ウサギのバイク もっと もっと ねぇもっと そばにいてよ 3
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2012-10-31 (Wed)
*リクエスト企画 june 様
静雄×臨也

臨也の身体機能の一部が不自由になる話 切ない系

* * *


不意に顔をあげたら、鋭い視線とぶつかって肩が大袈裟にビクンと跳ねた。瞬間強い衝撃が全身を襲う。

『手前バカじゃねえのか。バカだろ。ふざけんな!』
「いっ、ぁ、あぁあ…ッ!?」

聞こえるはずのない声が勝手に聞こえてきて、唇が震える。タイミングよく性器が無理矢理挿入されたので、目元から一気に涙が溢れた。当たり前だ。
濡らしはしたもののほとんど慣らしもせずに行為をしているのだから、痛みを感じてしまう。でもこれから先のことを思うと、俺にはこれぐらいでちょうどいい。
夢なのだから、これは。元からさっきの人物のことも信じていなかったし、だったら都合よく楽しもうとした。そうできればよかった。
だけどできなかった。喜びを感じてしまったら、シズちゃんへの好意が今まで以上に強くなる。起こってもいない、何も生まない行為に捕らわれて苦しむわけにはいかなかった。

「くっ、そ…キツ…!」
「はぁ、あっ、うぅんぁ…あ、優しくしなくて、いいから…動い、て」

これまでどんな怪我をしても、今日ほど胸が引き裂かれそうになるほど痛んだことはない。実際に体にも負担が掛かっているし、涙が後から後から流れてくる。
命令するように言った直後に、怪訝な表情をしたまま性器が引き抜かれた。しかし終わったわけではなく、腰が掴まれると座っているシズちゃんの上に座らされるように体勢を変えられてしまう。

「っ、あ…ぁ…」

目で確認してはいないが、さっきは多分先端部分しか挿入されていなかった。騎乗位の体勢だと間違いなく腰を下ろせば重力に従って、性器が入って来る。
痛みと恐怖を思い出して、瞬間震えた。俺が女性であれば、もっと中を自分で濡らし滑りを良くすれば苦しいことも無いだろうに、と考えてしまう。想像してしまった、のだ。
常識なんか一切通じない夢の中で、なんでも思い通りになる世界で。

「んっ……え?」

すると急に体の奥が熱くなり、後ろに宛がわれた性器が擦れた部分から、ぐちゅりと淫猥な音がした。慌ててそこを覗きこむように顔を近づけると、ローションに濡れたみたいにそこはぬるついている。
粘液は透明だったけれど、間違いなく俺自身から大量に溢れていた。あまりに想定外すぎる事態に驚き硬直していると、俺のことなんか知らない偽者のシズちゃんが腰を掴んでいた手を離す。

「えっ、あ、あっ…んぁっ、あ、ああぁ!!」

気づいた時には遅く、そのままストンと腰を下ろした。つまりそれは、シズちゃんのものをすべて全部受け入れたということで。

「嘘だ…ぁ、ああ、んっ、ひぅ…ほんと、に入って…る?」

さっきよりも大袈裟に全身が震えていた。それは困惑だけではなく、痛みも無く受け入れてしまったことへの恐怖かもしれない。本能が痛みに耐えられなくて、そのまま繋がってしまった。
こんなつもりじゃなかった、と頭の中は真っ白になる。相手は待ってくれなかったけれど。

「あ、ぁあぁっ!?ちょ…っ、とシズちゃ…ぁ、んぁあ!」
「これなら気持ちいい」
「…ッ!?」

その時真下から突き上げてくるシズちゃんが、普段よりも優しげな声で言った。やけに満足そうで、ぞっとしてしまう。何か見てはいけないものを、俺は見てしまったかのような。

「俺達セックスしてんだぜ、なあ臨也」
「ふっ、あ!?なに、っ…え?ぁ、あぁ、なん、で…?待って、俺はなにも命令してな…」

どうしてか、シズちゃんは笑っていた。まるで心の底からセックスをしていることを喜んでいるような、笑顔だ。
思い通りになる世界だと、夢だと思っていた。だけど逆転していた。途端にさっきの女性も、目の前の相手も、何もかもがおかしく見えてしまう。
嵌められた。これは悪夢だ、とすぐに感じた。

「や、やめろ!やめろって…や、め…っ、あ、んぁ、っ、ああ!」
「暴れんなって。ほら、するんだろ?」
「…えっ!?」

ニヤリとシズちゃんが口元を歪めた途端、靄がかかっていた景色に色が映り見覚えのある場所だと気づく。いつの間にかソファの上で二人共寝転がっていたし、どう見ても新宿の俺の事務所だった。
呆然としていると、右腕を強く引かれて前のめりに倒れそうになる。繋がっているので完全に倒れはしなかったが、なぜかキスをされてしまう。

「んっ!?」
「キスして、セックスして、好きって言って貰いてえんだろ?」

すぐに離れたけれど、すかさずとんでもないことを言われてしまう。勝手に頬が熱くなり、自分が優勢になったからとベラベラしゃべったのを後悔した。

「違う、っ…!」
「なんだよ、もっと喜べよ」

何かを引き換えにして一瞬でもシズちゃんが手に入るなら、瞳だろうが命だろうが構わないと思った。だけどそれは間違いだったらしい。
涙は一向に止まる気配はなく、ボロボロと溢れていく。パニックに陥りすぎていて、正直セックスとか、気持ちいいとか二の次になっていた。折角繋がっているというのに。

「嫌だ、っ…偽者、だ…こんなの、全部偽り、んぁ、っ…んぅ!?」
「好きだ、臨也」

行為はどんどん激しくなっていって、互いの肌がぶつかり合い派手な音が室内に響き渡る。あまりにも揺さぶられすぎて、たまに意識が飛びそうになり、すべてを投げ出したくなってしまう。
偽者でもいいじゃないか。悪夢でも、そうでなくても、こんなこと起こりはしないんだから楽しめばいいと。

「はぁ、あっ、うぅ、く…っ、い、やだ…絶対」

誘惑に飲まれそうになる寸前に、ギリギリと歯を食いしばって耐える。これは悪い夢だから、拒絶しなければいけない。俺自身が望んでいたことは、もっと別のものだと頭を振った。

「違うのか?じゃあ手前は何が欲しいんだ?」

やけに鮮明な声が聞こえてきて、ハッと気づく。するとシズちゃんの動きが止まっていて、眼前に顔があった。間近で睨みつける瞳が見える。
普段喧嘩している時に対峙した表情と同じだった。俺に対する憎しみしか映っていない。いつもだったら同じように見つめ返したかもしれないが、安堵した。

「わ、かんない…自分でも、もう」
「なんだと?」
「一つだけ、言えるのは…」

大きく息をついた後、それまで無抵抗だった体を引き逃げながら言った。

「シズちゃんなんか、いらない。もうこんなの、夢にまで見るなんて…たくさんだ!!」

すべてを否定するように怒鳴る。悪夢ならば、ここで消えてくれてもいいのに、じっとこちらを見つめる視線はなくならなかった。
俺は心の底から訴えたのに。どうして、なんで、と癇癪を起こしたみたいに滅茶苦茶に暴れ始める。

「嫌いだ、ッ!大嫌い、死ね、もう顔なんて見たくない!声だって聞きたくない、一人にしてくれ!俺の心から消えてよッ!!」

出会ってからずっと抱えていた思いを吐露する。どうして好きになってしまったのか、幾度後悔したかわからないぐらい繰り返していた。忘れようとしても忘れられなくて、遂にはこんな悪夢まで見たのだ。
これは一生続いていく。そう自覚すると背筋が震えた。叫んで消えてくれるのなら、いくらでも喉が枯れるまで叫ぼうと思う。

「俺はいつになったら、シズちゃんから逃げられるの…?」

一通り叫んだ後、小声でボソリと呟いた。すると突然両肩を思いっきり掴まれて、抱かれる。頬がシズちゃんの左肩に押さえつけられた。

「逃がさねえよ」
「そう…じゃあもう好きにしていいよ」

夢だとわかっていても、死ぬまで苦しみが続くと思うと耐えられなかった。保っていた心が折れたのだ。
ズキズキと相変わらず胸の辺りが痛んで息苦しかったけれど、一つだけ逃げられる方法があった。それを口にする。

「殺してよ…何も感じられないように」

ゆっくりと瞳を閉じて、告げる。それだけは選択してはいけない逃げだったけれど、追いつめられた俺にはもう他に浮かばなかった。
何も見えなくなった途端にシズちゃんのぬくもりを感じて、ほんの少しだけ気分が落ち着く。偽者だろうが、見えなくなってしまえば、意地になっていたことがどうでもよくなってしまう。
真実から目を背けるだけで、こんなにも変わるのかと強く思った。まだ繋がっている部分があたたかくて、唐突に欲しかったものが蘇ってくる。
キスしたかったわけじゃない。セックスしたかったわけじゃない。好きという言葉が欲しかったわけじゃない。
シズちゃんが俺の思い通りになるのなら、確かな体の繋がりが欲しいと思ったのだ。一瞬でも同じ想いになれるなら、と願ったけれど間違っていた。

「シズちゃ、ん…?」

ちゃんと聞いているのか、と問いかけたけれど返事はなく急に眠気が襲ってきて、やっと最低な悪夢から抜け出せると安堵した。

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