2011-10-16 (Sun)
「華鬼」
静雄×臨也/小説/18禁/A5/92P/900円
鬼に憑りつかれてしまった静雄を助ける為に五日間鬼に抱かれる臨也
絶対に結ばれない静雄と体だけでも繋がれて喜ぶが次第に鬼にも魅かれ
静雄と鬼のどちらが好きなのか悩む臨也は…
鬼静雄に脅迫されて臨也がエッチなことをされる話 パラレル
※鬼×臨也の表現がありますが静雄以外との行為はありません
表紙イラスト NONO 様
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「えっ……?なに、な……んで」
全身の血がかあっと頭にのぼり、言いようのない感情がぐるぐると体の内を掛け巡る。
「こんなところに人間が来やがるなんて、手前どういうつもりだ」
「シズ、ちゃ……ん?」
現れたのは、あまりにも見慣れた姿と顔だった。
俺がこの島に来た目的の、平和島静雄がなぜかそこにいたのだ。だけど違っていたのは、髪の間から二本の角が生えていたことといつもと服装が違っていたことだ。
「それ、鬼の角だよね……?なんで、どういうこと?君ってまさか、人間じゃないの?」
驚きを隠せないまま喉の奥から懸命に声を絞り出して尋ねた。だけどその瞬間、これまでとは全く違う怒りを含んで射抜くような瞳で見つめてきて肩がビクンと震える。
同じようで、違うと。
こんな風に本気で心の底から燃えるような怒りを向けられたことは、ない。
それなりに真剣に殺し合いに近い喧嘩はしていたけれど、それでもどこかに暗黙のルールが互いに存在していて、最後の最後は踏み越えないみたいなものがあった。だけど今はもう、容赦がない。
本心から俺を憎んでいるような目だ。
「あ……」
だから初めて、怖いと感じてしまった。
怖いというのは、これまでのこととか全部忘れて他人のように睨んできたからだ。すべてをぶち壊すようで、俺のことなんか知らないと言いたげで。
だけどその少しの隙を狙ってシズちゃんが一瞬で俺の前まで寄って来て、胸倉を掴みキツく締めあげながら冷たく鋭い声で言ってきた。
「手前は俺のこと、俺を……人間のこいつの体のことを知ってんのか?」
「ぐっ、うぅ……人間って、なに、を言って……!?」
「この間鬼退治に来たって言いやがった生意気な人間の体がやけに使い心地いいから、憑りついて使ってんだよ。こいつを知ってるのか?どういう関係だ」
「くるし、っ……げほっ、がっ、は!!」
突然言われたことに意味がわからなくて顔を顰めていると、どんどん締めつけが強くなっていって息ができなくなる。意識も朦朧として苦しかったけれど、シズちゃんの、そいつの言葉に驚いて頭の中がパニックになってしまう。
しかし途中でパッと手を離されたので素早く呼吸し酷くむせながら、あまりにも衝撃的な鬼の言葉を頭の中で反芻する。
まるで俺のことを知らない口ぶりな上に、シズちゃんのことを、この人間の体だと言った。使い心地がいい、憑りついているということはつまり。
鬼退治に行ったシズちゃんが鬼と対峙して、なぜか憑りつかれ人間の体だけを使われているということで、呆然とした。
「じゃあ、っ……シズちゃ、んは、っ」
「人間ごときが、鬼に勝てると思うか?」
「……嘘」
何度も喉を押さえて擦りながら呼吸も、心も苦しいのを我慢して尋ねた。鬼退治に来たシズちゃんは一体どうなったのかと。だけど。
負けたのだとはっきり言われて動揺してしまう。
まさかあのシズちゃんがと。確かに俺も圧倒的な鬼の力で押さえこまれて捕まってしまった。わかってるけど、けれど、シズちゃんがそんなあっさり負けるなんて信じられなかった。信じたくない。
事実なのかもしれないけれど、受け入れたくなかった。そんなこと、聞きたくないと胸の奥が苦しくて苦しくてうまく息ができないぐらいに。
「手前はこの男のことを知ってるのか。助けにでも来たのか?」
「違う、そう、じゃないけど……そんな、だけどじゃあ、死んだの?シズちゃんは、死んだの……ッ!?」
最悪の事態にもう自分を抑えられなくなる。助けに来たわけじゃない、様子を見に来ただけなのにこんなことになるなんてどうしたらいいかわからなくて、唇を噛みながら叫んだ。
シズちゃんはどうなったのか。
死んだのか、本当にあのシズちゃんが死んでしまったのだろうかと焦りながら全身がカタカタと震え始める。感情の昂ぶりも最高潮に達して、勝手に涙も出てしまいそうで慌てて拭う。
俺の知らないうちに死んだなんて、許せない。
嫌いとしか言えなくて、好きだとか、俺の本心なんて一度も告げたことがないのに。気持ちを告げようとも思っていなかったけれど、死んだのだったらいっそのこと言えばよかったかもしれない、と落ち込みかけた。けれど。
「助けに来たわけじゃねえけど、死ぬのは困るっつうことか。安心しろ死んでねえ、憑りついただけだ」
「憑りついただけって……じゃあ元に戻るの!?どうやったら、シズちゃんを元に……!」
一瞬で浮上して心の底から安堵しながらも、大声をあげて詰め寄る。どうしたら体から出て行って、いつものシズちゃんに戻してくれるのかその方法を聞き出そうとした。
だけど鬼が、人間ではない化け物がすんなりとそれを教えてくれるわけがなくて焦らされる。
「教えてやってもいいが、どうするか」
「……っ、じゃあなんでも、俺がなんでもするから!早く戻してよ!!」
気がついたら捲し立てるように叫んでいた。本人の前では一度も口にしたことのない本音を。
シズちゃんが戻るのなら、返してくれるのならなんでもするから。好きだからシズちゃんの為ならなんでもできる、という絶対に誰にも言えない心の内を。
すると数秒沈黙があって、真剣に考えるように顎に手を当てて考える仕草をする。だけど相手は化け物なのだから、とんでもない条件なのだろうと覚悟して、言われたことに言葉を失った。
「おい手前、何でもするっつったよな?自分でそう言ったよな?」
「言ったけど」
「じゃあ今日から五日間俺に抱かれろ。そうしたらこいつを元に戻してやるよ」
「……はあっ!?」
そう言いながら唐突に腰を掴まれ体を抱き寄せられて顔がやけに互いに近づいて、頭の中が真っ白になる。
* * *
「えっ、あ、やぁ……!そこ、っ、なかは、だめ……!!」
もう一度さっきと同じように後ろの穴に舌が添えられて、今度こそ先っぽが強引に中に捻じ込まれた。すんなりとはいかないと思っていたけれど、既に媚薬のような唾液を塗られていた為かじわじわと受け入れていく。
そして許してしまえばまたそこに浸透して、どんどん奥へと入る。相変わらず入口を指で広げた体勢で固まっていたので、あっという間に鬼の舌がすべて挿入された。
「ふあっ、あ、あつ……うぅ、さっき、よりあついよぉ、っ……あ、ぁ、舌で擦って、る」
時折肌に吐息がかかるのがくすぐったくて震えたが、すぐに中で掻き回すように暴れ始めてさっきまでより強い快感が駆け抜けていく。塗られるように舌を擦られて、じんわりと心地よさも広がっていってとろとろになる。
もう自分の性器が半分勃起し始めているのもわかっていた。こんなの耐えられるわけがないのだ。
「あっあ、ひぅ、く……こし、っとまらないよぉ、っう……んぁ、あん」
気持ちよくなり始めた体が快感をどんどん受け取っていき、勝手に腰が揺れる。もしかしたらもうずっと、俺の体は気持ちよくなったら淫らに腰を振ってしまうのかもしれない。そういう言霊を、かけられたのだから。
さっきの罪悪感が嘘のように消えていって、頭の中も淫猥なことしか考えられなくなる。
「はぁ、あ、っあ……!んっう……?」
そこで急に舌が引き抜かれて鬼の体も離れる。不思議に思っていると、告げられる。
「ダメだな、感情が全然こもってねえ。やっぱり完全に操るのは無理か。まあ最後の日には心の底から気持ちいいって言わせてやるよ」
「っ、あ、あつ……い」
「強制的にやり過ぎたか、しょうがねえ自由にしてやるよ臨也」
「えっ、うわっ!?」
急にパチンと指を鳴らされたかと思うとその場に倒れこんで、鼻を打ってしまう。痛いなと思いながらそいつを睨みつけたところで我に返る。
さっきまではまるで何かに憑りつかれたみたいに自分の意志が消え、体の事しか考えていなかったけれどもう自由に動けるし元に戻っていた。そのことに安堵していると、おもむろに腰を掴まれてさっき鬼が座っていたらしい一段高い畳の上に上半身だけを押さえつけられる。
「なに、を……?」
「いいか自由にしたのは手前の行動だけだ、俺が誰かはわかってんだろ臨也」
「……シズちゃん、で、鬼なんだろ」
再度宣言されて、完全に自由になってはいないことを知る。だけど自分の感情で怒ったり、悲しいと思うようになっただけマシだ。さっきのアレは嫌だ。
「さっきのあれ、は……もうやめてよ。俺もなるべく嫌がらないようにするから。だってそうしないとシズちゃんは人間に戻らないんだろ?」
「そうだな、わかった。あんまやりすぎるとどうもおかしくするみてえだからよ。どうせやることは変わらねえし」
「……っ、ほんとそれ、凶悪すぎ」
勝手に人の体と心を弄ぶのはやめてくれと言うと、あっさりと承諾されて拍子抜けしたがどうやら俺の精神的にもヤバイらしい。じゃあ始めからするなと思ったが、それを口にする前に、酷い物体が眼前に突き出された。
さっきは大きい、欲しいと言ったけど本来の感想は普通じゃない化け物だと言いたかったのだ。でも最後まで言い切る前に尻を掴まれて、さっきと同じバックの体勢で後ろに肉棒が擦りつけられる。
いよいよだと思うと緊張したが、ぐっと手に力を入れて堪えた。だって耐えないと、シズちゃんは帰ってこないのだから。
「じゃあうぜえぐらいに喘げよ、臨也」
「ッ!?う、嘘つきっ、あ、んあっ、あ、ひああああっ!!」
もう操らないと言ったばかりなのに、喘げと命令されてしかもペニスが強引にそこに突っ込まれる。すぐに大きな悲鳴をあげて、足をガクガクと震わせた。
いきなりあんなでかいものを突っこむなんて無理だ、と思ったのに一度引き抜かれてしまい驚く。すぐに呼吸もおさまって、ほっと一息ついていたのだが。
「はぁ、あ……っ、なに、また、っ、んあっ、ふああっんぅう!?」
「ほらみろさっきより深く入ったぜ。こうやって出し入れ繰り返してりゃあ、入るもんなんだよ。セックスってのはこうやってするんだぜ?」
「っ、あ、は……うぅ、知らないそんなことっ、知りたくもな……あ、やだ、またっ、あ、んああっ!!」
こういう行為なんて慣れていると言いたげな口ぶりに腹が立ったが、鬼なのだからしょうがない。多分俺とは違う年月を生きているし、どちらかというとこっちが捕食される方なのだ。
でもシズちゃんの姿で言われると悔しい。
そう思っている間に三回は引き抜かれ、突っこまれと絶妙なタイミングで出し入れされ続けていた。すると確かにあんなにもすごかったのに、割とすんなりと半分ぐらい入ったのだ。
「うぅ、っ、あ、くそ……ふあんっ、なか、が、熱いっ」
* * *
「やあシズちゃんおはよう。どうせなら最後まで寝ててくれればよかったのに。あのね、鬼退治に行くのはいいけどちゃんと自分で戻って来ないとダメだよ?俺の手を煩わせないで欲しいな」
「鬼退治、って……何の話だ?」
「ん?あれ、覚えてないの?もしかしてあの島で起きたこと全部忘れた?」
鬼が憑りついていたと言っていたので、もしかしたら俺達のことも知っているかもしれないと警戒した。だけどそれはすぐに杞憂だったと気づくと、ニヤニヤと口の端を吊りあげて上機嫌な振りをして次々と嘘を並べ立てる。
俺の為の、嘘を。
「君は鬼退治を頼まれてあの島に行って、見事倒した。そうして気絶しているところを、興味本位で覗きに行っていた俺が拾ってきたんだよ。感謝して欲しいな」
「鬼を倒した……?」
「ほらこれを見てよ、鬼を倒した証拠の角だよ。俺が持って帰ろうかと思ったけど、何も覚えてないのならあげるよ。もう俺には必要ないし」
手の中に大事に持っていた角を、思いっきり紐から引きちぎって離し放り投げた。簡単に受け取ってまじまじと見つめている姿を眺めながら、何も考えるな、考えたらダメだと言い聞かせる。
唯一の証拠だったけれど、いつまでもあんなものを持っていたら未練がましい。忘れる為には、手放さなければいけなかったんだとため息をつきながら思っていて。
「冗談じゃねえ、こんなもん信じられるか!手前は嘘つきで信用ならねえ奴だ!こんなもん、ッ」
「ちょっと待ってよ、ダメだよ壊したら。君だって鬼退治に行ったのに証拠を持たずに村に帰ったら嘘つき呼ばわりされちゃうよ。俺みたいにね」
手の中で握り潰しそうだったので、慌てて止める。すると納得したのか、力を入れて壊すことはなかったのでほっとした。
「俺の言うことを信じないのだって、わかってた。だけどあの島にもう鬼はいないっていうことだけは、信じて欲しい。二度と近づかないでくれ」
「なんだよそりゃあ。何か企んでるんじゃねえか」
「村人達にも安心させないといけないだろ?とにかく島に近づかないって約束して。その代わり俺はもう二度と君に会わないようするから」
「ああ?」
不機嫌な表情を隠しもせずに、こっちを睨みつけている。だけど俺は怯まない。怖いなんて、これっぽっちも思わなかった。
まだあの言霊は有効なんだろうな、とぼんやり考える。多分まだ心の中から恐怖は抜け落ちたままだ。
本当のことを暴かれて知られたらどうしよう、という恐怖はまるっきりなかった。それよりもまたシズちゃんがあの島に行って鬼に襲われることや、あいつが危険な目に遭うことだけは避けたかったから必死で。
その為になら、なんでもしようと思った。
「シズちゃんの村に来るなって、いつも言ってたじゃないか。俺は仕事があったからしょうがなく行ってたけどもうやめる。行かないようにするし、君にだって会わないように努力するよ。だから今後一切鬼のこととあの島に関することを詮索しないで欲しい。これはお願いだ。最初で最後のね」
「会わないようにするって、手前……それに、最後だ?」
「そう最後。これでもう二度と顔を会わすこともないから、見逃してくれるよね」
好きな相手に別れを告げてから来い、とあの鬼は言っていた。だからそうしたわけじゃないけど、結果的にこれが最善の方法だと思ったのだ。
本当は俺がシズちゃんに会いたくないだけなんだけど、島のことと引き換えに会わないようにする。これなら文句も言えないだろうと考えたから。
「手前ッ!!」
「おっと、危ない」
いきなり立ちあがって殴りかかってきたので軽く避けると、小舟の縁に足を乗せてそれから勢いをつけるとそのまま海の中に飛び込んだ。まだ朝なので水は少し冷たかったけれど、俺の心の方が冷え切っていたのでどうでもよかった。
少しだけ潜って船からわざと離れたところで顔を出すと、途端に激しい怒鳴り声が聞こえてくる。
「おい勝手に逃げんな、待ちやがれッ!!」
「じゃあねシズちゃん、バイバイ」
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