ウサギのバイク リセット34
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2011-08-15 (Mon)
*拍手連載
静雄×臨也 

臨也が自分の願いを叶える為に静雄と一緒に暮らした後の話 切ない系 静雄視点

* * * 「とりあえず臨也に事情を聴いてみないことには、何もわからないねえ。だいたいの予想はつくけれど。体は大丈夫だよ」
「そうか」

事前にあのヤクザ男が連絡していたので、俺が臨也を連れて行ってもすぐに顔色を見てくれて安心するように言ってくれた。それからいろいろ体を見たらしいのだが、端的に原因はわからないと言われた。
傍から見ていたけれど、俺にだってわからない。頭を撫でられただけで、どうして気を失ってしまうのか。

「精神的なものが関わってるとしか考えらないよ。まあでもそんなに気にしなくてもいいだろうと僕は思ってるけどね」
「そりゃあどういうことだ?」
「だって…君が好きなのって臨也だろ?」

今度は躊躇なく告げてきたので、はっきりと頭を振って頷いた。きっとこうやって積極的に診てくれたのも、あの相談していたことを考えてくれたわけでそれには感謝している。
もし言ってなければもっと別の反応をされたかもしれない。それぐらい、俺と臨也がこうして一緒に居ることは今までを振り返るとおかしいことなのだ。

「四木さんと君の言ったことを予想して考えると、もしかして何か精神的にショックなことがあって人と接することに怯えているのかもしれない。いつも危険なことをしているのだから、いつそんなことが起きてもおかしくはないと思ってた。でもね、君だけは臨也にとっても特別だと思うんだ」
「特別って…まあ、そうだとは思う」
「はは、なかなか言ってくれるね。臨也も静雄のことが好きだって考えてるの?」
「考えてるっつうか、まあ実際そうだしな…」

精神的にショックなこと、という内容に心当たりがありすぎた。多分臨也も俺と同じように目が覚めたら前に起こったことを全部覚えているはずで。だから死んだことが一番鮮明に残っているだろう。
俺が体験したわけではないからわからないが、その時のことが体に負担をかけているのも納得できる。人と接することに本当に怯えているのだとしたら、原因はいろいろ考えられて。
複数の男達に淫らなことをされた後、もしくは最中に刺されて死んでしまったらいくら人が好きだと言っているあいつでも恐れるはずだ。きっと死というものは、それぐらい辛いことだ。
単純に考えられるほどのものではない。それは突然死なれてショックを受けた俺にも痛い程わかっていて。辛さは同じだろうと。
でも幸い俺はあいつが好意を持ってくれていることに気づいているので、前とは違う。こんな状態の臨也を放っておいたりはしない。もう離れたりはしない。

「なあやっぱり最近あいつを見てなかったのは、この病気みたいなのが原因なのか?」
「うーん、そうだろうね。少し体が衰弱してるし、まともに食事もしてなかったみたいだから何かあったのかもしれない。もしかして何か心当たりを知ってるのかい?」
「ああ…相当酷い目に遭ったことは知ってる」

俯きながら少し小声でそう言った。そうだ、俺は知っていたのだ。どんなことがあいつに起きたか全部知っていて、でも安心していた。生きてくれているだけでそれでいいと、勝手に思ったのだ。
でもこの数日間に苦しんでいたとしたら、バカだ。結局これでは前と変わらないじゃないかと、拳を握りしめた。

「だから告白しようと思ったのかい?」
「まあ、そうだな」

ここまできて隠す必要はないとあっさり言う。告白にしては最低なことぐらいわかっていた。本当はその前に、こんなことになる前に言わなければいけなかったのに。
でも臨也が苦しんでいるともう知ったのだから、決意した。なんとしてでも想いを伝えると。そうして今度こそ、気持ちに応えてやるのだと。
拒まれるかもしれないと悠長なことを考えている場合ではないのだ。拒絶されたとしても、そんなことを気にせずに追いかける。だって元は俺の事が好きだったのだから、可能性がゼロなわけじゃない。
あいつは俺の事を諦めたけれど、俺はあいつを諦めるつもりなんてこれっぽっちもないのだから。

「じゃあ言ってあげればいいよ。まあすぐには伝わらないかもしれないけど。臨也は捻くれてるからね」
「弱ってるってことはうろちょろ逃げられることもねえだろうしな」
「そうだよ!臨也の面倒を見てあげればいいじゃないか!決めたのならそれぐらいできるだろ?」
「面倒…?ああ、それはいいな」
「君がいろいろ世話を焼いてくれるのなら、安心だしね。さすがに切れたりはしないだろ」

新羅は表情を明るくさせて頷きながら、臨也の様子を見てくるとリビングから出て行った。きっとあれこれ用意するものがあるのかもしれない。嫌がるあいつに薬を飲ますことは、確かに俺なら簡単だ。
しかし不安もあった。だから出て行った方向を眺めながら、ボソリと呟いた。

「いつまで経っても俺の気持ちに気づかなかったら、そん時は切れるかもな」



入っていいよという声を聞いてすぐに、部屋の中に足を踏み入れた。事前にどういう風に対処するかは話し合っていたので、俺は平静でいられた。

「……ッ!?」
「よお臨也」

ベッドに座っていた臨也に向かってそう声を掛けると、明らかに動揺していた。しかも今まで見たことが無いぐらい、怯えも含んでいてやっぱりかと心の中で舌打ちをする。
予想通りではあったけれどこんなのを望んでいたわけではない。隣で新羅と話しているのを眺めながら、俺はうまく取り繕えているか確認する。会えて嬉しい、という気持ちが顔に出てはいないだろうかと。

「臨也は納得いかないかもしれないけど、静雄が家まで連れて行ってくれるってさ。こういう時ぐらい、甘えておいたほうがいいと思うんだよね」
「え…?」
「でも…そんなの…」

いきなり俺が世話をしてやると言うと拒否されると思ったので、とりあえず家まで送ると嘘をつく。それですら嫌なのか、困ったような表情をしていたが気にしない。
そうしないとこいつがまた倒れるのは目に見えている。こんな状態でよく池袋まで来たと嫌味を言ってやりたいぐらいだ。こいつが弱いところを晒して、他の奴らに気づかれるのもマズイ。
あの四木という男はまだよかったが、多めに見てくれる相手の方が少ないだろう。
それに、臨也の隣に俺以外の奴がいるのがどうにも許せない。しっかりとこの目で見てしまったからこそ、嫉妬したのだ。あいつが俺以外の誰かと一緒に居るところなんて、久しぶりに見たから。

「じゃあ静雄さっさと運んでくれるかな?そろそろセルティも帰ってくるし、正直邪魔なんだよね」
「ちょっと、新羅ッ!や、やだって…!」
「大人しくしてねえと、足をへし折ってやるぞ」
「…ッ!?シズちゃんの癖に…俺を脅すなんて…!!」

ベッドに近づいて臨也の体を抱えてやろうとしたのだが、思った通りに抵抗される。だから有無を言わさず脅しの言葉を告げたのだが、やたらと動揺していた。
まさか俺がこんなことを言うなんて考えていなかったのだろう。だったらこれからすることは全部、こいつの考えから外れたことばかりだ。しかし怒鳴り声は途中で強制的に止んだ。
そうして掴んだ部分を見て、呆然としながら告げてきた。

「あのさ…なんでシズちゃんは、普通に俺にさわれてるの?」
「あぁ…?」

その言葉にやっぱりそうかと悟る。新羅が言っていたように、精神的にショックなことがあって他人とふれあえない状況なのだと。事前に知っていたけれど、まさかこいつ自身も気づいていたことに驚いた。
じゃあわかってて外に出たのかと、余計に臨也の軽率な行動に腹が立つ。もし何人かの男に囲まれて追いつめられたら、あっさりと捕まっていたのではないかと。
まだ俺は、こいつを殺した犯人達を知らないのだから。
隣でギャーギャー騒いでいたが、全く聞いていなかった。腹が立って腹が立って、そのほうが気になったからだ。これ以上つきあっていられないと思い、強引に手を振り払って腰を右手で掴んだ。
そうして足の下に手を入れると丁寧に抱き上げた。病人なのだからと俺なりに力を加減して気を遣った。前よりも顔色も悪いし細くなっているけれど、確かにぬくもりを感じて嬉しくなる。

「まだ、俺は納得してない!下ろせよッ!!」
「これ以上しゃべりやがったら、外に出て下までぶん投げてやるぞ」
「…っ、最悪!」

やっぱりこいつはうるさくしている方がいいなと思ったが、さすがに外でまで喚かれるのは迷惑だったので強く言い聞かせる。すると俺を睨みながら、また罵倒してきた。
なので有無を言わせず玄関まで歩いて行って、右手をあげて新羅に挨拶するとすぐに出て行く。無関心を装って歩きながら、表情を盗み見たが変な顔をしていて。まるで何かに耐えるような。

「そんなに嫌か?」
「嫌だよ、大嫌い、死ね!」

なんて返ってくるかわかっていたけれど、あまりにも懐かしい言い回しに口が緩んでしまう。掴んでいた腕に少し力を込めて、気づかれないように体を密着させた。

「それだけ悪口叩けりゃあ大丈夫だな」
「なんで笑ってんだよ…」
「さあな」

顔を逸らしてはぐらかした。勝手に約束を破って死にやがった反撃を、これでようやく始められると気分が高まっていて。今度は俺が責めて、落とす番なのだ。


※続きは拍手で連載しています PCからだと右側の拍手です
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