ウサギのバイク 流れる涙も 凍てついた胸も 32
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2010-06-06 (Sun)
静雄×臨也前提話

続き 臨也視点

* * *


「ねえねえ四木さん、俺の居ない間に何かあったの?それともこれから何か起こるの?」
「うるせえな、とりあえずお前をおしおきするのが先じゃねえか?」
「はは…冗談」

随分と酷い状況だった。
俺の眼前には体の中に入っていたバイブの先端が向けられていて、当然のことながら下は何も履いていない。しかしこっちも負けじとポケットから取り出したナイフを、四木さんにつきつけていた。
別に脅したいわけではなくて、戻ってきてからおかしいなと思っていた出来事について尋ねたいだけだった。

「だっておかしいじゃん。四木さん直属の部下が一人も居なくて、この間俺に調べさせた裏切り者しか居ないんだもん。撃ち合いでも始まるんじゃないかって思わない?」
「そんなことあるわけねえだろ。あるとしたらお前こそ、ここについてる跡をつけた奴が乗り込んで来るんじゃねえか?」
玩具を持っているのとは反対側の手で、俺の首元を指差していた。そこには見覚えの無い紅い跡がわざとらしくついていて、鏡を確認しなかったことを後悔していた。
わかっていたら、絆創膏で隠すぐらいの小細工をしている。

「さあ、知らないなあ?生憎途中から記憶が無くてさ、まだ薬の効果が残ってるみたいだね。目が覚めた時は夢かと思ったし」
「いいじゃねえか、できたんだろ?一番ヤりたい相手と」
完全にお互い腹の探りあいだった。いや、むしろ向こうは全部を知っていて話している分だけこっちが負けている。
やっぱり四木さんは最初から、もしかしたら俺を脅してきた男達ですら仕組んでいたのじゃないかと思えるほど、周到だった。なかなかここまで俺を罠に嵌めさせることができる相手は他にいない。

「残念だけど、きっとシズちゃんは思い通りに動いてはくれないと思うよ?何を企んでるか知らないけどさ、俺ですらまともに扱えないのに」
「そりゃお前だからじゃねえのか臨也。普通人ってもんは他人から自分がどう思われてるかなんて気がつかねえもんなんだよ」
さっきから全部わかった風に言われるのが、心底気に食わなかった。ただでさえ誰かに踊らされてるっていうのが不愉快なのに、わざとらしく煽ってくるのだ。
昔からこの人はこういう感じだったが、それに磨きがかかっているようだった。
「ふーん、それってまるで俺だけが気がついてないみたいな言い方だけど、はっきり言っちゃっていいの?」
しかも内容が最悪だ。
大してシズちゃんのことに関して知らないくせに、やけに確信を持っているようなのだ。そんなに俺が好いているのが、気になったのだろうか。


「そうだな。なんも知らなかったのはお前だけじゃなくあいつもだな。でも今頃向こうは気づいてんじゃねえのか?負けっぱなしだな」


向こうが気がついている、という言い方に嫌な予感がした。
もう充分昨晩会った時に俺が隠し続けていた秘密が暴かれていたというのに、まだ残っているとしたら一つしか考えられなかった。

「ちょっと、それは聞き捨てならないね。どういうこと?こっちはきちんと仕事したっていうのに、約束破ったんだ?義理堅い粟楠会がそんなことしてもいいの?」
「安心しろこれは俺が個人的にやったことだ。むしろここは喜ばれるとこなんだが…まぁいい」

内心は動揺していたが、なるべくそれを悟られないように努めていた。だから反応が遅くなってしまったのは、こっちが完全に読まれていたということだ。


「…っ」


瞬きをしている間に体の上に圧し掛かられ、床に押し倒されていた。しかもナイフまで奪われて、最悪な状況だった。
ほんとうに、こうどうしてシズちゃん絡みのことになるとこんなことになるのか。いい加減にしてほしかった。
まだ隠し持っているナイフを取り出したかったが、手が動くより先に手首を掴まれてしまう。端から四木さんに勝つ気などなかったが、ここまでするのはないよなあと思っていた。


「まだ俺の愛人を演じてなきゃいけねえってのに、どっちが破ったんだ?お互い様だろ?」
威圧的な瞳で睨みつけられて、ぞくりと背筋を寒気が駆け抜けていった。
さっきまでシズちゃんとしていたのにこれでは、薬なんかじゃなくて自分がこういう生き物に成り果てたのかと勘違いしそうだった。決して俺の意志なんかじゃないというのに。


「ほ、んと…敵わないな四木さんには。好きにしていい…」


しかし最後まで言い終わらないうちに、この建物内のどこか遠くで派手な物音と、激しい揺れが起こった。
予想していた抗争でも始まったのかと思ったのだが、意外に上に乗っかっている人は冷静で、しかもあまつさえ俺の下半身に手を伸ばそうとしていた。

「ちょ…っ、と!」

慌てて空いている方の腕で遮ろうとしたところで、この部屋の扉が吹っ飛んでいくのを見てしまった。

とても見慣れた光景ではあったが、今ここで起こるにはあまりにも不自然で、ただただ呆然とするしかなかった。


「おい臨也ッ!手前なにやってんだ!!」
「は、はぁッ!?俺がなんだって?」


ついいつも通りに答えたところで、はっとした。あまりにも誤解されるような体勢で、まぁ間違ってはいなかったのだが、嫌な予感がしていた。
チラリと四木さんの方を眺めたがどうしてか、ニッコリと不敵な笑みを返してきた。


「下の者達は全員倒して来たのか?あとDVDを持ってきたんだろ?」
「なんだ、お前が愛人とやらか?うっとうしいのは全部片付けてきたぜ。っつーかどうして俺がDVD持ってるとか知ってんだ?」
二人の会話に、やっと真相をすべて理解した。結局四木さんは自分の組の中に紛れ込んでいた裏切り者を、内部の者を使わずに、自らの手さえも下さずに潰したのだと。
しかもシズちゃんと俺を使って成し遂げたのだ。本当に大物だ。このまま例えば愛人を取り返しに来て揉めたことにすれば、万事丸くおさまるのだ。

「あははッ、ほんと四木さんってすごいなあ。惚れちゃいそうだね」

見事に綺麗に嵌められたのが滑稽で、笑いが暫く止まらなかった。どこまで予想していたかは知らないが、俺がシズちゃんを好きでなければどうしたのだろうかと思った。
それなしではこの作戦は成功しないというのに、どこまで計算していたか計り知れない男だった。
声を上げてひとしきり笑ったところで、今度は俺に問いかけてきた。

「で?あなたはどうするんですか?」
「さあ」

投げやりに答えた。どっちに行くのかと尋ねられて、四木さんにおしおきをされるか、シズちゃんにボコボコにされるかを考えて、両方御免だと思った。

「平和島さん、そのDVDと交換でならコイツを返してあげますよ?」
「ふざけんな!誰がこんな卑猥なもん渡すかっていうんだ!!」

DVDと話していた時から嫌な予感はしていたが、やっぱり中身を見られていたようだった。どんなのが映っているかは知らないが、最悪なのだけは確かだった。
なんで一番見られたくない部分まで、好きな相手に知られてしまっているのか、嘆きたかった。
しかし俺が一人で落ち込んでいる間に、話はあらぬ方向へと進んでいた。


「じゃあご自慢の力で奪い取るっていうのですか?」



「そうじゃねえ、そいつは…臨也は最初から俺のモンなんだよ。なぁ?」













































ここで区切っちゃってすいませ…orzあとはくっつくだけですから!


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