ウサギのバイク 男性も安心の大人の専門店「池袋最凶」 ⑪
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2011-06-02 (Thu)
*リクエスト企画 ぷぅ様
静雄×臨也

パラレル。アダルトグッズの実演販売を臨也の体を使ってモブの前でする静雄の話

* * *


今日の相手は久々に、何か手がかりを持っていそうな大物だと浮かれていた。そいつは俺の事を警戒してか、店の方には一切来なかったが当然偽名でネット上から接触を計るとあっさり釣れた。
そうして他人を装っていろいろと聞き出して、事情を大体は把握したのだ。裏の人間に目をつけられ、脅されながら例の薬の制作の方に関わったと。
そいつがやってきたことや、どんなルートで流されたとかそういうのは把握して粟楠会にも教えはした。けれども肝心の、誰が他にいたかというところまでは聞き出せずにいて。
だから直接俺が折原臨也として会えないかと尋ねた。薬の副作用で苦しんでいるから、どうしても話がしたいと言って。
いつものシズちゃんとの仕事は休みにして、一人で待ち合わせのラブホテルにデリヘル嬢のように現れると、迷いなく指定された部屋に向かった。しかし扉を開けて出てきた人間は。

「ああっ、いや閉めないで!待って、待って!」
「もう一体何なのさ、何で君がここに居るの!!」

とりあえず逃げるのを止めて扉を閉めて、部屋番号を間違えたわけでないことを確認する。待ち合わせ場所は間違いなくここだった、それなのに。
目の前には全身白いスーツでいかにもホストの格好をした、金髪頭の男が立っていた。しかもものすごく苛つくことに、シズちゃんにそっくりな顔の奴で数日前に店で見掛けた相手だったのだ。

「事情は話すからさ、ほら中入ってよ」
「嫌だよ、こっちは忙しい身なんだから君になんて構ってる場合じゃ…」
「臨也さんの欲しがってたもん、俺持ってるぜ?」
「……え?」

その言葉にドアノブを持っていた手を離して、恐る恐る振り返った。つい姿がシズちゃんと同じだからバカにされたみたいで頭に血がのぼったが、よく考えてみればいろいろおかしかった。
俺が接触していた相手の情報がそうそう簡単にこんな適当そうな男に流れるわけがない。もし可能性的を考えるとしたら、こいつの知り合いかもしくはもっと別の方法で情報を手に入れたか。
どちらにしろ、俺を出し抜くような言葉を告げてきたことは驚いたので話を聞くべきなのかもしれないと即座に思った。不機嫌な表情は隠さずに、渋々とあがった。

「ほら臨也さん、こっち座って話しようぜ。これ、好きだろ?」
「……まあ、いいけど」

放り投げられた缶を手に取ってよく眺めると、確かに俺が好んでよく飲んでいた缶コーヒーだった。しかもそれはどこにでも売っているわけでなく、少しだけ限定された場所にしかないもので。
どうしてそんなことを知っているのかと、ますますわからなくなる。態度は変えないまま、好奇心は一気のこの男に向かっていた。確か名前はデリックなんて言っていただろうか。

「あれからすっかり俺、臨也さんのファンになっちまってさ」
「俺の名前、呼び捨てにしないんだ…?」
「そりゃあ、まあ…なんつーか調べてたら呼び捨てにできないぐらいすげえ人物だってわかったし。まあ俺も他に好きな奴がいるから、臨也さんは俺の中でアイドル的存在まで一気に格上げして…」
「ふーん、君が見かけどおりじゃないっていうのはよくわかったよ。それで?」

前とは呼び方が違うことを指摘したら、それはもう長ったらしそうな話をし始めようとしていたので即座に話題を変えた。シズちゃんが前に、こいつに対していらっとすると言っていたことを思い出していた。
ソファに腰かけてプルタヴを引っ張って開け、中身を口にしたところで向こうが話し始めた。

「俺はあんたみたいにすげえ腕の立つ情報屋じゃなけりゃ、あの平和島っつったっけ?あいつみたいに強いわけじゃない。ごく普通の、どこにでもいる大学生だ」
「大学生?その恰好で?ホストとかじゃないんだ、へー…」
「同じ年だぜ。しかも前に臨也さんが入学しようとしていた大学に通ってる」

その言葉に、なるほどと頷いた。ただのファンとやらがどこまで調べたか知らないが、なかなか俺のそんな裏事情まで知っている相手は少ない。
自分のことをどこにでもいる普通の奴、と言ってはいたがもうこの時点で警戒度は高まり、少しだけ感心した。よくそこまで調べて、直接俺と接触しようとしてきたと。

「まあ最初は、そのもう一回ぐらいできねえかなって思って調べてたんだけど…まあいろいろ驚いちまってさ。俺にはあんたみたいな素晴らしい話術とか交渉術なんてないから、大したことはできないけど、危ない奴に引っ掛かろうとしてるのを見過ごせなくてな」
「それが今日俺が会おうとしてた奴のこと?でも言っておくけど、こっちは一応情報屋を本業みたいに活動しようとしてたぐらい…」
「いや、ぜってえあのオッサンはあんたを食おうとしてただけだって。実は何も知らない下っ端のような奴にあんたが好きにされんの、黙って見てられないだろ!」

唐突に立ちあがってそう怒鳴られたので、俺は唖然とした。向こうはすぐに怒りがおさまって、急に驚かして悪かったなんて言いながら向かいのソファにまた座り直す。
見た目が似ているから、というせいもあるだろうが、今まであまり会ったことがないタイプだなと思いながら眺めていた。何もかもが素人な癖に、随分と突っ込んだことをあっさりと知っていて口にするのだ。

「臨也さんが欲しがってた薬の情報って、これだろ?」
「……は?え、ちょっと待てよ…!?」

唐突に差し出されたファイルを引っ掴んで中身を確認すると、紙に書かれていた最初の数行で驚きの事実を知る。それは間違いなく、俺が喉から手が出るほど欲していたものだ。
卒業間際のあの日に男達に襲われて、悪夢のように体を蝕んできた薬の詳細がびっしりと書かれていた。慌てて顔をあげると、デリックはニッコリとさわやかな笑顔を浮かべていて。

「どうしてこれを、君が持ってるのさ!!」
「あの日のお礼がしたくて、それで役に立てばいいかなって」
「そんなことを聞いてるんじゃない、一体何者なんだよ!俺も掴めなかったものを、こうもあっさり…っ」

一瞬のうちにもどかしく過ごした数日が浮かび、悔しい気持ちが蘇ってきた。筋違いだとは思うが、へらへらと笑っている目の前の相手にぶつけたくもなる。
この薬のせいで俺もシズちゃんも、人生を狂わされて今でもそれは続いてるのだから。すると向こうは慌てながら、まあまあと言って宥めながら告げてきた。

「いやその、俺ってちょっとパソコン関係に詳しいっていうか…臨也さんは情報屋で、いろんなところから溢れる話をまとめて集約して、その中から本物とか偽物とか見分けたり、それを使って交渉するじゃないすか。こっちはどっちかというと、その末端の方っていうか。ただネット上にあるもんをそのまま盗むっていうか」
「なるほど、君はハッカーを専門にしてるってことか」

ようやく正体がわかって、少しだけほっとした。こういう奴はネットにはゴロゴロいて、たまに俺もそういう奴を手駒にして動いていたので存在はわかる。仕事の出来も、なかなかだということを。
そうしてそういう奴が、ひとたび何かに興味を持つと深いところまで調べあげて知らないうちにすごいところまで暴いてしまうことも。

「あ、でも調べられたのはいいんすけど、結局はどこの誰が作ったとかそういうところまでだったんで」
「じゃあもしかして、薬の中毒患者を治す方法なんていううまい話はなかったと?」
「そうなんすよ。だから俺、なんとかならないかって…なんっつたか、その一番エラいおっさんに聞いてみて…」
「は?聞いた?」

あまりにも普通の話のように言うので資料に見入っていた俺は聞き逃しそうになった。でもすぐにおかしいと気がついて、紙から目を離してデリックを睨みつけた。
するとなんだか複雑そうな表情をしながら、少しだけ申し訳なさそうに真実を教えてくれたのだ。

「だいたいその薬を使った者がどうなったか知らないし、もしできるなら元に戻るような薬とかも作りたいって。だから、まあ…」
「もしかして、俺の事を実験台に使いたいってことかな?」
「まあ平たくいやあそう、すね」

それまでは多少笑いながら語りかけていたが、さすがに最後には困った顔をしていた。完全に望んだものが得られなかったからだろう。
でも全く掴めないまま進展も無く過ごしていた俺にとっては一気に飛躍したことで先が見えた気がした。だって俺は、どんなことをしようとも元に戻りたかったし、シズちゃんを解放したかったのだ。
そのとっかかりができたこと自体、喜ばしいことだったのでにっこりと笑みを浮かべた。

「いや充分だ。ありがとう、デリック」

「なんか納得いかないんすけど、臨也さんにそう言われたら悪い気はしないっつーか…」
「でもお礼にエッチなことしたりしないから。それだけは言っておくよ」
「え、えええッ!?」

缶コーヒーに口をつけながらそうきっぱりと言い放つと、明らかにがっかりした表情でショックを受けている様子だった。まあ始めから、目的がみえみえだったのだが。
でもそう言ったのには、少しだけ理由があったから。

「代わりに、そうだね。もし俺が情報屋として復帰できた時には、君も一人の情報提供者として使わせて貰うよ」
「は……?それ、って?」
「それまでにはさ、その好きな相手とうまく結ばれてるといいね」

言いながら財布をポケットから取り出して、暫く使われていなかった名刺を渡した。一度は諦めかけていたけれど、また情報屋として生活できることの希望が見えたのを嬉しく思う。
どのぐらいの期間が掛かるかわからないけれど、実験台とやらになって、薬の症状を完全になくし。
また前のように、シズちゃんと普通に喧嘩することを望んだ。
束の間の歪んだ生活もそれなりに楽しかったけれど、やっぱり傍に居るよりは、いがみ合う関係の方がいいのだと確信していた。

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