2011-03-16 (Wed)
*リクエスト企画 june 様
静雄×臨也 ※今後の展開で18禁シーンが含まれます
臨也の身体機能の一部が不自由になる話 切ない系
* * *
いつものように仕事の最中に池袋でシズちゃんにみつかり、そのまま追い掛けられて細い路地裏を逃げ回って。背後から迫ってきたのに対してナイフで応戦するしかないと覚悟して。
振り返ったところで、勢いを止められない俺よりも大きな体が直撃してきてそれから二人してもつれ合うように地面に転がった。
と、思ったのだが。
「ねえ、ここどこ?」
「俺に聞くんじゃねえよ!わかるわけねえだろうが!!」
「うんまぁ君はちょっと落ち着きなよ。とりあえず、どいて」
次の瞬間瞳を開けば見たことのない暗闇で、自分と目の前に立っていたシズちゃんの姿以外が見えなくなっていた。まぁ一目見てわかるが、普通の状態じゃない。明らかに変だ。
夢でも見ているようだと思いながら、ため息を吐いて俺の上から下りるように告げた。すると一瞬言葉に詰まりながら、渋々と従ってくれた。
池袋には人間では想像できない不思議なことが起こったり、そういう人ではない者もいるが、その類のことなのだろうかと首を傾げた。ただの夢ではないだろう、というのはなんとなく感じていた。
その時、急に声がした。
『まさか、こんな場所に人間が二人も迷い込むとは』
「誰?」
「誰だッ!」
同時に声をあげ辺りを見回すが、誰の姿も無い。すぐ傍の暗闇に向けて警戒しながら目を凝らしていると、シズちゃんが先に行動した。
「おい、誰か知らねえが早くここから出せ!元のところに戻させろ!こいつと二人っきりなんて俺は耐えられねえ」
確かにここから出して欲しいということは俺も思ったが、二人っきりなんて耐えられないという言葉に、胸の奥がズキリと痛んだ。これはもう持病のようなもので、割と日常的にあることなのだが。
恋の病というやつだ。
相手は当然、シズちゃんでもう何年もこんな想いを抱えたまま過ごしている。だから、こうして些細なことに一人で傷つけられては自己完結をして過ごしてきた。
俺に対して嫌いと直接叫ばれる度に、密かに苦しい想いをしながらそれを隠して喧嘩をふっかけ繰り返してきた。こんな非常事態でも、そんな気持ちになるなんてと苦笑しながら声の主を目で探した。
『ここは人が来るような所では無い。でも一度迷いこんだら帰れません。代償を払わない限りは』
「なにそれ?こっちを勝手に巻き込んでおいて、帰るのに代償が必要なんてどんな悪徳商売かなあ」
『貴方がたどちらか一人が、提示する代償を払って下さい。そうすれば元の場所に戻れ、ここに居る間は願いを何でも叶えてあげます』
「えっ?」
偉そうな物言いでほとんど一方的に話し掛けてくる女の声に、若干苛立ちを感じながら聞いていると唐突にとんでもないことを言った。
願いを叶えてえくれるだなんて、そんなことを簡単に言われて、聞き逃すところだったがすぐに言葉を返した。
「なんだ、そりゃ…」
「ねえ!ここに居る間は願いを何でも叶えてくれるってどういうこと?何か奇跡の力でもくれるっていうの?」
『代償を払い元に戻ればここで叶えた出来事は無効になるが、居る間は何でも、何度でも願いが叶います。当然それを与えられるのはどちらか一方の人間だけですが』
シズちゃんの声を遮って詳しく聞くと、とんでもなく面白いものだった。願いが何でも、何度でも叶うだなんてそんな夢のようなことができるかと心が躍った。
当然のことながら、俺の叶えて貰いたい願いは、あった。
「代償が何か知らないけど、俺がそれを払うよ。命でもなんでも持って行けばいい。だから今すぐ願いを叶えてくれないかな?」
「はあっ!?おい、手前何を考えてやがんだ!こんな変な話を信じるってのかよ、馬鹿じゃねえのか!」
「黙ってよシズちゃん。俺は信じるよ。例え命を落としたとしても、願いが好きに叶うならその方が楽しいじゃないか」
すぐに俺に突っかかってきたが、あっさりと躱して口の端を吊り上げて笑った。どちらにしろ、俺かシズちゃんが何か代償を払わないと戻れないのなら、名乗りをあげようとは思っていた。
だから本当に、命を落としたとしてもその覚悟は強いものだった。
『わかりました。あなたの場合は、瞳と引き換えに願いを叶えましょう。命までは取りません』
「なるほど、じゃあ元の世界に戻った時に失明するということかな?いいよ、それで。だから早くその願いを何度も叶えられる力を俺に」
「ちょ、っと待て…なんで勝手に決めやがるんだ!臨也!」
怒鳴り声と共にすごい形相をしたシズちゃんが俺の胸倉を掴み、突っかかってきたが殴られると思った次の瞬間、体に電撃が走ったかのような違和感がおとずれた。
そうして拳が、俺の目の前でぴたりと停止した。それは多分、心の中で止まれと念じたからに違いなかった。
「ど、ういうことだ…?」
「あ、はははっ、本当に叶ったの?何度でもだよね?うわすごいなあ、シズちゃんの拳をこんなに簡単に止めるなんてすごい力じゃないか、面白い!」
気持ちが昂ぶっていくのを止められなかった。シズちゃんはびっくりしてなんとかその手のひらを開こうとしたり、反対側の手で押してみるがそこからぴくりとも動くことができなかった。
そうして混乱してる隙を見計らって距離を取り、元に戻れと念じるとその拳が解けた。勢いよく倒れそうになるのを踏ん張りながら耐え、そうして目を瞬かせていた。
「ねえここで叶えた出来事は無効になるって、記憶がなくなったりするの?例えばあそこの男に俺と仲良くなるように、って命じた場合とか」
そこが重要なんだと思って尋ねながら、頭の中はどんな願いを叶えるか考え続けていた。するとすぐに、最高の答えを教えてくれた。
『そうだ、叶えた本人以外ここでの記憶は消える。代償を払ったものだけがそのことを覚えておける』
「なるほどね、わかったよ。それは最高に愉快だ」
クスクスと笑いながら、大声で笑い出すのだけは控えた。喜びに浸る前に、まずはいろいろと願いを叶えたいと思ったからだ。
もう代償とかそういのはどうでもよかった。失明しようが、どうしても叶えたい願いがあったからだ。目の前に。
「やっぱり手前はそういう奴だよな?そんなに俺のことを殺してえのか?仲良くなるようになんて綺麗ごと言ってんじゃねえよ」
「やだなあ話聞いてた?ここでシズちゃんを殺したとしても、それは全部無駄になるんだよ。だったら俺はもっと違うことがしたい。仲良くなりたいわけでもない」
俺がじっとシズちゃんの方を見つめると、すぐさま射抜くような殺気を含んだ視線が返ってきた。でも、さっきまでの俺だったらそれに対して微妙な気持ちを抱えていたが、もう違う。
一時の夢だとしても、それが叶えられるというのなら迷いは無かった。
「ねえ、俺を愛してよシズちゃん」
「は……?」
「キスして、セックスして、好きって言ってよ」
瞳に力をこめてそう告げると、呆然とした表情のまま一歩ずつこっちに近づいてきたので、後ろ手に組んでいた手が緊張で震えた。どんな愛の言葉を囁いて貰えるのか、胸が躍った。
自分でだって、これが虚しいことなのはわかってる。でもわかっていて、俺は求めた。一生手に入らないより、代償を払ってでも貰えるなら、欲しかった。
「ふ、ざけんじゃねえ…こんな嫌がらせなんてして嬉しいのかよ!キスもセックスも手前にとっちゃ簡単かもしれねえが、俺はこんなの許せねえ!!」
「シズちゃんごめんね。でも俺は嬉しいけど?幸せだよ」
「わかってんのかよ、くだらねえことで失明までするとかバカじゃねえのか!そこまでして、俺に嫌がらせしてえのかよ!」
必死に叫びながら徐々に近づいてきて、怒りに震えた顔が近づいてくる。本来だったらこういう無理矢理の行為だなんて嫌なはずなのに、シズちゃんだから、シズちゃんだからこそこうしたいと思った。
一度だって俺の思い通りになんてなってはくれなかったのだから、せめて束の間の夢でぐらい笑ってよと。
「ねえ笑ってよ、それで優しくキスして。それで……っ、ん…」
告げた途端に表情が一変して、見たことのない笑顔をしながら、まだ願いを吐き続ける唇を塞がれた。軽いリップキスが優しく何度も落とされて、一気に俺の頬は赤く染まった。
そして気がついたら、瞳からポロポロと涙をこぼしていた。もうこれが夢とか幻とかそんなことは関係なくて、とにかく心が満たされて長年積もっていたものが解けるような気がした。
「…っ、おい泣くぐれえなら、なんでこんなひでえこと…くそっ」
暫くして顔が離れると、困惑した声でしゃべっていたが、その表情は俺の想像以上の綺麗な笑みだった。それだけで、胸が熱くなって感情が止められなくなった。
本人の訴えなんて全く耳に届かなかった。
「いっぱい、してよ…たくさん、それ全部覚えておくから。だから」
今度は目を閉じると、さっきよりはしっかりと背中にまで手が回されてしっかりと唇がふれた。そのあたたかさに、また新しい涙が頬を伝って落ちていった。
静雄×臨也 ※今後の展開で18禁シーンが含まれます
臨也の身体機能の一部が不自由になる話 切ない系
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いつものように仕事の最中に池袋でシズちゃんにみつかり、そのまま追い掛けられて細い路地裏を逃げ回って。背後から迫ってきたのに対してナイフで応戦するしかないと覚悟して。
振り返ったところで、勢いを止められない俺よりも大きな体が直撃してきてそれから二人してもつれ合うように地面に転がった。
と、思ったのだが。
「ねえ、ここどこ?」
「俺に聞くんじゃねえよ!わかるわけねえだろうが!!」
「うんまぁ君はちょっと落ち着きなよ。とりあえず、どいて」
次の瞬間瞳を開けば見たことのない暗闇で、自分と目の前に立っていたシズちゃんの姿以外が見えなくなっていた。まぁ一目見てわかるが、普通の状態じゃない。明らかに変だ。
夢でも見ているようだと思いながら、ため息を吐いて俺の上から下りるように告げた。すると一瞬言葉に詰まりながら、渋々と従ってくれた。
池袋には人間では想像できない不思議なことが起こったり、そういう人ではない者もいるが、その類のことなのだろうかと首を傾げた。ただの夢ではないだろう、というのはなんとなく感じていた。
その時、急に声がした。
『まさか、こんな場所に人間が二人も迷い込むとは』
「誰?」
「誰だッ!」
同時に声をあげ辺りを見回すが、誰の姿も無い。すぐ傍の暗闇に向けて警戒しながら目を凝らしていると、シズちゃんが先に行動した。
「おい、誰か知らねえが早くここから出せ!元のところに戻させろ!こいつと二人っきりなんて俺は耐えられねえ」
確かにここから出して欲しいということは俺も思ったが、二人っきりなんて耐えられないという言葉に、胸の奥がズキリと痛んだ。これはもう持病のようなもので、割と日常的にあることなのだが。
恋の病というやつだ。
相手は当然、シズちゃんでもう何年もこんな想いを抱えたまま過ごしている。だから、こうして些細なことに一人で傷つけられては自己完結をして過ごしてきた。
俺に対して嫌いと直接叫ばれる度に、密かに苦しい想いをしながらそれを隠して喧嘩をふっかけ繰り返してきた。こんな非常事態でも、そんな気持ちになるなんてと苦笑しながら声の主を目で探した。
『ここは人が来るような所では無い。でも一度迷いこんだら帰れません。代償を払わない限りは』
「なにそれ?こっちを勝手に巻き込んでおいて、帰るのに代償が必要なんてどんな悪徳商売かなあ」
『貴方がたどちらか一人が、提示する代償を払って下さい。そうすれば元の場所に戻れ、ここに居る間は願いを何でも叶えてあげます』
「えっ?」
偉そうな物言いでほとんど一方的に話し掛けてくる女の声に、若干苛立ちを感じながら聞いていると唐突にとんでもないことを言った。
願いを叶えてえくれるだなんて、そんなことを簡単に言われて、聞き逃すところだったがすぐに言葉を返した。
「なんだ、そりゃ…」
「ねえ!ここに居る間は願いを何でも叶えてくれるってどういうこと?何か奇跡の力でもくれるっていうの?」
『代償を払い元に戻ればここで叶えた出来事は無効になるが、居る間は何でも、何度でも願いが叶います。当然それを与えられるのはどちらか一方の人間だけですが』
シズちゃんの声を遮って詳しく聞くと、とんでもなく面白いものだった。願いが何でも、何度でも叶うだなんてそんな夢のようなことができるかと心が躍った。
当然のことながら、俺の叶えて貰いたい願いは、あった。
「代償が何か知らないけど、俺がそれを払うよ。命でもなんでも持って行けばいい。だから今すぐ願いを叶えてくれないかな?」
「はあっ!?おい、手前何を考えてやがんだ!こんな変な話を信じるってのかよ、馬鹿じゃねえのか!」
「黙ってよシズちゃん。俺は信じるよ。例え命を落としたとしても、願いが好きに叶うならその方が楽しいじゃないか」
すぐに俺に突っかかってきたが、あっさりと躱して口の端を吊り上げて笑った。どちらにしろ、俺かシズちゃんが何か代償を払わないと戻れないのなら、名乗りをあげようとは思っていた。
だから本当に、命を落としたとしてもその覚悟は強いものだった。
『わかりました。あなたの場合は、瞳と引き換えに願いを叶えましょう。命までは取りません』
「なるほど、じゃあ元の世界に戻った時に失明するということかな?いいよ、それで。だから早くその願いを何度も叶えられる力を俺に」
「ちょ、っと待て…なんで勝手に決めやがるんだ!臨也!」
怒鳴り声と共にすごい形相をしたシズちゃんが俺の胸倉を掴み、突っかかってきたが殴られると思った次の瞬間、体に電撃が走ったかのような違和感がおとずれた。
そうして拳が、俺の目の前でぴたりと停止した。それは多分、心の中で止まれと念じたからに違いなかった。
「ど、ういうことだ…?」
「あ、はははっ、本当に叶ったの?何度でもだよね?うわすごいなあ、シズちゃんの拳をこんなに簡単に止めるなんてすごい力じゃないか、面白い!」
気持ちが昂ぶっていくのを止められなかった。シズちゃんはびっくりしてなんとかその手のひらを開こうとしたり、反対側の手で押してみるがそこからぴくりとも動くことができなかった。
そうして混乱してる隙を見計らって距離を取り、元に戻れと念じるとその拳が解けた。勢いよく倒れそうになるのを踏ん張りながら耐え、そうして目を瞬かせていた。
「ねえここで叶えた出来事は無効になるって、記憶がなくなったりするの?例えばあそこの男に俺と仲良くなるように、って命じた場合とか」
そこが重要なんだと思って尋ねながら、頭の中はどんな願いを叶えるか考え続けていた。するとすぐに、最高の答えを教えてくれた。
『そうだ、叶えた本人以外ここでの記憶は消える。代償を払ったものだけがそのことを覚えておける』
「なるほどね、わかったよ。それは最高に愉快だ」
クスクスと笑いながら、大声で笑い出すのだけは控えた。喜びに浸る前に、まずはいろいろと願いを叶えたいと思ったからだ。
もう代償とかそういのはどうでもよかった。失明しようが、どうしても叶えたい願いがあったからだ。目の前に。
「やっぱり手前はそういう奴だよな?そんなに俺のことを殺してえのか?仲良くなるようになんて綺麗ごと言ってんじゃねえよ」
「やだなあ話聞いてた?ここでシズちゃんを殺したとしても、それは全部無駄になるんだよ。だったら俺はもっと違うことがしたい。仲良くなりたいわけでもない」
俺がじっとシズちゃんの方を見つめると、すぐさま射抜くような殺気を含んだ視線が返ってきた。でも、さっきまでの俺だったらそれに対して微妙な気持ちを抱えていたが、もう違う。
一時の夢だとしても、それが叶えられるというのなら迷いは無かった。
「ねえ、俺を愛してよシズちゃん」
「は……?」
「キスして、セックスして、好きって言ってよ」
瞳に力をこめてそう告げると、呆然とした表情のまま一歩ずつこっちに近づいてきたので、後ろ手に組んでいた手が緊張で震えた。どんな愛の言葉を囁いて貰えるのか、胸が躍った。
自分でだって、これが虚しいことなのはわかってる。でもわかっていて、俺は求めた。一生手に入らないより、代償を払ってでも貰えるなら、欲しかった。
「ふ、ざけんじゃねえ…こんな嫌がらせなんてして嬉しいのかよ!キスもセックスも手前にとっちゃ簡単かもしれねえが、俺はこんなの許せねえ!!」
「シズちゃんごめんね。でも俺は嬉しいけど?幸せだよ」
「わかってんのかよ、くだらねえことで失明までするとかバカじゃねえのか!そこまでして、俺に嫌がらせしてえのかよ!」
必死に叫びながら徐々に近づいてきて、怒りに震えた顔が近づいてくる。本来だったらこういう無理矢理の行為だなんて嫌なはずなのに、シズちゃんだから、シズちゃんだからこそこうしたいと思った。
一度だって俺の思い通りになんてなってはくれなかったのだから、せめて束の間の夢でぐらい笑ってよと。
「ねえ笑ってよ、それで優しくキスして。それで……っ、ん…」
告げた途端に表情が一変して、見たことのない笑顔をしながら、まだ願いを吐き続ける唇を塞がれた。軽いリップキスが優しく何度も落とされて、一気に俺の頬は赤く染まった。
そして気がついたら、瞳からポロポロと涙をこぼしていた。もうこれが夢とか幻とかそんなことは関係なくて、とにかく心が満たされて長年積もっていたものが解けるような気がした。
「…っ、おい泣くぐれえなら、なんでこんなひでえこと…くそっ」
暫くして顔が離れると、困惑した声でしゃべっていたが、その表情は俺の想像以上の綺麗な笑みだった。それだけで、胸が熱くなって感情が止められなくなった。
本人の訴えなんて全く耳に届かなかった。
「いっぱい、してよ…たくさん、それ全部覚えておくから。だから」
今度は目を閉じると、さっきよりはしっかりと背中にまで手が回されてしっかりと唇がふれた。そのあたたかさに、また新しい涙が頬を伝って落ちていった。