「安心しろ、少しは手加減してやるよ。かわいそうだから痛ぇこともしねえ」
「ハッ!相当俺の事馬鹿にしてるんだ」
「そりゃ違うな。本当にこれがはじめてだっていうんなら、俺に嵌っちまうぐらいに気持ちよくしてやるって言ってんだよ」
その言葉に、頬がかあっと熱くなるのを感じた。さっきまで随分と酷いことを言っていた癖に、いきなりこれはなんなんだと動揺せざるをえなかった。
やけに胸がドキドキと脈打ち始めて、これはヤバイと感じていた。
ただでさえつい最近シズちゃんのことが好きなのではないかと自覚したばかりで、これはちょっと酷いだろうと思った。
相手は未来の人間だというのに。
「そんなに、手馴れてるって言いたいんだ?」
「手前が気持ちいいって喘ぐ方が俺が面白いからに決まってんだろ。まぁ確かに普段の臨也とは全然違うみてえだな、こんなはっきり顔を赤くしてるとこなんて初めて見るな」
ニヤニヤと頬を緩めながら、喉の奥で低く笑っていて、見るからに子供を脅して喜んでいる変態だった。こんな最低な男なのに、いつの間にか震えは止まっていて鼓動だけがどんとん高まっていく。危険な傾向だった。
必死に気を取り直して、睨みつけて不敵な表情を作る。向こうから見たら確かにガキかもしれないが、最後まで自分を貫き通したかった。
「覚悟が決まったんなら、たっぷり躾けてやるよ」
シズちゃんがそう言った直後に胸元にピリッとした痛みが走り、顔を顰めながら見ると俺のナイフで切りつけて、学ランの下に来ている赤いシャツを切りつけているところだった。少し力を入れれば破ることができるだろうに、わざとそうしているのだと悟った。
ちょうど半分に切れて、チラリと肌が露出した先に一本の傷跡が走っていて、血は出ていないが赤い痣のようになっていた。ここまでナイフの扱いに慣れているとは、やはり経験の差は違うと改めて見せつけられた。こっちのシズちゃんだったら、そんなことをする前にナイフをへし折っているところなのだ。
「悪いなぁ、痕ができちまったなあ」
「えっ、なに……っ、いたッ、な、舐めるなよ!?」
何をされるのかと身構えていたら、いきなりその傷跡に顔を近づけてきて、それからざらざらの舌でべろりとそこを舐めあげてきたのだ。少しだけ腫れ上がった部分に唾液を擦りつけられて、痛みに声をあげた。手さえ自由だったら頭を抱えて引き離しているところだ。
けれどどうにもできなくて、やめろと言っているのにまだ舐め続ける動作に対して、ビクビクと痛みに肩を震わせることしかできなかった。
これはわざとだ、絶対にわざとだと必死に言い聞かせていたが、何度もされているうちに変な感情が沸きあがってくる。別にそこを舐められて感じるような性癖は持ち合わせていないのだが、ねっとりと撫でるように舐められ続けておかしくなったんだと思った。
ただでさえ好意を抱いている相手にこんなことをされて戸惑っているのに、反応しないわけがなかった。
「あぁ、やっぱり昔から感度はすげえんだな。傷を舐めてやっただけなのに勃起してやがるぜ」
「う、うるさい……ッ!誰のせいだと……」
やっと顔が離れていったと思ったらすぐに指摘されて、悔しくてしょうがなかった。
ズボンの前がかなり窮屈なぐらい下半身が反応していて、とても言い逃れはできない。それでも必死に頭の中で言い訳を考えようとしたのだが、思考を強制的に遮られた。
「む……っ、ぐ!?」
全身に雷に打たれたかのような衝撃が走って、うまく息ができなくなった。唇を塞がれているのだと気がついた時には、ぬるついた舌が口内に入りこんでいて歯の間を割り開いてきた。
目をぎゅっと閉じて行為に耐えようとしたが、顎に手が添えられて上を向かされて、深く深く舌が侵入してきたのだ。鼻から熱い吐息が自然と漏れてしまう。
「ん……うぅ、っ」
そうしてぴちゃぴちゃとした水音を部屋の中に響かせながら、舌を絡められたり歯の裏側を舐められたりして散々に蹂躙された。次第に全身から力が抜けていき、壁に寄りかかりながら薄目を開けた。すると見計らったかのように体が離れていって、俺は呆然とした表情のままシズちゃんをみあげた。
すっかり息もあがってしまっていて、視界もぼんやりと歪んでしまっている。
「おい、エロい顔してんの自分でわかってるか?ったく、人を煽りやがって」
「え……な、に?」
意味が分からなくて尋ね返したが、向こうも一瞬だけ驚いたような表情をして動揺をしていた。けれどすぐに顔を逸らすと、俺のズボンに手を掛けてきた。さっきまで握っていたナイフは、床の上に転がっていた。
強引にベルトを引っ張って壊すと、乱暴にズボンと下着をずり下げてきた。さすがにその時には緊張が戻ってきていて、必要以上に腰のあたりがビクンと震えた。そうしてあっさりと晒されてしまった自分のモノに、羞恥心を覚えて顔を逸らしてみせた。だがすぐに俺の心を見透かしたように、言葉を投げかけられた。
「立派に勃てて先走りの汁まで垂らしてやがるじゃねえか。やっぱりはじめてなんかじゃねえだろ?一人で自慰でもしてたんじゃねえか」
「そ、んなことするわけないだろう!いいからじっくり見てないで、さ、さっさとすればいいだろう」
「そこまで言われちゃしょうがねえな。先に苦しそうなそれ出させてやろうと思ってたが、後ろでイかせてやるよ。屈辱的だろ?男なのに後ろだけでイかせられるってな」
すぐに自分の言葉を後悔した。怒らせてはいけないところで言ってしまって、悔しさに唇を噛みしめた。
多少の知識はあっても体験が無いのだから、後ろだけでイくなんてことが本当にあるのかさえ知らない。知ってても、自分の身にそれが起こるなんて考えただけでも身の毛がよだつ。しかもシズちゃんが本当にそんなテクニシャンみたいなことができるのか、疑問だった。
確かにさっきのキスは予想以上によかったし、傷を舐める時だってかなり執拗で驚いたぐらいだ。でもだからと言ってこんな乱暴な物言いの相手が、そんなことできるはずがないと思った。そんな細かくて器用なことをしてる姿なんて、俺には想像がつかなかったのだ。
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