ウサギのバイク リセット42
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2011-09-16 (Fri)
*拍手連載
静雄×臨也 

臨也が自分の願いを叶える為に静雄と一緒に暮らした後の話 切ない系 静雄視点

* * *

「よく飛び出さなかったな」
「そりゃあ…俺も確認したいことがあったからな」
「…っ」

そいつの姿はまだ見えなかったけれど、四木さんが俺の後ろに立っているそいつに向かって話し掛けていたのでバクバクと胸が嫌な音を立てる。さっきまでは汗すらもかいていなかったのに、じんわりと手のひらが汗ばんでいて必死に歯を食いしばる。
振り返るのが怖い。できることなら、このまま見ないで済むならそうしたいと思う。でもできなかった。

「臨也から手を離せ」
「それは無理だ。そっちこそ近づいたら、これをもっと動かすぜ。いいのか?」
「…四木さっ、ん…や、め…!」

背後から足音がどんどん近づいて来て、声も迫ってきている。お願いだからこれ以上は近づくなと必死で心の中で考えていると、四木さんが代弁するように言ってくれた。でも俺の体を盾にとっているので余計に歩が悪い。
忠告を無視するようにまだ砂を踏む音が聞こえてきたので、顔をあげて目の前の相手に縋った。やめてくれと。
シズちゃんの前で、これ以上みっともない姿をさらしたくないと。でも当然、聞いてはもらえなかった。

「そうか、こいつをそんなに苛めてえのか」
「っあ…!あ、ぐ…うぅ、っ、く…!!」
「お前もさっきまでのはどうした?気持ちいいって言わねえのか?」

容赦なく四木さんがまたバイブを前後に素早く出し入れし始めたので、ビクビクと背中が反り震える。でも必死に唇を噛んで堪えて快感を押しこめた。
だけどそれを見て鼻で笑い、もっと奥を抉るように責めローションと混じりあったぐちゃぐちゃという水音が聞こえてくる。確かに体は感じていたけれど、顔色は真っ青でそれどころはない。

「ふっ…うぅ、ぁ…っ、んぅ、は…」
「くそっ、手前離せって言ってるだろうがよおッ!!」
「ひあぁん…っ!!」

もうダメだと目を瞑った途端、耳元で怒鳴り声があがり次の瞬間体ががくんと揺れて瞳を開いた時には両足が宙に浮いていた。腰を掴まれ寄りかかるようにシズちゃんに抱かれていて、驚きに喉がひくりと震えて声が出ない。
チラリとこっちを見たけれどすぐに真正面を見たので、四木さんと対峙しているのだろう。だけど俺にはどちらも関係ない。
シズちゃんに見られた、シズちゃんに抱かれている、シズちゃんに助けられたという事実がぐるぐると頭を回って混乱していた。

「やる気ねえのに、こいつにさわるんじゃねえ」
「そりゃあ悪かったな。でもそいつが俺ら迷に惑掛けるようなことしたからな、その仕置きぐらいしねえと示しつかねえんだよ」
「そうか、迷惑掛けたんなら俺から謝る。悪かった」

動揺しているうちに二人の話はどんどん進んでいくが、俺にはさっぱりわからない。そうして急に四木さんに対して謝りだしたシズちゃんに、心底驚かされる。どうして俺の代わりにそんなことを言っているのかと。
さすがにその言葉には四木さんも驚いたのか、普段あまり表情を変えないのに瞳がパチパチとせわしなく瞬いていた。

「俺からこいつに話つけておく。だからあんたも…もう二度とこいつに関わんじゃねえ」
「つまり二度と会うな、と?」
「ああ、情報屋の折原臨也はここで俺が殺す。それでいいだろ?」
「え…?」

さすがにそれには掠れた声が漏れた。一体何を四木さんと話して、宣言しているのだろうと戸惑っていると言い聞かせるようにもう一度告げられる。

「臨也は、俺が殺すんだ」
「…仕方ない、そこまで言うなら引くしかないな。情報屋は池袋の喧嘩人形に殺された、と上にも言っておく。お前ももう二度と面を見せんじゃねえぞ」

言った直後にこっちに背中を向けて、四木さんが足早に歩いて行った。よくわからないけれど、もしかして始めから俺に何もするつもりがなかったのかもしれない、と思った。だって最初捕えられた時には部下が居たのに、この場所には二人きりだったのだ。
いくら直接手を下すとしても、粟楠会の幹部が一人きりだなんてかなり珍しいことで。病気の事を口にした時のことを思い出しながらぼんやり考えた。
でもすぐに、現実に戻される声が耳に届く。

「おい、手前」
「…っう」

驚いた拍子に全身が震えて、まだ玩具が埋まり震えるそこがひくついてくちゅりと粘着質な音を立てた。瞬間かあっと耳から熱くなったが、俺を抱いていたシズちゃんは冷静にスイッチに手を伸ばし止めて床に再び座らせる。でも腕の拘束は解かないつもりらしい。
何からどう声を掛けたらいいかわからなくて、俺は俯いた。
本当だったら、よくも騙してという罵倒を口にしてもいいとは思うのだがそれはできない。やましいことが、俺自身たくさんあったからだ。一体何から問われるのだろうかと思ったら、意外な声を掛けられる。

「大丈夫か?」
「…うん」
「これ抜いていいんだよな?」
「…っ」

大真面目に聞かれて、あまりの恥ずかしさに俯いて目線を外しながら頷いた。するとバイブがずるりと引き抜かれて、体の中に埋まっていた異物感がなくなる。だけど打たれた媚薬の効果はまだ続いていた。
だから微かに短く呼吸をして緊張しながら次の言葉を待つ。

「聞きてえことがある」
「え…?な、に?」
「治ったのか、本当に。あの病気は治ったんだよな?」
「あ、ああそうか。うん多分さっき四木さんにさわられても嫌じゃなかったし、体も震えなかったしもう大丈夫と思う」

何を聞いてくるのかと構えたが、一番に病気の事を尋ねられてびっくりしながらも普通に答えた。随分と手荒だったけれど、トラウマだった性行為もさせられたのに変な麻痺も震えも気絶もなかったので治ったのだと思う。
元々精神的なものだと新羅が言っていたので、そういうことなんだろうと納得する。代わりに全身が敏感になっているけれど、とは言わなかった。

「そうか、よかったじゃねえか」
「……えっ?」

その瞬間ニッコリと笑顔を浮かべて、本当に嬉しそうにしたので全身が固まる。あまりにも無邪気に笑っていたので、俺自身も見惚れてしまった。
やっぱり怒った顔よりこっちの方がいいと思っていると、予想もしてなかったことを次々と告げられた。

「じゃあ約束…覚えてるよな?病気が治ったら告白するって話。あとそうだ、いいか俺は手前の好きな相手を知ってる。それで夢の中の奴にすげえ腹立ってしょうがねえ」
「ま、待って待って!ちょっと言っている意味が全然わからないんだけど!?」

いきなり話し始めたことに度肝を抜かされながら、慌てて遮る。だけどシズちゃんは全く気づかずに、気づいていても無視をするようにしゃべる。
まるで今まで堪えていた気持ちを一気に吐露するかのように。

「つうか鈍感すぎるし、すぐ諦めるし、言いたいことは言わねえで逃げるし最低だよな。ここまでややこしくしやがったのは、全部手前のせいだ。俺は悪くねえ」
「ねえいつから俺の悪口になったの?」
「でもやっぱ嘘ついたのは…悪かった」

今日二度目の謝罪に、驚きで開いた口が塞がらなくなる。多分これは、新羅と企んで死んだふりをしていたことなんだと思う。あまりに潔くてシズちゃんらしいと思ったのだが、素直に許すかについてはどうしようかと考えた。その迷っている間も、止まらない。

「俺は死んだって言われて残された奴のことを考えろ、って教えたかったんだよ。てっきり泣きついてくるかと思ったのに、何もしやがらねえしあっさり見抜くし…全部台無しじゃねえか。まあ結局ここであの病気が治ったのなら、よかった。勝手に襲われかかってたのは許せねえけどな」
「あの…ほんと、もう少し俺にも意味が解るように話してくれないかな?」
「ああっ!?まだわかってねえのか!じゃあ時間やるから今すぐ逃げずに考えろ!!」

どういう理由であんな嘘をついたのか、さっきどうして怒っていたのかを話しているらしかったが俺にはさっぱり理解できなかった。どれもシズちゃんらしくないものだったからだ。
そして最後には怒鳴りながら、良く考えろと言って真っ直ぐ見つめてきた。これで最後だと言わんばかりに。

「手前の夢の中で一緒に暮らしてる奴が今でも好きで、そいつが実在してんのも知ってる。そんで俺は前にすげえ好きだった奴に死なれたことがある。それは夢じゃねえ。全部聞こえてるよな?だったらしっかり考えろ」
「考えろって…なんで」
「これがわかりゃあ全部おさまんだよ。早くしろ、もうこれ以上は待てねえ。わかったら、言いたいことはっきりと全部教えやがれ」

有無を言わせない言い方に戸惑いながら、朦朧とした意識で必死に考える。きっとこれが普通の状態だったらもっときちんとわかるのに、と歯痒く思いながら一つ一つの言葉を頭の中で反芻した。
でももしかしたら、いつもより思考が鈍っているから凝り固まった考えをせずにすんなりとわかったのかもしれない。すべてが繋がった瞬間、そう思った。

「夢じゃない?えっと…夢じゃないって、それ…」

最後に頭の中に残ったのは、夢じゃないという言葉だった。シズちゃんの彼女が実在していて夢ではないことぐらいわかっている、と思いながらそこで思い至る。
俺が魘されている内容が夢じゃないと気づいたのも最近だ。やけに引っ掛かってしょうがなくて、ぐちゃぐちゃになりながら呟いていた。

「うーん、つまり俺がずっと魘されていた夢の内容が実は夢じゃなくて、本当に起こったことなんだって言ってもシズちゃんは信じてくれるのかな?」
「ああ信じてやるぜ」
「えっ?」

その瞬間、なぜか急にシズちゃんに抱きしめられてしまい息が止まる。

「もう手前にはこれが見えるだろ?ほら、やるよ」
「は…?なに、なに…これ?」

しかし急にガバッと体を離して、ズボンのポケットから何かを取り出し手渡してきた。受け取ったと同時に、それに見覚えがあることに気づいて唇が震える。バクバクとシズちゃんにも聞こえそうなぐらいの音で心臓が鳴り始める。
そうして恐る恐る封筒から手紙を取り出して、開いた。途端にぶわっと涙が目尻に溜まって。
短い手紙の文末には、ぐしゃぐしゃと黒く塗りつぶした部分があったがその下にそこに書かれているのとは違う汚い字で文字が追加されていた。

『バーカ』

それは多分、見えないようにしたつもりでしっかりと見えていた最後の言葉に対するものだ。ムッとしたけれど、その下にやけに大きく書かれている内容が、もうダメだった。

『好きだ臨也』

ずっとずっと、欲しかったものがそこにあったのだ。


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