ウサギのバイク 愛縛⑨
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2011-04-02 (Sat)
*リクエスト企画 lean様
静雄×臨也

静雄が臨也を監禁する話 切なめ→甘め和姦 微ヤンデレな二人

* * *


「はあ…ほんと暇だよね。することないよ」

シズちゃんが仕事に出て行ってから、俺は半日ほど布団でごろごろと過ごし、それからさすがに起きて部屋の中を物色し始めた。既に逃げようと何度か試してはみた。
一人だとトイレに行けないと困ると駄々をこねた結果、手枷と足枷の鎖の長さがトイレに届く範囲まで延長された。残念ながらベッドからトイレまでは割と近かったので、そこまで遠くには行けなかった。
台所の包丁は物色できないし、ほとんどベッド回りぐらいに留まる。カミソリとか刃物の類は洗面所には無かった。いかがわしい玩具用の鎖だと思われたが、意外に頑丈だった。
しかも昨日は外されていた両手を繋ぐ金具もまた止められて、基本的に手も足も不自由ではあった。本当にトイレ以外は許されていないようだった。
それでもご飯は気遣ってくれたようで、カップラーメンとお湯の入ったポッドを置いて行かれた。こんなもの食べる気なんてさらさらなかったけれど。

仕方がないのでベッドの周りの本棚を漁って、変な本でも見つけられないかと探し始めた。面倒ではあったが、時間はたっぷりあったので一つ一つ出しどんなものか確認する。
特にめぼしいものが見つからず、次の棚へと移動しようとした時に足元に何かが当たった。それは段ボール箱だった。これは怪しいと睨みながら開けると、思った通りのものが出てきた。
それはよかった。まあからかったりして楽しめるし、と思ったのだが実際は見た瞬間にどん引きしてしまった。なぜかというと、そこに詰まっていたものがあまりにもリアルだったからだ。

「どんだけ本気なんだよ…まあ束縛とか監禁ってシズちゃんの趣味じゃなさそうだから、本当に取引先から盗んできたんだろうね。でもちょっとこれ…多いよね。やだよこんなグロテスクなバイブとか使われたくないし……」

手にした真っ黒な極太バイブをじっと眺めて、頭の中に一瞬映像が浮かんだ。自分の体の中に入れられたそれが蠢いていて、あられもない声をあげている姿が。

「う、わああっ…あぁもうやだやだ!なんでそんな想像するんだよ、やだよそんなところシズちゃんに見られて、エッチなことされるなんて」

慌てて頭の中の姿をかき消して、顔をぶんぶんと左右に振った。恥ずかしい、というどころではない。なんでこんな妄想をしてしまったかは、確実に昨日のあれのせいだ。
いきなりあんなことをされて驚いたが、やっぱりすんでのところで止めたことが未だに納得いかなかった。喧嘩だったら遠慮しないのに、と複雑な気分だった。
一度は抵抗して、じゃあ好きにすればと覚悟を決めたのにそれを踏みにじられたような気分だった。いや、でもだからと言って最後までしていたらどうなったかも考えたくない。

「なんでこんなことに、なったんだろ。俺どうしたらいいんだろ、いつまでここに居ればいいんだろう…」

一人になると途端に不安になった。膝を抱えながらベッドに座り、バイブの根元を握ってしげしげと見つめてみる。もっともそれは考え事をしていたからで、じっと眺めていたわけじゃない。
けれども、タイミング悪くその時玄関から物音がした。肩をビクッと震わせながら振り向くと、見慣れた金髪にバーテン服姿のシズちゃんが立っていた。そして。

「お、おい!何勝手に人のもん見てんだよッ!ふざけんな!」
「え…?う、わあっ!ごめん…じゃなくて、こんなもの目のつくところに置いてるのが悪いんだろ!」

急いで手に持っていたバイブを段ボールの中に放ると、ギャーギャーとわざと大声で喚いてみた。当然それはコッソリ覗いてしまったことの後ろめたさや、恥ずかしさを隠す為だ。
でもそんなことには全く気がつかないシズちゃんは、俺の近くに寄ってきて思いっきり睨みつけながら言った。

「なんだよ、そんなにこれ使いてえなら勝手に使ってもいいぜ。でも一人の時にすんじゃねえ、俺に見せろ」
「はあっ!?なんでそうなるんだよ!使うわけないし、シズちゃんエッチすぎる!」
「エロいのは手前じゃねえか!帰って来てみてよかったぜ、とりあえずこれは俺が預かっておくからして欲しけりゃまた戻ってきてからにしろ」

全く空気の読めない発言に呆れながら、こっちも上目づかいでシズちゃんを睨みつける。いつもだったら既にナイフを取り出して喧嘩をしているような雰囲気だったが、思い出した。

恋人ごっこをしてるのだ、と。

仕方なくため息をついて睨むのを止めて、正論を口にした。

「ねえ勝手に俺の事を想像するのやめてくれる?ちゃんと話を聞いてよ、俺達恋人同士でしょ?」
「な……ッ!?いや、そりゃそうだけどよお…つーかもう逃げたかと思ってたんだが俺は」
「そっちこそ何言ってんの?逃げられなくしたのはシズちゃんじゃないか。まあ俺の事を認めてもらうまでは、逃げれたとしても居座ってあげるけどね」

ギクリとしてついいつものように嘘をついてしまった。しまったと気づいた時には遅く、すぐに不機嫌な表情になって俺に詰め寄ってきた。じっと瞳を見つめながらはっきりと言ってきた。

「嘘だな?だから言ってるだろうが、わかってんだよ。今だってこんな面倒なことやめてえって思ってるだろ?隙あらば逃げてやろうと思ってるだろ?」
「そ、そんなことない!逃げないよ俺は。だってまだシズちゃんとまだ何もわかり合えてはいないだろ?」

しかし今更訂正するにも俺のプライドが許さなかったので、逃げないとはっきり言い切った。さっきまでなんとか出る方法はないかと画策していたことなんて、忘れて。
暫く睨み合っていたが、シズちゃんの方が折れた。時間が無いのかチラリと時計の方を眺めて、それから持っていた袋から何かを取り出してつきつけてきた。

「そういやあ手前カップラーメンとかインスタント食品が嫌いだっただろ?わざわざパン屋で好きなやつ買ってきてやったんだ、黙って食え」
「えっ……?覚えてたの、俺が焼きそばパン好きだって、本当に?」

それは学生時代の頃から好きで、四時限目をさぼって先に買いに行ったり、購買のおばちゃんと仲良くなって手に入れていた大好きなパンだった。
もう卒業してから何年も経っているのに、よくそんなことを覚えていたなと俺は驚いた。たまに屋上で新羅やドタチン達に混じって、シズちゃんとも昼が一緒だった時があった。
ほとんど毎日のようにそればっかり食べていたので、ある意味有名な話だったが、そんなこと俺ですら忘れていた。あの頃は毎日食べていたのに、卒業してからは食べた記憶が無かった。
どちらかというと昼はそれなりの値段のするランチを一人で気軽に食べに行くのが好きだったし、仕事で取引のある相手との接待だって多かった。だから、なんだか懐かしい気がして胸が痛んだ。
苦しいわけではない、嬉しくてだ。

「別に手前の為ってわけじゃねえ。俺も思い出して急に食べたくなっただけだ」
「素直じゃないね。恋人の俺の為に買ってきたって言ってくれれば、かっこいいなって惚れそうになるよ?」
「あー…だから手前はそういうことをむやみやたら誰にでも言うんじゃねえ。これだから無自覚な奴は困るんだよ」

さっきはあっさりと俺の嘘を見破ったのに、こういう時はどうしてわからないんだろうとムッとした。だからパンを受け取ろうと差し出した手を避けて、手首を掴んでおもいっきり引っ張ってやった。

「うおっ、おいなんだよッ!」
「もうこの鈍感!こんなこと誰にでも言うわけがないだろ!今は、シズちゃんにしか言ってないじゃないか!」

さすがに倒れこんでくることはなかったが、動揺しているうちに俺が唇を尖らせながら告げたので、目を丸くしていた。こっちだって、ここまであからさまに言うのは恥ずかしい。
だから言いたくなかったのに、こういうところは苦手だ。肝心なところを察してくれないところが。

「…っ、臨也の為に買ってきた」
「もう!それでいいんだよ……ありがと」
「あ、あぁ」

途中で照れ臭くなったのと、意外に顔が近くて焦ったのもあって、あっさりと礼を言うとすぐにそっぽを向いた。そうして耳まで赤くなっているのを自覚しながら、臨也の為にと言われたことが嬉しかった。
自分で言わせた癖に、と思いながらやっぱり威力はすごかった。心臓がありえないぐらいバクバク鳴っていて、おもわずパンを握りつぶしてしまいそうだった。

「とにかく俺はそろそろ戻るけどよお、晩飯は何がいいんだ?」
「シズちゃんの好きにすれば?ハンバーグとかオムレツとか、そういうお子様の食べ物が好きでしょ?いつもはすごくおいしいものを食べてるから、たまにはそういうのでも悪くないかもね」
「くそっ、わかったよ…じゃあ待ってろ。あと勝手に部屋のもん漁るんじゃねえぞ」
「はいはい」

慌ただしく玄関の方に戻るシズちゃんに手を振ると、鎖がジャラジャラと音を立てた。そもそも恋人をこんな風に繋いでるなんて、という話はさすがにしなかったが少し残念だった。
もう少し自由にされていれば、見送ることだってできるのに。でもきっと、それは本当に信頼されてからではないと無理だとわかっていた。
そうして扉の閉まる音と、鍵を閉める音が部屋の中に響いて乱暴な足音が去っていくのを聞きながら改めて手の中のものを見た。

「この近くにパン屋なんてあったっけ?どこで買ってきたんだろう…しかもわざわざ届けに来てくれたんでしょ。ははっ、意外に恋人ごっこも悪くないかもね」

一人でぶつぶつと呟きながら、焼きそばパンを食べようと透明なラップを外し始めた。手枷が邪魔で時間が掛かったが、こぼれないようにしっかり掴んで口を開けてかぶりついた。
懐かしい味がして、なんだか涙が出そうだった。



その夜はシズちゃんが俺の言った通りにオムライスを作ってくれて、またわざわざ食べさせてくれたりした。さすがにもうそれには文句を言わなくて、オムライスの方を選んだのは食べやすいからかと思った。
俺が全部食べ終わった後に自分のも作り、目の前で食べていたので一緒に食べることは無かったが、密着して食べさせられるのは悪くなかった。恋人同士だから、という一言で納得していた。
元々こっちはずっと好きなんだし、こうして優しくされることは嫌じゃない。それに俺が挑発しなければ基本的に怒るようなことだってなかった。
食事が終わりシズちゃんが片づけるまでつまらないテレビを見て待っていたが、数分もしないうちに戻ってきた。だから俺は、とあることを言ってみることにした。

「ねえねえ、一緒にテレビ見ようよ。ほら」
「なんだよ」

手招きして床に座らせると、それまでベッドに座っていた俺は立ちあがり、シズちゃんがあぐらをかいている真ん中に体を入れてそのまま尻をついて座った。すると背後から慌てて手が伸びてきて、腰を掴まれた。
つまりは、俺はシズちゃんの上に座って椅子がわりにして見ようということだった。正直テレビなんてどうでもよくて、どう反応するか試してやるつもりだった。

「危ねえな、膝に座りてえなら言えよ。つーか、なんだこれ」
「恋人同士でしょ?こうやって少しずつふれあって、お互いの事を知ったりするんじゃない?」
「そ、そうなのか…?まあ抱き心地も悪くねえし、いいけどよお。腰細いなあ、全然食ってねえとは昔から思ってたけどこりゃやべえな」
「はいはい。ほらテレビ始まったよ?」

テレビ画面を指差すと、すぐにそっちに見入った。大しておもしろくもないバラエティ番組だったが、俺は見ている場合じゃなかった。自然に腰に回された手の上に自分の手を重ねて、一人ほくそ笑んでいた。
まさに俺が望んでいた、一般的な恋人同士のいちゃつきっぷりだなと。本当にこうなるかは半分賭けみたいなもんだったが、あっさり叶って心の中は嬉しくてしょうがなかった。

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