ウサギのバイク 終わる日1
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2012-10-22 (Mon)
*リクエスト企画 高千穂様
静雄×臨也 18禁

性的虐待の被害者な臨也で静雄の前で症状発症する話
※モブ×臨也の表現がありますので注意下さい

* * * 「本当に薄情だねえ、シズちゃんって」
「ああっ?言いたいことあるならはっきり言えよ」
(こうなるってわかってた。最悪、最低、少しでも期待した俺がバカだったんだ)

心の中だけで罵倒してみるが、虚しいだけだった。はじめからわかりきっていたことだ。必死に言い聞かせるが、怒りは抑えることができない。

「同じ時間、同じ場所で会えば少しはどうなるかと思ったんだけどねえ」
「なんだよ。ぶん殴られてえのか?」
「昨日ベロベロに酔っぱらってたシズちゃんは、やっぱり俺に会ったこと…覚えてないかな?」

とうとう額に青筋を浮かべて切れ始めたので、仕方なく本題を告げる。すると驚いたような表情をした後に、あっさりと言った。

「覚えてねえよ。手前に会ったなんて、酔っぱらってなくてもすぐに忘れちまいたいに決まってんだろうが」
「そうだよねえ、よくわかった」

大きくため息を吐いた後に、体を捻ってシズちゃんと反対側を向き一歩踏み出した。これ以上話すことなんてない。しっかりと前を向いてはいたが、瞳には何も映ってはいなかった。
虚しい、悔しいと思うのに、うまく言葉にできない。だから黙って去ることにしたのだ。

「おい、待てよ!」

背後から叫び声がしたが、気にせずに進むとそれ以上はもう呼ばれることはなかった。きっと苛立ちながら反対側へ歩き出したんだろう。
いつもみたいに追いかけてこない。俺はずっとそのことが怖かった。いがみ合っているうちはいいけれど、そのうち興味を無くしてシズちゃんが追いかけて来なくなるのを心底恐れていたのだ。
でも実際そうなってみたら、何をバカなことを考えていたんだろうと思うだけだ。虚無感が全身を襲い、駅へと向かいながら頭の中は空っぽだった。
俺はシズちゃんのことが、昔からずっと好きだった。出会った頃から長い間、もう十年近く経とうとしている。
しかし気持ちを伝えるつもりも、表に出すつもりもなかった。因縁の仲として過ごしていければ良かっただけだったのに、昨晩唐突に事件が起きたのだ。

池袋で仕事が終わり、帰り道で酔っぱらったシズちゃんに出くわした。驚いたけれど、普段とは違い怒られることもキレられることもなく、突然手を引かれてなぜか路地裏に連れて行かれてしまう。

「ちょ、っと…!なんだよ!!」
「なあ、おい臨也」
「酒臭いって!近寄るな、離せ、腕が痛いだろ!!」

捕まったのは、いつもと態度が違いやけに自然と手を取られたからだ。警戒が緩んだにしてはお粗末すぎて笑えなかった。なんとか逃げ出そうとしたけれど、背中をビルの壁に押しつけられ動けなくなる。
アルコールの匂いが鼻について、顔を顰めたがシズちゃんは身を乗り出して俺に寄ってきた。互いに息がかかりそうなぐらい近くて、これはちょっといろんな意味で、抑えている気持ちがヤバイと両肩を押した。
しかし全く微動だにせず、じっと見つめられてしまう。だから言葉に詰まって、視線を逸らした。その瞬間。

「んっ…う!?」

視界いっぱいに肌色が広がって焦点が合わず、唇にあたたかい感触を覚えた。何をされたのか一瞬で理解したが、認めたくなくて肩がビクンと震える。
だがそれだけでは終わらず、あろうことか舌が口内に差し込まれようとしていたので慌てて足の脛を蹴り飛ばす。当然通じるわけが無かった。

「ぐっ、う…っ、は!やめ、ろって!!」

懸命に顔を左右に振って逃れると、大声で叫んだ。するとあまりに近くで叫びうるさかった為か、シズちゃんが顔を顰め表情が険しくなった。今だと思い少し体を屈ませて腕から抜け出る。
これで逃げられる、と思ったのに突然動くが止まった。振り返るとコートの裾を掴まれていたのだ。

「離せ、っ!」
「逃げんじゃねえよ。いいからこっちに来い」
「ふざけんな!キスするなんてなに考えてんだよ!酔っ払いの癖に、ッ…どうせ明日には忘れてる癖に!!」
「ああっ?なに言ってんのかわかんねえいいから…」

まさかシズちゃんが、酔っぱらったら無節操にキスしたくなる性格だなんて知らなかった。普段はあまり飲まないのに、どうやら今日は上司にでもつきあわされたのだろう。いい迷惑だ。
この調子だとどうせ明日にはすべてを忘れているだろう。それが許せなかった。こっちは素面だし、キスなんてされたくはなかった。

「キスなんて、最低!死ねよ!!」
「あっ、手前いざやあああッ!!」

すかさずポケットからナイフを取り出し、二本ほどシズちゃんの体に投げつけ最後にコートの裾を自分で裂いた。そして振り返らずに走り、必死の形相で逃げる。
心の中ではシズちゃんへの恨み言ばかりを唱えて、駅にたどり着くまで足は止めなかった。さすがに酔っ払いの状態では追い切れなかったらしい。
ようやく振り返ると、人ごみの中にバーテン服の姿は無かった。安堵したけれど、まだ心臓はバクバクと鳴っている。なるべく平静を装っていたが、きっと動作に不自然さはあっただろう。
結局一晩中眠れはせず、仕事でもミスを連発してしまって耐えきれなくなって、同じ場所に来たのだ。まさか覚えていないだろう、と思っていたけど予想と同じだった。
僅かな淡い期待は無残に引き裂かれて、みじめな気分だ。何も起きなければそのまま普通に過ごせたのに、まだキスの感触を覚えている。舌まで入れられそうになったぐらいだ。
知らなければよかった。あたたかい腕と唇のことを知ってしまったら、感情が抑えられなくなって、無駄だと気づきつつバカなことをしてしまった。

「もうシズちゃんのことなんて…知らない」

誰にも聞かれないように、小声で呟く。それは自分自身への決意だった。
恋心なんて、いつまで引きずっていても無駄だ。いつも一方的に傷つけられて、向こうは何も知らず変わらない。俺だけがダメージを受け続けて、きっと最後には耐えられなくなるだろう。
わかりきっていたから、いつかは決別しなければいけないと思っていた。多分その時なのだ。
今後はなるべく池袋の仕事はしないし、会わないように注意すればいい。たったそれだけで、ストレスはなくなる。簡単なのに、今まで気をつけなかっただけだ。
暗い路地裏を抜けて駅前の通りに出る。長い間縛られてきたけれど、もうたくさんだ。疲れた。大きく深呼吸すると足を早める。そして新宿へと戻った。

頭の中では、もう完全に吹っ切ったと思っていた。だけど、どうやらそうではなかったらしい。普段なら起こらないことが起きてしまったのだ。注意を怠るというミスのせいで。
自宅に近づき気が緩んでいたのかもしれない。突如携帯が鳴り、それに出ようとしてポケットに手を入れた瞬間隙ができて、直後に全身を痛みが襲った。

「…ッ!?」

背中から殴られたと察知した時には遅く、そのまま地面に倒れこんでいく。頭からぶつけると思った寸前に背後から体を支えられて、強制的に起こされる。

「よお、折原」
「っ、誰…だ!」

とっさに携帯を落としポケットからナイフを取り出そうとしたが、反対側から手が伸びてきて遮られる。それどころか、もう一本の腕が顔の前に差し出され持っていたハンカチでいきなり口を押さえつけられる。
声を出すことができなくなって、慌ててもがく。これでは助けを呼ぶこともできなくなるからだ。しかし口内のものを吐き出す前に、左右から腕を掴まれ男三人がかりで運ばれ始める。
向かっている先は俺の事務所で、エントランスに入るとポケットを探られ鍵を取り出し開けられる。抗いたくてもがっちり押さえつけられているので顔を顰めるだけだった。

「んっ、うぅ!んっ、ふぅ!!」
「後少しだから黙ってろ」

そのままエレベーターに乗りこみ最上階まで着くと、迷いなく俺の事務所兼自宅へと辿り着き鍵を開けた。当然室内に押し込まれて、一直線に応接用のソファへと連れて行かれる。
案の定おもいっきりソファの上に転がされて、うつぶせにさせられた。慌てて後ろを向くと、一人の男が手錠を取り出し両手に嵌められてしまう。
腕は解放されたけれど、左右に動かそうとしてもほとんどさっきまでと変わらない。このままでは絶対にマズイ、と思い焦りながらもがく。逃れる方法も浮かばなかったが、まだ体力があるうちに抵抗しないと今後を考えると先が見えない。

「っ、うぅ…く、っ、んうぅ、ぐ!」
「喚いたって無駄だぜ。どうせ防音設備は整ってんだろ?残念だったな」

言われて後ろを振り向き男の顔を睨みつける。覚えは無いので、別の男を眺めるが同じだった。こいつらと会ったことは多分無い。恨まれることなんて多すぎて、心当たりが絞り込めなかった。
気持ち悪くニヤつく男は、ポケットから突然注射器を取り出す。嫌な予感しかしなくて、背中を汗が伝った。

「あんたは知らないだろうが、俺の仲間が薬でおかしくなっちまっったんだ。誰が売ったのか探ってたら、情報屋の折原って奴に辿り着いた」
「俺の彼女も、同じ薬で病院送りだ」
「こっちは妹と、友達だ。俺達ネットで知り合って、あんたを同じ目に遭わせようって計画したんだよ」

急にしゃべりはじめた男達を見ながら、随分と陳腐な計画だなと内心笑う。俺を捕えたことで気が大きくなったからなのか、自慢げに話す。
薬なんて知らない。しかしよく知っているとも言える。
普段取引のある上客が、製薬会社の人間だったり、裏の仕事をしているヤクザだったりする。勿論売人だって混じっていた。どこから漏れたのかわからない。

「さすがに同じ薬は手に入れることができなかった。高いしな。あんたは、粗悪品の媚薬で充分だろ?」
「うっ、んぅう!?」

媚薬だと聞いて目を丸くする。まさかこいつらは俺をレイプするつもりなのか、と改めて見つめてゾッとした。男相手の経験は当たり前だが一切無い。

「男が男の性欲処理、いや便器になるなんてみっともねえよな」

残りの二人が俺の右腕をしっかりと押さえつけたが、そいつらの手にも同じ注射器が握られていた。喉がひくり、と震える。

「たっぷり犯してやるよ」
「復讐だからな」

直後に手首部分の布が破れる音がして、痛みが走る。心の中で、シズちゃんのせいだと恨みを呟いた。
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