ウサギのバイク 遅れてきたクリスマス ①
2ntブログ
04≪ 2024/05 ≫06
12345678910111213141516171819202122232425262728293031
-------- (--)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
| スポンサー広告 |
2010-12-25 (Sat)
静雄×臨也 

クリスマスに静雄とデートの約束して静雄が仕事で0時すぎてもこなくて泣く臨也の話

少しだけ長くなったのでわけました まだ約束の時間にすらなってません 笑
ネタは友達が考えてくれました ちゃんとラブになります

* * * 「おい臨也じゃねえかどうしたこんなところで」
「あっ、ドタチン?ははっそっちこそどうしたのさ、両手に大荷物だけど」

俺の目の前に現れた学生時代の友人は、右手にも左手にも大きな箱が入った袋三つずつ下げて歩いていた。
いくらなんでもこんな池袋の街中で、そんな数の袋を持っている人はいないので、かなり目立っている。それでも、いつもと変わらぬ平然とした様子で声を掛けてきたことには少し驚いていた。

「あぁ…まぁ、見たらわかるだろうけどよ。買い出しを頼まれて、それで予約してたのを午前中に取りに行ける人間ってのが俺だけだったからこうなったんだ」
「これはすごいね。どこもデパ地下の有名店のクリスマスケーキじゃないか、豪勢なパーティをするんだね」
「そうなのか?俺は引き取りを頼まれただけでよく知らねえんだ。ケーキなんて食べられればそれでいい気がするんだが、よくこんなにも調べて予約したよな」

既に持っている店の袋からでもわかる通りに、ほとんどがかなり高めの店のオリジナル限定クリスマスケーキのようだった。
こういうのは朝から並んで買いに行かないと数量限定で売り切れることが多いので、それで狩沢あたりが的確に指示をしてドタチンに取りに行かせたのだろう。
この量だといつものメンバーだけではなくて、他の知り合いを呼んで大勢で過ごすのかもしれない。
今までだったらそんなこと興味が沸きさえもしなかったが、今年は違う。要は俺も浮かれていたのだ。

「いやあ、でも本当に持つの大変そうだね。これからまだパーティの準備とか他の買い出しもするんでしょ、ご苦労様」
「ん、あぁ…なんでわかったんだ。別にいいんだけどよ。それよりお前はどうしたんだ、こんな目立つ場所で仕事の待ち合わせか?」

彼の性格なら仕事中に都合をつけて買い出しに行くぐらい簡単だし、そういうのを引き受ける性分なのを知っているから、適当に言ってみただけだった。
すると今度は俺の事を聞いてきて、あぁやっぱりそうだよねと納得した。
さすがドタチンというか、もし相手が新羅だったら全く興味ないことならまず聞かないし、もう一人は鈍感すぎて気がつかないだろう。

「俺は今日趣味で来てるんだよ。クリスマスだなんて一年に数回しかないお祭りみたいなものだろう。人間観察にちょうどいいんだ」
「嘘つけよ、去年までお前話もするなって言って毛嫌いしてたじゃないか。なんかあったのか?」
「べっつにー?それよりこんなところで悠長に話をしていていいの?」

図星を指されたのを知っていたが、わざと気がついていないという振りをしてスルーした。それからあからさまに話題を変えると、向こうもそれ以上は聞いてこなかった。
だから俺はこの男が好きなのだ。引き際までもしっかり知っているところが、話をしていて心地よかった。そういう意味で好きな相手だった。

「そうだな、じゃあ行くな。まあ何があったか知らないが今日ぐらい大人しくしておけよ」
「なにそれ?まるで俺が何かをすると大事が起こるみたいな言い方しないでくれるかなあ?まあいいや、じゃあね」

軽く手を振りながら人ごみに消えていく後ろ姿を眺め続けていた。
確かに去年までの俺だったら確実に、クリスマスなんてものは最悪だと言って難癖をつけ、まともに過ごしたことが無い。
腹いせのように苛立ちをシズちゃんにぶつけて、それなりに遊んでいた。

「今年は違うけどね」

俺は道の端の柱に背中を預けながら、携帯を取り出して弄り始めた。ここに来たのは朝の8時ごろで、朝の通勤ラッシュの電車内から人々が一直線に急ぎ足で歩いて行くのを横目で見ながら悠々としていた。
そういう、純粋に人間観察の相手として歩いている人々を眺めるのは、別に何ら問題は無かった。むしろ大歓迎なぐらいだった。

しかし本当の目的は違っていた。
この場所で今夜の9時頃に会う約束をしている相手がいるのだ。
とはいってもドタチンに会った時刻は朝の11時なわけで、どう考えても早すぎるのだ。明らかに浮き足立っている人にしか見えない。
でも今日も明日もしっかりと仕事の休みを取っているし、仕事をする気にはならなかった。だからこうして持て余した時間を趣味に費やしているのだ。
こうして見ていると実に面白い。朝から全く売れないケーキ屋の暇そうな店員とか、ギラギラした視線で必死に選んでいる男の視線は実は店員のミニスカサンタ姿を見ているとか。
とりあえず楽しそうな家族やカップルなどには目もくれない。基本的にこんな日に一人で過ごしている人たちを主に眺めていた。

それからさすがにお昼になってしまったので、目の前のカフェに入って軽く昼食を取った。当然中から待ち合わせ場所が見える位置に陣取って、食事中もチラチラと確認していた。
こんな時間に来ない事なんてわかりきっているのに、俺の頭の中ではもう何十回も待ち合わせ相手が少し遅れて待たせたなと言いながら駆け寄ってくる様を想像してほくそ笑んでいた。

まあ俺としては時間通りきっちり来て欲しいんだけど。

なんたって約束をした時間から分刻みで予定がつまっているからだった。それこそ一般のカップル達が遊びに行きそうな場所をチョイスして、連れて行くのが目的だった。
元々こういう機会でもないとなかなかデートの為にわざわざ外で待ち合わせなんてしない。だから今日はとことん引きずり回してやろうという計画を立てていた。
だからからずっと朝からこんな場所でで見張っていて、早く来てくれないかな、という淡い気持ちを抱いていた。


「はー…バカだろやっぱり」

幾度目かのため息をつきながら、おもわずそう呟いていた。
自分自身が一番よくわかっている。こんなのはただのバカ者がすることだと。デートの12時間以上も前から見張っていないと気が済まないなんて異常だとわかっていた。

それでもやめられなかったのは、やっぱりどうしてもシズちゃんが好きだからだ。

俺達がつきあい始めて3か月になる。もう3か月なのか、まだ3か月なのかは正直わからなかったがとにかく俺は嬉しいことには間違いない。
告白したのは俺で、それからも顔を合わせば喧嘩をするし罵り合いは絶えないが、休みの日にお互いの家に遊びに行ったり、一緒に食事に行ったりしている。
しかしどれもが俺からの誘いで、正直シズちゃんの方は俺とこんな関係になっているのが嬉しいのかどうかはよくわからない。
文句も言わずにいるのでとりあえずは大丈夫だと思うのだが、内心不安になる時の方が多い。それでも一緒に居てくれることは喜ばしいことだった。

そうして、今日のクリスマスイブの予定を言いだしてきたのは、実はシズちゃんの方からだった。
仕事があるから夜でよければという条件つきだったが次の日は休みだしということだったので、俺は前日夜からクリスマスにかけてのデートプランを練った。
店だってクリスマス限定ディナーをやっているところを特別に予約したし、実は泊まる場所だって決めている。
いつもはどちらかの家だったからこんな日ぐらい泊まりにしてロマンティックに過ごしたい、という気持ちだったからだ。

当然のことながら、クリスマスプレゼントだって用意してある。いつもはポケットに忍ばせるナイフの変わりに、小さな箱がそこに隠されている。
別にプレゼント交換をしようだとかそういうことは言わなかったけれど、俺はやっぱり記念的な贈り物をしたかったので買っていたのだ。
こういう時に便乗しておかないと、照れくさくてなかなか感謝の言葉を伝えられないので、メッセージカードも挟んで準備は完璧すぎるぐらいに万端だった。

そうしてウキウキとした気分のまま、こんなところで待っているのだ。どれだけ待ちきれないのかと自分自身にツッコミを入れながら、結局ここから一歩も動けないでいた。
俺は待つのはそこまで嫌いではないし、シズちゃんへの片思いを自覚してからもう何年も過ぎているので、待つこと自体が慣れている。
だから自宅の中で一日中ソワソワしながら待つよりは、今夜のデートを思い浮かべながらここで待つ方が楽しかった。

「お、まだ居たのか臨也」
「あぁドタチンまたここ通ったの?はは、次はチキンの買い出しかな。本当にお人好しなんだから」

また見知った顔に声を掛けられた時刻は午後3時で、向こうはさっきとは違うビニール袋を持っていて、ニコニコ機嫌よく笑っていた。
それに首を傾げてどうしたのかと問いかけると、笑顔を崩さないまま優しく言ってきた。

「よっぽど大事な待ち合わせなんだな。別人みたいに嬉しそうな顔してたぞ」
「えっ?やだなあドタチン何言ってるの、誤解だよ。人間観察してニヤニヤしてるぐらい普通じゃないか」
「よかったな、臨也」

急に確信を指摘されて、戸惑った。俺とシズちゃんがつきあっていることはまだ誰にも告げていない。
学生時代の頃からドタチンに相談に乗ってもらったり愚痴っていたので、俺がシズちゃんを好きなのは知られているが、告白したことまでは言ってなかったのだ。
だけどどうやら彼にはすっかり知られてしまっていたようで、軽くため息をついた。

「なんのことかは知らないけどありがたく言葉だけ受け取っておくよ」
「はは、素直じゃねえな。まあいい、早く待ち合わせに来てくれるといいな。今年ぐらいいいクリスマス過ごせよ」

そう言い残すと足早に去って行った。本当にお人好しだな、と後ろ姿を微笑ましく見つめながら、わざわざまた声を掛けてきてくれた彼に心の中で感謝をした。
もう少しシズちゃんと俺の距離が近くなって、お互いが恋人同士だと言えるようになったその時には、きちんと報告しようと決めた。


NEXT
| 小説 |