ウサギのバイク 狂気の檻 ②
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2011-01-29 (Sat)
*リクエスト企画 虹飛様
静雄×臨也  ※今後の展開で18禁注意

静臨(恋人)でケンカをした後臨也がモブに拉致監禁され静雄が助けに行く話

* * * 「臨也が珍しく悪いと思ってるのなら、僕だって協力してあげたいんだけどさ。やっぱりそんな話ができるような雰囲気じゃなくて」
「怒ってたってことだよね?」
「まあそういうことだね。イライラしてるみたいだったし、仕事でも荒れてるって言ってたかな。もう君は知ってるかもしれないけど」

部屋に通されてソファに腰かけ、コーヒーを飲みながら体を落ち着かせた。シズちゃんが最近やたら暴力を振るってしまっていることは、既に俺の耳にも届いている。
どう考えても原因は俺でしかない。でも会えないのだから、こっちにはどうにもできないのだ。多分電話しても、その場で切られるのはわかっていたのでそれもしていない。
新羅は俺達がつきあい始めたことも、お互い好き合っていたことも知っている間柄だったのでこうして今回は快く協力してくれているのだ。
最近怪我をすることもなかったので、首なしとは仕事上だけでのやり取りはあっても、ここに来て新羅と話すのは久しぶりだった。
でも何をどう話していいか、苦しい胸の内をどこまで話していいか困っていた。自分のことを誰かに相談するなんてしたことはないからだ。
逆に仕事として相談に乗るようなことはいくらでもしてきたが、まさかこんなことになろうとは思わなかったのだ。ソワソワと落ち着きが無くて、困り果てていた。

「別に君たちの喧嘩の理由は聞かないというか別に聞きたくないから、無理して言わなくていいよ。でも周りを巻き込むというか主にセルティに迷惑がかかるから早く仲直りしてよね」
「シズちゃんと仲直り…ってなんだかおかしいけど、努力するよ」
「僕の嫌味も通じないなんて、ほんとに落ち込んでるんだ臨也…」
「そんな目で見るなよ。そろそろ運び屋も帰って来るだろうからもう行くよ、ありがとう」

やっぱりこういう問題は二人だけの話であって、誰かに相談するようなものでもないと確信したので一気にカップの中身を飲み干すと立ちあがって手渡した。
そうして玄関まで戻ると軽く手を振って、扉から出て行った。そうして背後でパタンと閉まる音がしたところで、すぐ横の手すりに寄りかかるようにしながら池袋の街を眺めた。
けれどもどこにも目当ての姿を見つけることができなくて、ため息をついた。

いつもは俺が追われる方だったから気がつかなかったが、あんなに執拗に迷わずに追い掛けられるなんて相当だ。
きっと本能的な何かが働いていたのだと思うが、今の俺にも少しぐらいそれがあればいいのにと願った。こんなに、好きなのに。

好きで好きで、会いたくてしょうがないのに、どうして俺にはシズちゃんの居場所がわからないのだろうかとため息をついた。

しかし落ち込んでもいられなかったので、唇を引き結ぶと一歩踏み出した。けれどもいつもより足取りはおぼつかなくて、やっぱり頭の中はシズちゃんのことでいっぱいだった。
もうどこをどう歩いているのかわからなくて、注意力もいつもより散漫になっていたことは認める。狭い路地裏に自ら誘うように入って振り向くと、俺をつけていた男とバッチリ目が合った。

「俺に用かな?知らない顔だけど…」
「あんた平和島静雄を知ってるか?同級生で平和島のことなら何でも知ってるって聞いたんだが」
「あぁシズちゃんのこと?まあ確かに俺が一番よく知ってるよ。本人より何もかもわかってるんじゃないかな、何が知りたいのかな?お金さえ払ってくれれば何でも話すよ」

見た所体格も背もシズちゃんにそっくりで、いかにもスポーツをしていますという感じの男だった。でも殺気は感じられないし、どうやら俺の事は知らないようだったので、気軽に声を掛けた。
今一番頭を占めている相手の話をするのは、悪くないと思ったのだ。
そいつが一歩一歩俺の傍に近づいてきて、にこやかに笑いながら尋ねてきた。

「平和島の弱点を教えてくれ。そうだな例えば恋人だとか好きな相手が居るとかそういう話だ」
「へえ、なるほどもしかして俺意外からシズちゃんに恋人がいるって話でも聞いたのかな?だって普通に考えて、あの喧嘩人形の平和島静雄に恋人が出来ただなんて話誰も信じないからね」
「あんたすげえな。確かに俺は平和島に恋人ができたという話を聞いたから、情報屋って言われてるあんたを探したんだ」
「じゃあまず君の考えているシズちゃんの恋人とやらを教えてくれないかな?」

いきなりシズちゃんの恋人という話になって、内心は動揺していた。一応は俺とつきあっているので恋人にあたるはずなのだが、二週間も連絡を取っていないのではっきりそうとも言い切れない。
第一俺達がつきあっていることはお互いに誰にも秘密にしていようということだったので、こいつが知っているはずがないのだ。たまたま情報屋の俺を探しただけに過ぎない。
あと考えられるのは、俺の知らない所でシズちゃんに別の恋人ができたという線だった。まずもって考えられないが、嘘だと切り捨てることもできない。
とにかくなんとかしてこいつから話を聞き出さなければいけないと、考えているといつの間にかそいつが目の前まで迫っていた。やけに近いなと顔を顰めながら見上げたところで、異変に気がついた。


「あぁそうだ、俺が聞いた平和島の恋人の名前は……折原臨也だ」


「……ッ!?し、まった……」

声が聞こえてきた時にはもう遅く、男の左手に握られていたスプレーから何かが噴射されて強烈な異臭を感じたところでカクンと足の力が抜けた。
決して油断をしていたわけではないが、シズちゃんの事だと聞かされていつもより警戒心が薄れていたのは事実だった。目の前の男の支える手に体を預けながら、舌打ちをしたところで意識が途切れた。



後ろ手を縛られていて身動きが取れないまま、ベッドの上に転がされていた。ここがどこかはわからないが、協力者も無しに単独で遠くへ運べなかっただろうからまだ池袋なのだろう。
簡素な家具しか置いていない室内は、ウイークリーマンションの類だと思った。冷静に状況を分析しながら、わざとらしく暴れてみせた。

「…っ、は、クソッ…これ外せよ!ふざけんな!!」
「さすが平和島の恋人だけあって威勢がいいよな。今のお前の立場わかってんのか?これから何されるか、大体察しがつくよなあ情報屋やってるぐらいだから頭はいいんだろ?」
「そうだねえ、君が俺を襲ったのはシズちゃんへの復讐の為だってわかるぐらいには」

それまで暴れていた体をだらりと投げ出して、冷たく言い放つと相手の男は頭に血が上ったかのように顔をぐしゃぐしゃに歪めて悔しそうにしていた。
意外に短気なら、まだ逃げ出す隙ぐらいはあるだろうと思っていた。でもやはり、どうあってもこいつに酷い目に遭わせられるのは確かだった。拷問まがいの暴力も考えられる。
それなりに身構えながら見守っていると、男がゆっくりとベッドに乗りあげて近づいてきた。瞳には狂気が宿っていたが、そんな奴らなんていくらでも相手をしている。だから大丈夫だと思っていた。

「なあ、あんただったらどうする?復讐相手の恋人を捕まえたらそいつをどう使う?」
「あははっ、ちょっと待ってよ。だいたい俺は男だし、あんただって男に突っ込むのは嫌だろう?それに俺は恋人じゃない。ここ二週間はあいつに会っていないのが証拠だ」

そいつの質問に対して浮かんだ行為は、強姦だった。世間一般の奴なら、復讐したい相手の恋人を捕まえれば手酷く犯して復讐相手に見せつけてやるのが筋だ。
なんともありきたりで、面白みも無い話だったが、俺は男だ。男相手に勃つような奴には見えないし、そこまでの覚悟がこいつにあるわけがない。

それともう一つ――俺はもうシズちゃんの恋人ではないかもしれないという事実。

自分から口にしておきながら、チクチクと胸が痛んでいた。でもまぎれもない真実なのだからしょうがない。こんなことで回避できるとは思ってはいなかったが、何かの鍵になるだろうと踏んだのだ。

「それが本当だとしても、元恋人っていうポジションは美味しいんだよな。いくら別れたとはいえ、一時でも情をかけた相手が襲われてたら男は誰でもショックだろうよ。そうだ、もし本当に別れてるんだったら、あんたにとっても悪い話じゃねえだろ?」
「どういうことだい?」
「俺に凌辱されることで平和島が思い直すかもしれねえだろ。また自分のモノにしたいっていう独占欲が沸くんじゃねえか。人のもんほどうまそうに見えんだよ。同情を惹けるってだけでも、充分じゃねえか。慰めて貰えるかもしれねえだろう?まあ、俺に散々に犯された後だっていう前提つきだがな」
「酷い話だね。最低だ」

こいつは本当に最低最悪な野郎だと、今のではっきりわかった。確かに言い分だけは理解できるし、俺にとっても同情で気を惹けるのなら悪くは無い話だった。
ボロボロに犯された俺を見ながら謝る姿を想像して、背筋がぞくりと震えた。でも、やっぱりそんなものは望んでいない。そんなもので引き止めるぐらいなら、きっぱりしたほうがよかった。

「残念だけどその作戦は使えない。きっぱりと別れたんだ、喧嘩してね。だからシズちゃんが俺の元に戻ってくることも、同情することもない。知ったとしても、鼻で笑われて終わりだ」
「でもまだあんたは好きなんだろ、折原さんよお?平和島とは関係ないって言いたいのが丸わかりだぜ。巻き込みたくないぐらい、大事なんだろ?」
「仮にそうだとしても、一方通行だ。だから君の考えた面白い展開にはならない」

最高の笑みを頬に貼りつけて、馬鹿にするように目を細めながら告げてやったのだが、相手は全く動じることはなかった。
逆にぺろりと舌を唇からチラつかせて、厭らしい目線を飛ばしながら舐めるように俺の腰から下を観察し始めたのだ。


「俺は人を貶めるのが好きなんだよ。女でも男でもな。特にあんたは線が細いし、平和島とヤってたんなら簡単に堕とせる。罪悪感に苛まれながら、快感に蕩けた顔をアイツにも見せてやりゃいい。助けに来た時には、気持ちいいなら誰でもいい、って口走ってるかもしれねえけどな、はは!」


普通の男だという認識は、その瞬間に捨てた。こいつは既に狂っている。狂気しかないんだと思うと急に不安に苛まれて心が押しつぶされそうだったが、耐えるしかなかった。


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