ウサギのバイク リセット 12
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2011-04-21 (Thu)
*拍手連載
静雄×臨也 

臨也が自分の願いを叶える為に静雄と一緒に暮らす話 切ない系
臨也視点→静雄視点

* * * 「そろそろ寝るんだろ?」
「うん、まぁそうだね…」

「いつも俺に気を遣ってこっちで寝てたんだろ。今日ぐらい来い、あんなバカでけえベッドなら手前が増えたところでどうってことねえよ」

「えッ!?ちょ、ちょっと……!!」

風呂からあがって冷蔵庫から水を取り出して飲んでいると、突然近づいてきて俺の体をまた強引に抱えあげてきた。あまりにも軽々とするものだから抵抗はしなかったが、こんな扱いはおかしい。
慌てて自分で歩くから降ろしてと言うと、渋々戻されたのでほっと息をついた。なんというか一応夜でもあるし、これ以上の過度の接触は避けたいところだったから。
ただでさえ同じベッドで寝ようという今更すぎる訴えに、どう断ろうかと思っていたのに。有無を言わさない空気にそれは諦めたけれど、俺は正直困っていた。

ある意味勝手なことをしないように見張りたいのだろうなとは考えついたが、突然言ってくる意味はやっぱり一つしか考えられなかった。でも、それだけは俺にとっては許されない。
シズちゃんと性的な意味でどうこうしたいとも全く思っていなかったし、自分自身が抜く為の行為で想像することはあっても、それ以上だなんてという気分だった。
むしろそんな邪な気持ちで一緒にはいたくなかった。だから悶々としかけていた気持ちをなんとか落ち着けながら二階にあがり寝室にまで辿り着いた。
とりあえずクローゼットからもう一枚布団と枕を出して、完全に別々に寝ようと思っていたのだが遮られた。

「おい待てよ俺はそんなに寝相悪くねえぞ。布団は一枚でいいだろ」
「あぁごめんすごく寝相悪いんだ俺」
「嘘つけ、人の肩を枕にして寝た時は身動き一つせず綺麗に寝てやがったじゃねえか」

あっさりと嘘を見破られて、布団は元に戻された。むしろ空気ぐらい読めと言いたかったのだが、それ以上は反論せずに枕を抱えたままさっさとベッドに潜り込んだ。
ふわりといつか嗅いだシズちゃんの匂いがしたが、気にせずに端っこに転がった。すると今度は、上着の裾を引っ張られた。

「なんで今更遠慮してんだよ。もっとこっち来て寝りゃいいだろうが、そんなに嫌なのか?」
「うん、なんていうかその…俺って一人で寝た方がよく眠れるんだ。この間は本当に疲れてたからシズちゃんの肩枕でも寝れたけど、今日は無理かなって。明日は大事な日だからちゃんと寝たいんだよね」
「チッ、しょうがねえな。いいか明日の夜はそうはいかねえから覚えておけ」

聞き捨てならない言葉だったが、それ以上を考えたら自分自身が辛くなりそうだったので止めた。もうさっきからそればっかりを繰り返している。
明日以降の事を考えるな。明日だ、明日だと自分自身に言い聞かせていた。電気を切ると照明が落ちて真っ暗になり、すぐに眠れそうだなと思った。考えているうちに早速いびきが聞こえてきて驚いた。

「いや…いくらなんでも早すぎだろ?」

まだおやすみも言ってないのに、と思いながら実は今日は朝から早起きしていたのかもしれないなとも思い至った。そういえば随分と久しぶりにシズちゃんが寝ているところも見る。
でもこんなに近ければ起こしてしまう可能性もあったので、堂々と眠る姿を横目で見ただけでそれ以上はしなかった。
一目見れただけでも、充分だったから。

一瞬だけ微笑んだ後に、すぐに頭を隠すように布団をかぶって少しだけシズちゃんから離れた。二人の間には大きな隙間ができたけれど、それは一生埋まることが無いだろうと思っていた。



「ん……え、っと…?」

しかし暗がりの中目を覚ました時には、体勢が随分と変わっていた。なんだかやけに人の気配がすると思って目を開けば、いつの間にか俺の体はすっぽりとシズちゃんの手に包まれていた。
完全に抱き枕か何かの類だと思われているに違いない状態だった。こんなのは、ちょっと普通に考えてあり得ない。友達同士だって、あり得ないのだ。だから、困った。

「はぁ、ほんとシズちゃんって何なの?こんなことが無意識にできるって、どんだけ抱き枕抱いて寝てるんだよ」

とりあえずなんとか腕の中から逃れようともがいてみるが、結構強く抱きつかれているようで身動きすら満足に取れなかった。なんてバカ力なんだと悪態を心の中でつきながら、腕を押し上げた。
するとさすがに気がついたのか、間の抜けた声を出しながらどうしたんだと問いかけてきた。

「なんだよ、どうしたんだ?」
「あのさあ…とりあえずトイレ行きたいんだけどいい?」
「しょうがねえな、ったくほら早く行って来いよ」

適当に言うとあっさりと解放されて、逆に拍子抜けするほどだった。朝が弱いことは当然のことながら知っている。だから俺にとってこれはチャンスだった。
そして、最後だった。

名残惜しいなと思いながらシズちゃんから離れて、それから肌蹴ていた布団を戻して掛け直した。


「ありがと、シズちゃん」


「あー……」


色んな想いを込めてそう言ったのだが、向こうはすぐに寝息を立て始めたので肩を竦めてそこから離れた。そして扉を開き、この部屋から出る前にもう一度振り返った。
でも起きる気配はなかったので、迷わずに歩き出した。隠し部屋に自分の服は用意しているし、いつでも出れるようにはしている。携帯だって、いらない。
だけどその前に一仕事してからと、軽い足取りで階下に下りて行った。やっと待ちに待った日がおとずれたことに胸を弾ませながら、少しの寂しさを打ち消した。





「なんだ…?」

目が覚めた時に酷く違和感を覚えたので慌てて体を起こして、服の上に何かがポタリと落ちたことに驚いた。それは白いタオルで、さわってみると何やら濡れているような気がした。
どうしてそんなものが、と思ったがどうして上半身を起こして落ちてきたのかを考えると、それがどこに当てられていたのかすぐに察することができた。口しかありえない。
そして、直感的にヤバイと全身が訴えてきた。慌ててベッドサイドに置いてあった時計を見ると、あり得ない時間だった。既に半日以上が経過して、夕方と呼ばれる時間帯だった。

「あいつ、やりやがった……ッ!!」

普通に考えて、ここまで寝入ることなんてありえない。だとしたら、人工的な何かで今まで眠らされていたということになる。やった相手は一人しか居ない。
やけに今日に拘っていて、何か大きなことをすると事前に言ってたにも関わらず、俺は止められなかった。いや、止めるつもりはあまりなかったがせめて後をつけてやるぐらいは覚悟していた。
だからこんな風に出し抜かれるなんて、思っていなかったのだ。いや、臨也なら考えられることだったが、最近のあいつを見ていると油断していたのだ。

一緒に暮らし始めて、少しずつ何かが変わって、いろいろ考えさせられて。昨日話をしていて、もやもやとしていた何かが掴める気がしていたから、余計にショックだった。

すぐに勝手に俺が使い始めた臨也のクローゼットの中からズボンを取り出して、身に着けながら携帯のアドレス帳を操作した。そうして、友人に電話を掛けた。
事前に話はつけてある。あいつが何かよからぬことをしようとしている、とだけはあらかじめ伝えていたのだ。だからいざという時は、協力をして欲しいとまで頼み込んでいた。

『静雄やっぱり何かあったのかい?』
「あいつになんか薬盛られて眠らされてたんだよッ!悪いがセルティにも頼めねえか。臨也を探し出してぶん殴るってな」
『了解したよ。他にも何人かこっちで当たっておくよ。門田くんとか、あと高校生達にも連絡しておくよ』
「頼む」

それだけ言うと通話ボタンを切った。慌てていたので恰好はいつものバーテン服姿だったが、ネクタイはする必要がないので煙草とサングラスを慌ててポケットに入れた。
そうして部屋の中から飛び出して行った。目の前のことに気を取られて気づかなかった。あいつが自分の携帯をベッドの傍に置いていたことや、他にも残していたことまでは。
ただ妙な焦燥感や、嫌な予感というものに駆り立てられていていてもたってもいられなかったのだ。走り出さなければ、こっちがおかしくなっていただろう。

やっと臨也のマンションから出て、どこに向かうかも考えずにあてもなく走り始めた。向かったのは、なんとなく池袋の方向だった。
新宿より馴染があるのは俺も住んでいる街の方だったし、ただ何も考えていないだけだったのだが、そういう時の方がうまくいったりするのを俺は知っていた。
昔から何度も嵌められては捕まえて、また似たようなことをされては追いつめてを繰り返していたので、今度もそうだろうと思い込んでいた。距離は近くなったけれど、関係は変わらないものだと。

確かに昨日あいつの様子は見るからにおかしかったし、やけに今日に拘っていたので俺は勝手にそれを信じることにした。
今まであいつのことを信じることなんてなかったから、一度くらいはと。

同じことの堂々巡りはもうたくさんだと、だから今回ぐらいはいろいろ聞きたいのを先延ばしにして、明日と約束した。でもそれが、果たされないなんて思いもしなかったのだ。
いろいろと考えながら走ると勘も鈍ると、集中して探そうと一度立ち止まった時微かに何かを感じ取った気がした。たまにあいつが池袋に現れて、気配を感じたのと同じように。

「臭え匂いさせてんじゃねえか…」

やっと見つけた獲物に目を輝かせた獣のように、周りの何もかもを目に入れることなくそっちの方向に走り出した。街の外れで、ひっそりと倉庫が立ち並ぶ場所だと気がついたのは後からだった。
これで全部吐かせて、今までのわけのわからない苦しみから解放されると、疑わなかった。期待していた。
冷静になれば、嗅ぎ慣れた臨也の匂いと一緒に血の匂いが混じっていたことぐらい、すぐに嗅ぎわけられたというのに。
昨日臨也に巻かれた右手の包帯からは、もう自分の血なんて出ていなかったのだから。


※続きの13話目は拍手に載ってます PCだと右側の拍手の方です
※13話は残酷描写がありますので苦手な方はご注意ください
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