ウサギのバイク 愛縛⑩
2ntブログ
04≪ 2024/05 ≫06
12345678910111213141516171819202122232425262728293031
-------- (--)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
| スポンサー広告 |
2011-05-12 (Thu)
*リクエスト企画 lean様
静雄×臨也

静雄が臨也を監禁する話 切なめ→甘め和姦 微ヤンデレな二人

* * *


「こういうのを献身的って言うんだろうね」

一人取り残された部屋でポツリと呟きながら、ため息をついた。ベッドの脇にはちゃぶ台が置かれていて、そこには俺が飲みたいと言った紅茶のペットボトルと昼ご飯のパンが置いてあった。
さすがに二日連続で焼きそばパンは嫌だと言ったら、総菜パンを朝一番で出勤前に買いに行ってくれた。全部は食べきれない、と返せば残りはシズちゃん自身が持って行った。
相変わらず足枷はそのままで長さは変わっていないけれど、昨日までに比べて格段に過ごしやすくなっていた。テレビのリモコンまで手渡してくれたのだ。
どうせ外には当分出られないだろうし、見るつもりはなかったが退屈しのぎにはなる。昨日だって二人で密着し合って大したことのない番組を見た。
シャワーを浴びるのも手伝ってくれたし、俺が誘わなくても一緒に寄り添って寝てくれた。その間に軽く罵りあうことはあったが、殴り合うほどの喧嘩には発展しなかった。
恋人同士という言葉が効いているのかどうかわからなかったが、なかなか過ごしやすくはなっていた。それに関してはなかなかうまくいったと満足していた。

「まあいいか…別に急ぎの仕事も無かったし」

たまたま情報屋としての仕事も請け負っていなくて、優秀な秘書が俺が居なくても回してくれているだろう。文句を言われても、俺自身は動けないのだから取引相手にはしょうがないと弁解するしかない。
今日はもう昼間にも帰るつもりはないようだし、せっかくだから昨日の続きの部屋の物色をしようかと立ちあがった。
途中まで中身を確認していた本棚に手を伸ばし、鼻歌を歌いながら一つ一つ丁寧に見た。そうして明らかに学生時代の頃の本が無造作に置いてあるゾーンを発見した。

「通知表とかテストが残ってると面白いんだけど」

既に学生時代に赤点のテストや通知表を盗んで校内中に晒す、という遊びをしたのが懐かしいなと思い起こしながら物色した。ほとんどが当時のままの教科書で、どれも表紙に名前が書いてある。
小学生みたいに恥ずかしいねと言ったことがあったが、書いていないと俺に盗られるとか失礼なことを言われた覚えもあった。少しだけ過去を懐かしみながら漁っていて、ふと手が止まった。

「これって…卒業アルバム?」

本棚の端から二番目に立てかけられていた教科書よりも大きく厚い本は、卒業アルバムだった。確か俺自身はこれを卒業式の日にどさくさに紛れて無くしてしまっていたので、中身を見るのは初めてだった。
ページを一つ一つ開いて、知った顔が無いか探していく。元々俺は写真に映るのが苦手だったので、残っているものはないだろうと思っていた。
俺とは反対に、シズちゃんは割とたくさん写真に残っていてそのどれもが怒りの形相だった。修学旅行でも、学園祭でも、運動会でも全く同じで思わず噴き出してしまった。
鈍感だから撮られているのにも気がつかないんだと笑いながら、ページをめくっていく。するととある一枚が、俺の目に飛び込んできた。

「珍しいな、ってそうかこれドタチンと新羅に無理矢理写真の前に連れて行かれたんだっけ」

それは学園祭の時の一枚で、両脇を二人に抱えられながら罰ゲームのように真ん中に並ばされていた。だからなのか、ものすごく不機嫌な表情で下を向いていた。
でも俺が驚いたのは、それだけではなかった。

「シズちゃんも、映ってたんだ」

背後の校舎の入口からいかにも歩いて来た、みたいな様子で怒ってもいない普通の表情をしたシズちゃんが写真に映っていた。でも明らかに、目線はカメラの方を向いていた。
きっと俺の事を後ろから見つめていたから、ちょうどよくカメラ目線なのだろう。でもこんなありきたりな表情でこっちを見ていることなんて、当時は無かったのにと思った。
少し意外だなと思いながら最後のページの方まで開いていく。すると残り二ページというところで大きな空白蘭があり、メッセージと書いてあった。
普通であればそこに友人同士でコメントを寄せ書き埋めていくものだ。けれどシズちゃんのアルバムにはたった二人しかコメントがなかった。
当然それは俺とも共通の知り合いである、新羅とドタチンのもので卒業おめでとうという文字と共に数行にわたってメッセージがある。
確か卒業式の日はシズちゃんと追いかけっこをしていたので、きっとこれは後日に二人から受け取ったのだろうなと思った。でもその時、少しだけ引っ掛かった。
わざわざシズちゃんにだけ届けて、俺には届けないだなんてありえないではないのかと。それこそ面倒見の良かったドタチンならしっかりと手渡してくれてもいいはずなのに。

「まあいいか…」

腑に落ちないような、もやもやとした気分を抱えながらそれを閉じて元に戻した。そうして最後の、その隣に立てかけてある物に手を伸ばした。
なぜかわざわざ本屋などで貰う紙袋に入っていて、丁寧に仕舞われていた。割と部屋の中を乱雑にしているシズちゃんにしては、珍しいと思った。
でもこれが、もしかしてすごく大事なものだったら、とすぐに察した。好奇心のままに丁寧に袋から取り出して、しかしすぐに口をぽかんと開けて呆然とした。

「え…?なんで卒業アルバムが二冊もあるの?」

見覚えのあるそれは、数秒前まで眺めていたものと全く同じで、驚いてしまった。でもシズちゃんのはさっき見たし、じゃあこれは誰のかと。それは最後のメッセージ欄を見ればわかると思った。
だからはやる気持ちを抑えながらページをめくって、そうして。息を飲んだ。

「……ッ!?」

そこに書いてある文字は、予想外のものであまりのことに本を床に落としてしまった。慌てて拾いながらそのページを再度見るけれど、書いてある文字は変わりは無かった。
見間違いなどではなかった。
そこにはストレートに、見覚えのある男らしい文字で書いてあった。


『好きだ臨也』


「これって、俺の卒業アルバムだったんだ…っていうか、なんでシズちゃんが持っていて、こんな、こんなことを……」

頭の中は混乱していた。
無くしたと思っていたアルバムは大事にシズちゃんが保管していて、最後のメッセージ欄には明らかに愛の告白らしき言葉が書かれていて。
これが卒業当時書かれたものだとしたら、あの頃の気持ちがここに残っていて。つまりそれは。
学生時代のシズちゃんは、俺の事が好きだったらしい、ということだ。

「だって言わなかったし、俺のことが好きだなんて一言も……」

うろたえながらも手はてきぱきと動いていて、紙袋の中に綺麗に仕舞ってまた同じように本棚に立てかけた。焦りながらも複雑な気分で、勝手に見てはいけなかったと後悔した。
あれから、卒業してからもう何年も過ぎている。その間にお互いいろいろなことがあった。多分これを俺に渡さなかったのは、そういうことだ。
人の気持ちなんて、変わりやすい。俺だってその時の気分で変わる。ずっと変わらないのは、シズちゃんへの気持ちだけだ。
だからきっと、こんな風に隠して見つからないようにしていたのは、気持ちが変わったからだ。警察沙汰になるぐらい罠に嵌めたこともあったし、きっと淡い気持ちより憎しみのほうが強いだろう。

「もう…俺の事なんて…」

もっと早くこれを知っていれば、気持ちを告げたかもしれないけれどもう遅い。今更好きだったと告げるには、年月が過ぎてしまっている。
でもじゃあどうして、今こんな監禁まがいのことをされているのか意味がわからなかった。もし考えられるとしたら。

「そうだ、これで終わりにしようと思ってるんだ」

最初に捕まった時から、シズちゃんの様子はおかしかった。俺に怒りを向けるわけでもなく、普通に接してきてご飯がいるかと尋ねてきた。そんなこと、ありえない。
そこまで割り切れるのは、もう最後だからという決意があったのかもしれない。そうでないと説明がつかない。
だから俺のものになれと体を求めて迫ってきて、でもやっぱり自分の中でそれが非道な行為だと我に返りやめて。互いに分かり合えないといけない、という言葉を告げたのだ。
できもしないことを、言ったのだ。
きっとこれからも、この関係をなんとかしようとは思っていないだろう。俺が恋人同士の振りをしようと言って受け入れてくれたけれど、多分過去の想いを懐かしんで接しているだけに違いない。
若かりし頃の未練を成就させて、最後には。

「だってあんなにエッチな道具を揃えてるんだ。それを使わないわけがない」

気持ちが果たされたら今度は欲望だ。男なら誰しも好きな相手とセックスをしたいという願望を持つ。だから当時のシズちゃんも同じことを考えただろう。
きっとあのいくつもある玩具を使って、ぐちゃぐちゃにして、俺を壊そうとするだろう。最初の時にそれをしなかったのは、気持ちの踏ん切りがつかなかったからだ。
このまま数日過ぎれば、あんな風にすぐ傍で過ごしていればそのうち気持ちも固まってくる。その時にはきっと、鋭い瞳で俺の事を睨みつけながら襲ってくるに違いない。

「それで壊して、捨てるんだ。やっぱり男なんておもしろくないって」

シズちゃんの性格上、そんなことをするわけがないのだが、俺だけは例外だ。
シズちゃんの普通は俺に対しては適用されない。だから会えば容赦なく殴りつけてきたし、怪我だって負わされてきた。
学生の頃だって、向こうは好意を抱いていたのかもしれないが、そんなことは関係なく徹底的に怒りをぶつけてきたのだ。だからあそこで結ばれたとしても、いつかは捨てられていたかもしれない。
俺にだけは、そういう酷いことをしてくるのだ、昔から。

「好き、なんかじゃないよ。これはただの憎しみが歪んだ感情なだけだ」

本当に好きで大事なら、監禁したりなんかしない。だから俺の考えは間違っていないと確信した。

「好きだったのか…」

そう小声で呟きながらベッドの上に転がった。すると勝手に瞳から雫がぽたぽたとこぼれてきて頬を濡らした。もう顔はぐちゃぐちゃで、目元を服の袖で擦った。
頭の中もぐちゃぐちゃで、やっぱりシズちゃんの考えは理解できないと自嘲気味に笑った。考えないようにしようとすればするほど、深みに嵌って抜け出せないような気がした。


| 小説 |