ウサギのバイク 流れる涙も 凍てついた胸も 39
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2010-07-06 (Tue)
静雄×臨也話

これでラストです ちょっと短め

* * *


「ん……あれ?」

やっと目が覚めてベッドの上から起き上がって脇の机の上に置いてあるデジタル時計の表示を見て、驚愕した。思っていた時間ではあったが、日付が丸一日進んでいるのだ。
昨日は昼過ぎぐらいにシズちゃんと一緒に自宅に帰ってきて、それからひたすらに求め合ったことは記憶していたが、疲れて眠っていたにしても酷い有様だった。
全身がギシギシ痛むのは俺が少し乱暴にして欲しいと頼んだせいではあったが、それにしても右腕に見慣れない点滴かなにかした後のような痕跡が残っていて首を傾げた。
しかしそれを聞こうにもこんな時間に家の中に誰かが居るはずもなく、疑問は解消されないままとりあえず自分の部屋から事務所に降りていった。
冷蔵庫からミネラルウオーターを取り出して飲みながら、そういえばすっかり服は着ているし下の処理までしてあって、思わず微笑んでいた。
恥ずかしいことには恥ずかしいが、その前の時は遠慮をしてか綺麗に拭いてあったくせに中はドロドロという状態だったのだ。

(まぁ今日もまたわざと残しておくっていう手もあったけど)

何度か水を口に運びながらぼんやりと考えていて、そういえばお互い何も言わなかったが、果たして今日はここに来るのだろうかと思いかけたところで、玄関のあたりでドタバタと派手な音がした。


「……ッ、臨也起きたのか?」
「え、あれシズちゃん…?」
そういえばチャイムも鳴らなかったのに当たり前のように部屋に入ってきたので、そのままの姿勢で固まっていた。
向こうはやけに息を切らせて走ってきたかのようで、目を丸くしながら見つめていた。それにしてもまだ仕事の時間だろうに、随分と早いなと思っていると怒鳴るようにして叫んできた。


「手前まだ体調戻ってねえんだろが!欲しいもんあったら持っていくからとりあえずそこで寝てろって!!」
「急に……なに、ってうわっ、もうこれはいいから…っ!」
呆然としているとすごい勢いで近づいて来て、いきなり腰のあたりを掴まれたかと思うと、そのまま足が浮いてハッとした時には抱きかかえられていた。
律儀にまた、お姫様抱っこみたいな格好で。
とりあえずそのまま事務所のソファに下ろされて、何事かと首を傾げた。そんな俺にゆっくりと説明をしてくれた。


「あのな、念のため朝に新羅の奴を呼んで見て貰ったんだよ。よくわかんねえけど半日以上は安静にしておけって言われたし薬も置いていったしよお」
「あぁそれで点滴がした跡が残ってたんだ。っていうかそんなことしてくれなくても大丈夫……」
なんでもない風に言いかけたところで、突然両肩をガッチリと掴まれて真顔で睨まれて思わず口の端がピクリと震えた。かなり嫌な予感がしたが、とりあえず平静を装った。


「大丈夫じゃねえだろ!新羅なんて言ったと思うか?なんか薬の依存症が残ってるから一人にはするな、毎日セックスしてやれって言ってきたんだぞ!!」


「セ……っ、て嘘だろあの新羅が?」


それはいくらなんでもおかしいと思った。確かに四木さんには火照った体の性欲を抑える薬を貰っていたりしたが、新羅が見ただけで俺の症状ががわかるとは思わなかった。
闇医者とはいえ非合法の薬物を抑える効果のものを持っているとは考え難い、と思ったところでシズちゃんがここに来た時のことを思い出していた。

”ヤクザの愛人になったと新羅から聞いて”とはっきりと告げていたのだ。その時点で、やっぱり新羅と四木さんが繋がっていたのだろう。
あまりにも事情を知りすぎているし、挙句に俺の依存症のことをシズちゃんに言うということは、仕組まれていたんだと肩を落とした。
知られたくないと隠していた事実が、あっさりと知られることになってなんだか気が抜けてしまった。
しかし一時はどうなるかと不安に感じたが、新羅が事情を知っているのなら体も元に戻るのだろうと安堵した。どのぐらいかかるかはわからないが。


「それで仕事を早く終わらせて飛んできたって?ったく勝手に鍵持って行ったりして…」

「鍵?あぁこの間手前が置いていったじゃねえか。ありゃ助けてくれっていう意思表示じゃなかったのか?」

「あ…」

そう問いかけられてやっと思い出した。
あの日四木さんの事務所に戻る前に、どうせ気がつかないだろうとわかっていながら、自宅のスペアキーを置いていったのを。
特になにか意味があったわけでも、期待していたわけでもない。ただいつもの気まぐれだった。
まさか持っているとは思わなかったし、それが助けてくれたきっかけになっているとは予想もつかなかった。

「へえ、そっか」

こういう偶然もあるんだなと薄く笑いながら、言った。


「事情を知ってるならいいよね。依存症が治るまで付き合ってくれるってことでしょ?じゃあこれからよろしく」


「何言ってんだ、これからずっとだろ」


当然のようにはっきりと言い返されて、仕掛けるように告げたこっちが驚いたぐらいだった。なんだかそれがむかついて、眉間に皺を寄せながら顔を横に逸らした。
よく考えたら、これから毎日セックスをしてくれとこっちから催促みたいで恥ずかしかった。


「なんだ手前、そっちから言ってきた癖に照れてんのか?」
「バカ、うるさいっ…それに俺は一人でも平気なんだよ…ッ!」
「なんだよ相変わらず素直なのは夜だけかよ」

流石に最後の一言には耐えきれずに、おもいっきり足を振りあげて足のすねを蹴ってやった。そんな攻撃が効くとは思っていなかったが、うろたえている隙に立ち上がって走り自分の部屋に駆け込んだ。
ドアの向こうから怒声が聞こえてきたが、無視して熱を持った頬を撫でながら唇を噛み締めてニヤつく口元を引き締めた。








































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