ウサギのバイク 君の代わりに覚えておくから
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2011-12-25 (Sun)
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「君の代わりに覚えておくから」
静雄×臨也/小説/18禁/A5/116P/1000円


恋人同士だったのに静雄が記憶喪失になり臨也のことだけ忘れる
記憶を戻そうと近づくが思い出さず臨也に好きな人がいると知られ
そいつを忘れて俺のことを見てくれないかと告白される
しかし恋人の静雄を忘れられず悩み過去の事を夢に見るようになり
起きている時間より眠っている時間が多くなって現実逃避していく…

切ない系シリアスラブで静雄が記憶を取り戻すのを待つ健気臨也の話 ハッピーエンド

表紙イラスト ひのた 様
niyari

虎の穴様予約

続きからサンプルが読めます
* * *
「おい手前、どういうことだ!今朝はフレンチトースト食いてえって言っただろうが!!」
「うるさいなあ、しょうがないだろ。パンが腐ってたんだから」
「パン買って来いよ」
「なんでだよ!だいたい昨日散々誕生日祝いしてあげたじゃないか。シズちゃんのわがままにつきあうのは終わり」

目玉焼きののった皿を差し出しながら唇を尖らせて言うと、額に青筋を浮かべたシズちゃんが渋々受け取る。俺は最後に醤油と箸を持ってフ、ローリングの上に無造作に置かれたちゃぶ台の前に向かう。俺専用のクッションに腰を下ろして箸を渡すと、すぐさま目の前で手を合わせて食べ始める。

「散々文句言った癖に……」

俺が嫌味を言っても黙々と箸を動かして、次々と朝食を平らげていく。明らかに向こうの方が量が多いというのに、こっちが半分食べ終わる頃には立ちあがって流しに勝手に片づけてしまう。
まあ向こうは仕事に出るギリギリの時間に起きて、それから早足で出勤するぐらいだ。時間の制限がない俺に比べて忙しいからしょうがない。ようやく食べ終わった時にはもう外に出る準備ができていて、煙草をポケットに仕舞っていた。

「ねえ昨日俺がプレゼントした煙草ケース使ってくれないの?」
「無くしそうだから使わねえよ」
「そんなのわかってるから安物を贈ったのに。無くしたら新しいのすぐ買ってあげる」
「絶対落とすなって言ってるようなもんじゃねえか、それ」

枕元の机に置いていたケースを手に取って差し出すと、嫌そうな顔をしながら受け取る。使い慣れない物でも、弟から貰ったものは大事にするので大丈夫だと信じていた。もし無くしたとしても、散々嫌味を言ってまた買ってあげればいい。
携帯はクリスマスに同じ機種の物にしたばかりだし、他にいつも身につけるものでプレゼントできるのはこれぐらいしかなかった。さすがにバーテン服を贈るわけにもいかないし、まださすがに弟の方が優先順位は上だろう。
いくら恋人同士になって半年でも。こうして互いの家を行き来するようになったのも、三ケ月前からだ。シズちゃんが休みの日の前日は俺の家で、そうでなかったらこっちで過ごす。
始めのうちは使いづらかったが、今では私物も多いしベッドだってわざわざダブルを買った。俺が欲しくて勝手に注文したのだけど、激怒したのに結局喜んでぐっすり寝ている。

「あ、そうだ仕事帰りにプリン買って来るんだろ?」
「忘れてたな。金よこせ」
「ほんとさ、そういうところはしっかりしてるよね」

昨日だって誕生日ケーキを美味しそうに食べたばかりなのに、最近通っている取り立て先の近くにおいしいケーキ屋があるらしい。そこのプリンがすごくおいしそうなんだ、と話していたので帰りに買ってくる約束をしていた。
財布から万札を出して手渡しながら、本当に俺はシズちゃんに甘いなと思ってしまう。悪事を働いて稼いだ金を有意義に使ってやるから、と強引に奪われていくのだが不自由はしていなかったので断ったことはない。
まあこうやって物で釣っていれば機嫌を悪くすることもあまりないからだ。むしろ安いぐらいで。

「何か言ったか?もう俺は行くぞ」
「はいはい。今日ゴミの日だったから出しておくね」

三ケ月のうちにゴミを出す日まで覚えてしまった。元々近所づきあいなんてものはあまりないけど、知らない男が朝にゴミを出す姿はしっかり見られているだろう。噂ぐらいは立っているかもしれないが、どうでもよかったので放置している。
俺とシズちゃんの犬猿の仲を知っている者が見たら相当驚かれるが、そうでなければ友達として通るだろう。本当は好き合っている者同士だけど。

「そういやあ風呂の石鹸なくなってたな」
「昨日シズちゃんが入った時に出したんでしょ?俺のはあるから、次の休みに買いにいけばいいだろ」
「おお、覚えておけよ」

どうして俺が覚えておかなければいけないのか疑問に思うが、物覚えがいいからという理由だ。シズちゃんだとすぐに忘れてしまうことぐらい知っている。
まあ二人共別々の石鹸とボディシャンプーを使っていたので、もし忘れても俺のを貸してあげればいい。室内にもそこら中に二人分の私物があって、俺の自宅にもシズちゃんの歯ブラシや下着が置いてあったりする。
もうすっかり同棲状態だったが、全く気にならないぐらい馴染んでしまっている。あんなにも毎日殺し合いの喧嘩をしている仲だったのに、驚きだ。

「よし、じゃあ早くしろ」
「……しょうがないな」

玄関に歩いて行くシズちゃんの後ろを歩いていると、靴を履く前に振り返った。そしてじっとこっちを見た後に体を少し屈める。数センチのその差がむかつくのだが、仕方なく少し背伸びして近づくと勢いよく唇にふれた。
一瞬だけキスをしてすぐに離れようとしたのだが、いつもと違って今日は背中を押さえつけられる。驚きに目を開いていると、舌に吸いつかれて思わず鼻にかかった声が出てしまう。

「んあっ、ぅ……は……っ、なに、してんだよ!朝から!!」
「たまにはいいだろ?じゃあいってくる」
「バカ、嫌い、大嫌いっ……帰ってくんな!!」
「ははっ、顔真っ赤だぜ」

そこでパタンと扉が閉じたがまだ罵倒はおさまらず、最悪とか酷いと叫び散らした。しかし本当に虚しくなったのでため息をついて、すぐに部屋の中に戻る。
苛立ちをシズちゃんが座っていたクッションにぶつけるように殴ると、まだぬくもりが残っていた。しかしいつまでも引きずっているわけにはいかず、気持ちを切り替えて洗濯をしようと脱衣所に向かう。
衣類を洗濯機の中に放りながら、昨晩したセックスの事を不覚にも思い出していた。きっとだからちょっと激しいキスをしたのだろう。
付き合うことになってからはじめての誕生日だったので、互いに仕事は休み一日中デートをした。本当はいいホテルを予約して泊まりたいぐらいだったが、家で過ごした方が楽でいいと言われたので仕方なく妥協したのだが。
とにかくいつも以上に夜は激しかった。いつもは辛いので週に三日以上はセックスはしないと決めている。その約束を外してしまったばっかりに、止まらなかったので一回では済まずに何度もしてしまった。

「って、なに考えてんだよ。バカじゃないのか俺」

洗剤を入れてスイッチを押したところで気づいて、また頬が熱くなる。慌てて振り払うように台所に向かい、皿洗いを始めた。
別に激しくされなければセックスだって嫌いじゃない。ふれられるのが苦手ということもないし、むしろ好きなぐらいだ。何もせずに部屋でごろごろしながらシズちゃんに凭れるのは心地いい。
なんだかんだで一緒に過ごすようになって、居心地の悪さを感じたこともない。あんなにも仲が悪く仇敵と言われていたのに。この数年間は何だったのか、と首を傾げたくなるぐらい好き合っている。
まるで夢じゃないか、と時々思うぐらい。

「うーんまだちょっと眠いし洗濯が終わるまで、うとうとしてるかな」

体調も万全というわけではなかったので、掃除は洗濯が終わってからにしようとベッドに戻る。随分と冷たくなっていたけれど、真冬のこの時期は少しのあたたかさも恋しい。
毎日こうやって主婦みたいなことをしているわけではないけれど、最近は仕事よりも楽しいような気がしている。それに危険な仕事はするなとキツく言われているので、ここ半年はぐっと減っていた。
それでもどうしても断れないものは受けているけれど、シズちゃんとの関係を壊したくないので無理はしない。惚れた弱み、というやつでしょうがないんだと割り切っている。

「晩御飯なににしようかな……」

誕生日だからと張り切って作ったので、あらかた食材は使い切っている。さすがに今日は仕事終わってから買い出しに行くか、と思いながらメニューを考えていると眠気が襲ってきた。
眠ってしまう寸前にもなぜかさっきのシズちゃんの言葉が頭の中をよぎって、少しだけムッとしてしまう。それから一日中頭の中を占めていたのだけれど、何かの予兆を感じていたのかもしれない。
午後に事務所に戻って溜まった仕事の処理をしていると、突然新羅から連絡があった。それとほぼ同時に、何件か同業者から連絡があり余計に真っ青になる。
左耳の携帯からは新羅の声が聞こえていたが、右手の携帯のメールの文字に釘づけになっていて。全身から血の気が引いて眩暈がした。

『平和島静雄が池袋駅の前で、車十台を巻き込む事故に遭遇した』

* * *

「遠慮せずに入っていいよ。ちょっと散らかってるけど」

そう言って玄関の扉を開けると、シズちゃんは物珍しそうにキョロキョロしながら玄関で靴を脱いであがる。なんだか不思議な気分で後ろ姿を見ながら、奥へと案内した。
机や本棚が置いてある一番大きな部屋に通すと、ソファに座って待っていてと指示する。そして台所に向かい、さっき部屋を出る前に作っていたコーヒーを半分だけ入れて冷蔵庫から牛乳を取り出して混ぜた。砂糖を半分だけスプーンに掬い入れて混ぜる。
自分のはそのままカップに入れて、両手に抱えて戻ると相変わらず忙しなく周りを見ている。机にカップを置いて反対側に座ると、どうぞと言った。すると。

「あれ、わざわざカフェオレ入れてくれたのか?苦手だって言ったか?」
「田中さんの家に君が行った時に入れて貰ってたじゃないか。好きなんだろ?」
「よく覚えてんな……」

言いながらコップに口をつけて一口飲むと、うめえと声をあげた。まあ同棲みたいなことをしていたのだから、好みを知っているのは当たり前だ。そんなこといちいち言わないけど。
この間の埋め合わせをしたいから、という申し出は断って俺の家に遊びに来ないかともちかけた。さすがに仕事帰りに会う約束は辞めて、一日休みだから午後から会うことにする。そして思惑通りに呼ぶことに成功した。
開口一番尋ねたことは勿論。

「ねえあれから変わったこと、思い出したこと、気になったことはあるかな?」
「ああなんとなくだけどな。俺の知らない好きな相手が居ることだけは間違いねえ」
「相手の顔は、わからないんだ?」
「そうだな、でもなんか……なあ変なこと、言っていいか?」
「なんでも言ってよ」

そこで急に声のトーンを落としたので、人に言いづらいことに気づいたのだろうかと体を前に出して近づく。すごく言いにくそうにチラチラこっちを見ていたが、ようやく告げた。

「もしかしたら、女じゃねえのかもしれねえ」
「え?」
「俺はセルティ以外の女性と話たことがほとんどない。だから余計にそいつに対する態度が、女っていうより男と話してるようにしか思えなくて困ってんだ」
「態度って、どんな感じなの」
「すげえ文句言ったり、たまに小突いたりしてんだよ。女相手にそんなことしたら、とんでもねえことになるってわかってんのに。だから男じゃねえかって思えてきて……」

もっともな推測に頷きそうになったが、少しだけ間を置いた。まだ何か言いたそうだったからだ。
シズちゃんは顔に出やすいしわかりやすい。この間俺が指摘されたことだったけど、互いに同じように思っているのは知らないだろう。

「なあ今から言うこと、もし知っていたら答えて欲しい」
「いいよ」
「臨也に俺を助けるように依頼してきた相手って、俺の好きな奴……で合ってるか?」
「うんそうだ」

偽ることなく答えた。ここまでわかったのなら、一気にかなり進歩してるのではないかと思う。
口の端を吊りあげてニヤリと笑っていると、疑るような視線を投げかけてくる。きっとあれこれ必死に頭の中で考えているのだろう。

「そいつが誰かは教えてくれないんだよな」
「依頼主から教えないようにって言われてるからね」
「でも性別ぐらいはいいだろ。男なんだろ?」
「認めちゃっていいのかな?そうなったらシズちゃんは男なのに男相手に恋心を抱いていたことになるけど」

慎重に言葉を選びながら目を細める。安易に教えてしまっては、シズちゃんが傷ついてしまう。男が男を好きなんて、普通に考えて異常なのだから。
きっとこの答えを出すのも数週間かかった結果なのだろう。記憶を失っていてよくわからないのに、同姓が好きかもしれないなんて信じたくないのが当然で。

「男とか同姓とか、関係ねえと思う。好きなものは、好きなんだ」
「なるほどね。そこまで覚悟があるならいいよ、教えてあげる。君の好きな相手は男だよ」

はっきりと言ってあげると、少しだけほっとしたような、憑き物が落ちたような表情になる。きっと随分と悩んだのだと思う。でもちゃんと思い出してくれていることが、嬉しい。
焦らなくても時間はたっぷりあるし待つつもりだから、大丈夫と言い聞かせた。しかし次の言葉で表情が硬くなる。

「でもなあ、男っつっても心当たりがねえんだよ。好きになるぐらい仲のいい奴なら、とっくに思い出してるだろ」
「そうだねえ」
「そいつ絶対仲良かった筈なんだ。なのに俺の見舞いにも来なかったってことになるだろ。おかしくねえか?喧嘩でもしたのか?」

すぐに会いに行ったのに、いつまでも思い出さないのはそっちじゃないか。
苛つきを顔に出さないようにはしたけれど、もしかしたら伝わったかもしれない。慌ててどう返事をしようか考える。でもまともなのが思いつかなかった。

「多分すげえ腐れ縁っていうか、高校ぐらいから知ってた奴なんだよ。でもその時期に仲良くしてた相手は居ないって新羅も言うし、門田も違う。トムさんに聞いても、俺に好きな相手がいることも知らなかった」
そこで一度言葉を切る、そして眉を顰めて心底辛そうに言葉を吐きだした。
「なあ……ほんとに、そいつはいるのか?」
「え?」
「俺の想像の中だけとか、そういうことねえよな?証拠がなくて、実感が沸かないんだ。好きな相手のことなのに、つい最近まで忘れてたし」

泣きそうだ、と思った。目の前のシズちゃんが頼りなく見えて、抱きしめてあげたい衝動に駆られる。こんな姿見たことが無い。
俺の前で弱っているところなんて、見たくなかった。いくらしょうがないこととはいえ。

「臨也」
「……っ、なに?」
改めて名前を呼ばれて、ドキンと胸が跳ねた。期待しているわけではないけど、緊張してしまう。
「怒ってねえか」
「……え、っ」
「俺がずっと忘れたままだから、怒ってるよな?浮気とかしてねえかな」
「シ……っ、う」

おもわず、シズちゃんと名前を呼んでしまいそうになる。寸でのところで堪えて唇を噛んだ。
これまで意図的に名前を呼ばないようにしてきた。俺自身が辛くなるからだ。でも悲しいことには変わりなかった。

「……もし思い出したら、謝ればいいよ。きっと許してくれる」

* * *

「くすぐったい」
「柔らけえんだから、いいだろ。ああでもそうか、今日はこっちさわっていいんだよな?」
「……っ」

ふれるだけのキスを唇に落とされた後に、手が下に移動していってシャツをたくしあげた。慌てて腰がビクンと跳ねたけれど、既に遅くて俺よりも大きな手のひらが腰骨を撫でる。始めは恐る恐るという感じだったけれど次第にエスカレートしていって、どんどん上へとのぼっていく。
どこを狙っているかわかっていたけれど、声を押し殺して耐えていた。男なのにそんなところをさわって楽しいか未知数だったけど、抵抗はしない。

「やっぱりここも、柔らけえな」
「……っ、あ、えっと……」
「顔真っ赤だぜ」
「それは!その……っ、はぁ!?」

じゃれ合うように五本の指先で先端を転がされたり擦られたり、好き勝手にされる。始めは特に感じていなかったけれど、なんだかだんだん手つきがいやらしくなっていって変な気分になっていく。
確かシズちゃんの好みは年上の胸の大きな女性なのに、俺のこんなところをさわって楽しいのか疑問を感じていて。突然先っぽを強く摘ままれてびっくりして声をあげた。

「あ、っ……な、に、してるの!ちょっと痛いって、いうか」
「痛くねえだろ?我慢してろって」
「えっ、え、ど、どこを舐め……て、っ」

むずむずするくすぐったさに眉を顰めていると、頬を首筋にすり寄せてざらざらの舌でべろりとひと舐めする。何事かと驚きながら引き剥がそうとするのに、全くびくともしなくて胸と首への慣れない刺激に頭の中が真っ白になる。
舐めているだけだと思ったら今度は唇を押し当て吸いつき、微かに痛みが走る。シズちゃんの頭を避けてその箇所を眺めると、赤い跡がくっきりと残っていて全身が熱くなった。

「んあ、っ……や、りすぎ、だってぇ、ね、シズ、ちゃ……」
「なに言ってんだ、もっとエロいことすんだろ?今からよお」
「まだ俺するって、言ってない、っ」
「するんだよ」
「……っ!」

きっぱりと言い切られてドキンと胸が跳ねた。逃げることなんてできない。もうやるしかない、と瞳で語っていた。

「でもさあ、その、あまりこういうこと興味ないって、いうか」
「自分でしねえのか?」
「あんまり……」
「じゃあ今日は手だけにするか。別に急いでるわけじゃねえし、泣かしたくねえ」

一瞬何を言われたのかわからなくてぽかん、としていると手が下半身に伸びてベルトを外し始める。そこでようやく意味がわかった。
まだセックスはしなくていいから、互いに気持ちいいことをしようということなのだ。でもそれではシズちゃんが満足しないだろうと思って。

「いいの……?」
「エロい顔さえ見れりゃあいいぜ。どうせ明日もあさっても、これからもずっと一緒だし焦る必要はねえよ」
「うん」

ずっと一緒だから、と言われれば頷くしかない。その日によって俺の家かシズちゃんの家かは違っていたけど、会わないという選択肢はなかった。情報屋の仕事だって、危険なものは減らせと強引に脅されてからは少なくしている。
互いが離れようとわざわざ告げない限りは、きっとこのままだ。だから今日しなくてもいい。なぜだかその言葉にほっとした。

「あのさ、ズボンぐらい自分で脱ぐ。シズちゃんも脱いで、その」
「そうだな、わかった」

そう言うといったん体が離れて顔を背けてズボンと下着を脱ぐ。同姓なのにやけに恥ずかしくて、心臓がバクバク煩い。ようやく脱ぎ終わって振り向くと、シズちゃんはベッドに座っていて手招きした。
だからさり気なく前を隠すように歩いてベッドにあがると、目の前に座る。だけどなぜか反対側を向けと指示された。

「反対側って、シズちゃんに背中向けて座るの?」
「恥ずかしいんだろ?だからとりあえず、いいからここ座れ」
「これでいい?」

さっきと同じようにあぐらをかいている足の上に腰を下ろすが、体の向きが反対でどうするのだろうと考えていると、背後から上半身を左手で押さえこまれる。そしてようやく気づいた時には、いきなり下半身に手が伸びて足を左右に広げ後ろから中心を握った。

「っあ、嘘っちょっと、待って……!」
「どうやって自分ですんのか、教えてやるよ」
「いや、俺そんなこと、興味ないし、いいから……っ!!」
「遠慮すんなって……ああそうか、いつも俺にやって貰いてえのか?わがままだな」

どうして俺が自慰行為をシズちゃんにして貰わなければいけないのか、まずそこからわからない。やり方を知らないわけじゃないし、ただ興味なかっただけだ。
なにか勘違いしていると思って慌てて止めようと手を伸ばす。しかし後ろからがっちり腕を押さえられているので、それ以上は動けない。指先が虚しく空を切った。

「俺のよりすげえ小せ……」
「それ以上言ったらいくらシズちゃんでも許さない」
「ああそりゃあ悪かったな。かわいいって言おうと思ったんだけどよお」
「あのね、男にかわいいって褒め言葉じゃないから、間違い……っ、う、あぁっ!?」

最低な言葉を吐きかけたシズちゃんを慌てて制したが、不機嫌な声をあげて首だけ振り返り睨みつけようとした。だけどそれよりも先にそこを軽くぎゅっと握られてしまい、肩がビクンと大きく跳ねる。
ちょっと驚いただけで、決してそういうつもりじゃない。心の中で言ってみたものの、言葉にならないのだから仕方ない。唇をパクパク開いて魚のようだ。

「あれおかしいな、全然勃ったねえぞ。痛いか?」
「ん、っ……い、たくない、けど……耳、っ、そこぞくぞく、する」
「あ?なんだもしかして耳が弱いのか?」
「えっ、あ、ぁ……や、めれ、っ!?」

根元を掴んで上下に擦られてはいたけれど、緊張と恥ずかしさでやっぱり反応しない。むしろ右耳の後ろ側から声が聞こえる方がくすぐったくて、それを伝えた途端耳元でぴちゃりと音がした。
すぐに首を振ったが逃れられず、耳たぶを唇の上下で甘噛みされ吸われてしまう。あまりのことに腰が震えて、刺激が直に響いてきた。

「な、っ……え、うそ、んっ、ぁ、ひぅ」
「反応してきたじゃねえか、声すげえ色っぽくなってきたぜ」
「ちが、う、っ、ん……シズちゃ、あ、やだ、や……っ!」

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