ウサギのバイク LOVE ELECTRON DRUG ⑨
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2011-03-30 (Wed)
*リクエスト企画 アッシュ 様
静雄×臨也+サイケ

静臨前提でブラックでヤンデレなサイケが電子ドラッグを使って臨也を襲い静雄が助けに来る話
サイケは臨也が大好きで静雄が嫌い 臨也が割と酷い目に遭います

* * *


「アンドロイドってなんだそりゃ」
「うーんわかりやすく説明すると、人間とほとんど同じ容姿と声を持ってるロボットってことだよ。見分けが全くつかないんだって、僕もまだ見たことがないんだけど。そういう仕事に臨也が関わってたんだって。しかもおかしいことに、臨也と全く一緒の姿をしたアンドロイドを一台持ってたみたいでさ。でもここ数週間は連絡が取れなくなってて、困ってるんだって」
「意味わかんねえ」

新羅が俺に熱心に教えてくれたが、こっちは全く理解ができなかった。何か変な仕事に関わってて、妙なことに巻き込まれたとそう思ってただけだった。
既に臨也と連絡が取れなくなって二週間以上が経過している。何度あいつの家に言っても誰もてこないし、力づくで入りこもうとしたことがあったのだが、なぜかすぐ警備員が飛んできて止められた。聞けば見張るように言われているとだけ返してきて、つまりは俺が来ることを予測していてそいつを雇っているということだ。
気に入らなかった。だって、俺には何の連絡も相談もなしに突然消えたようなものだ。それに恋人として付き合っていたのに、アンドロイドとかいうやつを持ってるとかそういうことは一度も言われたことが無い。
ただ確かに、自宅には行けないと言われていつも俺の家ばかり押し掛けてきていた。でもそれが変だと思ったことはなかった。
とにかく何度でも諦めずにあいつの家を尋ねるしかない、と思っていた俺はその日もチャイムを鳴らして、出てこないだろうなと思いながら少しの間待った。

けれどすぐにスピーカーから聞き慣れた声が聞こえてきて、自分の耳を疑った。

『どうしたの、シズちゃん?』
「…ッ、どうしたじゃねえ!手前に会いに来たに決まってるだろうが!!」
『ごめんごめん怒らないでよ。じゃあすぐ開けるから入ってきていいよ』

そうして通された臨也の事務所兼自宅で、俺ははじめてそいつと会った。人間でない、アンドロイドと呼ばれる相手と。



「それでよく我慢して帰ってきたよね」
「だから…なんかやべえって思ったんだよ。わかんねえけど、すげえとんでもねえことが起きてて俺だけじゃ、ぜってえ無理な気がしたんだ。確かにあそこで暴れれば臨也を無理矢理助け出すことができたかもしれねえけど、危険に晒すかもしれねえってことだろ?そう考えたら動けなかったんだよ。とにかくなんだ?そのサイケって奴はやべえんだよ!」
「静雄のその勘とやらにはいつも驚かされるね。まあだいたい君の言ったことは合ってる。多分臨也は相当危険な目に遭ってるんじゃないかな、もしかしたらもう手遅れなぐらいには」

「手遅れ、って……どういうことだよ!」

俺は気がついたら新羅の胸倉を掴んでいて、白衣が揺れていた。怒りの形相で睨みつけたのだが、向こうも真剣な表情のまま顔色一つ変えなかった。つまりは、言葉の通りということなのだろう。
苦々しい表情をしながら手を離すと、続きを告げてきた。

「いいかい、あの臨也がそんなに簡単にアンドロイド相手にどうこうなるなんて普通じゃ考えられない。でもね、聞いた話によるとどうも最近は電子ウイルスが流行っていたみたいで、まあそれにアンドロイドが感染していたとしたなら、何が起こっててもおかしくはない。ついでに言うと、アンドロイド制作に関わっていた人間が行方不明になっていたり、そこの情報が盗まれていたりとにかくやりたい放題されているらしい。それで、盗まれたものの中で一番気になるのが」

そこで一度新羅は言葉を切り、唇を噛みしめて苦痛に耐えるような顔をしながら、とんでもないことを言ってきた。


「人間のアンドロイド化だよ」


「は…?どういう意味だ」


正直さっきからつらつらと説明されていることの意味があまり理解はできていなかったが、さすがにこれは俺でもわかった。嫌な予感、というのはこれだったのかと納得した。

「どこまでそんなことができるかわからないけど、つまりは人間をアンドロイドと同様に感情や記憶まで操って、肉体以外はプログラムで管理するっていうことだよ。もしかしたら、感覚でさえもコントロールできるのかもしれない。最終的にはそれをプログラム化して他の器に移せば、その人間は人間でなくなりアンドロイドになる。そうして、永遠に生きることができる。まあよくある話さ。さすがにボディを作るには時間が掛かるみたいだから、とりあえずはつまり、臨也は…」
「故意に俺と恋人同士だった時の記憶を消されているかもしれない。もしかしたら、サイケに操られてるかもしれないから危険だってことか?」
「よくわかってるじゃないか!そういうことだよ」

それを聞いて、背筋が冷えてぞっとした。あの時、サイケっつうアンドロイドが臨也じゃねえってわかっていながら動かなかったのは、感覚的にそれを感じ取っていたのかもしれない。
あそこで暴れていたら、間違いなくとんでもないことになっていたんだと、事の重大さをやっと実感した。


「どうしたらいい。どうしたら、俺は臨也を助けられるんだ」


「うん、まあ正直僕もサイケには全く興味は無いんだけど本当に臨也がアンドロイド化したか見てみた……あ、あぁいや、うん冗談だよ?大丈夫ちゃんと協力するって。助け出した後に、臨也を検査させてくれたら…ぐ、あっ!」
「冗談なんか言ってねえで、さっさとどうするか考えろ!ただでさえもう二週間以上も苛々してんだよ!このまま暴れられたくなけりゃ……」
「ごめんごめん、脅さなくてもすぐ動くから。静雄には冗談が通じない事、すっかり忘れてたよ」

俺も新羅を脅す気はなかったが、正直に切羽詰まっていた。あいつの為なら何でもするし、俺一人でも大抵の事はできると思っていたが、今日サイケを見てその決意が崩されたのだ。
すぐにでも大丈夫なのか確認したい気持ちを必死に抑え込んで、逃げてきたのだ。置いてきて、しまったのだ。そのことがまだ心に引っ掛かっていて、辛かった、苦しかった。
でも俺はあいつを危険な目に遭わせないということを優先事項にしたのだ。しょうがない、と必死に言い聞かせながら歯軋りをした。
そうして新羅と臨也を助け出す為の作戦を、考え始めた。絶対に、何があっても次は連れ帰るという強い意志を心の中で繰り返しながら。



「おいっ、臨也どこにいんだ!」

警備員を押しのけて、扉をぶち破って入りすぐさま部屋の中を探し回った。今なら部屋の中に臨也に化けたサイケは居ない。新羅が自宅に呼んで引きつけてくれているのだ。
だからバレないうちに見つけて連れ帰らなければ、と焦っていたのだが一階には居ないようだった。すぐに二階へと走り、一番大きな部屋の多分寝室であろう場所を開けた。
すると、そこには。


「え…っ?」


目に入ってきた光景に息を飲んで、硬直した。
ベッドの上に横たわって眠っている体のあちらこちらに細長いケーブルが突き刺さっていて、白いコートは半分ほど脱いでいた。腕や足の肌から何本も伸びていて、その先にはノートパソコンがあった。
見るからに、抜いたらやばそうな雰囲気だったので俺は恐る恐る近づいて、とりあえず生きているのかどうか手にふれようとして。

その時。

「あっ……?」

ブチッという音が聞こえたと同時に、足が何かに引っ張られてそっちを見た。するとそこには細長いコードが束になって切れている残骸があって。これは、ヤバイと青ざめた。
俺にしては慎重に移動していたというのに、どうしてと焦っていると突然背後から声がした。


「ん……だ、れ?」


反射的に振り向くと、ピンク色の人工的な光を放つ瞳と目が合って、腰が抜けそうになった。慌てて踏みとどまったが、明らかに人間ではなかった。俺の知っている、折原臨也ではなかった。

あいつの瞳の色は血のように赤い色で、いつも蠱惑的に俺の事を魅了し、手に入れたいと願ってやっと自分のものにした。それなのに、姿形は同じだったのに、まるで違った。
でも俺の直感が、これは臨也だと告げてくる。見掛けに惑わされるなと、バクバクと鳴り続ける心臓が訴えてくる。

この間見たアンドロイドは、見た瞬間に違うと感ずいた。事前に新羅に話を聞いていたので、多分臨也本人とは会えないだろうと思っていたから余計に確証が持てた。
だから、目の前の知っているのに知らない臨也に対してどう接すればいいのか困惑した。でも会ったら絶対に抱きしめてやると決めていたので、とりあえず尋ねた。

「おい、このコード切っちまったんだが大丈夫なのか?」
「え?あぁ、それ今電源が入ってないから平気だよ。でもそれ全部のコードを束ねて相当太かったのに、よく切れたよね。結構頑丈なはずなんだけ…ど……え?」

平気だと耳に入った時にはもう体が勝手に動いていて、勢いよくベッドに駆け寄るとそのまま手を伸ばして自分の腕の中に抱きこんだ。二週間ぶりのぬくもりに、涙が出そうだった。
俺がどれだけ心配したか、こいつはいつもわかっちゃいねえんだよなと感慨に浸ったがすぐに我に返った。こんな悠長に抱き合っている場合ではなかったのだ。

「ちょ、っと…やめてよ、あんた誰……?」

「悪者から姫を救いにきた騎士だな」

「は……ぁ?頭大丈夫?」

言った直後に、心底心配するような声が耳元に聞こえてきてはっとした。一瞬で耳まで真っ赤になった。


「あーもう、誰だよ!誰が言えっつたんだよ!覚えてねえのかよ、マジで殺す。ぜってえ殺す。俺にこんなバカげたこと言わせておいて忘れたままとか許さねえ!帰るぞ!!」
「えっ、ちょっと、なに!?人攫い?いや、この場合アンドロイドを盗みに来た盗人?とにかく離せよ!」


ぎゃーぎゃーと喚いて騒ぐ様は、明らかに臨也だった。いやもうこんな奴が世の中に二人も居るわけがない。バカで、最低で、意外と乙女思考で、かわいくて、愛しい奴なんて。
いくら顔や性格を似せたとしても、全然違う。そのことに安堵しながら体を抱えあげると、確かに長いコードは一つに束ねられていてその先が途切れていた。その運の良さに、口の端を歪めた。

「なんとでも言え。本気で走るから黙ってねえと、ひでえことになるぞ」
「待ってよ、俺はあんたなんか知らないし、臨也はどこに行ったんだよ!とにかく知らせないと…」
「手前の言ってる臨也ってのがあのアンドロイドなら、暫く帰って来ねえよ。それにもう二度と逃がさねえよ」

腰と膝の裏を両手で持ち上げ、しっかりと固定し抱えるとどこからか出した携帯で操作しようとするのを奪い取って、目の前で粉々に壊してやった。今連絡されたら困るのだ。
それを呆然と見ていた臨也が、肩を竦めながら言った。


「騎士から姫を奪いにきた悪者にしか見えないよ、あんた」


確かに今の状況ではその方がお似合いだと笑いながら、そのままの体勢で走り始めた。抱えあげた体は、俺が知っている時よりも軽く、腕も細くて、そのことに内心心が痛んでいた。
もしいつか、臨也がヘマをして誰かに捕まってしまったら助けに来てね、恥ずかしい台詞つきで。と言われた時のことを思い出しながら、足を強く踏み出した。

姫とか騎士とか発想が酷いとは思ったが、笑いが返ってくるはずの返事で、真剣に驚かれたことが胸に深く突き刺さっていた。
漠然とした不安を抱えていたが、そのことは隠し駆け出した。


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