ウサギのバイク リセット28
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2011-06-25 (Sat)
*拍手連載
静雄×臨也 

臨也が自分の願いを叶える為に静雄と一緒に暮らした後の話 切ない系

* * *

「いいだろ臨也」
「っ、う…」

再度催促するように名前を呼ばれて、我に返る。頭の中で必死に考えているうちに、手は既に胸の辺りまで這い回っていて、このまま何をするかなんて聞かなくてもわかる。
胸がドキンと高鳴って、何度か夢に見たできごとが目の前で起ころうとしている。でもそれを手放しで喜べないし、まだ迷っていた。気持ちの整理がつかない。
シズちゃんは自分の好きな相手のことを想いながら俺を抱こうとしていて、俺はシズちゃんが好きなのにそれを告白できないで。

そんなの、嫌だと思った。

抱くなら、きちんと俺のことを見て欲しい。そうでないと、知らない誰かに抱かれるのと同じだ。夢の中の出来事だったけれど、体を好き勝手にされる感触がリアルに浮かんできて。
わけがわからないぐらい気持ちいけれど、心はずっと乾いていて、悲しくて。それで、最後にはもっと暗いところに一人で突き落とされて。

「……い、やだ…嫌だっ!!」

そう大声で叫ぶと、意外にもまさぐる腕はぴたりと止まった。
俺は肩で息をしながら、瞳からボロボロと涙を流していて。そのままの状態でシズちゃんを見あげた。当然のことながら、向こうは驚いた表情をしていた。

「やっぱり、こんなの…っ、おかしい。ダメだ、ダメだよシズちゃん。こういうことは、きちんと好きな相手にしてあげなよ。誰かを身代わりにするなんて、ダメだ。俺が悪かったから」
「そうか…観念したんなら、お前の好きな相手にきちんと告白するか?」
「するよ、きちんと言うから。だからもうやめて、くれ…これ以上は…っ」

これ以上俺のことを傷つけないでくれ、とは言えなかった。
自分の命を投げ出してしまうくらい好きなのだから、体の関係でもいいかもしれないと思ったけれど、ダメだった。それが虚しいことだというのはわかっていたから、受け入れられなかった。
気持ちを押し殺して我慢するぐらいなら、傍に居ないほうがいいし、忘れようと考えたぐらいなのだ。流されてしまっても、ただ自分を追い詰めるだけで。
人生最大のチャンスを逃してしまった後悔ぐらいなら、いくらでもしようと。それぐらいで済んだだけマシなのだ。

「じゃあ早く言えよ」
「だから、それはいくらなんでも無理だ…っ、せめてこの病気が、治ったら…」
「治ったらきちんと言うんだな?」
「うん…」

仕方なく頷く。嘘でもそう言わないと、またさっきの続きをされるのだ。苦しい言い訳みたいなものだと充分にわかっていたけれど、そう言うしかなくてそれで止めてくれると思った。
じっと見つめながらシズちゃんの言葉を待つのだが、不意にその表情が、口の端が歪められて。唐突に胸の先端を指で弾かれた。

「えっ…ふ、あ…!?」

「言えるようになるまでは、俺が手前のことを抱いていいってことだよな?」
「な、なんで…っ、そうなるの!?や、約束がちが、う…!」

全く話が通じてないどころか、これはわざとだ。慌てて体を捩じらせて逃れようとするけれど、全く意味が無い。圧し掛かられて強い力で押さえつけられ、拘束までされているのだ。
これではまるで、本当に始めから俺の体を狙っていたとしか思えなくて。まさかシズちゃんが、なんで、と混乱する。

「約束なんて、そっちだって守る気なんてねえ癖に」
「…っ、それは…」
「だからこうでもしねえと、俺は一生手に入れられねえんだよ」
「なん、のこと…っ、あ、やだ、やめ…っ!?」

約束なんて守る気がない、と見透かされていたことにも驚愕する。俺のことを簡単に信じないのは、これまでの二人の関係から当然のことだったけれどはっきり言われると傷つく。
顔を顰めて切ない痛みを堪えていると、また胸の先端を親指と人差し指で摘まれた。その瞬間に考えが何もかも離散して、全身がビクンと跳ねた。

そして、その瞬間違和感を覚えた。
なにか大事なことを見落としているような気がして困惑していると、服が一気に捲くられて左の胸にシズちゃんの舌が添えられた。

「んあっ…!?え、え、なん…で…っ?」

生あたたかい感触と同時にすさまじい快感が駆け抜けていって、ようやく気がついた。
どうしてこんなに、体が敏感になっているのかと。

今までの人生の中で男同士の性行為なんて、経験したことが無い。胸を撫でられたり、舐められたりされたことなど一度も無い。それなのに、この反応は初めてする時のようなものではなかった。
まるで何度もこういう行為をされていて、既に何もかも知り尽くしているかのような反応で。薬などを使われているわけではないのに、これが耐えられないはずがない。
あの夢の中でだって、最初にされた時は声を押し殺すくらい容易かった。薬で朦朧としていたけれど、それぐらい耐えることができて。
じゃあなぜ今は、それができないのか。

「ま、まって…これ、おかしぃ…っ、へん、あ、んあぁ…」

胸の周りをゆっくりと撫でていた舌が、だんだんと上にあがっていってそうして乳首をべろりと舐め上げられる。するとまた甲高い声が漏れて、肩が震えてしまう。
こんなのは、絶対におかしい。
これではまるで、性行為に慣れて淫らになっている体が、最初から男を悦ばせるような反応を示しているみたいで。そんなはずがないと叫びたかったのに、目を細めることしかできなかった。
反対側の乳首も摘まれたり、弄ばれて呼応するように腰のあたりもビクンと跳ねる。呆然としながらも、その感覚に疎外感を覚えていて。

俺の体は、知っているらしい。性行為を、男とする激しくも心地いい快感を。

「うそ、だ…っ、こんな、あぁ、あ…うぅ、やめ、っ…」

さっきまでとは違う意味で涙がボロボロと溢れてくる。驚きと混乱と、つきつけられた真実をまだ頭が受け入れるのを拒否していて。嘘だ嘘だと心の中で何度も繰り返す。
そうして否定し続けていても何も変わらず、それどころか決定的な瞬間が訪れてしまう。それまで舐められていただけなのに、唇ごとふれててきてそのまま思いっきりシズちゃんの口内で吸われたのだ。

「やあっ、あ、あ…ん、あ、は、ああんぅう……!!」

抗えない愉悦が体の奥底を駆け抜けて、そのまま欲望を吐き出した。下半身はビクビクと麻痺を繰り返していて、けれども下着は濡れた感触はない。
ふわふわと最高に心地のいい余韻だけが襲ってきて、つまり射精せずにいきなり達してしまったことを意味していた。ドライオーガズムという言葉が頭の中を駆け抜ける。
普通に男同士で性行為をしても、こんなことは起きない。根元を塞き止められて、イけない辛さを何度も覚えこまされてようやく達することができる行為だ。
それが、どうしてたった数分も経たずしてできるのか。そんなことは、わかりきっている。
俺が繰り返しその行為をされて、覚えて、こうなるように仕込まれたからだ。薬を使われて、淫らにされた体に覚えこまされたのだ。
でも、それは夢の中の話で。

「はっはあ…んぅ…っ、ど、して…?」
「おい、臨也…?」

その時俺の異変を感じ取ったのか、シズちゃんが少し心配するような表情で俺のことを見つめてきた。でもこっちはそれどころではなくて、目元を潤ませながら唇を噛み締めた。

あれは、夢の中のできごとではなかったのではないのか。
願いを叶える為にシズちゃんと暮らして、裏では淫らなことを強要されて、それで最後は殺されて。それは全部夢のはずだったのに。

(夢じゃなかった、なんて…っ、しかもこんな形でそれを知ることになるなんて…っ、う)

いくらいいわけを考えようとも、ここまで体が顕著に反応していれば逃れようがない。紛れもなく、あれらの出来事は幻ではなくて、俺の身に起こったことなのだ。
どうしてそれに今まで気がつかなかったのだろう。こんな一番最悪な形で、知られることになってしまったのだろう。

「なんだ、どうした?」
「うぅ、っ…ご、め…シズちゃ、おれ…」

まだはっきりと違和感に気づいていないのだろうが、何かを感じ取ってはいるのだろう。さっきまで以上に真剣に顔が近づけられて、覗き込まれる。
どうしてさっき、キスをされた時に自分の体の異変に気づかなかったのだろうかと悔やまれる。知っていれば、絶対にセックスするのだけは避けたのに。

「おれの、からだ…っ、へん、なんだ…ふつうじゃない、から…」
「ああ?どういうことだ」

夢の中ではひたすらに、この体を隠してきた。バレたら終わりだと、嫌われるとわかっていたから。最低な行為をしていることだけは知られたくなくて、九十九屋にも頼んだというのに。
現実では、こんなにも簡単に知られてしまって。しかもシズちゃんは、多分俺の体に興味があるわけで。多分相性だって、いいはずだ。俺が合わせられるから。
満足させることだって、いくらでもできる。男を楽しませる為に、仕込まれたのだから。

「俺って、すっごく…エッチなんだ。だからしたくなかったのに隠してたのに…っ、バレちゃった、ね」

誘うように微笑みながらそう告げた。同時に心の中で抱いてきた気持ちが、粉々に砕け散ったような気がした。好き、という気持ちが。
嫌われているのだから、こんな俺でもきっと嫌われることはない。でも一生何があっても、もうシズちゃんに好かれることなどないのだろうと目を伏せた。


※続きの29話は拍手で連載しています PCからだと右側の拍手です
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