ウサギのバイク 流れる涙も 凍てついた胸も 36
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2010-07-02 (Fri)
静雄×臨也前提話 ※18禁注意

続き こっちの気なんか知らないで

* * *

最後に一度だけと許してしまったのは、ただの俺の甘さだったのだけれど。
唇が塞がれた瞬間に、少しだけ後悔した。


「ふ…っ、うぅ…っ……ん、ぅ……」


昨晩もキスをした。その時は本当に幸せな気分だった。あのままセックスなんかせずに帰せばよかったのかもしれない。
そうすればシズちゃんにDVDのこととかエッチな体のこととか知られることもなかったし、俺もふわふわとした優しさの余韻をずっと味わうことができたかもしれないのに。

今はただひどく胸がチクチクと痛んで苦しかった。

さすがに二度目なだけあって、向こうの緊張も幾分かほぐれているようだし、こっちの動きに対して同じように返してくれていた。
舌全体におもいっきり吸い付けば反復するように吸い付いてきて、舌の先っぽを尖らせてぐりぐりと押し付ければそう返してくる。たまに戯れで頬のあたりの壁をなぞったらそれまで真似をしてくる。
そうして一通り口の中を蹂躙された頃には、口内は唾液でどろどろになっていて、俺の体もとろとろに蕩けていた。

教えたテクニックをそのまま返されただけなのに、随分と感じきっていた。その反応こそがこれまでの男達とは違い、まだ充分にシズちゃんのことが好きだという証拠だったが考えたくなかった。
やがて唇が離れて行く頃には、すっかり体から力が抜けていた。そういえば腕はまだ縛られたままだったのを思いだしたが、このままでいいかと思った。
もし手が自由だったなら自分からねだるように手を首に回していたかもしれないから。
俺としてはきっぱりと決別する為に抱かれようと思ったのに、まるでそのつもりがない。さっきもう一度惚れさせてやると言われて、嬉しかったのだ。


「……はぁ…っ」
やっと息ができたので空気を吸い込んだつもりだったが、ため息も吐き出されて苦い気持ちになった。嬉しいはずなのに、最後くらい楽しめばいいのにそれができない。
もう逃れられないぐらい、本気になっているのだ。最初の頃の気持ちとはまるで違うのに、こんな目にあっても余計好きになっていくばかりだった。


「脱がすぞ?」
「そんなこといちいち聞かなくてもいいよ。さっさとして…?」
俺の腕を拘束までしている癖に気遣うように尋ねてきて、おもわず笑いが漏れそうだった。ここまできて欲望のままに襲わないとは、堪えることを覚えたということなのだろうか。
それはそれでいいかと思っていたら、シャツをいきなり胸元までたくしあげられていきなり指先がふれてきた。

「…っ、あ!?」

軽く擦られただけだというのに、体は異常に反応して腰から下までビクンと跳ねた。そういえば今日は朝起きてからまだ一度も性行為をしていない。
媚薬の効果が完全に抜けきっていなかったので、昨日までは毎日四木さんとセックスばかりしていた。
約束どおり律儀に体の面倒まで見てくれていたのはいいけれど、余計に淫らにされていくようで少し不安だったのだが、こうして離れてみるとやはりまだ後遺症が抜けていないのだ。
バイブでも体に入れていればまだ胸だけに快楽が集中しなくていいのに、それさえもなかった。
自分の体に嫌悪を抱きながらも、シズちゃんにさわられた箇所がやけにじんじんと疼いて身を捩らせた。すると向こうはその反応にどうしてか嬉しそうな声をあげた。


「やっぱり、そうじゃねえか。手前昨日とは全然違うぞ。本性を隠してやがったな」


「は…ぁ?なに、なんのことだよ」


「今日は演技なんかしてねえんだろ?こっちのほうがすげえかわいい」


急に何を言い出すかと思ったのだが、表情を変えずに恥ずかしいことを言ってきた。演技とかなんとか言っているが、俺にはそんなつもりはなかった。
昨晩はシズちゃんの方から襲ってきたからだと叫びたかったが、とりあえず黙っておいた。やけに確信的に告げてくるのが気になって、俺でもわからないことがわかるのかと顔を顰めた。
しかし続けて二本の指で乳首の先端を軽く摘んできたので、すぐに表情は変わった。


「う、ぁ…っ、ちょ、いきなり…っあ!」
既にDVDを見てしまったことで微妙に快楽のスイッチが入ってしまっている体は、あっさりと悲鳴をあげた。
しかもいつもは頭の中で割り切っているというのに、どうしても今は目の前に居るのがシズちゃんだと過剰に意識をしてしまっていて、疼きが酷い。
もしかしてこれが最後だなんて言わなければよかったのか、と思った。そうしなければこんなにも変な気持ちに陥ることなどなかったかもしれない。
過剰に反応することもなかったかもしれない。

「すげえ勃ってんな…普通こんなになるもんなのか?」

まるではじめて楽しいおもちゃを見つけた子供のようにキラキラと瞳を輝かせて、興味津々といった感じに覗き込んできた。
正直こういったことに感心を持つたちではないと思っていたのだが、どうやら間違っていたらしい。あまりジロジロ見られたくなかったのだが、自分ではどうにもできなかった。


「すぐ硬くなっちまってコリコリした感触してるし、おもしれえな」
「…っ、うるさい、って…そんなこと言いながらさわる、なんて…ぇ、く…変態だね、シズちゃ…ん」
そこを弄るだけならまだしも、触った感想まで言ってきて死にそうなぐらい恥ずかしかった。確かにこれまで男達にも似たようなことは言われてきたが、それとはまるで違う。
こうしているのが心底嬉しいというような雰囲気を醸しだして、楽しそうに優しく弄んでくるなんて慣れていない。こんなことになるなんて、まるっきり想定外だ。

(クソッ、こっちの気なんか知らないで勝手にこんなことして…っ)

怖い顔でこれまで俺にそうしてきた男達のように、乱暴に割り開くように襲ってこられたほうがマシだ。こんなのでは踏ん切りがつくどころか、未練たらたらになってしまう。
もっとこんな風に喜んでいる顔が見たい、だなんて。


「も、う胸は…いいから…っ」
「よくねえよ、俺はもっとさわりてえ。照れくさそうにしてる顔もいっぱい見てえ」
「……ッ、変態っ、バカ、死ねっ…!!」
頭の中が爆発してしまうのではないかと思うぐらい、言葉が心臓に突き刺さった。さっきからもう充分だと思っていたのに、ここまで言われるとはもう信じられない。
普段のシズちゃんからでは絶対に口にしなさそうなことをポンポンと言ってきて、まるで人が変わったみたいだった。いや、本来はこういう性格だったのかもしれないのだが。
これまで常に怒らせてきたのは俺の方で、その恨みが募り募って喧嘩を繰り返してきたのだから、怒る理由がなければ真面目で人のいい性格なのは充分知りつくしている。
けれどまさかこんな形で自分が受けることになろうとは、思わなかった。

「さっきの映像の様子じゃああんまり焦らされたことねえじゃねえか?たまにはこういうのもいいだろう」
「…っ、う」
俺が淫らになった原因が自身にあることを悔やんで無理矢理合わせてこういう行為をしてるようには、到底見えなかった。
目の前の現実が夢なのではと思うぐらいに、ありえない状況だった。

(これじゃあ本当にシズちゃんが俺のことを好きで好きでたまらないっていってるみたいじゃないか。好きになった理由もわからないくせに、まさか本能的にそう考えてるとか?)

平和島静雄に論理的なものが通用しないのは知っていたが、恋愛に関してもそうだとは驚きだった。
だがそうわかったとしても、自分から言うわけもいかないし、なによりこれ以上惨めな姿を好きな相手に見せたくはなかった。
四木さんは一週間ぐらいしたら大量に投与された薬の効果も切れるだろうといっていたが、本当にそうとは限らないのだ。そんなよくわからないことに付き合わせる気は毛頭ない。

一日の半分以上体が疼いてしょうがないだなんて、知られたくないに決まっている。


「ん、ぁ…あ、っ、ねぇ、ってば……!」

反対側の胸元まで手が伸びてきたので肩を竦めて抗議の声をあげた。

「なんだ、もっとうるせえぐらい声出してもいいんだぞ」

相変わらず空気の読めなさに、歯軋りをしながら睨みつけた。





















































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