ウサギのバイク 愛縛⑪
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2011-05-17 (Tue)
*リクエスト企画 lean様
静雄×臨也

静雄が臨也を監禁する話 切なめ→甘め和姦 微ヤンデレな二人

* * *
「いらないって、どういうことだ」
「なんか急に食欲なくなっちゃってさ。せっかく買って来てくれたのにごめんね」

バーテン服を着替えないままで、俺が寝そべっているベッドの横まで来て食べられなかったパンのことを聞いてきたのだ。
あれからなんだかいろいろ考えこんでしまって食欲が無くなったので、そのままにしていた。別に嫌いなわけじゃないんだと言えば、渋い顔をしていたが納得したようだった。
今日はこのまま晩御飯もいらないし、さっさと寝たいと言えば頷いてくれた。いつもだったらすぐテレビをつけるのに、それもせずに無言のままコンビニ弁当を食べようとしていた。
しかしそこで何かに気がついたのか、また傍まで来て告げた。

「なあ先に風呂に入るか?手伝ってやるぞ」
「うーん…別に外にも出てないし汗もそんなにかいてないから今日はいいよ。入りたくなったら言うから」
「そうかわかった」

わざわざ聞いてきたことに驚いたが、これ以上の接触は避けたい気分だったので断った。するとそれ以上は強く言ってくることはなく、俺は布団を被って本格的に寝ることにした。
少し体を捩らすと、ジャラリと鎖の音だけが部屋の中に響き渡った。もうさすがに慣れたけれど、昨日までみたいに恋人ごっこを続ける気はもうなくなっていた。
鬱々とした状態で監禁されていて、さすがに俺の方も堪えていたようだった。ため息をつきながら、ゆっくりと目を閉じた。するとすぐに睡魔はやってきて、眠ってしまった。



そうして夜中にトイレに行こうと起きあがったところで、急に横から腕を掴まれた。驚きながらそっちを見ると、眠そうに目を擦りながらシズちゃんが声を掛けてきた。

「風呂入るか?」
「ああ、いやトイレに行くだけだから。まだ深夜だしシズちゃんは寝てなよ」
「体はいいのか」
「うん、まあ少しは」

元々風邪をひいているわけでもなかったので、寝ただけで治るわけがなかったのだが曖昧に答えた。ベッドから降りようとして鳴った鎖の音で起きたのか、と思うと少しだけ申し訳ない気分になった。
これまでだったらそんな気になることはなかったのに、気がついたら勝手に嫌な気持ちが広がっていた。イライラをぶつけたいのか、何かを主張したいのか自分でもわからず、とりあえず離れた。
そうしてトイレまで行き、終わって扉を開けたところでどうしてかシズちゃんが立っていた。

「どうしたの?」
「やっぱりシャワーぐらい浴びたいだろ、遠慮すんな」
「遠慮なんかしてないよ。ああもしかして、俺ってそんなに臭う?」

少しだけ挑発するように口の端を吊り上げて笑ったのだが、そんな俺を見ても向こうの態度は全く変わらなかった。突っかかってくるかと思ったのに、盛大にため息をつかれただけだった。
そうしてポケットから鍵を出して枷を外して、脱衣所の方に無理矢理押しこめるようにしてから告げてきた。

「さっぱりしてこいよ。ここで見張っててやるから」
「はあ、わかったよ…」

なんだかもうどうでもよくなったので、中に入り服を脱ぎ始めてから初めて、足枷と手枷の鎖が外されていることに気がついた。それは大きな進歩だったが、あまり喜べるものではなかった。
どうせ大した意味なんてないだろうと思いながら風呂場を開けて、中に入った。そうしてお湯のコックを捻ったのだが、数秒経っても水からあたたかくなる気配は無かった。
しょうがないので一度止めて、顔だけ出して外に向かって叫んだ。

「ねえお湯が出ないんだけど?」
「ん?ああしまったな台所にスイッチがあるんだったな…」

どうやらお湯を出す元の栓は近くには無いようで、渋い顔をしていた。多分ここを一時でも離れなければいけないことを考えて、それが嫌なのだろうと思った。
そこまであからさまな表情をしなくていいのにと思いながら、言ってやった。

「迷ってるぐらいならまた鎖をつければいいじゃないか。ほらこのままの方が俺は寒いし。ちょっと足に掛かっちゃって、冷たいんだよね」

わざとらしく濡れた足を見せつけてやると、仕方ないという感じで近づいてきた。そうして一度は外した鎖を、また足枷と手枷に嵌めた。どちらにしろ逃げる気なんてないのだが、そう言っても通じない。
きっとこれからも、わかりあうことなんて絶対にできないと胸の中で確信した。

「いいか、逃げるなよ」
「はいはい」

そう言った後に台所に向かって歩き出した。その背中を見つめながら、俺は複雑な表情で唇を噛んだ。恋人ごっこだなんて、所轄ごっこ遊びで、意味なんてないのだと。
どんなに優しくしてくれても、逃がしてくれる気なんてないし、鎖を外すこともない。きっと、ずっとこのままなのだと思い知らされて呆然とした。
目の前が真っ暗になったような気分で、シャワーから流れる水に手を伸ばしそこからお湯が出るのを待った。雫は一気に肘の辺りまで濡らし、少し肌寒いなと感じながらもやめなかった。
扉は開けっ放しで風は入り、鎖も伸びていた。きっとそんなに時間は過ぎていないのに、随分と長い間そうしていたように思えた。
それからお湯が出たと同時にシズちゃんが戻ってきたが、再び鎖が外されることはもうなかった。



「なんだ、また食べてねえのか?そんなに辛いのかよ」
「うん…」

まさか胸が苦しくて食べれないなんて言えなくて、次の日も飽きれた表情のまま帰って来たシズちゃんに咎められた。何か腹に入れろとしつこく言われるのだが、頑なに拒否をした。
きっと今何かを口にしたら、吐いてしまうに違いない。それがわかっていて食べるわけがない。
これまでも仕事に熱中しすぎて食事を何日もしないことは多かったので、俺は大して気にしていなかった。それを言えば、バカかと怒鳴られたが顔を背けて無視をした。
そこでふと、疑問が沸いたので質問をしてみた。

「ねえ、実は俺がすごい病気を患ってたらどうする?」
「はあ?なんだそりゃ…」
「だってこのまま逃がす気なんてないんだから、新羅の診察にも診せる気なんてないだろ?本当は不治の病でした、なんて言われたらどうするかなと思って」

実際にはそんなことは起こっていないのだが、少しだけ落ち込んでいた気分が高まったので聞いた。すると向こうは顔を顰めて、滅多なことは言うななんて呟いた。
どう考えても本気にしている様子は無くて、残念だった。つまりもし本当に病気だったとしても、俺のことは逃さないということだろう。それは最終的には死んでも構わない、ということで。
やっぱりもう俺のことなんてどうでもいいのか、と胸が勝手にちくりと痛んだ。

「おいもしかして、病気の振りしてんのか?」
「え……?」
「実はすげえ元気なのに、そうやって弱ってるように振るまってるだけなのか?」

その言葉はショックだった。仮病かと言われれば、自分の感情がうまくコントロールできなくてこんなことになっているだけなので、病気ではないのかもしれない。
でもそれを言ったとしても意味はなく、肯定とも否定とも違うと思った。だから俺は黙っていた。

「なあ答えろよ臨也ッ!この間まで偉そうにしてた癖に、そうやって弱い振りして俺に同情誘おうとしてたのか!!」

「…ッ!?」

思いっきり鎖を引っ張られたので、反動で床に転がった。でも怒っているような声にしては暴力を振るわれなかったので、それだけが救いだった。
しかし軽々と体を掴まれて、腰だけ抱えられるとそのまま風呂場まで直行していきなりシャワーを出した。当然お湯なんかではなく水だったが、構わずに頭からびしょ濡れにされてしまう。

「冷たいよ…!」
「昨日だって本当は逃げようとしてたんじゃねえのか?俺の居ない間に、何かしようとしてたんじゃねえのか!!」

完全な言いがかりだった。冷静に考えれば全部あの日の偶然はシズちゃんが作ったもので、俺が何かを考えてしたことではない。
それぐらいわかるはずなのに、これだけ頭に血がのぼっていれば無理なのだろう。だから心の中だけで、言っても無駄だと諦めて水に打たれた。

「なんとか言えよ!」

でも結局俺は視線を外しただけで、何も口にしなかった。その時の俺は、もうシズちゃんと二人きりでまともにしゃべることすらも苦痛だと思っていた。

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