ウサギのバイク リセット37
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2011-09-01 (Thu)
*拍手連載
静雄×臨也 

臨也が自分の願いを叶える為に静雄と一緒に暮らした後の話 切ない系 静雄視点

* * *


「やっぱり体だけ、とか…」

自分で言っていて虚しくなったがとりあえずシズちゃんがいなくなってすぐにすることは、一つだった。多分俺自身の携帯電話はどこかに隠されているから、別のを用意する必要があったのだ。
棚を開けて鍵を探しそれを使って引き出しを開けると、そこには何台も携帯があった。その中から前に持っていた同タイプのものを選んで手に取る。
しかしすぐに連絡する先が見つからなくて、少し考える。その時不意に日付を確認して、驚いてしまう。数日は過ぎていたと思っていたが、もうこんなにも経っていたなんて。
夢の中で死んでしまった日が、もう明日に迫っていたから。
そのまま何事もなく過ぎていれば俺は多分何も思わなかった。死んだとか死ぬとかそれは現実の話ではなくて、だから願いとかそういうのも関係ないと。
けれどもう知ってしまっていた。あれが実は夢ではないのかもしれないという確証が、体に顕れていたのだ。シズちゃんとのセックスで、淫らに乱れてしまったことで。

「そうか…何もしていないけど、でももし本当だとしたら」

お膳立ては全くできていない。けれども夢が夢でないとしたら、何らかの方法で時間を遡ってもう一度繰り返さなければいけないとしたら、大変なことだ。これを無視したらとんでもないことになる。
シズちゃんが、死んでしまう。

「いやそんなことない筈だ。死ぬ為に生き返ったとか、でも…っ」

さっきまでの浮ついた気持ちはなくなって、一気に青ざめる。トラウマなんかに魘されている場合ではなくて、俺は前のように死ななければいけないとしたら。今のままでは無理だ。
シズちゃん以外の相手にふれられることすらできない体では、犯されて死ぬことなんてできない。それでは、困る。

「クソッ、とにかく新羅に連絡して薬か何かを…!」

慌てて電話帳を呼び出して新羅に掛ける。何度かこの携帯からでも連絡をしたことがあるので、多分出てくれるだろうと思ったのだ。すると数コール経った後に、向こうが取った。
そうしてこっちが何かを話す前に、一気にしゃべりかけてきたのだ。

『臨也よかった!さっきから君の携帯に掛けていたんだけど連絡つかなくて…そういえば静雄に取りあげられていたんじゃないかって気づいてさ。ああ、そうだそれで用件だけどいいかい落ち着いて聞いて欲しい。実はね、静雄のことなんだけど…』
「えっ、シズちゃんが…なんだって?」

あまりに早口でしゃべるものだから聞き間違いかと思って尋ね返したつもりだった。多分ちょっとした手違いで、何か別のことを聞いてしまったのではないかと。でも容赦なく続けられた言葉は。

『静雄が怪我をして、今こっちで寝込んでいるというか意識不明の状態なんだ』

「意識…不明?」

『外に出た時に喧嘩を吹っかけられたらしいんだけど、その時に打ち所が悪くて、そのままなんだ』

「……っ、嘘だろ」

それをはっきり聞いた瞬間、息が止まるかと思った。そうして、やっぱりという結論に至ってしまう。
俺が死ぬように動いていないから、シズちゃんが死にそうになっているのだと。あの頑丈な体が意識不明だなんて信じられない、だからおかしいのだ。何かが起こったとしか思えない。
とにかく気持ちを落ち着けようと目を閉じて、考える。会いに行くべきか、それともこっちで動いて俺自身が死ぬように仕向けるべきか。

『とりあえず臨也、一回うちに来てくれないかな?ついでに診察もするし、会いたいだろ静雄に?』
「…会いたい」

先に新羅から来ないかと言われて、ハッと我に返った時には勝手に返事をしていた。ほとんど無意識で、会いたいと言ってしまった自分が恥ずかしくて頬が赤く染まる。
本人が目の前にいなければこんなに素直になれるのにと思いながら緩みかけた頬を引き締めた。これは事情を確認しに行くだけであって、別に下心があるわけじゃないと。

『悪いけどタクシーですぐ来てくれないかな?いろいろと話すこともあるし』
「わかった」

それだけ言うと切った。そうして出掛けようとして、まだ起きたままで下着にシャツという恰好だったなと思い出す。どれだけシズちゃんが居なかったことにショックを受けていたのかと自嘲気味に笑う。
でもここに帰ってこないのが俺を捨てたわけじゃないとわかって、少しだけほっとしたのは事実だ。それに意識不明だとして、きっとすぐに目を覚ましてくれる自信があった。
だって明日、俺が死んでしまえばすぐ済むことなのだから。

「とりあえず行く前に少しだけあいつらのことを調べて…」

本当は一秒でも早く向かいたい気分だったが、なんとか堪えて携帯を弄る。行く前にせめて俺を殺してくれる奴らの事を調べておかないといけないといけなかったから。
今回は接触していないどころか、どうなっているかも知らないのだ。そうしてネットの情報を拾い集めているうちに、青ざめてしまう。

「なんだって?もう…組自体がなくなっている?」

何度か情報を確認してみるが、どうやら粟楠会と数日前に揉めたらしく既になくなっていると書いてあった。警察に突き出されている証拠写真まで出てきて、愕然とした。これではダメではないかと。
殺される相手がいなくなってしまったのに、どうやって一人で死ねるというのだろうか。自分で腹を刺すだけならまだしも、俺はボロボロに犯されないといけないのだ。

「クソッどうしたらいいんだ。このままじゃ、本当にシズちゃんが…」

苛立ちながら策を考える。こうなったらもう誰でもいいから俺を犯した後に殺してくれと頼むべきだと。場所さえわかっていれば、そこに俺に恨みを持った奴らを誘き出すことも、けしかけることもできる。
あいつはすごく淫らな体をしているから、犯し甲斐があると自分で噂を流すことなんて簡単なのだ。反吐が出るけれど。

「自分で死んだ後のことを用意するんじゃなくて、殺される為に用意するなんて馬鹿げてる」

鼻で笑いながらも目は笑っていない。本気だ。だってそうしなければ、絶対に悔やむことになってしまう。
好きな相手が死んでしまうなんて、俺には絶対に耐えられない。そんなの想像しなくてもわかっている。放っておいて取り返しのつかないなことになるぐらいなら、自らを犠牲にするほうが俺には楽なのだ。

「誰でもいい…いや、むしろ何人でもいい。俺の事を犯してくれる強い奴なら」

そう考えていると、ふと頭の中にさっきシズちゃんとセックスをした時のことが蘇ってきて、胸が高鳴った。さっきあれだけ喜びを感じていたのに、また酷いどん底に突き落とされるのかと悲しくなる。
本当はあの感触を忘れたくないし、できることなら二度三度としたい気持ちはあった。でももう時間が無い。もし会いに行って意識が戻らなければ、きっとそこで終わりだ。

「だってそうだ…まだ感想だって聞いてない」

セックスをした感想なんて聞いてどうするのかという話もあるけれど、俺が聞きたいのは別のことだった。
シズちゃんの好きな相手の代わりは、うまくできたかと。

「さてと、とりあえず出掛けるか」

考え事をしている間にいくつか火種のメールや書き込みはしておいたので、どれが引っかかるかわからなかったけれど待つことにする。
そこでふと、もしかして俺の願いが一つだけ叶ったかもしれない可能性を知った。どうせ死ぬことになるのなら、性行為は最後だけでいいというものだ。確かに俺はそれを望んだのだから。

「ふーんなるほどねえ。誰か神様でも見ていてくれるのかなあ?一度死んだ俺へのご褒美」

でもこうやって死んだ筈なのに時間が戻ってしまっているのだから、別の可能性も考えた。もしかしてずっと、一生、何度も何度もこれを繰り返すのではないのかと。
その度に殺されて、殺されないとシズちゃんが殺されてしまうかもしれないという怖い可能性に。同じ時間をループするということで、そんな不思議なことが起こらないとは言い切れないぐらい充分異質だった。

「でも絶対に何度繰り返されようとも、シズちゃんを殺させはしないけどね」

口にしながら二階へ続く階段をあがる。早く一目見たいと気持ちが弾んでいて、傍に居てくれていたことがこんなにも当たり前なことになっていたのかと実感した。



「いやだから俺の診察はいいんだ、シズちゃんのことが…」
「いいからほら、さわるだけでいいから臨也」
「あのなあ、新羅…っ、う!?」

玄関先で言われたのはすぐさま診察をするということで、さすがにそれには呆れた。さっさと来いといいながらそっちかよと思いながら押し問答を繰り返していると、おもむろに腕が伸びてくる。
そうしてしっかりと腕を掴まれて、頭の中にはまたあの映像が蘇る。体がガクガクと震えて自分では座ることもできないぐらい乱れきっている体が、肌を顕わにされている姿を。

「っ、は、離せ…や、め、やめろ、やめろ…!!」
「ああなるほど、全然変わっていないねえ。これでなんで静雄だけがさわれるのかな?やっぱり愛の力かな」
「新羅何か言ったか?」

大声を出したところですぐに手が離されたので、倒れるほどまでではなかったが、やはりまだ症状がおさまっていないのを感じられた。
並の相手ではこっちの方が力が強くて、何人かで抑えつけないと無理かもしれないと考える。それは男達に襲われた時のことをかなり真剣に悩んでいたのだが。

「しょうがないから薬出してあげるよ。ああでも静雄に会いたいよね。まだ詳しく診察したいからそこの部屋で待っててよ、二人っきりでね」
「だから待てって…!くそ!」

言いたいことだけ言って素早く別の部屋に引っ込んだ新羅に呆れながらどうしようかと考える。入るべきか、外で待っているべきか。
でもここまできたらどう意識不明な状態なのか見たいし、なによりシズちゃんともう少し一緒に居たい。それこそ最後に死ぬギリギリまで、傍に居たいのだ。明日にはもういなくなるのだから。

「あー…じゃあ、ちょっとぐらいなら、ね」

自分に言い訳しながら扉を開けて上半身だけを覗かせる。するとベッドの上に寝転がっている姿に心の底から安堵し、でも心臓がバクバクうるさかった。
やっぱり俺はシズちゃんが大好きだ、と思いながら。


※続きは拍手で連載しています PCからだと右側の拍手です
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