ウサギのバイク 流れる涙も 凍てついた胸も ⑬
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2010-05-19 (Wed)
静雄×臨也前提 モブ×臨也

続き なんでこんなに、好き…な、んだろ…

* * *


「あぁ、まったく最悪だ」

パソコンのディスプレイを眺めながら、ボソリと呟いた。調べるまでもなく、メールボックスを開いたら勝手に情報が舞い込んでいた。
アドレスに書いてある名前は当然俺のものではなく別人のものだったが、間違いなくそれは所有している複数の名前のうちの一つだった。
本文には予想通りの内容が記載されていて、だから落胆の声をこぼしたのだ。添付された圧縮ファイルを解凍して開くまでもなく、中身は簡単に想像できる。

「コイツと犯れます、って随分簡潔に書いてあるねえ。チェーンメールで手当たり次第に流してんじゃないのかな」

ため息をつきながら椅子に深く背をもたれて、ギシギシと音を鳴らした。
常日頃から”折原臨也を恨んでいて情報を欲しがっている奴がいる”とネット上で流し、それとなく適当な人物をでっちあげて多方面に情報を流しているとこんな風にたまに送られてくるのだ。
一応自衛の為で引っ掛かるのは馬鹿みたいな小者ばかりだったが、昨日の奴らを洗い出すには充分だったようだ。
しかしだからこそこんな奴らなんかに脅されているのが、腹立たしかった。
シズちゃんとのことさえ見られていなければ、知られていなければ、普通にかわせるような相手だったのだ。
全部自分で蒔いた種だったが、それが告白したことに対しての罰だとかそんな風には思わない。なにしろ俺は神なんてものは信じないのだ。

「しっかしこんな手当たり次第じゃあ、俺が手を出さなくても勝手に助けてくれるかなあ?まぁ一日平均二十人ぐらいだとして、五日くらい?」

適当すぎる予測だったのだが、自分達のシマで荒稼ぎをしている奴らがいるとわかれば粟楠会だって黙ってはいない。こっちから頼まなくても多分あいつらを始末してくれるだろう。
だがそれにしても彼らは慎重に動くことが多いので、時間が掛かるのだ。少なくとも俺が相手をするのが三桁を越えたぐらいでないと、行動を起こさないだろうことはわかっていた。
五日というのが長いのか短いのかはわからない。なにしろこんな性的行為を受けるのがはじめてだったから、どこまで体と心がもつのか見当もつかないのだ。
初日と昨日の乱れ具合から考えれば、あまり長くはもたないように感じたがあくまで自主的な観点からの予測にすぎず確証は全く無い。これ以上は考えるのは無駄だと諦めた。
人の行動というものはある程度は読めるが、自分の無意識な部分を読もうなんてできるはずがないのだ。

「四木さんが俺を見逃すはずなんかないしね…でも怒られるぐらいは覚悟しておいたほうがいいかな?」

ディスプレイを眺めるのはやめて、目線を逸らして椅子を窓辺に向けて半回転させて外を見た。正直もうそれ以上を考えるのが面倒だったのだ。
まだ約束の時間までほんの少しだけ時間があるので、疲れた体を休めることに専念しようと思った。
心のどこかでどうせ助けてもらえるだろう、という気持ちがあったからここまで落ち着いていられたのだが、もっと深く考察すべきだったのかもしれない。
この時点ではなにもわからなかったわけなのだが。
すぐに襲ってきた眠気に薄目を開けてうとうとしながら、何の気なしに今朝のことを思い返した。


「そういえば…シズちゃんなんで俺が…泣きそうだって言ったのかなあ?」


あの時はコートの下の赤い跡が見られなくて必死だっただけなのに、どうしてそれが泣きそうに見えたのか理解が出来ない。
いつもは容赦なく襲ってくるのに病人だからと襲ってこなかったことも、気になっている。どうせ物を考えないシズちゃんの発言なんて、ほとんど意味がないのはわかりきっていたのだが。
脳から直結して思ったことが口に出るタイプだ。正直者と言えば聞こえはいいが、ようはただの馬鹿だ。そんな相手の考えなんてわかりたくもない。
と、そこでだから振られたのかと思い至った。
考えるのさえ無駄だと、シズちゃんの気持ちなんかまるっきり無視していきなり告白したのだ。怒るのは当然だし戸惑うのは当然だ。

「そっか、今日のあれは迷ってた…のか?」

普段は考えるなんてことをしない性格なのに、俺の言った事に対してそれなりに真剣に考えて迷っていたのかと思った。
一度は振られはしたが、なんだかおもしろいことになってたのかとやっと気がついた。あんなことさえなければもう一度アプローチしているところかな、と考えかけたところでやめた。
こんな状態で関われるはずがない。例えば奇跡が起きて後日俺の告白をシズちゃんが受け入れたとして、だがそのまま喜ぶようなことはないだろう。
むしろそんなのは俺自身が拒むだろう。淫らになってしまった体を知られたくなんかない、から。
なにがあっても、隠し通す気だった。ただの自己満足だったとしても。
だから男達の脅しにはこれからも従わなければならない。粟楠会に始末されるまでの間であったとしても屈辱的だったが、バラされるほうが精神的に辛いのだからしかたがない。


「あー…ほんとなんでこんなに、好き…な、んだろ…」


口だけでもごもごと動かしていたので、最後の方はほとんど言葉にすらなっていなかった。束の間の休息に徐々に意識が薄れていった。





「今日は折原さん目当てに来たお客さんばかりですから、ちゃんとお相手してあげてくださいね」

男はそう言っていた。視線を外して適当に話を聞いていたが、首を振って頷いた。素直に従う気なんかないが、怒らせないギリギリのところで反応しないといわれることはわかっていたのだ。
俺の後ろには男達が立っていて、いつもの手枷を腕にはめているところだった。最終的には邪魔だと外されるのだが、そういう趣向を楽しんでいるのだ。ほんとうに悪趣味だ。

「あとこれ、首輪とかまさに奴隷って感じでお似合いですよ?」

首につけられているものがなんなのかは知っていたが、目の前の奴は改めて首輪にふれて撫でながら上機嫌に言ってきた。当然それに応える義理はなかったから無視をした。

「まぁ最初はそういう気丈な態度でいてもらわないと、こっちも困るからいいですけど。とりあえず今日の分の薬打っておきますね。もし足りなくなったらまた打ちますけど。なにしろ今日は人数が昨日までと違いますから、頑張ってもらわないと」
「…っ」

言い終わらないうちに腕に痛みがぴりっと走り、催淫剤を打たれたのだと気がついた。確かに薬の力でも借りなければ、大人数なんて相手にできないのはわかっていた。
いくらなんでも素面で最後まで精力がもつはずがないのだ。薬の副作用は心配だったが、今のところはなにもないので黙って注射の中身が無くなっていくのを見ていた。

「じゃあそろそろ準備できましたか?頑張ってくださいね、さすがに三桁はいかなかったですけど結構な人数集まりましたから」
「え…?」

聞き間違いかと思って男を睨みつけて問いただそうとしたところで扉が開き、見覚えの無い男達がぞろぞろと部屋に入ってきた。
多分半分以上が俺のことを知っていて恨んでいるような奴らだったのかもしれないが、生憎こっちは忘れてしまっている。忘れていてよかったとすら思うぐらいだ。
そいつらが口々に”ほんとうに折原だ”とか”よく捕まえたな”とか言い出したので息を飲んだ。誰の目も欲望にギラギラと目を輝かせていて、すごい雰囲気をかもしだしていた。
確かに昨日までの興味本位の奴らよりは、性質が悪そうだった。

「みなさん、これが本日の主役。淫乱奴隷の折原臨也です。まだ躾けがなってないので、できれば教え込んでやってください」
「……っ、あ」

さっきまで俺としゃべっていた男が大声で話した後、おもいっきり背中を後ろから押されたのでそのまま床の上に倒れこんだ。
既に薬が効きはじめていたので、打ちつけた部分からぞくぞくとした疼きが駆け上ってきているのを感じていた。



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