ウサギのバイク 流れる涙も 凍てついた胸も 34
2ntブログ
04≪ 2024/05 ≫06
12345678910111213141516171819202122232425262728293031
-------- (--)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
| スポンサー広告 |
2010-06-29 (Tue)
静雄×臨也前提話 ※18禁注意

続き 健気臨也

* * *

俺はテレビから完全に背を向けて、外の窓の方を眺めながらそわそわと落ち着きなく体が揺れていた。

「言っておくけど、その決定的なところしか見ないからね!他のシーンは全部早送りしてよ。まったくそれ売り物にしてたんならチャプターくらい入れておけっての…」
「うるせえな、今飛ばしてるよ。大体そもそも記憶無くしてる手前が悪いんだよ、どんなヤバイ薬だったか知らねえけど、さっきヤってた時だってびっくりしたんだからな」

さすがにそれ以上は口答えをしなかった。打たれた薬の効果がまだ残っていて、セックスの途中から完全に記憶が抜け落ちているのはわかっている。
しかもシズちゃんに告白した時のことを忘れたみたいに自分の意志で忘れているのではなくて、強制的になのだから性質が悪い。映像にでも残っていない限りわからないのだ。
そういう意味では見れるのはよかったのかもしれないが、不安の方が大きい。
どんなことを口走っていたかはわからないし、いや、なんとなく幻覚に囚われていたあたりのことを考えると想像はできるが、考えたくなかった。
内容を見て明らかにシズちゃんが変わって、それでさっきの発言なのだがどうしてそうなったのかは本当に意味がわからない。

「おい、こっち向けみつけたぞ」
「あ、あぁそう…」

急に声を掛けられて肩がビクッと震えた。動揺が全く隠し切れなくて、悔しくて、すぐには振り向きたくなかった。暫く迷っていると、もう一度名前を呼ばれた。

「ったく、おい臨也ッ!」

苛立ちが篭った声だったが、やっぱり決心がつかなくて無視をした。このまま逃げられるなんて思ってはいないが、まだ粘りたかった。
それなのに。


「え……っ?ちょ、っとなに、痛いっ…痛いって!なにして…!?」
「大人しくしろって」


いきなり両手を後ろから掴まれたかと思うと強い力で握られて、あまりの痛さに顔を歪めていると後ろで一つに纏められて、手首に紐のようなものが括られた。
拘束されているのだと気がついた時には既に遅くて、強い力でギチギチに縛られてとても抜けそうになかった。慌てて振り返って叫んだ。


「なに、するんだよ!」
「手前が強情だからだよ!またいつ逃げるとも限らねえしな」
シズちゃんの方を見ると、首元の蝶ネクタイが消えていた。それで俺の手を束縛したのだろうとすぐにわかった。
キッと睨みつけながら、唇を噛んで悔しさを露わにしていると急に腰のあたりに手が伸びてきた。そうしてそのまま体が軽々と宙に浮いた。

「え」

「はじめからこうして縛りつけて、聞けばよかったんだよ。そうしたらこんなことにならずに、済んだかもしれねえのに」

足から地面が離れていたのだが、掴んだままの本人はそのままソファの上に腰掛けたので同じように俺も腰掛けた。どうしてかシズちゃんの膝の上に。
あまりのことにぽかんと口を開けて呆けていると、すぐ傍に置いていたらしいリモコンを手に取って再生ボタンを押した。


「いいか、絶対視線逸らすんじゃねえぞ」
「は、離してってば…ッ!」
慌てて体を捩ろうとしたら後ろからしっかり羽交い絞めにされて抱きかかえられたので、どうにもできなかった。冷静に考えたらすごい体制だと思っていると、画面に映像が映し出された。



全身が白く汚れきった体、ひっきりなしに聞こえてくる淫猥なあえぎ声。
目に映った瞬間に、過去のことがすべて呼び起こされたようで、現実は今ここにあるというのに、酷く錯覚した。
無意識に肩がカタカタと震えて、あの時の独特の匂いとか空気が蘇ってくる。
嫌だ、嫌だと胸の内から悲鳴をあげそうだったが、喉はカラカラに渇いていて声は出ない。
けれどもただ背中からふれてくる熱が、現実と過去の狭間で揺れ動いている心を引き戻してくれているようだった。
このまま異常な拷問のようなことが続くのかと思われたが、画面の中の自分が言った一言で、すべてのことが吹っ飛んだ。


『ん、あぁっ…シズ、ちゃんぅ…す、き…もっとお、すきにしてえ?』


「…ッ!」

それまでは口にペニスが突き入れられていて話せなかったようでわからなかったが、はっきりと”好き”だと言っていた。
驚愕に目を見開いていると、次々と信じられないことが飛び出してくる。


『ね、え…シズ、ちゃん、だいすきっ…これから、も…たくさんシて?ん、あぁ…シズちゃ、んならぁ…ふ、ぁっ、なんでもするよ…おれはぁ…シズちゃんじゃ、なきゃ…らめだ、からぁ…っ…む、ねがぁ…くるし、いから…ぁ…捨て、ないで?いっ、ぱい…かわいがってぇ?せっくす、してぇ…せいえき、のんでぇ…どろどろ、で、シズ…ちゃ、ん…きもちよく…して』


こんなことを言った記憶は、当然無い。

どう考えても、あの強い薬の影響で幻覚が見え出した頃のものだ。
周りの人物が全部シズちゃんで、シズちゃんしかいなくて、シズちゃんと俺だけの世界という、とても――


その時画面の中が動き、中出しが終わった男が体から離れていって、周りの男達がなにかを指示していた。
するとくったりとしていた体がゆるゆると動きだし、床に寝そべったままの状態で両足を立たせて開き、指で後孔を自ら広げた。



『あ、はっ…みてぇ…シズ、ちゃんのお…こぉんなにっ…でるよ?ほらぁ、すごいえっちな…おと、だよ…こ、んなにおなかいっぱいでぇ…おれうれしい…しあわ、せ…もうシズちゃん、いがいいらない…ふたりで…ずっと…ね……あ、やら…またシてほしく、なっちゃったあ…』



極上の笑みで微笑みながら、嬉しそうに甘ったるい言葉をこぼし続けた。
なんとなく、だが覚えている。幸せで、幸せで、ぽっかり空いた心が満たされたような気分だったことを。
現実は名も知らない複数の男の精液をはしたなくだらだらと垂らし続けて、次の相手に誘いを掛けているだけだった。
見ているこっちが切なくなるぐらい、健気な姿でまるで自分とは思えなかった。



と、そこで唐突に映像が消えた。
止めてくれたのはありがたがったが、あまりのことに一言も言葉を吐き出せないでいた。
いい意味で。
自分の痴態を見て興奮するなんてありえなかったのだが、あんなに何度もシズちゃんと連呼していてそれだけで体が熱くなっていた。そして恥ずかしい。
こんなのを見せられたらもう、何も言い逃れはできなかった。


『そうじゃねえ、そいつは…臨也は最初から俺のモンなんだよ。なぁ?』


あんなことを言った意味がやっとわかった。
シズちゃんがどう思っていようが、嫌いだろうが、なんだろうが、俺が熱烈に好きでどうにかして欲しいレベルという意味で、シズちゃんのモノなんだとわかった。


そのまま俯いていると、耳元で声が囁かれた。


「ったく、最初からもっとわかりやすくはっきり言ってたらよかったんだよ…臨也」


ぞくぞくと寒気がかけあがっていくのが、心地よくてしょうがなかった。



































| 小説 |