にして挑発しているのだ。瞬時に頭に血が上り、怒鳴り散らしていた。
「ふざけるな!誰が……誰がそんなことを言うもんか……ッ、あ、え!?」
おもいっきり叫んだ直後に、強引に指が引き抜かれていって代わりになにか硬いモノが押し当てられた。それがなにかはすぐにはわからなかったが、少なくともシズちゃんの勃起したペニスではないようだった。
うろたえながらそわそわと腰を動かして逃れようとしたが、手足を縛られていてはどうにもできなかった。
「やっぱりそうでなくちゃ話にならねえ。はじめから自分で入れてくれっていうような性格だったら、とっくに別れてるな俺は」
「なに?それってもしかして俺のこの性格が好み……っ、あ、やだ、待ってってはぁ、んうぅぅああ……!」
ぽろっと口からこぼした言葉を見逃さずに詳しく聞き出してやろうとしたら、後孔に当てられていたモノがズプリと侵入してきて、盛大なあえぎ声が部屋に響いた。本当に俺の家が防音設備が完璧でよかったと、どうでもいいことを考えて刺激を紛らわそうとした。
「まぁ、わかってるだろうがこんなの序の口だ。ちょっと準備に手間取るからそれで遊んでおけ。臨也なら二回ぐらいはイけるだろ?」
「は、っ……誰が、そんな……っ、あ、はああぁ、っ……な、これっバイブ……うぅっ」
一気に根元までその無機質な塊を飲み込んだかと思うと、すぐにカチッとスイッチを入れる音がして、中に入ったそれが動き始めたのだ。そこでやっとさっき俺の机の方に行っていた意味がわかった。確かに遊び半分で何度か使ったことがあって、きっと仕舞っている場所を覚えていたのだろう。
前の時はそんなに楽しくなくてすぐに飽きたのだが、今日はいつもと状況が違うので、規則的な動きにもかかわらずすぐに下半身が反応し始めていた。
「くそ、っ……バカにしてっ、あぁ、それに時間掛かるって……なに、するんだよっ」
むしろ心配なのはそっちの方だった。俺の知らないところで何かされるのは、本当に困る。きっとこれまでにないマニアックなプレイでもしたいのだろうが、それはやめてくれと願うばかりだった。
しかし希望に反して答えどころか、返事すら返ってこなくて悔しさに歯軋りをした。
「うっ、あ……ほ、んとあとでおぼえて、ろ……んあ、あっ、はああぁ、ん……」
普段だったら鋭く睨み付けながら言うところだったが、睨むどころか相手もなにも見えないのだ。中をのたうちまわる存在を意識してから、視界が奪われたことの真の恐怖を味わっていた。
視覚が失われているということは、もう後は嗅覚と聴覚に頼るしかない。そしてそっちに神経を傾けると、いつも以上に激しい快感を得ている気がするのだ。
(あつ……くそっ、こんなの……バイブなんかに、弄ばれるなんて……だれが、イくもんか……っ)
なんとかこのままの体勢で動かせる程度に腰をずらして、なるべく蠢くおもちゃを感じないようにしようと思った。けれども位置を変えれば変えるほどに、奥に進んできているような気はするし、これではまるで自分から足りなくて刺激を得る為にずれているように見えた。
「んぅ……っ、あ、はぁ……ぁ、う、んぅ……」
それにしても、さっきからシズちゃんの気配が全く感じられないのに苛立ちを隠せなかった。少なくとも近くにはいないだろうことは、視界が奪われて敏感になった感覚が訴えていた。
居ないはずなのに、実は近くに立っていて見ているのではないかという疑惑が拭えなくて、どうしたらいいかわからない。
だから好き勝手に声を出すわけにも、自分からバイブと遊ぶことも、勃起しているそれを解放することもできなくて最悪だった。
必死に神経を研ぎ澄まして物音がしないか聞き耳を立てるが、バイブの機械的な振動音が邪魔をしてそれさえもできない。なにを準備するのか知らないが、よからぬことに決まってる。
「うぅん、っ……は、っ……っ、う、んんっ」
やがて刺激にもちょうどよく慣れてきて、このぐらいなら何分かイかずに持ちそうだなと呼吸を整えながら安堵していた。人間の突きとは違い、一定の速度と振動を与え続けることしかできないのは好都合だった。
「なんだもっと声聞かせろよ」
「な……ッ、あ、あぁあ……っ、ひ、やあああぁん、うぅ、あ、ぁ……んはぁあ」
完全に安心しきっていた瞬間の責めに、心の奥を抉られたような感じだった。どこにいるのかと確認する間もなく、埋め込まれたバイブが抜き差しされて、下半身がビクンビクンと何度も跳ねた。
Return <<