ウサギのバイク リセット43
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2011-09-19 (Mon)
*拍手連載
静雄×臨也 

臨也が自分の願いを叶える為に静雄と一緒に暮らした後の話 切ない系 静雄視点

* * *

「…っ、どうして今更、こんなもの」
「ずっと手前が気づかねえから遅くなっただけだ。こっちにもいろいろ事情あんだよ、いいからさっさと返事しろ」
「なにそれ、っ、ぅう…偉そうにして、嫌い!大嫌いだよ」

遂にはポロポロと瞳から涙をこぼし始めると、目の前のシズちゃんが少しだけ笑った。それから少しだけ不安げに瞳をこっちに向けて、でも早く言えと催促する。
それにすぐ答えるのもむかついたので大嫌いだと心にもない、いつものことを告げれば背中を震わせて大袈裟に笑い始めた。いつもだったら青筋を浮かべて胸倉を掴んでくるのに、全く逆だ。それがなぜか悔しい。

「やっぱバカだな手前は。嫌いしか言えねえのかよ」
「そっち、こそ…!どう、なんだよっ、ぅ…く」

涙目で睨みつけても大して効果ないだろうと思いながらも、しっかりと目線を合わせて見つめる。するとぷっと吹き出されたので顔を顰めて不機嫌なのを隠さない。
もう絶対に本心を言ってやるものか、と不貞腐れたところではっきり告げられた。

「俺は好きだぜ、臨也」

「…っ、どうしてそういうこと、はやく言わないんだよ!」

改めて告げられると嬉しくて、どんどん頬を伝う雫が止まらない。でも同時にどうしてこのタイミングで今更、という気持ちが強かった。
思い返してみればヒントはたくさんあったけれど、結局どれもはっきりとは言っていないのだ。そんなのシズちゃんらしくないと思う。俺が夢だと思い込んでいた殺された時のことを知っているのなら、もっと早く教えてくれればよかったのに。
そうしたらこんなことにはならなかったし、この間のセックスの意味だってちゃんとわかったのだ。勿体ないと、今では思う。

「言えなかったんだって。そういう約束だったんだ。時間を戻る代わりに、俺からは臨也には絶対告白できないっていう条件があったんだよ」
「時間を戻る?約束?条件?一体…何の話をしてるの」

急に非現実的な話をし始めたので首を傾げた。なんとなく普通ではないのはわかっていたけれど、あからさまにそのことを言われても全く現実味がない。いくら黒バイクとか妖刀を持つ少女が池袋にいるとはいえ、時間を戻るなんて根本的な話をされても困る。
訝しむようにじろじろと眺めていると、あっけらかんと言われる。

「手前も使ったんだろ?あのコインのことだ」
「コイン…って、もしかして未来を指し示すってやつ?なんでそれ、シズちゃんが知ってるのさ」
「なんでか知らねえが、その封筒の中に入ってたんだよ。そんでこうやって時間を戻すっていうか、全部をリセットしたんだ」
「リセット…?」

まさかシズちゃんの口から俺の探し出した未来を指し示すコインの話が出るとは思わなくて、少しだけ驚く。しかもどうしてか簡単にそれを手に入れていたので、少しだけムッとする。
でもその後のリセットしたという言葉に、少しだけ納得する。あの時殺されたと思っていた俺が、なぜか生きている上にシズちゃんに告白する寸前まで戻ったのだ。それがリセットだというのなら間違いではない。
それにしても俺の時とは随分と違うようで、これは詳しく聞かなければいけないと思った。けれども。

「って、おい…なんかさっきまでより苦しそうにしてねえか?」
「うぅ、しょうがない、だろ…四木さんだから手加減してくれたけど、これ一応媚薬なんだから。しかも俺結構こういうのに弱くて、さあ…っ、う」
「弱いってどういうことだ。なんか和らげる薬とかねえのかよ。家に帰ったらあるのか?」
「無理だよ、でも暫くすれば抜けると思うから…苦しいだけだし、我慢すれば…とりあえず腕の縄を外してくれるかな」

こんな時に体が熱くなるだなんてあり得ないと思いながら、どんどん呼吸は激しくなりまだ戒められている根元が苦しくて辛い。だからまだ半分勃起している自身をチラリと見ながら、縄を外して欲しいと頼んだ。
けれども俺の予想を裏切るシズちゃんらしいことを言われてしまう。

「なあそれ苦しいんだろ?さっきも気持ちいいって言ってたし、我慢してねえで出しちまえよ。俺も協力してやるぜ」
「そんなことしなくていいって、うぅ…これ外してくれるだけでいいからさ」
「外さねえ。いい機会だから、このままするのも有りだな」

協力するだなんて言われても、そんなの鵜呑みにできるわけがない。だってシズちゃんなのだ。しかもなんだか怪しいことを言いだして、眉を顰める。
いくら昨日流れでセックスをしてしまったからとはいえ、すぐにまたしたいなんて思わない。確かにできたら嬉しいけど、今は特に俺の体が敏感になっているからできるならしたくはないのだ。これ以上淫らな姿なんて見られたくない。
それなのにニヤニヤと笑いながらシズちゃんが体を密着させて、そのまま背中を抱えられながら床に押し倒される。縛られている為に下手に身動きはできないし、この体勢は完全にヤバイと焦った。

「ねえ、ちょっとさあ…これはどういうことかな?」
「好きだって言われて、こんなにエロい恰好の手前が転がってたら押し倒すしかねえだろ。こっちが我慢なんてできねえ」
「勘違いしてるけど、まだ俺は君に好きだなんて言ってないけど!嫌いとは言ったけどさあ」
「じゃあ好きって言わせるために、セックスしようじゃねえか」

とんでもないことを言いだしたシズちゃんを鋭く睨みながら、とにかく必死にもがいた。四木さんに捕まった時よりも必死で、一応は落ち着いているように見せていたが内心はパニック状態だったのだ。
このままだとさっきみたいに、とんでもなく淫らなことを口にしながら喘ぐ未来しか見えないと思ったから。唇を噛みながら、それはもうとにかく真剣だった。

「冗談じゃない!俺は、したくないって…言ってる、のに、っ、あ」
「したくねえって本当か?ここはそんなこと言ってねえぜ」
「えっ、あ、や、め…っ、ひぐ、ぅ、ぁ…ああ!!」

なんとなくこうなることは予測できていたけれど、あまりにもその通りになって目尻に涙が再び浮かぶ。シズちゃんがかなり意地悪なことは、昨晩のセックスで身に染みている。
それにまだあの時のことだってきちんと話をしていないのに、こんな体優先だなんてあんまりだと思う。どこまで本気かはわからないけれど、俺はかなりの覚悟で殺されようと決意して、好きで好きでどうしようもなくて、さっきだって死んだと聞かされた時は本当に辛かったのに。
多分シズちゃんが俺に向けているものと、俺がシズちゃんに向けているものはかなりの差があるだろう。一方的に俺からの好意の方が強い。
それなのに淫猥な体のせいで、こんなにあっさりとセックスをしてしまうなんて許せなかった。そんな軽い関係だと思って欲しくない。シズちゃんだってそれなりに辛い思いをしたかもしれないけれど、俺の方がもっともっと、ずっと悩んできたんだと言ってやりたくて。
でもそれも少しだけ硬くなっていた自身を握られれば、すぐに消える。考えていたことも全部弾け飛んで、甘い声を出さないようにするのがやっとだった。

「こんなになってんのに、我慢なんてしなくていいだろ。同じ男なんだから、辛えのだってわかんだって。そういうところ、頑固だよな」
「っ、なんだよ…そんな、俺のこと知ってるみたいに、言って…好きとか、今更すぎるし、もう一度死んだのに、どうしてっ」
「どうしてリセットしたのか、って聞きたいのか?」

シズちゃんの指先で性器をぐりぐり軽く弄られながら、必死に怒りをぶつける。まるで何でもわかっているみたいに言うのが、許せなかったからだ。
俺の何をどう知っているのかと。
確かに最後死にかけた時に、一瞬だけ戻りたいと思った。全部最初からやり直せたらいいのに、と考えたかもしれない。だけど思っていたのとは全然違った。
こんな中途半端に前の記憶もあって、シズちゃんとも一緒に過ごしていないし、精神的に病んで苦しみたかっただなんて考えてない。そんなのは絶対に望んだものではない。
だからリセットなんて、しなくてもよかったのに。

「手前が考えそうなことだよなあ、まあ別に全部を知ったわけじゃねえし正直何考えてんのか今でも全然わかんねえ。俺とは性格だって合わないし、かわいくねえことの方が多い」
「ほらやっぱり、嫌いじゃないか」
「だからまだ俺は怒ってんだよ。手前が勝手に死んじまったことについて。問題なのは死んだとか死んでないとかじゃねえ、どうして自分でそっちの選択肢を選んだんだよ。うまく逃げる方法だってあったのに、死んででも叶えたい願いってのは結局なんだったんだよ!!」
「…っ」

その時急に怒鳴られて、肩がビクンと震えた。だけど本当の事を言うつもりにはいかなかった。
願いをどうしても叶えたかったわけではない。俺が死ななければシズちゃんが死ぬのが耐えられなかっただけだなんて。

「じゃあシズちゃんは自分の命と引き換えに、何を願ったの?あのコインに、どういうことを望んだの?望んだから、ここに居るんだろ?」
「ああ?命と引き換えって、どういうことだ」

同じあのコインを使ったというのなら、提示された条件も同じはずだった。願いを叶える為に自分の命を引き換えにするか、俺と同じように自分が死ななければ好きな相手が死ぬことになるか、そういう説明を受けて選択しただろうと。
だけどそう問いかけた返事はなくて、やけに驚きながら不機嫌そうに逆にこっちを問い詰めてきた。何かがおかしい、と思った。

「ねえ君はどうやって時間を戻ったの?二つの選択肢があって、多分願いを叶える方を選んでこうなったんだよね?聞いてないの?それが自分かもしくは他人の命が引き換えだって」
「なんだそりゃあ、そんなややこしい説明受けてねえぞ。俺の選択肢に不幸なものはない、って言われたぐらいか?」
「は…?不幸なものがないって、じゃあ願いの代償が毎回命が引き換えじゃないってこと?嘘だろ…?」

シズちゃんの言っていることを推測すると、どうやら本当に俺のように命を引き換えに願いを叶えたわけではないとわかった。だけどそれじゃあ、あまりにも不公平だと思う。
俺は本気でシズちゃんに好きになってもらう為に命を投げ出したのに、向こうは簡単に何もせずにlここにきただなんて。悔しくて唇を噛む。

「あーそりゃあ多分…手前に自分からはぜってえ好きだって言えねえっていうのを引き換えに、願いを叶えてもらったからじゃねえか?命を引き換えにするよりはマシだったが、俺には相当堪えたぜ」
「好きって言えないって…じゃあもしかして、ずっと最初から俺に言いたかったのに我慢してたってこと?」
「我慢っつうか、言っても聞こえてなかったじゃねえか。他のこともそうだ、時間をリセットして戻って来たことに関しては言えなかったんだよ。言ったとしても臨也には聞こえなかったらしいぜ」
「そうか、じゃあなんかパクパク口を動かして変な顔してたのって…それに関することを言ってしまったから?俺には全く聞こえなかったけどさ」

最初は理不尽だと思っていたけれど、内容は違うけれど条件をつけられていたと聞いて少しだけ納得した。確かに自分の本当の気持ちを素直に言えないだなんて、シズちゃんにとっては拷問に近いだろう。
納得しながら少しだけ苛ついていた気持ちを落ち着けようとため息をついたのだが、さっきまで突いていた指先が実は転がっていたバイブを拾っていたことには気づかなかった。

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