ウサギのバイク とらわれて①
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2012-01-20 (Fri)
*リクエスト企画 桜架様
静雄×臨也 ※今後の展開で18禁シーンが含まれます

静臨(恋人)で素っ気ない臨也を苛めたくてバレないように誘拐して目隠し拘束する話。

* * *

「おい待てよ臨也。もう帰んのかよ」
「なに言ってんの?終電なくなるまでつきあえって?冗談じゃない、俺は明日も朝から仕事なの」

盛大にため息をつきながら心底嫌そうな顔をする恋人に、何度目かわからない憤りを感じていた。なにも今日に始まったことではなくて、つきあうようになってから幾度繰り返したかわからない。
好きだ、つきあってくれと言ったのは俺からだ。半年前に唐突に臨也のことが嫌いではなく実は好きだと自覚して衝動的に告白した。
その後の事なんか何も考えずに思ったことを口にしただけだ。だから一瞬驚いた表情をした後に、男同士だけどいいのか、とか今まで散々喧嘩してきたのにと愚痴り始めたので苛々してキスをした。
するとようやく黙り込んで、抵抗する素振りも見せずに受け入れたから、それが返事だと思ったのだ。恥ずかしいからきちんと言わないけれど、そういうことなんだと。
俺達はつきあっている、と信じていたのにそれから半年しても、数回性行為までしても臨也の態度は一向に変わらなかった。別にベタベタしたいとかもっと毎日会いたいとかそういうことは望まない。
でもいくら誘って一緒に出掛けても、俺の家に呼んでもあいつは泊まらず帰って行く。仕事だから、と素っ気なく言ってふれさせてもくれないのだ。
セックスをしたのだって、無理矢理飲ませて酔わせた時だけだ。それも泥酔していたわけじゃないので、声を押し殺しながら普段と変わらない澄ました表情だけは崩さなかった。
最後までするのも嫌がっていたし、俺が一方的に自分の欲望を満たしていただけのように思える行為だった。こんな最低な行為のどこがいいのか、と瞳で語っているようで後で自己嫌悪にも陥るぐらいだったのだ。
こっちから連絡をしないと会おうとはしないし、あいつの家に呼ばれたこともない。クリスマスや誕生日というイベントすらも一緒に過ごしたことはなく、素っ気なかった。
そろそろどうしたらいいのかわからなくなっていたので、上司のトムさんに相談したら言いにくそうにしながら、本当につきあっているのかと問われたぐらいだ。当然何も返せなかった。

「たまにはいいじゃねえか」
「あのねえ、シズちゃんはいいかもしれないけど俺の仕事は信用が第一なの。自分の都合で投げ出すわけにもいかないし、そんなことしたら危険な目に遭うのはこっちだよ?」

危険な目に遭うなら俺が守ってやるから辛気臭い最低な仕事なんて辞めちまえ、と言えればよかったのかもしれない。だけどすぐに現実的に考えて金はどうするのか、とかあれこれ反論されそうだったのでやめた。
君みたいな感情的な人間にはつきあえない、と愛想をつかされそうな気もしたからだ。
別れ話をされるのだけは許せない。そうなったら二度と修復できないひびが入って、徹底的に決別してしまうのではないかと思った。
臨也から、好きだとはっきり言われたことがないから自信だってないのだ。恥ずかしかったから未だに言わないと思い込んでいるのは俺だけで、実は面白そうだからつきあったとか、何か利用したかったと暴露されたらたまらない。

「そうかよ…」
「それにシズちゃん最近やたら大人しいじゃないか。食事の時もあまり話さないで飲んでばかりだったし。俺と飲んでもおもしろくないだろ?」

口下手なのは元からだし、最初の内は頑張って話題を作っていたけれど今日みたいに落ち込んでいればダメだった。せっかく臨也と一緒だったのに、楽しくなかったのは事実だ。
だから唇を噛みしめて睨みつけた。いがみ合っていた時ほど強くは無いけれど、何らかの意図は伝わったのか少し表情が変わる。

「もしかしてさあ、またああいうことしたかったの?残念だったね俺がそういうの興味なくて」
「違えよ」
「顔に書いてあるよ。女だったらまだシズちゃんの大好きなおっぱいとかあったのに、貧相な体でごめんね」
「勝手なこと言うな」

初めて家に呼んだ時に一発で見つかった、ベッドの下に隠していたもののことをよく引き合いに出される。あれはマズかったと俺自身もわかっているので黙るがいい加減にして欲しいとも思う。
手前の方が柔らけえしいい匂いするし欲情するんだと暴露することもできない。変態だねとバカにされたら立ち直れない自信はある。
だからこんな風に躱されると、それ以上は強く出れなかった。暴力でねじ伏せて家に連れ帰ればいいのに、と思うことはあるけれど実行したことはない。最低なことだとわかっているから。
手を出してしまったら、きっとすべてが終わるのだ。
考えれば考える程どうしたらいいかわからなくて、結局黙るしかなくなってしまう。すると大袈裟に肩を竦めてため息をついた後に臨也が手を挙げた。

「じゃあ帰るよ。またね」
「ああ…」

すぐに振った手をポケットに突っ込んで軽快な足取りで去って行った。どうしようもないもやもやした気持ちを抱えながら暫く立ち尽くしていたけれど、舌打ちをして歩き始める。
どうせ次に会えるのも一ヶ月ぐらい先だろうとわかっていた。次の日に連絡しても仕事で忙しいからとメールが届いて約束は先延ばしにされる。たまに池袋で会うこともあるけれど、絶対に逃げられる。
結局つきあう前から、ほとんど何も変わってない。情けないなと悔しがっているところに、衝撃的なことが起きてしまう。
くすぶっていた気持ちが、一気に爆発するぐらい。

「折原さん、次はどこに行かれますか?」
「うーんどうしようかなあ。もっとゆっくり話ができるところがいいかな?」

俺は取り立ての仕事がちょうど終わって気が立っていた。一日張りこんでようやく現れた相手をぶっ飛ばしてもおさまらず、苛々しながら喫煙所に向かっていた。少し薄暗い通りを近道しようと入ったら、とんでもないところを偶然見てしまう。
臨也とスーツ姿の男が歩いているところを。しかもしっかりと互いに手を握っていて驚いた。
男に話し掛ける表情も柔らかく、あんなの見たことがないと思う。冷静に考えたら仕事で関わっている相手に取り入ろうとしていたのかもしれない。
どんな手を使ってでも目的を達成させる最低な奴だ、というのが頭に浮かぶ。昔から俺に対してはそうだったから。
頭に血がのぼっていた状態だったので、いいからもう殴りこむかと足を踏み出そうとしたのだが止まる。目の前でとんでもないことが起きたから。

「じゃあとっておきの場所に行きますか?」
「…っ、あれ?やだなあ社長、なんか変な顔してる」
「なにを言ってるのですか。あなたが誘ったじゃないですか」

立ち止まった男が臨也の体を引き寄せて、いきなり道の真ん中で抱きついたからだ。建物の影に隠れてはいたけれど、俺の方向からははっきり見えた。
あまりのことに頭の中が真っ白になって動けない。動揺しつつも救いだったのは、そいつの手から逃れようともがき始めたからだ。

「いくらなんでも、その…いきなりこういうのは困る…困るんですけど」
「いいじゃないですか、そういうつもりで言ったんですよね?」
「ち、違います。勘違いされることは多いのですが、俺にはそんな趣味ありません」
「欲しい物の為なら男でも平気で媚び売るという噂は嘘じゃないですよね?まどろっこしいことは苦手なので、はっきりして下さっていいですよ」

相手の事を社長、と言っていたので相当立場が上の人物なのだろう。途中から敬語に戻り必死に体を引き剥がそうとしていたが、あまり本気ではないように見えた。
でも表情は心底嫌そうだったので、勘違いしているのは男の方で臨也には想定外のことだったのだろう。まるで動揺して焦っているようにも感じられてびっくりする。俺の前で装っている表情とは何もかも違う。

「あなたの顔は好みですし、欲しい物はなんでもあげますから…」
「あの!ほんとにやめてくださいッ!!」

そこでようやく大声を出して臨也の体が男から離れた。数歩後ずさって、はっきりと嫌悪の瞳で相手を見つめていた。でも少し頬が紅く目元が潤んでいるように見える。
かわいい、と純粋に思った。
今までそんな姿を見たことがなかったから、あいつもあんな風に驚くことがあるんだと衝撃を受ける。しっかりと頭の中に残った。

「人にさわられるのも、俺は苦手なんです。すみません失礼します」

きっぱりと言い切ると悔しそうに顔を歪めながら走って行った。本当かどうか知らないが、人にさわられるのも苦手だという言葉にも唖然とする。
でもすぐにたった一人だけその事実を確かめることができる人物が居たので、そこから少し離れてすぐに電話をした。夜も遅い時間だったのに恋人がちょうど出掛けていないから、と誘われたのでそのまま会いに行く。
歩きながら、俺の頭の中ではなにを相談するか大体決まっていた。そして友人の言葉で後押しされる。

「こんな時間にやって来たと思ったら臨也のことかい?ああもしかしていつもあれこれ嵌められてるから仕返ししようと弱みを探してるの?小さい頃に誘拐されそうになったことがあって、他人にさわられるのは苦手だって言ってたよ。それより聞いてくれるかい、この間セルティに仕事で変な物を運ばせたみたいで僕も怒ってたところなんだよね。よかったら協力しようか?」
「誘拐、って…あいつが?」
「それからは簡単に捕まらないようにナイフを持ち歩くようになったみたいだし、自分の身を守ることにだけは慎重なんだろうね。まあいいや、どうやって臨也に仕返しするつもりなんだい?」

やけに話に突っかかってきた新羅にそんなことするわけがない、と言いながら誘拐という言葉を頭の中で繰り返す。小さい頃に連れて行かれそうになったことがあって、今でも怯えているのかもしれない。
さすがにいがみ合っていた俺に対してはそんな弱みは見せなかったけれど、他人ならばあっさりと怖がってみせる。そのことに腹が煮えくりそうなほど悔しかった。

「まあ静雄は散々酷い目に遭ってるし、少し苛めるぐらいならいいと思うけどね。ああ怪我だけはダメだよ。もっとびっくりさせるようなこととかさ」
「あいつがびっくりすること…」
「ああそうだ!ちょうど前に臨也から調べてくれって受け取った薬が残ってたんだ。悪因悪果と言ってね、悪いことをすれば必ず報いがあるべきだと思うんだけどね」

いきなり席を立ちあがると台所の戸棚からなにやら瓶を取り出して戻って来る。どうして薬がキッチンにあるのかと呆れたが、どうでもいいから捨てようとしていたのかもしれない。上機嫌に手渡しながら笑った。

「これ媚薬らしいよ。体に害はないけど、かなり強いみたいで普通では買えないんだ。ちょっと悪戯するにはちょうどいいだろ?恥ずかしいところを写真にでも撮ってあげなよ」

新羅が恋人のことになると容赦ないと知っていたけれど、改めて怖いなと感じた。でも俺には都合がよかったので、無言のまま瓶を受け取る。中身を見つめながら、あいつが乱れたらどうなるんだろうと本気で思いつめていた。

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