ウサギのバイク 流れる涙も 凍てついた胸も ①
2ntブログ
04≪ 2024/05 ≫06
12345678910111213141516171819202122232425262728293031
-------- (--)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
| スポンサー広告 |
2010-05-06 (Thu)
静雄×臨也 ※18禁注意

静雄に告白された場面を見られてそれをネタに脅されて四木さんまで巻き込んで
どんどん最悪な方にすれ違っていく話

※注意
最初は18禁シーンはありませんが全体的にエロなので注意です
静臨前提なのですが先の展開でモブ×臨也と四木×臨也があるので注意して下さい
臨也が容赦なく酷い目に合うので許せる方のみでお願いします


* * * 「えぇっ!?記憶障害?」

その一言を告げると体中を診察していた新羅の手が止まって、目を見開いた状態でこちらを眺めてきた。信じられないと瞳で語っていた。

「そんなに大袈裟に言わなくても大したことないのかもしれない。ただなんか…引っ掛かってるっていうか」

首を傾げながら淡々と事実を告げていった。
昨日一日の記憶が一切無くなっている。そして体中に擦り傷や切り傷ができていて、おまけになぜか腰まで痛い。

「状況から見て普通に喧嘩してどこかに頭をぶつけて、記憶が飛んだっていうのが一般的だろうけど頭を打った形跡は無い。なんか腑に落ちなくてね」
「気になることがあるっていうの?」
「他に考えられるとしたら人為的に薬かなにかを使われた、もしくは……」

そこで一度言葉を切って、ゆっくりと口を開いた。


「ショックなことがあって自分自身で忘れた、ってとこかな?」


俺の言葉に闇医者が眉を顰めて睨んできた。

「心当たりがあるのかい」
「ただの勘だよ。そんな芸当がほんとうにできるのかわからないし。ただ専門家の意見を聞きたくて来ただけさ」
わざと肩を竦めて大げさに両手をひらひらと振って、お手上げ状態なのを体で表現した。
「まぁ状況的に一番考えられる犯人って、静雄だよね…?あぁそうだ!臨也が告白でもして振られたんじゃないのかい!それでショックで……」

いきなり表情を明るくしてなにを言うかと思ったら、相当にくだらないことだったのでポケットに仕舞っていたナイフを取り出す仕草をした。

「冗談、だって…はは。でもここまでわかってるんなら本人に聞いてみればいいんじゃない?その方が手っ取り早いじゃん」
「それが嫌だからこうして来たっていうのに、わからないの?」

盛大にため息をついたのだが、鈍感な親友には全く伝わらなかった。昔からこうなのは知っているのだが、呆れてしまう。
これ以上は尋ねても意味が無いと判断して、丸椅子から立ちあがって乱雑に置いてあった自分のコートを羽織った。もうこのまま帰ってしまうつもりだった。

「あぁ待ってよ!俺が一つだけアドバイスできるとしたら……確かに君はおとといまでの君とは違っているみたいだね。しかもそれを自分で忘れてる」

「は?」

そう言われて慌てて振り返って新羅を見たが、なにやらやけにニコニコと笑っているだけでそれ以上は応えてくれそうもなかった。
深刻な顔をしていないということは、やはりそのうち思い出すだろうとおもわれているのだろう。案外些細なことなのかもしれない、と少しだけ安堵した。

「闇医者の言うことなんて信じられないけど、素直に受け取っておくよ」

口元を歪ませて睨みつけながら、部屋から出て行った。





「新羅にすぐ見抜かれるなんてかなりヤバイね。ほんと散々だ」

独り言を呟きながら、あてもなく池袋の街をふらふらと歩きはじめた。もうすっかり辺りは暗くなってきていて、小道に入ると人通りもまばらだ。
異変に気がついたのは自宅で昼に目が覚めた時だった。しかもベッドなどではなく事務所のソファーの上で寝てしまっていたらしい。
幸い仕事はここ数日大きいものはなかったので、寝過ごしたぐらいはなんともなかった。元々情報屋なんて職業に決まった時間などはないのだから。
それで全身の傷に違和感を感じたところで、記憶障害に陥っていることに気がついたのだ。
思い出そうとすると頭が痛くなる、などということはないが胸の心拍数が急激に跳ねあがった。しかも嫌な方向へ、だ。


「だって自分で忘れてるんだもんね、思い出して欲しくなんかないに決まってるよ。でも同時に、思い出さなきゃいけないってわかってる。なんだろうねほんと」

完全に矛盾していた。
相反する二つの想いが胸の中で渦巻いているのだ。気持ち悪いことこの上ない。
しかもそれにシズちゃんが絡んでいるかもしれない、というのが余計に腹が立った。
学生時代からの天敵に今更なにを言われて、俺がショックを受けたというのだろうか。想像すらできない。
それこそ新羅の言うように愛の告白でもして振られたっていうのならわかるのだが、その可能性はゼロだ。考えるのも馬鹿馬鹿しい。

「大したことないんならもういっそ、このままでもいいじゃないか…」

そう口にしたが、心の中がざわざわと揺れていた。手にじんわりと汗さえかいている。どうも尋常ではないようなのだ。
思い出せ、思い出すな、と交互に警報が鳴っている。
しかし綺麗さっぱり、記憶を切り取られたようにかけらさえも見えない状態でどうやって取り戻したらいいのか検討すらつかない。


「やっぱりどうあっても、会わないといけないのかな?」

シズちゃんに。
そう考えたところで、胸のあたりがチクリと痛んだ。
それはやっぱり二人の間になにかがあったということを示していて、不愉快だった。
あの喧嘩人形がそう簡単に吐いてくれるわけがない。それを上手く誘導して吐かせるのが俺の腕の見せ所なのだが。

「成功する気がしないんだよね、正直」

向こうから言ってきたら楽なのに、と肩を落としかけたところで声がした。


NEXT
| 小説 |