ウサギのバイク どうか 振り向かないでね③
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2010-02-13 (Sat)
静雄×臨也 ※18禁注意

続き 見透かされてる

* * *

体の震えは数分したらすぐにおさまった。動かすことのできなかった手足も、徐々に回復してきているようだった。
けれどもうそんなことはどうでもいい。
シズちゃんは服を脱いでくると言っていた。ということはつまりお風呂場で一緒にシャワーを浴びるつもりなのだ。
そしてこれまでの流れから考えて、甲斐甲斐しく面倒をみようとしてくるのではないかと。
勝手な憶測ではあったが、体を洗われたり例えばぐちゃぐちゃにされて精液が滴っている部分を指で……?


「あはははッ、いや、待って…それはマズイよ?」


単なる自分のいき過ぎた妄想であって欲しかった。
俺がシズちゃんに望んだものはそんな甘ったるいものではなかったから。犯して欲しい、と言ったはずなのだ。
嫌な記憶を怒りで塗り替える為に、そうしてくれと頼んだはずだった。話が違いすぎる。
ある意味恥ずかしさや悔しさでいっぱいにはなっていたが、今の俺にそんなことをされるのは危険だと思った。
ただでさえ心が弱っているところに、勘違いするような行為をされれば人間誰しも純粋にそれに惹かれてしまうものだ。
そうやって人の心の隙間につけこみ、成りあがってきた俺は他の誰よりもその怖さを知っている。最終的に自分では制御できなくなってしまった者たちもたくさん見てきている。

自分だけは大丈夫だ、とは思わない。

わかってても抗えないのだ……きっと。


とても心地よいシャワーのあたたかさを全身に受けながら、氷のように心の中が冷たくなっていくのがわかった。
ぼんやりとお湯が流れていくのを眺めながら暗い気持ちになっていた。すると後ろからガタガタと音がして風呂場に入ってきた気配がした。
「体あったまったか?」
頭だけ振り返り声のする方を見ると裸になったシズちゃんが立っていた。まさか全裸になってるのを見られるとは思わなかった。
どんな体つきをしているのかとか興味があったのだが目が釘づけになりそうになる気持ちをおさえて、少し目線を左に逸らせて言葉を返した。
「あぁもう大丈夫だよ。ほらもう立てるし…」
言いながら床に手をついて、力をふりしぼって立ってみせた。こうしないときっとまた抱きかかえられたりするのだ、もうそんなのは嫌だった。
けれど不安定のまま随分と急に立ちあがってしまったので眩暈がした。思わず足がふらついてそのまま前に体が傾きかけてしまう。

「おい!危ねぇじゃねえか!!」

するとシズちゃんがすぐに慌てて駆け寄ってきて、俺の肩を掴んで支え頭から床に倒れるのを阻止してくれた。
ほっとしたのは一瞬だけで、さっきまで考えていたことがよみがえり急速に体中が熱く沸騰していくような感覚に陥った。

「さ、さわるなよッ…!!」

しっかりと自分の足で立てていたので、肩に置かれた手を乱暴に払うとパシンッという乾いた音が浴室の中にやけに大きい音で響き渡った。
わざと明らかな拒絶の意思を伝えるためにそうした。


「急にどうした?」
けれど向こうは全く動揺した様子はなかった。普段だったら絶対に怒り狂って襲いかかってくるところなのに、ただ静かにじっとこちらを見ていた。
「もう、いいよこんな茶番。俺は犯してくれって頼んだだけなんだ、あれこれ世話をして欲しいと言った覚えは無い。余計なことせずに早く犯してよ」
わざと冷徹な表情をして、射抜くような鋭い視線を精一杯に投げかけた。熱くなるなこれ以上期待するな、と自分自身にも必死に言い聞かせながら。


「本当にそう思ってんのか?」



「…っ」
けれど俺の気持ちをまるで全部を見透かすかのように、落ち着いた言葉が返ってきて唇をギリッと強く噛んだ。
昔からそうだった。シズちゃんは根拠などないけれど野生の勘だけで俺の真実をほとんど指摘してくるような奴だった。
厄介だと思っていたけれど、ここでこんな風に言われるとは思いもしなかった。
気づいても、放っておいてくれればいいのにそういう優しさはないのだろうか。

「あぁ、ちょっと回復してきてから後ろが疼いてきてたまらないんだよ。中で乱暴に暴れて残ってる精液をかき出して、シズちゃんのでいっぱいにして欲しいんだ。ね?」
わざと挑発するように口元に笑みを浮かべながら、ペラペラと考えもしないことをまくしたてた。
俺は今ここで殴られてそのまま押し倒されて散々犯されて、さっきまでのわけのわからない甘ったるいやり取りを完全に忘れたかった。
そうするのが一番いいと確信していた。

「誤魔化してんじゃねえよ」

やっぱりシズちゃん相手では、俺の思った通りになるのは難しかった。心の中で苦々しく舌打ちをしていると、どんどん最悪なほうに話は進んでいく。

「さっきまで酷い目に合ってた奴が、また乱暴にされたいって思ってるわけがないだろう!なに意地はってのか知んねえが」
「乱暴にされたいって思ってたらダメなの?俺そういう奴だよ?そんな汚い奴だよ?シズちゃんも知ってるでしょ」
背中に当たるお湯に混じって冷や汗がつーっと流れていった。口惜しいことに言うこと全部が当たっていた。だから懸命に否定した。
もうこれ以上俺に近づいて欲しくなかった。胸に残っているもやもやとした感情が大きくならないうちに、バッサリと切り捨てて欲しかった。


「汚い、とか言うんじゃねえ!二度と口にすんな!!」


それまで静かに話をしていたシズちゃんが、急に腹から低い声を絞り出して怒鳴りつけてきたので俺は呆然とした。
切れているポイントがよくわからなくて、取り繕うのも忘れて口をぽかんと開いた。


「お前が辛いことを忘れられるんなら抱いてもいいって思ったけど、そんなつもりなら絶対に抱かねえよ」

話が違うなと眉をひそめていたが、次に衝撃的な一言を放った。


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