ウサギのバイク 男性も安心の大人の専門店「池袋最凶」 ⑫
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2011-06-06 (Mon)
*リクエスト企画 ぷぅ様
静雄×臨也

パラレル。アダルトグッズの実演販売を臨也の体を使ってモブの前でする静雄の話

* * *
「これは…すげえな」
「俺も驚きましたけど、まあこれで後は向こうの返事待ち…と言いたいところなんですけどさっき連絡したらすぐにでも来て欲しいって言われて」

デリックと別れてすぐさま四木さんに連絡を取ると、わざわざ迎えにまできてくれた。黒い高級車の中で書類を渡し、一通り説明すると深くため息をついた。
そこに書かれていたのは、俺にとって有益なものもあったし、粟楠会にとってもかなりおいしい情報があったからだ。きっとこれも、あいつの仕業だ。
頭が切れるようには見えなかったけれど、そういう配慮はあるのかもしれない。全部俺の事を調べたのなら、今どんな状況に居て誰に監視されているかとか。
最後に言われたのは、あんな仕事は二度としない方がいいというなんとも優男らしい言葉だった。シズちゃんと同じ顔で言われたものだから、余計に複雑だったのだが。

「四木さんも、やっと厄介事から手を引くことができてよかったんじゃないですか?」
「元々そんなに長くあんな状態が続くとは思ってねえよ」

なぜだか不機嫌そうな表情をしながら、まだその紙を真剣に読んでいた。でも声色から、嫌な雰囲気は伝わってこなかったので少しは喜んでいてくれるのだろうと思ったのだが。
どちらにしろ、俺は自分の事より心配なことがあったのでそれを切り出した。

「これで、シズちゃんがあの店で働く理由は…」
「ねえな。確かにそういう約束だったな」

四木さん達も、自分たちのシマで起こった薬物に関することを調べていてそれに俺達二人を利用した。そうして望むものを手に入れたのだから、解放されるのは当然で。
これでシズちゃんが薬のことに関わる理由も、なくなった。全部綺麗になったのだ。あの日俺が受けたことを気に病んで、一緒に協力してくれる必要もなくなる。
早くそうなって欲しいと望んでいたけれど、いざこうなってみれば少しだけ寂しさを感じた。でも。

「じゃあもう、いいかな行っても?」
「待てよ…もしかしてあそこに戻らずにこいつの所に行くつもりか」
「だってこのまま四木さんが送ってくれて、話をつけてくれれば問題ないでしょ?」

それまで堅苦しく話していた口調を止めて、淡々と告げた。俺の決意は、すぐに伝わったみたいで四木さんは怪訝な表情をしていたが構わなかった。
もうあの店、シズちゃんと暮らしていた場所に戻るつもりはないと。どうせ大した私物も持ってはいなかったし、これからは今までとは違う生活が待っている。
それこそ外界から遮断されて、暫くはその薬の為に実験台になる日々が続くだろう。でも悪い意味ではなく、自分の体を治す為なのだ。そしてその更生は、粟楠会が後押ししてくれる。
これ以上ないお膳立てだった。この書類に書かれている製薬会社も、いきなりヤクザが現れたらどうしようもできなくなる。多分向こうもそれをわかっているとは思うのだが。

「平和島には会わないのか」
「まあ…そうだね。辛気臭いのは嫌だし、あんな関係はおかしかったんだよ俺達らしくない。だから次にもし会う時には、全部なかったことにして一からやり直す」
「お前がそうしたいっつうなら、しょうがねえな」
「四木さんって、俺に甘いからね」

そう言ってニヤリと口の端を歪めてみせると、ガキがと鼻で笑われた。見た目にはそこまで表情は変わってはいなかったが、悪い意味ではないのはわかる。
なんだかんだでいろいろお世話になったことを心の中で感謝しながら、椅子の背もたれに凭れた。四木さんが行き先を運転手に告げると、すぐさまそこに向かい始めた。
もうこれで、俺のシズちゃんに対する気持ちも永遠に告げることも、その機会も失われたのだとそう思った。




それからは、俺の生活はまた一変した。常に監視のある一室で過ごす、変わり映えのしない淡々としたもので。最初こそは体中を調べられたり、話をしたりと繰り返していたがそれもすぐになくなった。
多分その製薬会社の連中も、俺の事をどう扱っていいのか困っていたのだろう。でも俺は別に元にさえ戻れば、他の事は何もいらないと伝えていたので何もない部屋で過ごすのも苦痛ではなく。
パソコンを一台貸してさえくれれば、それでいいと。そうして外に一切出ることなく情報を得ながら、きちんと儲ける為の仕事もしたし、情報屋として動く為の足掛かりも作り始めていた。
当然折原臨也という名前を一切出さずに、別名の情報屋としてそれなりに名前を知られるのもあっという間だった。以前にネット上に蔓延していた俺の噂も、ほとんど跡形もなく消した。
それは当たり前のように、シズちゃんの噂もだ。でも俺がしたのは昔のものを消すだけで、今どうやって生活しているかとかそういうことは調べなかった。
今は必要なかったから。むしろ、忘れたいと思ったから。
新しいことに没頭して、それを作りあげていくのは楽しかったし、学生の頃と違って授業なんか受けずに仕事ばかりするのに慣れてきていた。
そうしてどんどんと引き受けて、それこそシズちゃんのことを思い出す暇がないぐらい忙しく動いて。そうしてあっという間に、月日は流れていく。
俺ははじめから何年もかかることを覚悟していたし、例の特定の相手に対してだけの発作の原因も知りたかった。
結局はそこまでは教えてくれなかったけれど、性行為もしなくなっていたので体が妙に疼くこともなければ悪夢をみることも、幻覚が見えることもなくなって。

そうして、ちょうどあの事件が起きてから二年と少しの歳月が過ぎた頃に、ようやく俺は完全に解放されることになったのだ。まだ完全ではないけれど、新薬を使い発作を抑えられると。
実際に強制的に発作を起こさせて、きちんと薬が効くかどうか調べもして、それが立証された。これならもう、シズちゃんの前でも大丈夫だと。

「折原さん、本当に良かったですね」
「ええ、いろいろありがとうございました」

手渡された薬を受け取りながら、長くつきあってきたそこの責任者と話をしていた。研究者にしては話しやすいタイプの人間で、常にこっちのことを気遣ってくれたのだ。
裏でヤクザから脅されている、というのもあったのだろうが、それにしても普通に接してくれた。特別扱いもせず、ずっと引き籠っている俺の事を案じてもくれた。
それが仕事だとしても、なかなかいい待遇だったと思う。たまに健康状態について診にきてくれる新羅とも、よく話をしていたのでそれなりにいい人間なのだろうと思う。

「少しだけお話をしたいことがあるのですが、いいですか?」
「はい」

もうこれで終わりだと思っていたので、改めてそう言われたのが少し驚いた。その時になって初めて、表情を少しだけ曇らせると一通の手紙を俺に差し出してきた。
それを受け取って、首を傾げた。ここに入ってきてから会っていたのは新羅だけで、ネット上では他の人間とも会話をしていたが誰だろうと思ったからだ。
考えられるとしたら、学生時代からいろいろ面倒をみてくれていたドタチンか、もしくは最近頻繁に連絡を取っているデリックか。
しかし中を開けてみると、簡潔にどこかの住所が記載されているだけでそれ以上のことは書かれていなかった。この筆跡は四木さんだろうか、とすぐに心当たりを思い至った。
とりあえずそれを折り畳んでポケットに入れたところで、こっちを眺めていた相手がポツリと話を始めた。

「折原さんがここに来られた、最初の日に実はあなたの部屋の目の前まで来た人が居たんですよ」
「え……?」

唐突に始まった話に、あっけにとられた。今まで全くそんなことは、聞いたことが無かったから。多分わざと、これまで隠していたのだろうが。

「その時に宥めたのが私で、その方がすごい形相で言ったのですが……治るなら、早くそうしろと。その間は自分の変わりにちゃんと面倒をみてくれと」
「はあ…」
「事情を知らないであなたが連れ去られたと思っていたみたいで。じゃあ話をされますかと聞いたら、なんだか急に恥ずかしそうな顔をして帰ってしまって。でもその方が来られなかったら、多分もっと酷い待遇をしていたかもしれなくて、今となってはよかったことだと感じてます」

黙って話を聞いていたけれど、心当たりがまるでなかった。いや、全くなくはないのだがそれだけはないと最初に打ち消したのだ。でも気になってはいたので、一応尋ねることにした。

「容姿とか、覚えてますか?」
「背が高くて、髪が金髪だったのを覚えてます」
「……っ」

それを聞いた途端に、この二年間忘れていた気持ちが蘇ってきてしまいそうで、慌てて押しとどめた。金髪というだけで、俺の思い描いた相手だとは限らない。
でも、知っている金髪頭は一人しかいなかったけれど。

「それからはもう見掛けることはなかったですけど、折原さんの事を大事な人だと言われてましたよ?」
「そう、ですか…」

さすがにその言葉には動揺した。久しぶりに胸がドキドキと高鳴り、嫌な汗が手に滲んでいる。落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かせるのだけれども、うまくいかない。
だってもう、二年も前の話なのだ。顔も会わさずに一方的に別れて、それきりだったけれどあの後にここに来てくれたのというのならそれはありがたいことだった。
嬉しかった。でも、昔のことだ。

「教えてくれてありがとうございます、また来ます」

そこで話は終わったらしく向こうも黙り込んでいたので、短くそう告げると部屋を飛び出した。ここ最近は結構自由な時間もあったので、施設内の敷地の中で出歩いたりはしていた。
だから出口も知っていたし、光の元に出るのも怖くは無かった。あのどろどろとした、最悪な出来事からやっと解放されたのだと気持ちを躍らせながら一歩踏み出す。

「とりあえず、ここに行ってみようか」

手紙を取り出すと書かれていた住所に向かうことを決意した。四木さんとは出る前にも会っていて、もう好きにしろとは言われていたけれどその時には何も言っていなくて。
一体この場所に何があるのだろうとわくわくしながら、携帯を片手に池袋の中のとある場所に向かって歩き出した。

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