ウサギのバイク CAPSULE PRINCESS 30
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2010-03-31 (Wed)
静雄×臨也

続き 言葉を信じれば、叶うような気がしていた

* * *
「いくら誰も来ないからってこりゃやりすぎだよなぁ…」

すっかり気を失っている臨也を背中に乗せながら、池袋の街から新宿に向かって歩いていたがとうに深夜を過ぎた時間帯だった。
肩からコートを羽織らせてはいるがズボンや下着の類は一切身につけていなかった。いくら人通りがほとんど無いとはいえこれはかなり危険だ。
一応持っていたポケットティッシュで拭きはしたが、後ろからはまだ白い液体が垂れていて太股を汚している状態だった。見回りの警官にみつかったら怒られるだけじゃ済まないだろう。

「お、そうだ。こいつとは恋人同士って言えばいいじゃねぇか。そういうプレイだって言いきっちまえば大丈夫だな」

自分のことながらいい考えを考えついたなと感心しかけていたところで、臨也の受け売りだったことを思い出した。前に恋人同士だとかなんとか口走っていたはずだ。
そうでなければ俺がこんな気の利いたいいわけを思いつくわけがない。内心微妙な気分になりながら、軽い足取りで夜道を進んでいった。


あれからいろいろ考えて、どうしてあいつが自分から媚薬を飲んで俺が犯人だったというのを忘れたがっていたか、については答えが出ていた。
直接謝って欲しかったのだろうと。
それはそうだ。あんなことをしておいて尚且つ謝らないのは最低な人間のすることだ。
しかもチャンス、だと言いやがった。ということは謝れば許してくれる見こみがあるということなのだ。あの気まぐれ屋にほんとうに通じるかは置いておいて。


あともう一つ、媚薬をこれ以上使い続けるとほんとうに危険という話だ。
体に影響が無いとはじめに言われたいたからなんの躊躇いもなかったが、よく考えれば常駐し続ければ危険なことぐらい誰でもわかる。
ということはもう二度と薬を使うことはできない。使えないということは臨也との関係も終わりだ。俺の欲望を満たすだけの行為は終わるべきなのだ。
じゃあほんとうに完全に終わりかといえばそんなことはない。ヒントだとかいいやがった約束の件がまだ残っている。
もしそれを使えば、新しい関係を築けるかもしれないということだ。本人に聞いてみなければわからないことだが、試してみる価値はありそうだった。


『だ、いすき…だよ?シ、ズちゃ……ん?』


呪いだとか言いやがった言葉を信じれば、叶うような気がしていた。
いや、俺は叶えたかった。
こんな相手がわけがわからないうちに襲うような卑劣な行為を続けてしまったけれど、今ここで終わりにしたくはないと思っていたからだ。
臨也みたいに好きだ、とか愛してる、だとかそういう気持ちではないが、お互い性格は合わなくても体の相性がいいし手放したくなかったのだ。これまでのいがみ合う関係を続けながら、夜は抱き合うようなそういう関係を望むようになっていたのだ。


随分と都合がいい話だなと自嘲気味に笑いながら、チラリと背中の方を振り向いた。気持ち良さそうに眠ったままで、全く起きそうな気配は無い。
そういえば何度も体を合わせていたが、寝顔をまじまじと見たのははじめてだった。そんな余裕すらないぐらいに、俺は自分の気持ちがわからずにずっと流されてきてしまったのだ。
怒りが止められないのと同じで、欲望を止められなかった。
まぁこれに関してはあいつもかなりの淫乱なのだから、向こうにも非はある。あんなエロい体を前に我慢できるほうがおかしいのだ。


「とにかく、こいつを連れ帰ったら叩き起こして言ってやろう」


腹はもう決まっていた。また明日にして先延ばしなんかしたくはない。今日のように勝手に媚薬飲んで暴走するっていうことをされても困る。
実は自分の気持ちに気がついてからは、早く言いたくてたまらなかった。謝ってそれであいつがどう反応するかが見てみたいと、思っていたのだ。
きっと俺の予想とは違うわけのわからないことを言うかもしれない。だがそこが臨也のいい所であり、合わない部分なのだろう。それでも切れずに聞いてやる覚悟はできていた。



そろそろ目的地の臨也のマンションに着くだろうという頃になって、嫌な雰囲気を感じた。

「なんだぁ?手前ら…」

どこから現れたか知らないが、気がつけば俺の周りを何十人もの男共が取り囲んでいてそれぞれが手に武器のようなものを持っていた。
チラッと見渡すがさっき臨也に絡んでいた連中ではなさそうだった。もしかしたら俺のほうに用がある奴らなのかもしれない。池袋ではなく新宿で絡まれるというのが少しおかしい気がするが。

「しょうがねぇな」

背中に乗せていた臨也を起こさないようにそっと地面に下ろし、そこを中心として寄ってくる男達のほうを向いた。コイツを守りながらというのが厄介だったがなんとかいけるだろうと思った。
そういえば誰かを守りながら戦うなんて滅多にないことだった。相手が相手だからそんなにかっこいいものでもなかったが、やる気はいつもより出るというものだ。

「俺ぁこれから大事な用があんだよ。さっさとかかって来い!」

低くドスの利いた音色で怒鳴りあげると、一斉にそいつらが雄叫びをあげながら武器を振りあげて突っこんできた。
まず最初に鉄の棒で殴ろうとしてきた奴の棒を片手で受け止め、反対側の手でそいつの腕を持ってそのまま力任せに体ごと横に振ると、迫っていた何十人かがそれに巻き込まれてバタバタと倒れていった。
反対側から迫っていた奴らには奪った棒を力を加減しながら真横に薙いで、棒ごと何人かを後ろに吹っ飛ばした。大した威力はないが牽制するには充分だった。
だが向こうは全く怯える様子もなく果敢にまた何人かが襲ってくる。次々とタイミング良くひっきりなしに敵が向かってきたので、途中から完全にそれに没頭していた。
臨也を守らなければならないことや、周りの様子が目に入らずただ目の前に現れる奴らを殴り続けた。
すると対峙していた一人の男がナイフを持っていて、他の男の後ろの影から出てきて切り掛かっていた。その時俺は他の奴を投げ飛ばした後で、体勢的に屈んでいる状態だった。


「……ッ!」


反射的に避けたが少し遅く、あろうことかバーテン服の蝶ネクタイが真っ二つに裂けてしまった。
スローモーションのようにそれが破れるのが見えて地面にポトリと落ちるのを見届ける頃には、頭の中でブチッといつものキレる時の音が響いていた。

「よ、くもてめえらあああぁぁ幽に貰った服をよおおぉぉッ!!」

その後はもういつも通りに道端にあるありとあらゆるものを使って、自動販売機やポストに街頭ゴミ箱看板などを投げまくって完膚無きまでに叩き壊した。やっと周りに誰も動かなくなったところで見渡せば、地面までも派手に抉れていた。
そして少し離れていたところに落ちていたネクタイの切れ端を拾って、さすがにこれは縫っても無理だろうなぁと冷静に考えていてやっと思い出した。


「あ…臨也どうしたっけ」


周りの景色があまり原型を留めていないのでどこに置いていたか忘れたのかと思い、キョロキョロと見回しながら何度かそれらしい場所を探したが姿がみつかることはなかった。
一通り探し終わる頃にはすっかり青ざめていて動揺を隠し切れなかった。

「クソッ、やっぱり狙いはあいつだったのかよ…!」

まんまと罠にはまったのだと気がついた時にはすべてが遅かった。歯軋りをしながらすぐ横で気を失っている男の胸倉を掴んでいた。


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