「うわっ……!?」
唐突にボンッ、という破裂音の後に煙と激しい突風が吹き荒れて、視界を塞がれてしまった。そのまま草むらの上に背中が叩きつけられる寸前に、誰かの腕に抱きとめられる感触が背筋を駆ける。
「え……?」
「やった!遂にやったぞ!すげえぞ人間に戻ってやがる!なあ、臨也ッ!!」
突然見慣れない金髪が目に入って、そうして自分が見知らぬ男に背を支えられていることに気がついた。俺の愛馬はどこにいってしまったのだろう、と頭の中で考えながら呆けたままでいると、俺よりは頭一つ分ぐらい背が高く体つきもしっかりとした強そうな男が興奮状態で捲し立ててきた。
「何百年も待った甲斐があったな!何が魔法は絶対に解けないだ、こうやって俺は元に戻った。もう馬なんかでも化け物でもねえ、人間だッ!」
「馬……え?もしかして、君……俺の……?」
「やっと手前と話せるなあ。今までどんだけ俺がもどかしい思いしてたかなんてわかんねえよな。でもほんとよかったぜ、大事にしてくれてありがとうな」
「あぁ、うん」
開いた口を閉じることもできずに、ただ相槌を打つことしか俺にはできなかった。必死に頭の中で整理しながら、状況を考える。そうしてこの男が、長年共に過ごした愛馬なんだと気がつくのにそう時間は掛からなかった。
瞬きを繰り返しながら頭のてっぺんからつま先まで凝視したが、年齢は俺とさほど変わらないぐらいで、身なりだって整っていた。質のいい服を纏い、頭の上に乗っかっているものを目にして息を飲んだ。俺が普段城で使っているようなものとは違い、かなり立派で重そうな王冠が乗せられていたから。
「どこの国の王子様なの、それ?」
「ん?あぁ、そういやあ名乗ってもいなかったな。俺の名前は平和島静雄ってんだ。国はまぁ何百年も昔の話だから残ってるか知らねえが、一応正式な王として継承してたな。手前と一緒だぜ」
そう言われても混乱した頭ではまともに働かなくて、俺と同じ一国の主だと言われてもすぐとはぴんとこなかった。だからつい、見当違いなことを言ってしまう。
「平和島静雄……じゃあ、シズちゃんって呼んでいいかな?」
「はあ?なんだそりゃあだ名か?俺も相当変わってるけど手前も相当だな。まぁ別にいいけどよ……って、そうだ体大丈夫かよ!?」
「えっ、あぁそういえば忘れてた」
* * *
「臨也が俺みてえだったら、心底ガッカリしてんぞ。それはやめてくれ。ほら、ここなんかすげえピンク色で食べちまいてえ」
「食べちゃえば?」
お世辞などではなく褒められて、それがたまらなく嬉しくてしょうがなかった。だから少し調子に乗って、何気なくそう言ったのだが次の瞬間激しい衝動が体を襲う。
「ふ、あっ……!?あ、っ、なに……は、なにこれっ……!」
「すげえうめえ……臨也の乳首最高だ」
「な、なんてこと……言ってっ、あ、待って……やだ、なんなの、っ、体が勝手に……!」
じゅるっという水音が耳に届いた時には、生あたたかい唾液が胸の先端にぬるりと塗りつけられて、そのままちゅうちゅうと吸われてしまう。その拍子にびくりと腰が跳ねて、お互いの体が揺れるがそんなことは気にせず吸い続けていた。
はじめての感覚にどうしていいかわからず、目の前にあった黄色の頭に両手を伸ばしてしがみついた。握る手を強めたり弱めたりしてなんとかやり過ごそうとするが、それだけではおさまらない。
しかもシズちゃんがあまりに直接的に卑猥なことを言ってきて、尚更顔が真っ赤になった。こんなのは、聞いていない。
「ほらぷっくり膨らんできて硬くなってんぞ。感じてきたか?」
「ん、っ、う……やぁ、あ、舌でさわらないでぇ……なんかおかしく、なるっ、あ、は」
「そういう時は気持ちいいって言うんだよ。ほら言ってみろよ」
「な、んでそんなこと……っ」
「言ってくれたら、俺はすげえ嬉しい」
「……っ、卑怯者」
俺がセックスに対して何も知らないから、普通ではない言葉を言わされているのではと疑問に思う。しかし無邪気に嬉しいからと言われればもう引き下がるわけにはいかなかった。最近では、それなりに口では誰にも負けないぐらいには達者になってきたつもりだったのに、うまく頭が回らず流されそうになってしまう。
それとも、俺がシズちゃんには勝てないということなのだろうか。上に立つ者としての心構えは常にあったが、こんな一方的に苛められることになるなんて考えてもいなかった。自分自身の反応さえも違和感を感じながら、たっぷり迷って結局それを口にする。
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