2010-06-30 (Wed)
静雄×臨也前提話
続き 辛くて苦しい
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「それで、なに…まだ俺がシズちゃんのことを引きずってること知って、笑う為にここまで連れてきたの?それともこの間のセックスが気持ちよかったからまたしたいの?」
「手前じゃねえんだからそんな意地の悪いことなんてしねえよ!そりゃまぁ、俺だってこのDVDを見たのはついさっきだしまだ気持ちの整理がついてねえっていうか…」
どうしても期待しかけていた自分が悔しくて、必死に表情を隠しながらそっけなく尋ねた。
しかし向こうは空気を一切読むことなく、自分の気持ちだけを口にして、それからどうしてかおもいっきり俺の体を改めて抱きしめてきて神妙な口調で言った。
「でもこれだけは言える……悪かったな」
瞬間体中の血が熱く沸騰していくような錯覚に陥った。
どうして今更謝るなんて、と。
とてつもない怒りや憎しみがこみあげてきて、すぐにでも罵倒したいところをなんとか押し留めたて冷たく告げた。
「なんのことに対しての謝罪かは知らないけど、内容次第で今すぐここから出て行ってもらうから」
「なにかって…そうだな、いろいろ謝らないといけねえことがあるんだが、一番言いてえのは手前のことを信じてやれなかったことだな」
「はぁ?」
どんな同情の言葉が出てくるかと思ったら、意味不明なことを言い出して拍子抜けした。俺のことが信じられなくて、なにがあったのかこっちはさっぱりだった。
他のむかつくことを言われるよりはマシな気がしたが、個人的な懺悔を聞いてもおもしろくもなんともない。
「はじめに、気持ちを告げられた時は正直驚いた。喜んだらいいのか怒ったらいいのか自分でもわからなくて、その後に告白は嘘だと言った時は安心したんだ。でも本当はそこではっきりと問い詰めておけばよかったんだよ!」
「シズ、ちゃ……?」
いきなり背中に顔が押し付けられたようだったので、驚いて声をあげた。まるで甘えてくるような仕草に、驚かないわけがない。
「こっちが早く手前の本気に気がついてりゃ、あんな目に遭うこともなかっただろうが」
その一言で悟った。
この流れはだめだと。
ちょっとだけ期待した。シズちゃんに告白されて、両思いになって結ばれることを。
けれど期待したらだめだったんだ。
だってもう俺の体は取り合えしがつかないところまで淫らだし、まだ俺がシズちゃんのことが好きだからこそ、こんな体に嵌って欲しくなかった。
昨晩みたいに激しく、乱暴にする姿自体、本来のものではない。変に狂わせてしまいかねない自分が、嫌だった。
「俺が臨也のことを早く好きだって気がついて……」
ほとんど予想していたことを言ってきたので、慌てて首だけ後ろを振り向いてじっと見つめながらきっぱりと言い放った。
「ねえ、いいんだよシズちゃん。無理矢理好きになろうなんて思わなくても」
「は?そりゃどういうことだ」
すぐに反応を示してきた。ここからが騙しあいの勝負なんだと駆け引きには胸を躍らせながら、かなり胸がズキズキと痛んでいた。
「君はバカ正直な性格をしてるから、責任取って大嫌いな俺の事を好きになろうとしてるのかもしれないけど、いらないお節介だよ。よく考えて、俺はそんなのなんかいらない。もし責任取りたいっていうなら、せめて体だけにしてよ」
「はあ?なんでそんなこと言ってんだよ!あんなに好きだって…!」
無理な体勢だった体を移動させられて、正面にシズちゃんの顔がはっきり見える位置に座りなおされた。その間にもしゃべり続け、目の前で顔色がどんどん変わっていくのを目の当たりにした。
作戦通りだ。
「あれはだから薬でおかしくなってるだけなんだって。断言する。シズちゃんは俺が好きなんかじゃない。好きにならなくていい」
「おい、勝手なことを言うのもいい加減にしろ!」
向こうは俺の言い分におもいっきり憤慨していた。さっきまでの雰囲気が一変して殺気だち、今にも殴られそうな様子だったがそれはなかった。
だから決定的に突き放すために、絶対に答えられない質問をした。
「じゃあ聞くけど俺のどこがいいの?エッチな体でしょ?知ってるよ、男ってそういう生き物だからさ」
「どこが、って…そりゃあ、その」
「ほら、ね。出直しておいでよ」
喉の奥からクスクスと笑い声が漏れ出し、やがて口を開いて大声で笑い出した。まったくもって予想通りだったからだ。
しゃべりで俺を言い負かすことは、シズちゃんにはできないのだ。わかっていての作戦だ。
「でもDVDの中で、手前は俺のことあんなにも…」
「自惚れも大概にしてよ、あれは本当は誰でもよかったんだから。薬で心が壊れてしまわないように言い続けてただけなんだから。そうしなければ今頃どうなってたかわからないから、深い意味なんかない」
唇から言葉を吐き出していくほど、表情が曇っていった。焦りを滲ませながら、怒りの形相は変わらない。
そろそろ留めを刺してもいい頃合だった。
「もうシズちゃんを好きでなくても自分を保てるなら、早く忘れたい。振られたのに未練がましくて想ってたりなんかしたくない」
そこでわざと目元を潤ませて、微妙に目線を逸らして辛そうに顔を歪めた。当然演技なのだが、向こうは絶対に気がつかない。
そっと目を伏せて、穏やかな口調で囁くように告げた。
「辛いんだよ…シズちゃんの姿を見るだけで男達に襲われた時の事まで思い出してしまうのは、ね」
「な…ッ!」
すぐ傍で息を飲む音が聞こえてきた。腕を掴まれている手首が、力を加えられて痛かったがそのまま崩さなかった。
動揺していることを感じ取りながら、ぐっと口の端に力を入れて引き結ぶと真面目な眼差しで見つめ、はっきりと言った。
「俺の告白を最初に信じられなくて後悔してるみたいだけど、そんなことしなくていい。薬の幻覚のおかげで最高の夢を見れたし、こんな体になったけど不満に思ってないし、むしろどう利用しようか楽しみにしてるもの。もう百人以上に犯されるのは御免だけど仕事で抱かれる分にはいいかもね。気持ちいいこと好きになったし」
「手前……」
向こうは再び驚きに目を見開いたまま、複雑な表情を浮かべてなにかを堪えているようだった。きっと最低なことを言っている俺を殴りたいけど殴れないからなのだろう。
内心は自分の思い通りになっているのが嬉しくて、けれどこれでもう本当になにもかもがおしまいなのだという絶望感を受けていた。
そうして、これでいいのだと納得させてすべてのことに終止符を打つ言葉を紡いだ。
「シズちゃんが本当に好きだった、告白するまでは。でも今のシズちゃんはなんとも思わないどころか、辛くて、苦しい。だから消えて俺の前から。それが今の願いだから」
「そ、んなこと…できるかッ!」
残念だな、とため息をこぼしながら想定通りの否定に楽しみすら感じていた。
いきなり体がソファの上に押し倒されて、視界がぐらついた。そうしてすぐ近くに顔が寄ってきて、息がかかりそうな距離に近づいてきた時に告げた。
「じゃあもしその気があるなら、最後に一度だけ抱いてくれる?それでお互いのことをチャラにしようじゃない。気持ちいこともできる上に安いもんでしょ?どうせその気だったんだろうし」
ここまでお膳立てしたのだから、あっさりと納得して襲いかかってくるのはわかっている。だからシズちゃんが動いた時に口が歪んだのだが、出てきた言葉は違うものだった。
「わかった。二度と俺のことが忘れられないように抱いてやって、それから改めてもう一度惚れさせてやるから覚悟しておけ」
なんで今更こじれかけてるのかと…
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「それで、なに…まだ俺がシズちゃんのことを引きずってること知って、笑う為にここまで連れてきたの?それともこの間のセックスが気持ちよかったからまたしたいの?」
「手前じゃねえんだからそんな意地の悪いことなんてしねえよ!そりゃまぁ、俺だってこのDVDを見たのはついさっきだしまだ気持ちの整理がついてねえっていうか…」
どうしても期待しかけていた自分が悔しくて、必死に表情を隠しながらそっけなく尋ねた。
しかし向こうは空気を一切読むことなく、自分の気持ちだけを口にして、それからどうしてかおもいっきり俺の体を改めて抱きしめてきて神妙な口調で言った。
「でもこれだけは言える……悪かったな」
瞬間体中の血が熱く沸騰していくような錯覚に陥った。
どうして今更謝るなんて、と。
とてつもない怒りや憎しみがこみあげてきて、すぐにでも罵倒したいところをなんとか押し留めたて冷たく告げた。
「なんのことに対しての謝罪かは知らないけど、内容次第で今すぐここから出て行ってもらうから」
「なにかって…そうだな、いろいろ謝らないといけねえことがあるんだが、一番言いてえのは手前のことを信じてやれなかったことだな」
「はぁ?」
どんな同情の言葉が出てくるかと思ったら、意味不明なことを言い出して拍子抜けした。俺のことが信じられなくて、なにがあったのかこっちはさっぱりだった。
他のむかつくことを言われるよりはマシな気がしたが、個人的な懺悔を聞いてもおもしろくもなんともない。
「はじめに、気持ちを告げられた時は正直驚いた。喜んだらいいのか怒ったらいいのか自分でもわからなくて、その後に告白は嘘だと言った時は安心したんだ。でも本当はそこではっきりと問い詰めておけばよかったんだよ!」
「シズ、ちゃ……?」
いきなり背中に顔が押し付けられたようだったので、驚いて声をあげた。まるで甘えてくるような仕草に、驚かないわけがない。
「こっちが早く手前の本気に気がついてりゃ、あんな目に遭うこともなかっただろうが」
その一言で悟った。
この流れはだめだと。
ちょっとだけ期待した。シズちゃんに告白されて、両思いになって結ばれることを。
けれど期待したらだめだったんだ。
だってもう俺の体は取り合えしがつかないところまで淫らだし、まだ俺がシズちゃんのことが好きだからこそ、こんな体に嵌って欲しくなかった。
昨晩みたいに激しく、乱暴にする姿自体、本来のものではない。変に狂わせてしまいかねない自分が、嫌だった。
「俺が臨也のことを早く好きだって気がついて……」
ほとんど予想していたことを言ってきたので、慌てて首だけ後ろを振り向いてじっと見つめながらきっぱりと言い放った。
「ねえ、いいんだよシズちゃん。無理矢理好きになろうなんて思わなくても」
「は?そりゃどういうことだ」
すぐに反応を示してきた。ここからが騙しあいの勝負なんだと駆け引きには胸を躍らせながら、かなり胸がズキズキと痛んでいた。
「君はバカ正直な性格をしてるから、責任取って大嫌いな俺の事を好きになろうとしてるのかもしれないけど、いらないお節介だよ。よく考えて、俺はそんなのなんかいらない。もし責任取りたいっていうなら、せめて体だけにしてよ」
「はあ?なんでそんなこと言ってんだよ!あんなに好きだって…!」
無理な体勢だった体を移動させられて、正面にシズちゃんの顔がはっきり見える位置に座りなおされた。その間にもしゃべり続け、目の前で顔色がどんどん変わっていくのを目の当たりにした。
作戦通りだ。
「あれはだから薬でおかしくなってるだけなんだって。断言する。シズちゃんは俺が好きなんかじゃない。好きにならなくていい」
「おい、勝手なことを言うのもいい加減にしろ!」
向こうは俺の言い分におもいっきり憤慨していた。さっきまでの雰囲気が一変して殺気だち、今にも殴られそうな様子だったがそれはなかった。
だから決定的に突き放すために、絶対に答えられない質問をした。
「じゃあ聞くけど俺のどこがいいの?エッチな体でしょ?知ってるよ、男ってそういう生き物だからさ」
「どこが、って…そりゃあ、その」
「ほら、ね。出直しておいでよ」
喉の奥からクスクスと笑い声が漏れ出し、やがて口を開いて大声で笑い出した。まったくもって予想通りだったからだ。
しゃべりで俺を言い負かすことは、シズちゃんにはできないのだ。わかっていての作戦だ。
「でもDVDの中で、手前は俺のことあんなにも…」
「自惚れも大概にしてよ、あれは本当は誰でもよかったんだから。薬で心が壊れてしまわないように言い続けてただけなんだから。そうしなければ今頃どうなってたかわからないから、深い意味なんかない」
唇から言葉を吐き出していくほど、表情が曇っていった。焦りを滲ませながら、怒りの形相は変わらない。
そろそろ留めを刺してもいい頃合だった。
「もうシズちゃんを好きでなくても自分を保てるなら、早く忘れたい。振られたのに未練がましくて想ってたりなんかしたくない」
そこでわざと目元を潤ませて、微妙に目線を逸らして辛そうに顔を歪めた。当然演技なのだが、向こうは絶対に気がつかない。
そっと目を伏せて、穏やかな口調で囁くように告げた。
「辛いんだよ…シズちゃんの姿を見るだけで男達に襲われた時の事まで思い出してしまうのは、ね」
「な…ッ!」
すぐ傍で息を飲む音が聞こえてきた。腕を掴まれている手首が、力を加えられて痛かったがそのまま崩さなかった。
動揺していることを感じ取りながら、ぐっと口の端に力を入れて引き結ぶと真面目な眼差しで見つめ、はっきりと言った。
「俺の告白を最初に信じられなくて後悔してるみたいだけど、そんなことしなくていい。薬の幻覚のおかげで最高の夢を見れたし、こんな体になったけど不満に思ってないし、むしろどう利用しようか楽しみにしてるもの。もう百人以上に犯されるのは御免だけど仕事で抱かれる分にはいいかもね。気持ちいいこと好きになったし」
「手前……」
向こうは再び驚きに目を見開いたまま、複雑な表情を浮かべてなにかを堪えているようだった。きっと最低なことを言っている俺を殴りたいけど殴れないからなのだろう。
内心は自分の思い通りになっているのが嬉しくて、けれどこれでもう本当になにもかもがおしまいなのだという絶望感を受けていた。
そうして、これでいいのだと納得させてすべてのことに終止符を打つ言葉を紡いだ。
「シズちゃんが本当に好きだった、告白するまでは。でも今のシズちゃんはなんとも思わないどころか、辛くて、苦しい。だから消えて俺の前から。それが今の願いだから」
「そ、んなこと…できるかッ!」
残念だな、とため息をこぼしながら想定通りの否定に楽しみすら感じていた。
いきなり体がソファの上に押し倒されて、視界がぐらついた。そうしてすぐ近くに顔が寄ってきて、息がかかりそうな距離に近づいてきた時に告げた。
「じゃあもしその気があるなら、最後に一度だけ抱いてくれる?それでお互いのことをチャラにしようじゃない。気持ちいこともできる上に安いもんでしょ?どうせその気だったんだろうし」
ここまでお膳立てしたのだから、あっさりと納得して襲いかかってくるのはわかっている。だからシズちゃんが動いた時に口が歪んだのだが、出てきた言葉は違うものだった。
「わかった。二度と俺のことが忘れられないように抱いてやって、それから改めてもう一度惚れさせてやるから覚悟しておけ」
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