ウサギのバイク CAPSULE PRINCESS 36
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2010-04-07 (Wed)
静雄×臨也 ※18禁注意

続き 話が食い違いすぎている

* * *
「ちょっとなに?俺の邪魔しないでくれるかなぁ」

予想通り部屋に飛び込んだら前回とほぼ似たような光景が広がっていた。何人かの男が臨也の周りを取り囲み、黒いコートを剥ぎ取ろうとしているところだった。
あまりにも想像通りで頭痛がしそうなぐらいだった。ただ前と違うのは真ん中にいるあいつは余裕でいつもの嫌な笑みを浮かべて男達を誘っていたことだろうか。

「こっちにも予定ってものがあるんだよ。やっと話を聞き出せるところまで取引できたのに、どうして君はぶち壊しにしてくれるんだろうね」

大袈裟に両手を広げて嘆きを表現しているようだが、奴の首元にはナイフが添えられていた。少しでも力が加われば皮膚が切り裂かれてしまうだろう。
だが俺にはそんなこと関係なかった。
歩みを止めることなく近づいていき遂には囲まれている輪の傍まで近づいて、そこでおもいっきり叫んでやった。

「全部どうでもいいんだよ!こんな茶番やってねぇでさっさとこっち来い、犯してやるかよ淫乱がッ!!」
「ひっどーい最悪。そういうのがかっこいいと思ってるわけ?バカじゃないの?そんな極悪人に乱暴されるぐらいならこっちのお兄さん達のほうがまだマシだよ。ねぇ?」

まるでこっちのことを無視して目の前の男の体にそっと手を伸ばして、挑発的な視線を向けながら股間のあたりをぐりぐりとさわっていた。
ドスの効いた怒鳴り声や汚い言葉なんてあいつには意味が無いようだ。なんとか保っていた理性が、ブチッと頭の中で切れる音が響いた時には手足が動いていた。


「ふ、ざけんじゃねええぇぇ!犯す、犯す、犯してやるッ!今すぐ、ここでよおぉぉッ!!」
「ねぇ、それって殺すを犯すに変えただけだよね?そういうことしか思いつかないの?ボキャブラリーが少なすぎるよねぇシズちゃんの頭の中って!」


手近にいた男に拳を叩きこんだ瞬間には、臨也もナイフを取り出し首筋に当てられていた腕を切りつけていた。
完全に周りにいる男共は俺たち二人の言い合いに気後れしていて、その迷っている間に半分以上が床の上に寝転がされていた。
こいつと共闘なんて冗談じゃないと思い、こっちが一人でも多くやっつけてやろうと奮起になっていた。
なりふり構わず殴ったり蹴ったりを繰り返し、その度に痛みが体中を駆け抜けていったがそんなこといつものことでいちいち気を取られている場合ではなかった。

「邪魔だてめえらああぁぁッ!!」

途中から一人一人相手にするのが面倒になって、少し離れたところにあったシングルベッドを掴むと軽々と臨也目がけてぶん投げた。
当然あいつは何人かの男を盾にして、ギリギリのところで避けやがった。すぐにうめき声と派手にベッドが床に叩きつけられる音が響いたが、さっきまでより随分と静かになっていた。
壊れたパイプベッドの棒を掴んでがむしゃらに振り回し、残っていた数人を完全に沈黙させた頃には奴の姿が部屋の中から消え去っていた。
こういうことになるのは予想済みだったが、やはり苛立ちは抑えられない。歯軋りをしながらドアへと走ったが、出遅れたことは否めなかった。




「お帰りシズちゃん、待ってたよ」

嫌な気配だけを頼りに追い掛け回したが、結局終着点は臨也のマンションだった。こんなことなら先回りをして待ち伏せしていたほうがよっぽどよかったと思いながら、無言で玄関の中に入った。
だが堪えられたのはそこまでで、扉の鍵が閉まる音が響いた時には体当たりで壁に体を押しつけ片腕を掴んでおもいっきり顔を近づけていた。

「手前はなんで今日に限って逃げてんだよ!手間かけさせやがってこの代償はきっちり払ってもらわないと釣り合わねぇな」

ミシミシと骨が軋む音が聞こえていたが、向こうは苦痛の表情一つさせず妖艶な笑みを浮かべたままだったのが胸糞悪かった。
このまま握りつぶしてやろうかと考えた瞬間に、目の前を風が横切り反射的に首を引いていた。

「その前に俺の話聞いてくれるかな?あれから本気で調べたんだよね。わかる?情報屋の本気だよ。そしたら…」
「こっちの質問に答えるのが先だろ、臨也くんよぉ?あの媚薬をサイモンにあげたんだろ。なんでそんなことしやがった!全部全部こうなることまで仕組んでたって言うんじゃねぇだろなぁ!」

ナイフの切っ先が頬を掠めていったがそんなのには構わずに、もう一度腕を取り壁におもいっきり擦りつけて今度こそ動けないように俺の体で挟みこんで怒鳴り散らした。
すぐになんらかの反論が返ってくるだろうと思っていたのだが、数秒ほど間があった。走ってここまで来たために息が整っていなくて、その音だけが静かな空間に響き渡っていた。


「サイモンにあげたって…好きな相手と仲良くなれる薬って言って渡したやつだよね?なんで今その話に……」

そこでなにかに気がついたようにはっとして、口をつぐんだ。俺はわけがわからずじっと眺めていたが、やがて頬をほんのりと赤く染めながら言い放った。



「え?ま、さか……シズちゃん俺のことが好きなの?」



「は、ああぁぁあぁッ!?冗談はその面だけにしとけよなぁッ!!」


あまりに頭にくることを言われたので、まだナイフを持っていた腕を手刀で叩き落としさっきまで以上に全身の体重をかけて壁にめり込ませるように押さえつけた。
いっそのこと腕の骨を折ったら変に抵抗されないだろうかと考えはじめていたところで、臨也が慌てて言い直した。

「痛い、痛いって!…ッ、俺はなんにも企んでなんかいないよ!気まぐれであげただけなのに、どうしてそれを知ってるの?っていうかその様子だと使っちゃったってことだよね。しかも今頃になって気がついたんだけど、その薬まさか……」

饒舌だった言葉がそこでいきなり途絶えた。そして唇をつぐんで目線を逸らしながら、掠れた声でついにその一言を告げた。



「あの媚薬を、俺に使っちゃったの?」



表情までは見えなかったが、戸惑っているように思えた。これが二週間前に言われたのであれば衝撃を受けているところだったのだが。


「ってなに今更言ってんだ?そんなこととっくの昔に知ってるんじゃなかったのかよ」

そうなのだ。
俺は臨也が犯人に気がついてしまって、それで忘れるために薬を飲もうとしているのだと思っていた。だから止めたくてこれからもエッチさせろなんて口走ってしまったのだ。
実際に本音ではあったのだが、どうにも話が食い違いすぎている。


「じゃあなに?やっぱり俺の望み通りにシズちゃんが…こんな体にしてくれたの?」

言いながら真っ直ぐにこっちを向いた。その瞳は熱い涙に濡れていて、キラキラと光っていた。


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