ウサギのバイク リセット21
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2011-05-28 (Sat)
*拍手連載
静雄×臨也 

臨也が自分の願いを叶える為に静雄と一緒に暮らした後の話 切ない系

* * * 話してみろ、と言われてもそう簡単にあの夢の出来事を話せるほどまだ整理はついていない。それにバカじゃないかと笑われるのはわかっていたから、新羅にだって全部話していないのだ。
しかしどうやって話を逸らそうかと、思いつきもしなかった。だから、俺はすぐに決断した。話しても差し障りがないことだけを言おうと。

「…すごい気分の悪い夢をもう何度も見てるだけなんだ」
「夢ってどんなのだよ」
「それは詳しくは言えないよ。だって、夢だから」

そうしてわざといつもシズちゃんをからかう時の笑顔を作って、言ってやった。この顔が嫌いだと何度咎められたかわからないぐらいで、だからきっとこれで引いてくれるとそう思っていたのだが。
一瞬怪訝な表情をしてじっとこっちを見たが、すぐにため息をつきながら告げてきた。

「あー…言えよ。聞いてやるから」
「ちょっと、いくらなんでもそれはおかしいよ。なんでシズちゃんにそこまで話さないといけないのさ?わかってるよね、俺が今までにしてきたこととか…」
「うるせえな、俺はもう嫌なんだよ!話を先延ばしされんのも、うやむやにされんのもたくさんなんだよ!だから、全部吐け!!」
「な、にそれ…っ、痛いって」

今までだってシズちゃんの前では適当に話を作ったり、黒幕かと指摘されて怒鳴られた時も知らないとシラを通し続けた。そうしてやってきたのだから、別に変なところはなかったのに。
いつものように、巧みに逃げようとしただけなのに突然切れたように叫んだ後に手首を強く握られて顔を顰めた。本当に今日のシズちゃんは、意味がわからない。困惑しているとすぐに力が緩められた。

「悪い、つい力が入っちまった。でも適当に言うのだけは、許さねえ。逃げれると思うなよ」
「逃げるって、そんなこと思ってないよ。言いにくいからに決まってるじゃないか」」

すぐに力は緩められて、謝られた時は驚いたがあまりに的確すぎる指摘に唖然とした。逃げる、という言葉が出てきてギクリとしたのだ。
確かにそうしようと考えていたのは図星で、どうしてこんなに鋭いのかと一瞬何があったのかと疑った。けれどきっと、ただの勘だと言うに違いない。そういう言い方しか、いつもしないのだ。
こんな俺が弱っている時に限って、問い詰めてくるなんて卑怯だと思いながら平静を装うしか方法は無くて。ため息を吐きながら、無理だと目で訴えた。だが。

「いつもあんだけベラベラどうでもいいことをしゃべる癖に、手前は肝心なことだけは絶対言いたがらねえ。わかってんだよこっちは」

言いながらなぜか体を密着するように詰め寄ってきて、俺は慌ててしまった。間違ったことは何一つ言ってはいないどころか、何かに確信を持って堂々と俺を責めてきているのだ。
そのことに、むず痒いような懐かしいような、変な気分になる。まるでこれでは、夢の中のシズちゃんではないかと。
あの最後の日にベッドに俺を連れ込んで、強引に寝かせた時と似ていると思ってしまったのだ。でもそんなのは、ただの錯覚なのだ。あまりにも現実と区別ができなくなって、おかしくなったのかもしれない。

「もうわかったよ、面倒だから教えてあげるよ。ただしそんなつまんないことで、とか絶対に言わないでよ」
「勿体ぶってんじゃねえ、さっさとしろ」

こっちは心臓がバクバク鳴っていて、それを告げるのに緊張していたのに早くしろと急かされたので、頬を膨らまして苛立ちを顕にした。でも結局あしらわれただけだったので、ため息をついた。
そうして、意を決して言葉を吐いた。


「大事な相手に、プレゼントを贈る夢だよ」


その一言を告げた瞬間、シズちゃんが本当に変な顔をしていてそれがやけにおかしかった。だから、ぷっと鼻で笑ってやったら急に頬を赤く染めてこっちを睨みつけてきた。
だから言ったのに、とニヤニヤしながら笑うと瞳が一層鋭くなる。でももう、そんなことは構わなかった。からかってやれたことが、少しだけ嬉しかった。

「じゃあなんで泣いてんだよ…!」
「それはこっちだって知らないよ。まあでもその大事な相手にプレゼントをする為に、俺が楽しい思いをする夢だったから嬉しかったのかな」
「くそっ、なんだよ紛らわしいんだよ!!」

騙された気分になったのか、悔しそうに俺から視線を外したのでもっと声を出して笑ってやった。
言ったことは嘘ではない。俺は夢の中でシズちゃんに初めてのプレゼントを贈れて、泣きそうなぐらい嬉しかった。少しの間だったけど、満足だってしていたのだ。
あの時、シズちゃんの気持ちを知るまでは。

「手前だって嬉しくて泣くこととかあんのかよ」
「そういう風にバカにされるのが嫌だったんだけどさあ。もういいでしょ?とにかく大したことない話だったんだからこれでおしまい」

これで終わりだから、という意味で言ったのだがどうしてかその言い方にカチンときたのか再び睨まれながら真剣な表情で尋ねられた。

「おい待てよ、大したことない夢で泣くわけねえだろ」
「はあ、もう説明するのも嫌なんだけどさ結局夢なんだよ?現実には大事な相手にプレゼントを贈ってもいないし、何もしていない。だからつまんない話だって言ったの。もういいでしょ」

自分で口にしながら、言葉が次々と刺さっていく。俺はシズちゃんにプレゼントを贈ってもいないし、何もしていない。嬉しい気持ちだって、あれは無かったものなのだ。だから悲しい。
嬉しかった分だけ、今が虚しくて寂しくてどうしようもないのだ。自嘲気味に笑いながら目線だけを逸らした。
殺されてもいないのに、男達に犯されて傷ついたわけでもないのに、勝手に心はダメージを受けているのだ。夢の中で俺自身も告白すらしていないのに、死んでしまう瞬間とても辛かった。

でも俺は生きていて、死んではいない。

死んではいないのに、気持ちがそこで一度死んだような衝撃だけは残っていて。ふとした瞬間に夢の中のシズちゃんの顔が浮かんでしまう。

こんなにも近くに本人が居るのに、まるで違って見えた。現実世界のシズちゃんが霞んでいて、常に夢の面影が付き纏っているようで。俺はおかしくなったのかもしれない、と本気で思った。

「夢じゃ、なかったら…」
「ん?なに、今なんて言ったの?」

呆けていたせいでシズちゃんが小声でボソボソ呟いたのが聞き取れなかった。慌てて聞き返すと、なぜか感情の全く読めない顔をしていて俺は首を傾げた。
いつも言いたいことをズバズバとはっきり言ってくるから、こんな風に迷っているような表情は意外だったのだ。多分初めて見る。でも驚いたのはそれだけではなかった。

「だからそれは夢………っ…!?」
「ど、どうしたのさ?」

顔だけを見ていたら確実に怒鳴っているようだったのだが、途中で声が聞こえなくなってしまう。まるで強制的に遮断されたみたいな、そんな違和感を覚えた。
だからびっくりして尋ね返したのだが、向こうも驚愕しているようで口をパクパク開いたり閉じたりしていた。急に声がでなくなったのではないか、と不安になるぐらいで。

「ちょっと!シズちゃん!!」
「ああクソッ!なんでもねえよ…ッ」

暫くは唇を何かの言葉の形に動かしてはいたのだが、それを途中でやめてため息をついてそう言った。途端にいつもの声が聞こえてきて、まるで意味がわからなかった。
だいたい俺は人の唇を遠くから見てその動きから話している内容がわかるぐらいには知りつくているのに、さっきの動きからは何も読み取れなかった。どこの国の言葉でもしゃべってるのかと。
でも外国語なんてまるっきり話せないのに、じゃあもう宇宙人語でもしゃべっているのだろうかと皮肉のように思いながら肩を竦めた。
それにさっきは俺に問い詰めた癖に、そっちはなんでもないという嘘をついていいのかと。でもそこまではっきり言ってもどうにもならないのは知っていたので、やめた。
これがあの夢の中のシズちゃんだったら、確実に聞き出そうとするだろうが、正直どっちでもよかった。俺がいくら頑張ったところで、想いなんて届きはしない。それがわかっているから。
死ねば願いが叶うと知っていた時は何でもできたけれど、逆に今はなにも自分からは起こせない。淡い夢を見せられて絶望した分だけ、気持ちが落ち込んでいた。
いつまでも面影を追っていないで、忘れたかった。

「とにかくこれで満足したでしょ?だから出て行ってくれないかな。まだ疲れてるから、もう少し寝るよ」

俺の話を聞いてなにをしたかったのか不明だったが、忌々しく吐き捨てるように口にする。それでもうこれは終わりだと思っていたのに。

「充分寝てたじゃねえか。どうせまた寝たら泣くんだろ?だったら起きてりゃいいだろ、っつーか監視するって言っただろうが」
「え…うわあっ!?」

突然乱暴に俺の腰を掴んできたかと思ったら、軽々と抱えあげて歩き始めたのだ。そうしてベッドを下りてドアに向かっていたので急いで叫んだ。

「監視って、そんなのはいらないって!聞いてる!?」
「飯はきちんと食え。それから寝るなら、ソファでうたた寝でもなんでもすればいいだろ」

ぶっきらぼうだけれどはっきりそう告げられて、一体シズちゃんに何が起こったのかと動揺せざるをえなかった。


※続きの22話は拍手で連載しています PCからだと右上にある拍手です
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