ウサギのバイク 狂気の檻 ④
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2011-02-09 (Wed)
*リクエスト企画 虹飛様
静雄×臨也  ※18禁注意

静臨(恋人)でケンカをした後臨也がモブに拉致監禁され静雄が助けに行く話

* * * 臨也と派手な喧嘩をして、もう三週間は経とうとしていた。その頃に一本の電話が、俺に現実をつきつけてきた。

「あぁ?あいつが行方不明?」
『正確に言うと君が僕の家を先週尋ねてきた後から、連絡が取れなくなったというのが正しいかな。いつもは定期的にあるセルティへの仕事の依頼も、ぱったりとなくなっててね』
「で、それが俺と何の関係があるって言うんだ?」

冷静な声でそう言うと、相手が息を飲んだのが微かに聞こえた。俺の苛立ちが声に乗って充分に伝わったのだろう。数秒沈黙した後、恐る恐るという感じでゆっくりと尋ねてきた。

『君たちがどういう仲だったか知ってるから言わせて貰うけど…静雄が臨也を避けるほど許せないことだったのかもしれない。でもそろそろ意地はってないで、顔ぐらい見せてあげればいいじゃないか。それに二人が喧嘩をしてる最中に都合よく臨也がいなくなるなんて思えない…』
「あいつが逃げたのだとしたら?もう俺なんかどうでもいいって逃げただけじゃねえのか?」
『…それは』

新羅の言い分をあっさりと切り捨てた。最初の二週間は俺のことを必死に追いかけて探していたが、もうどうでもいいと諦めて逃げただけではないのかと。

だってあいつは最後に出て行った時に、俺の部屋には何も残さずに去って行ったのだ。確かに言いだしたのはこっちだったが、まさかそこまで覚悟を決めているとは思わなかったのだ。
やっぱり嫌だ悪かった、と臨也の方から泣きついてくるものだと考えていたから、ちょっとした意地悪のつもりだった。
それなのに一言も言葉を発することも無く黙々と袋の中に自分のものだけを詰めて、そうして躊躇うことなく出て行ったのだ。きっかけを作ったのは俺だったが、決めたのはあいつだ。
馬鹿なことを言ったもんだと自分自身も嫌悪したが、いつものようにかわいらしく謝ればいいのにそれをしなかった臨也に不信感が募った。
あいつが飽き性なのは学生からのつきあいでよく知っているし、いつでも追いかけていたのは俺だ。池袋に現れるあいつを追い回して喧嘩を仕掛けていたのは俺だ。

俺だけが一方的に、想っていたのだ。

でも信じられない奇跡でつきあうことになり、恋人同士として過ごしていたが、やっぱりもう飽きられてしまったのだと。もしかしたら、別れるきっかけを狙っていたのかもしれないと思ったのだ。
だからショックで、絶望的な気持ちになった。一度気持ちが離れれば、戻ってくることはないだろう。
あいつが俺の元に戻ってこないだろう、という現実が重く圧し掛かってきた。悔しくて、辛くて、胸が切り裂かれてズタズタにされたみたいに酷く痛んだ。
それが原因で、避けるようになったのだ。
俺はあいつと違って、別れたからといって平気な顔をつきあわせる器用さはない。目の前に見てしまえば、暴力で組み伏せてみっともなく戻って来いと言うに違いなかった。
でもそんなのは、向こうにとっては迷惑なのだ。気まぐれでつきあい始めただけの関係だから、縋られることなんて嫌がるに違いない。
幸いにもあいつの気配が池袋の中でならわかるぐらいには好きだったので、逃げるのは簡単だった。
今まではただがむしゃらに追いかけていたのに、逃げるというのがこれほど難しいのだと始めて知った。よくこんなのであいつは逃げられていたのだと感心するほどだった。
扉一枚隔てた向こうを臨也が走り抜ける度にドキドキと胸が高鳴り、扉をぶち抜いてその手を掴んでやりたいとすら思った。でも堪えた。
そうして新羅の家で鉢合わせるのを避けたのを最後に、あいつはもう俺の前には現れなくなった。文字通り、飽きたのだろう。まだ追い掛けられているうちが花だった。もう飽きられたのだ。
だからその事実を伝えただけだった。何の偽りも無い、事実だった。

『でも…こんなこと僕から言うべきではないのかもしれないけど。臨也は…』
「んなもん聞きたくねえよ。知ってるだろ、あいつが嘘つきなのは。昔っからそうじゃねえか。だから信用なんてしねえ」
『ちょっと!それは言い過ぎじゃないの?だって君達はつきあってたんだろ!?少しでも情を抱いた相手の事をそんな風に言うなんて!』
「そもそもあいつは俺とつきあってるなんて思ってたのかも疑ってんだよ。何かに利用しようとしてた可能性だって考えられる。もういらねえってみなされて、捨てられたんだろ俺は」

淡々とそう告げると、向こうは絶句したように暫く何の音さえもあげなかった。そうして深いため息が聞こえた後、これだけは使いたくなかったんだけどという前置きの後にはっきり言われた。

『正直僕たちも困ってるんだよ。あんな奴でも一応はセルティに仕事を紹介してくれたり、そういう点では助かっていたんだ。だから君に頼むのは酷かもしれないけど、臨也のことを探してくれないかな。心当たりを回るだけでいい、少しだけでいいんだ。臨也を助けるんじゃなくて、僕たちを助けると思って協力してくれないかな』

聞こえてきた言葉は真剣だった。それに友人であるセルティの名前を出されて断るほど、薄情な人間じゃなかった。それが臨也のことだとしても、友の頼みは聞いてあげたいと思ったのだ。
それにこれなら、もしあいつに会ったとしても大義名分があるので少しは冷静にいられるかもしれない。
久しぶりに顔を突き合わせることができる、チャンスだった。

「わかったよ」

短くそう答えると、大袈裟なぐらい嬉しそうに声をあげられてなんだか急に意地を張っていた自分が恥ずかしく思えてしまった。


とりあえず何か手がかりが見つかったら連絡するとだけ伝えて、すぐに通話を切った。
ちょうど仕事が終わって自宅のアパート近くまで辿り着いたところで電話がかかってきたので、まだ部屋まで辿り着いてはいなかった。ここ数週間落ち込んでいた気持ちが、少しだけ晴れた気がした。
うじうじと悩んで一人で落ち込んで避けるなんて、俺らしくは無かった。仕事も日常生活も手につかなくて、随分と取り乱していたのだと改めて感じた。
悲観的な気持ちを振り払って、とにかく明日はあいつを探してみるかと思ったところでちょうど部屋の前に辿り着いた。そこでふと、部屋の前の郵便ポストに目がいった。
小まめな臨也がよく家に遊びに来た時に、取り忘れてるなんて言いながら渡してくれていたので、自分で確かめるという習慣すら忘れていた。しかし何気なく見たところで、すぐに異様さに気がついた。

「なんだ、こりゃ?山ほど溜まってるじゃねえか」

新聞もとっていなかったし、ここの住所を知っているのは一握りの人間しかいない。だから数週間放置していたところで、溜まっているはずがないのだがそこには茶封筒がいくつも突き刺さっていた。
怪訝に思いながらそれらを全部引き抜くと、それを持って部屋の中に急いで入った。なんだか嫌な予感がしたからだ。
何個もある封筒の中から消印が一番新しいものを選んで乱雑に開けると、中から何かがバサバサッと音を立てて床に落ちた。そられはハラハラと散らばって、嫌でも俺の目にそれが飛び込んできた。
慌てて一枚を拾おうとして、その場で固まった。

「……臨也?」

そこに映っていたのは、まぎれもなく折原臨也だったのだが写真がぶれていてどういうことなのかよくわからなかった。慌てて掴んでそれをじっくりと眺めて、そうして。

「これ、一緒に映ってるのは俺か…?なんでバツ印書いてやがる」

いつかはわからないが、それは俺と臨也が池袋で喧嘩している時のものを撮っている写真のようだった。俺だけがカメラ目線で真正面から撮られていて、臨也からはピントがずれていた。
他に散らばった写真も拾い上げてみると、ほとんど同じようなものだった。俺の顔部分だけ黒く塗りつぶされていたり、カッターか何かで傷がつけられていた。
怪訝に思いながら封筒の中に残っていたものを取り出すと、DVDのロムが出てきた。それ以外に手紙などは一切同封されていなかった。
だから仕方なくテレビの前まで行ってリモコンで電源を入れて、プレイヤーの中にそれを挿入した。再生されるまでの数秒が、酷くもどかし感じてそわそわしていた。
そうしてすぐに映った映像に、度肝を抜かされて持っていたリモコンを取り落してしまった。


『ん、ひぁ、っあ…やだ、やらぁ、やめてって…もう、やだぁ!』


ほぼ全裸に近い状態で滅茶苦茶に喘ぎながら、見知らぬ誰かと繋がっている臨也が映し出されて心臓が鷲掴みにされて、ぎゅうっと痛んだ。
怒りとか嫉妬とか絶望とかあらゆる感情が綯い交ぜになって息苦しかったが、目ですぐに持っていた封筒の日付を確認していた。
その日付は最後に俺が臨也の気配を感じて逃げ出した次の日の消印で、今日はそれから一週間も過ぎていることに愕然として、目の前が真っ暗になるのを感じた。
追い打ちをかけるように、画面の中から誰かの声が聞こえた。

『あんたの恋人を預かってるんだけどよ、平和島静雄…さん?』

直後に下品な笑い声が聞こえてきて、それだけで事情を察することが出来た。

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