ウサギのバイク 流れる涙も 凍てついた胸も ⑭
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2010-05-20 (Thu)
静雄×臨也前提 モブ×臨也 ※18禁注意

続き 恋心が膨れあがっている

* * *
気がついた時に、俺は路地裏でうずくまって地面に寝転んでいた。
ここまでどうやって歩いてきたとか、そういう記憶がほとんど無かった。記憶喪失だとか、薬の効果だとか、自分から嫌な記憶を心に押し込めたというのとも違っていた。
全く覚えていないわけではないのが、その証拠だった。
下品な笑いを浮かべた男達が、何人も何人も跨って体の中に熱い迸りを出し続けた。恨み言や罵声を浴びさせられながら、それでも最初は気丈に振舞えていたのだ。


『動くならもっとまともに腰、振りなよ…ッ…こんなんじゃ俺もイけないじゃない?』
『犯されてるってのに、よく怒らせるようなこと言えるよな?』
『あ、ははっ…そう、だね。俺正直者だから…っ、あ、は、はあぁっ…!』


あれは確か二十人を越えたぐらいだっただろうか。数なんて数えてはいなかったが、注射器を持った男がそう言っていたのだ。


『そろそろお客さんも次の段階を望んでるから、ちょっとだけ壊れてくれるかな』
『うぐ、ひっ、あ…くそっ、からだ…また…ッ、はあぁっ…』


前のように後孔の近くに注射針を打たれ、そこからがほとんど途切れ途切れだったが熱を解放するために勝手に口が動いていたのだ。


『だめっ、も、あつい…欲しいよ…おちんちん、激しくっ…して欲しっ…あ』
『さっきはあんなに汚いだとかさわるなとか言った癖にか?』
『あれ、我慢してただけ、だから…っ、ほんとは、イかせて欲しくて…たまらなくてっ、だから…!』


媚びる表情もすっかり慣れたものだったが、直後に相手は簡単に堕ちてくれて望んだ刺激が手に入った。それからはもうずっとその状態を保ちながら、ギリギリのところで犯され続けた。
自分が発した淫猥な言葉の数々も、悦びながら自ら腰を振るのも当たり前になっていた。こうするのが自分の仕事だと言われても何の疑問も持たないぐらい、男を受け入れた。

常に熱に浮かされたようなぼんやりとした視界の中、それでも耐え続けて自分を見失わずにいれたのはシズちゃんのことが心の中に常にあったからだった。
もしそれがなければきっと、もっと早くに自分を見失っていたのではないかと思えるほどに想い続けていた。

いや、むしろこんな最悪なことがあったからこそまだ純粋に想っていられのかとさえ思う。
こんなことになる前から充分好きにはなっていたのだが、余計に想いが強くなっていて、強すぎて本人を直視できないぐらい、恋心が膨れあがっている。

「は…ぁっ…信じらんない、なぁ…」

震える手で両腕をぎゅっと握りしめながら、呟いた。
しかし所詮は叶わない、恋なのだ。
どんなに願っても、幸せの欠片さえ手に入れられないのだ。
淫らになりきった体ではきっと。

「ん、あっ…まだ、あつ……」

そわそわと腰を揺すりながら、おもわず口からこぼしていた。
さっきから一歩も動けない理由がそれだった。実は帰り際に無理矢理体の中にローターを四つほど押し込まれて、中に出された精液をこぼさないように栓をされた状態だった。
鈍い頭でははっきりと拒むこともできず、このまま新宿まで帰ることを強要された。当然のことながら、外したらどうするかわかってるだろうな、と脅されて。
こんな池袋のど真ん中で休んでいたらどうなるかわかってはいたが、足が重くて立ちあがれないししょうがないと諦めるしかなかった。
でも、本当はこんな最悪な事になっていてもそれでも会いたいと心の中で望んでいたのかもしれない。
そしてそれならきっと、願わずとも絶対に叶うだろうと。

「サイテー…だねえ、俺も」

低いモーター音に混じって、誰かが駆け寄ってくる靴音が聞こえてきた。自然と口元が歪み、震える手を隠すようにポケットに突っこんでこっちから声を掛けた。



「なに?今日も会いに来てくれたっていうの?」
「誰が手前なんかに…ッ!とどめを刺しにきただけなんだけどなあ、昨日以上に弱ってんじゃねえか。こりゃ殴る価値もねえ」
「は…っ、ひ、っどいなあ…シズちゃんは」

俺のことを覗き込んでくる瞳と目が合った瞬間、ドクンと体中の血が疼いてどうしようもなくなった。鼓動も早くなり、息もどんどんあがっていく。
それが好きな相手に会えて喜んでいるからなのか、好きな相手に痴態を隠しているからなのかはわからなかった。
あまり強くない微弱な振動が、じわじわと蝕むように広がっていき、中に埋まっている塊と精液の存在と感触がはっきりと思い出されていた。

「まだ風邪が治ってねえのに池袋まで仕事で来るとは、随分熱心だなあ?こんな日ぐらい休めよ。そのほうが街が静かなのによお」
「心配してくれるなんて嬉しいねえ、でもちょっと気持ち悪いなあ。褒められ慣れてないからね俺は」
「罵倒されたほうがいいってマゾなのか?きめえな」

眉を顰めて心底嫌そうな顔をしていたが、いつも通りの表情だった。昨日みたいにわけのわからないことは、もう決して言わないだろう。

迷いは吹っ切れたのだろうと、勝手に納得した。
しかし。


「じゃあしょうがねえから今日こそ家まで送り届けてやろうか?臨也よお」


「は…?」

一瞬自分の耳を疑ってしまった。無理もない。話ですら全く繋がっていなかったというのに、いきなりこの発言だ。
シズちゃんが腰を屈めてこっちに手を伸ばしてくるのを眺めながら、警報が頭の中で鳴り響いた。
これ以上は踏み込まれてはならないと、ただでさえまともではないこの状態を絶対に知られてはいけないのだと叫んでいた。


「や、だっ…やだやだ、来るな!そんなこと誰も頼んでないからっ、近寄るな、離せええぇッ!!」


男達に体の上に乗りかかられた時よりも、必死に懸命に拒絶の声をあげた。頭を振り乱して震える手で向こうの手を叩き落とそうとした。だが闇雲に振り回して空ぶっただけに終わった。

「まだ掴んでさえいねえのに…なんだ?その暴れ様は…なんか、隠してんのかもしかして」

疑惑を向けてくる眼差しが、真実を捉えかけていた。
ここまで動揺すればバレるのは当たり前のことだったのかもしれないが、それにしても酷かった。


「そうだよ、俺はシズちゃんに隠し事してるよ。でもそれはいつもじゃない?」
「いや、でもおかしいだろう…」
「もしかしてまた昨日みたいに、俺が泣きそうな顔してるって適当なこと言うつもり?」

嘘をつくな、俺がそんな表情なんかしてるわけないだろ、と嫌味な笑いをわざと浮かべながら睨みつけた。
しかし返ってきた言葉は、また斜め上をいくようなとんでもないものだった。



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