ウサギのバイク リセット 13
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2011-04-24 (Sun)
*拍手連載
静雄×臨也 

臨也が自分の願いを叶える為に静雄と一緒に暮らす話 切ない系
静雄視点で臨也のことを考える話
※グロくはないですが残酷描写がありますので苦手な方はご注意ください

* * *

「ここか、臨也くんよおおおおッ!!」

勢いよく扉を蹴破ってやけにでかい建物の中に入るが辺りは静まり返ったままだった。自分の声が反響するぐらい中は広くて、木材が置いてある倉庫のようだった。匂いは強くなっている。
中はほぼ真っ暗で窓から漏れてくる明かりだけが頼りで、まだ暗くなる前に探し始めたというのにこんなにも遅くなったことに驚いていた。変な気持ちを振り払って、小走りで歩き始めた。
まるで行く手を遮るかのように物が散乱していて、進めば進むほどにどうしてこんなところに用があったのかと眉を潜めた。ここで誰かと待ち合わせていたのか、連れ去られたかのどちらかだ。
他の者の気配がないことはわかっていたので、後者のような気がした。つまりは、また危ないことに頭を突っこんでいたということだ。

「あいつは本当に世話が焼ける奴だよな…」

一人でぶつぶつと呟きながら、足元に散らばっていた木材を蹴り飛ばしながら突き進んで行く。正常な頭で考えれば、これがわざと置かれていたということに気が付けただろう。
でも俺は頭に血がのぼっていたし、そんな小さな事には気にせずにあいつのことしか考えていなかった。だから、結局、真実を目にするまでその可能性に至れなかった。

急に視界が広くなって、何も無い空間に躍り出たと思った時、一瞬わからなかった。見間違えだと思った。
真ん中にぽつんと黒い塊があって、慌てて近づきかけて、途中で違和感にハッとした。根本的に何かがおかしいと気がついて、やっと口にした言葉は。

「な……んだ?どういう、ことだこりゃ……」

それ以上は近寄るなと頭の中で変な警報が鳴っていたが、俺は止めなかった。自分で確認しなければ気が済まなかったからだ。

ゆっくりと相手の口元に手を伸ばして、最後の希望に縋ろうとしたが無駄だった。呼吸をしているはずの唇からは何も漏れていなくて、そのまま頬に当てたら信じられないぐらいひんやりとしていた。
呆然としながら今度は心臓の辺りに手を当てようとしたが、唐突にその位置がわからなくなってしまう。服の上からならなんとなくわかるが、そこは肌が晒されていてふれてはいけないような気さえしたのだ。
だがそれでは俺自身が納得しなかったので、ゆっくりと指先を伸ばして心臓にふれた。でもやっぱり、そこは動いていなかった。

「死んでんのか?」

ボソリと呟いてみるが、誰も答える者はいなかった。俺とこいつしかいないのだから当然なのだが。
そこから一歩後ずさって眺めてみたが、どこからどう見ても、顔と服装が折原臨也だった。でも本当に、あいつなのかと思うぐらいに変わり果てていた。

黒いコートはかろうじて身につけているが、あちこちがナイフか何かで切り裂かれたかのように破れていた。そうしてそれ以外は何も肌の上を覆うものはなく、晒されていた。
胸の辺りから足の先まで何もなかった。シャツやズボンに下着の類さえ、身につけてはいない。そうして片手は腹のあたりを押さえたままで、そこには鋭いナイフが突きたてられていた。
先が埋まっているはずの周辺には赤黒い血が溢れて、床まで水溜りを作っていた。でもその水溜りは血の色だけでなく、別のものも混じっていた。

俺からしてみればありえない箇所からこぼれているのは白い粘液で、それだけが今でもリアルに反射していて背筋をぞっとさせていた。こいつは男だよな、と首を傾げながらじっと眺める。
女でもないのに、どうして太股が白濁液まみれになっているのかと。もう一度顔を見るが、そういう行為をしている臨也が浮かばなかった。

結局疑問が解決されることはなかっから、やっぱり専門の相手に見せなければダメだとようやく思い至った。ポケットから携帯を取り出して履歴からすぐに発信させた。
コールが鳴る間に、今の状態をなんて説明すればいいのかと、そればっかりを考えていた。右手に巻かれた包帯を必要以上に強く握ってしまったが、破れはしなかった。



夜も遅い時間だというのに、病院の外には結構な人数が集まっていて俺は驚いた。そいつらが一斉に俺の方を見て、それから口々に何かを言いながら駆け寄ってきた。
俺はただ無表情でその話を一方的に聞き、結局そいつらの話を中断させたのは俺の上司であるトムさんが割って入ってきたからだった。連絡した覚えはないのに、と言うと笑みだけが返ってきた。
その後に二言三言ほど言葉を交わして、それから一度家に帰ることにした。でも、当然のことながら自宅に帰ることは考えていなかった。
今手の中にあるのは、あいつと過ごした部屋の鍵で、だから迷わずそっちに行くことにした。何も考えないようにしながら部屋に辿り着いて、オートロックで良かったとほっとした。
とにかく必死で探しに出たので、全部そのままだった。当然だが臨也が戻った形跡は無い。あるわけがない。だってあいつはもう、俺が目を覚ました時間にはこと切れていたのだから。

「信じられねえよ、まだ」

ポツリと呟いたが、何も返ってこない。だってもう、ここには一人なのだから。二度と、何かが返ってくることはないのだ。
今まで何度かあいつが帰って来ないことがあったので、まだその延長でしか考えられなかった。ここで待っていればいつかは、という淡い希望だ。
死体の第一発見者は俺で警察で聞かれていたというのに、何も信じられなかった。だいたいあいつの言うことだって信じられないことばっかりだったというのに。
こんな状態だというのに、不思議と眠気は自然とやってくるようで、そのままソファに倒れこんだ。明かりもつけずにいたので、そのまま目を瞑ると眠りに誘われていった。
夢の中で会えればいいのにと、俺にしてはわけのわからないことを考えながら。



次の日目を覚ましたのは、玄関からチャイムの音が聞こえてきたからだ。慌てて覗きこむと、宅配業者の制服を着た人物が立っていたのでロックを外し印鑑を持って応答した。
当然印鑑は折原と書いたものだが、俺の家じゃないわけだしと思いながら届いた段ボール箱を見て、そこで息が止まるかと思うぐらい驚いた。

「え……平和島静雄?なんで、俺の名前が」

届いた荷物のあて名が住所はここで、けれども俺宛になっていてびっくりした。怪しいなと思いながら、構わずに乱暴に中身を開けた。すると中から小さな箱とメッセージカードが入っていた。
そこには見たことがある字で、書かれていた。

『びっくりした?気になるなら幽くんに電話してみなよ。今なら教えてくれるから』

「あいつ……ッ!」

それはカードの口調も、何もかもが臨也だった。名前なんてなくても、俺にはわかる。だから慌てて俺は幽の携帯に連絡すると、数コールした後にすぐに声が聞こえてきた。

『兄さん?もしかして臨也さんから荷物が届いた?』
「あ、あぁそうなんだ…どういうことだ?あいつと何の話を…」
『友人として兄さんに贈り物をしたいから、一緒に選んでくれないかって頼まれたんだ。驚いたけどそういうことだったらって俺も協力してあげたんだ。どうしても黙ってて欲しいって言われたから、今まで言えなくてごめん』

こっちは全く言葉を発していないのに、まるで全部予想してたとすべてを説明してくれた。聞きながら、俺は呆然としていた。だってあまりにも、意味が解らないことが多すぎたからだ。
友人として。俺に贈り物をしたい。黙ってて欲しい。そんなこと、一言も本人の口から聞いたことはない。あるわけがない。でも幽が嘘をつくなんて、それこそがありえない。だからこれは本当のことなのだ。

「他に何か言ってたか?」

口調からしてまだ幽は臨也が死んだことを知らないのだろう。言ったところで仲がいいわけでもないのだから、余計な心配を掛けるつもりはなかった。だから何気なく尋ねたのだが、意外な言葉が返ってきた。

『兄さんのせいで情報屋を辞めたって聞いたけど、すごく楽しそうに話していて、本当に好きなんだなって思ったよ。愛してるんだなって』

「は……好き?愛してる?」

『俺が言うのもなんだけど、臨也さんすごく兄さんのことが好きなんだと思う。幸せそうな顔しながら、俺の知らない兄さんの事を教えてくれたし。一緒に俺のドラマを見たって話まで聞いたよ。本当に仲がいいんだなって驚いた』

「そうか……」

呆然としながらも俺は幽との通話を一旦切ることにした。最後にまた何かあったら掛け直すと付け加えて。そうして改めて箱の中に入っているものを取り出して、机の上に置いた。
しかし開けるかどうか迷った。だって俺は、すごく混乱していたから。幽が言っていることが正しいのはわかっているのに、あいつの姿が想像できない。
俺の事が好きだ、愛してるなんて言っている姿が思い浮かばなかった。幸せそうな顔だって、寝顔ぐらいしか思い出せない。いや、本当はそんな顔をしていたのかもしれない。
ただ気がつくのが遅かっただけで、確かに最初の時あいつは言っていた。


『俺はシズちゃんが好きだ!君とつきあう為なら何だってする!』


「おい待てよ…言ったよな?あいつ俺とつきあうって言ってたじゃねえか?好きって、愛してるって意味で、つきあうってそういうことで……」

どうして今の今までそのことを忘れていたのかはわからなかったが、あの時の俺は臨也の事を本気で信じてはいなかった。その上興味すらも無かった。だから聞き逃していたのだ。
頭の中に残っているのだって、つい最近のできごとばかりだ。それこそ最後に見たあいつの寝起きの姿とかそういうのばかりだった。つまり、見落としていたことがあった筈だ。

「でも友人として贈るって、それってつまりあいつは諦めたのか?だって最初に言ったきりで一度もそんな文句言わなかったし、つきあいたいなんて…」

俺が話題にしなかったから、わかっていなかったから、勝手に諦めたとしか思えなかった。さすがにあいつでも二度も同じことは聞いてこないだろう。だからそこで食い違っていたのだ。
今なら、今の俺ならわかる。臨也の気持ちが、俺にもわかる。だって同じ気持ちを味わっているのだから。
俺だって、好きだった。友人としてではなく、それ以上の感情として。

「気になってたんじゃねえ、ずっと好きだったんだ俺も臨也のことが。近くで見て、変わっていくあいつを好きになってたんだ。なんで、それを今更になって…」

目の前には本人は居ないのに、どうしてとそればかりが頭をよぎっていった。ショックを受けていたのだ。しかしそれを打ち破るかのように、もう一度チャイムの音がした。
今度は誰だと訝しみながらテレビ電話を覗きこんでみると、予想外の相手の姿があった。

『おーい静雄ここにいんだろ?』

どうしてトムさんが、と目をパチパチさせながらも開錠してエントランスの中に招き入れた。一度箱は置いて、すぐに玄関へと向かった。


※続きの14話目は拍手に載ってます PCだと右側の拍手の方です
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