ウサギのバイク リセット46
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2011-11-11 (Fri)
*拍手連載
静雄×臨也 

臨也が自分の願いを叶える為に静雄と一緒に暮らした後の話 切ない系 静雄視点

* * * 「臨也、そろそろ起きねえか?寝すぎだろさすがに」
「んぅ…っ、やだ、まだ腰痛いし」

枕に顔を埋めて頬ずりをしながらごろごろと転がっていると、くしゃくしゃと頭を撫でられたので薄らと瞳を開く。とっくに起きてはいたけれど、何度か寝て目を覚ましてを繰り返していたので時間感覚がすっかり麻痺していた。
それもこれも、全部なにもかもシズちゃんが悪い。
いくら媚薬を盛られて初めての時より長くできたとはいえ、意識を飛ばすまでなんてありえない。しかも向こうは薬なんて使われていないのにだ。こんなのがこれからも続くようなら絶対に言ってやらなければ、と言いながら上半身を起こしかけてそこで固まる。
腰の痛みが尋常じゃない。前は多分結構ヤバイ薬を使われていたから何人男達に入れられようとも、平気だった。
でも四木さんが打ったのは結構普通のもので、だからそんな都合のいい効果なんてないのだろう。実はこんなにも面倒くさいものだったんだと今頃になって知った。

「昼飯もう作ってんだよ。しょうがねえから、これでいいだろ?」
「…っ!もう、こういうの平気でするんだから…っ、恥ずかしい」

いきなり腕を掴まれて強制的に起こされたかと思うと、そのまま抱きあげられてシズちゃんの手が優しく腰を撫でてきた。さり気なくセクハラだ、と思いながら口うるさく言っても本心ではそう思っていないので本気で抵抗をしたりはしない。
いつもの元気があればもう少し小言を言っただろうが、今日はもうそんな気にはなれなかった。

「そうか、恥ずかしがる姿が見れるんならいくらでもやってやるぜ」
「リクエストなんて、してない…っ、あ!」
「ほらさっさと行かねえと冷めるぜ。まあ冷蔵庫の残りもんで作ったから大したことねえけどな」

いきなり膝の辺りを強く握られたかと思うとそのまま足早に歩き出して、すぐさま階下に向かう。既に俺の部屋を一歩出たところから、いい匂いが漂っていた。なんだかそういうのも久しぶりだな、と思いながら不意に思い出した。
こうやってすっきりと目覚めるのが久しぶりだったこと。前に酔っぱらった俺が、シズちゃんを起こしたこと。

「あのさあ、俺が寝てた時…魘されてなかった?」
「ああ普通に寝てたぜ。まあ俺もぐっすり眠ってたからよくは知らねえけどな」
「ふうん、それならよかったけど」

これで本当にあの数日間続いた精神病が治ったということで、安堵した。それがきっかけでシズちゃんが俺の世話をしてくれていたのも、これで最後なんだなと寂しくなる。
けれどシズちゃんは楽しそうだった。鼻歌でも歌いだしそうなぐらいに、機嫌がいい。
そうしてソファの上に座らされると、既に目の前の机には昼ご飯が置かれているようだった。しかも俺とシズちゃんのものが明らかに見てわかるぐらい、お皿の上に乗っかっている量が違っている。

「まだおかわりあるけど、とりあえずそれは全部食べろ。昨日から何も食ってないんだからよ」
「まあこれぐらいなら、いいけどさ。それにしてもチャーハンなんて、また男らしい料理だよね。野菜が繋がってたりしない?」
「いいから黙って食いやがれ」

ピシャリと怒られたので肩を竦めながら左手でスプーンを握る。そうして半分ほどご飯を掬うと、口に運ぶ。すぐにしょっぱい味が広がって、俺の好みはもう少し薄味だなと思いながらもとりあえず黙っておく。
シズちゃんらしい味つけだなと思いながら本人を横目で見ると、こっちをじっと見ていて慌ててしまう。すぐに目線を逸らして、やけに驚いて動悸の早くなった胸を落ち着かせる為に深呼吸した。

「うまかったみてえだな」
「違うよ…!すっごい怖い顔でシズちゃんが見てたからだ!!」
「おい俺の顔はいつもこうだぞ。喧嘩売ってんならやめとけ。もう手前じゃ勝てねえ」
「なんだよ、その言い方…」

こっちが怒鳴りつけたのにあっさりと宥められて、歯痒い気分になる。いつの間に、怒らずにそうやって人を落ち着かせようだなんてできるようになったものだと心の中で悪態をつく。
そうやって欠点が一つ一つなくなっていけば、こっちが責めるところもなくなるのにと不機嫌を隠さずに再びスプーンでチャーハンを掬った。
強く言えない俺が悪いことぐらいわかっていたけれど、こればかりはどうしようもできない。基本的にシズちゃんいは弱いのだから。

「そういえばさあ、結局あまり説明されてないんだけど」
「あー…そうだなでも答えんのめんどくせえ。一応俺も謝ったし、新羅だって悪かったって電話で言ってきたから許してやれよ」
「…なんでそういうことを騙した本人に言われないといけないわけ?だいたい俺を騙そうってのが百年早いんだよ。他にも、聞きたいことあるんだけど」

食べながら話し掛けると、既に一皿目を食べ終えてちょうどおかわりに席を立とうとしていたシズちゃんが信じられないことを言った。俺が寝ていたから代わりに新羅から伝言だというならまだいいのに、許してやれと諭されるなんてありえない。
それ以外にも聞きたいことはたくさんある。もっとちゃんと聞きたいとそうお願いしたつもりだったのに。

「まあそんなのすぐ話しなくてもいいだろ。そのうち思い出した時にでも教えてやるよ」
「はあっ!?ちょっと、そうやってうやむやにするつもりとか?」
「ちげえよ!せっかく俺ら今日からちゃんと一緒に暮らすってのに、そんなくだらねえことばっかり話すのが嫌じゃねえのか」

あからさまにはぐらかすように言われて、俺は肩を震わせながら叱りつける。だけど向こうも負けじと大声をあげて、けれど全く違うことを言いだした。

「ちゃんと、暮らすって…え?シズちゃんが、ここで?」
「なんだよ、今更ダメとか言うんじゃねえ」
「それは…まあ、うん…って、そうじゃなくて!大事なことははっきり言ってよ!流そうとしたって、騙されないからな」
「騙されておけよ」

そこでなぜか盛大にため息をつかれて、一度皿を机の上に置いてそれから近づいてくる。ソファの横にどっかりと座られて、俺は嫌な予感しかしない。
とりあえずスプーンを置いて向き直ると、驚きの言葉がシズちゃんの口から飛び出した。

「なあ、あのヤクザ相手に言ったこと覚えてるか?折原臨也を殺すって」
「そういえば、そんなこと言ってたねえ。それがどうしたのさ?」

「情報屋の折原臨也は、死んだ」

「…は?」

殺すとか殺さないとか、そんな話はすっかり忘れていたけれど確かに四木さんとそういう話をしていた。そこまではいつも通りだ。
でも途中でなんだかとてつもなく似合わない言葉を吐こうとしているのがなんとなくわかって、背筋がぞわぞわと震え寒気がかけあがった。お願いだから間違いであって欲しいと心の中で思ったけれど、やっぱり外れてはくれなかった。

「今度からは平和島静雄の恋人、折原臨也だろ?」

「やっぱり!なんで、どうして急にそんなことになるんだよ!本気で言ってるの!?バカじゃないの!!」

「おいいくら照れてるからって、その言い方はねえだろ?あんまり怒らせるとまた起きれなくなるぞ」

なんとなくの予感は当たりすぎていて、頭を抱える。こういう恥ずかしいこととか厭らしいことを平気で言えるのがシズちゃんなんだと知ったのはいいけれど、あまりにも突然すぎた。
この間まで嫌われているとずっと思っていて、言葉一つ一つに傷ついていたこともあったのに今は真逆だ。恥ずかしげもなく俺のことが好きだと言う一つ一つに、心臓がやけに高鳴って切なくて嬉しい気持ちになる。
嫌じゃないけれど、ずっとこれではもたないと思った。違いすぎる。

「暴力を振るってたのをセックスに代えるのはやめてくれる?しかも今の顔、ニヤニヤしてて気持ち悪い。締まりが無いよ」
「じゃあ手前はそのエロい顔を止めろ。常に襲ってくれって言ってるようなもんだろ」

今までとは別の意味で違う、あまりに酷い返しに額を押さえる。
まさかこんなことになるなんて思わなかった。こっちはシズちゃんに好きになってもらおうと本気で死んで願いを叶えようとしたのに、それらを全部ぶち壊すみたいにもっと好意を示してきて。
嫌いじゃないけど、少し違う。本当に望んだものではないかもしれないけど、もしかしたらもうこうなるしかなかったのかもしれないと。
性格も違って長年いがみ合ってきたのだから、もうこんな風に落ち着くしかなかったのかもしれないのだ。非常に不本意だけれど。

「わかったよ…はあ、もう恋人でも同棲でもなんでもするよ。だから今日はもう襲うのはやめてくれ」
「そうだなまだ飯も全部食ってねえし、とりあえずは我慢しておいてやるよ」

そこまで言うと満足そうに笑って立ちあがり、そのまま皿を持って台所に向かう。その後ろ姿を見ながら、真っ赤な頬とニヤけそうになる唇をどう堪えようかと必死に考えたけれど思いつかなかった。
そのうちきっと全部吐かせてやると思いながら、こんな想像していなかった甘い、けれども少しエッチな生活が続くのかとため息をついて。それから薄く笑った。

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