ウサギのバイク CAPSULE PRINCESS②
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2010-02-17 (Wed)
静雄×臨也 ※18禁注意

前回の続き やっと薬飲ませるところです

* * *
「まともに家に入れたのははじめてだよね。なんか、変なの」

何度か強引に踏み入ったことがあったが、通されたのはどうやら情報屋の事務所としている部屋のほうだった。書類が机の上に高く積まれていて薄暗い雰囲気が漂っていた。
俺はそんなことはどうでもよくて、さっさとソファーの上に腰を下ろして後ろにもたれかかった。

「やけにエラそうだよね、さっきから。まぁいいや。シズちゃんコーヒーでいいよね?ミルクとか砂糖は?」
「適当でいい」

ジロジロと部屋の中を見渡しながら興味なさそうに答えた。実はそれは演技だったのだが、きっとあいつは気がついていないと思った。
頭の中でどういう風にするのかシュミレーションをしていたが、緊張は抑えきれないようだった。ポケットの中の小瓶にふれている手のひらがじっとりと汗をかいていた。
タバコでも吸って落ち着きたいところだが、そんな時間も無く臨也がコーヒーカップを二つ持って戻ってきた。

「まさか受け取った途端、俺に投げつけたりはしないよね?」
「あぁ…でも悪い、やっぱり砂糖とミルク入れてぇんだけど」
「はぁ?さっき何聞いてたの?っていうかシズちゃんが砂糖とか入れるのはじめて見るんだけど、最近味覚変わったの?まったくわがままだな」
ぶつぶつと文句を言いながら、予定通り臨也が俺に背を向けて砂糖とミルクを取りに戻った。


ぐっと唇を噛みしめながら素早く小瓶を取り出して蓋を開け、勢いのままに中身を臨也のほうのコーヒーカップに入れた。
どのぐらいの量を入れればいいのか聞いてなかったが、とりあえず数滴ほど落としてみた。そしてすぐに蓋を閉めると、何事も無かったかのようにソファーにふんぞり返った。
密かに緊張の糸を緩めて息を吐いて安堵していると、すぐに臨也が戻ってきた。

「ねぇ今なんかしてなかった?あまりウロウロして書類の束崩さないで欲しいんだけど」
「片付けないのが悪い」

早速行動を指摘されて焦ったが、どうやら向こうのほうは仕事の書類を見られたと思ったらしい。都合がよかったので適当に話をあわせたらそれ以上つっこんでくることもなかった。
砂糖とミルクを差し出されて受け取ると、申し訳程度に軽く入れるに留めた。本当はブラックで飲みたかったからだ。

「なに?全然砂糖もミルクも必要ないじゃん。嫌がらせでもしたかったの?」

臨也は言いながら右手でカップを持ちあげて、そのまま口に運んだ。俺はスプーンを混ぜる手を止めてじっとその姿を静かに眺めながら、心の中でほくそ笑んでいた。
いつも捕まえる寸前で逃げられてばかりだったので、やっとそのうさ晴らしができたかと思うと喜ばずにはいられない。
半分ぐらい中身を飲んだところで戻し、改めてというように話し掛けてきた。


「で、話ってなに…?いつも俺とはまともに話なんてできないシズちゃんが、どういう用件なの?」

どうやらすぐには薬の反応はでないらしい。まだ数秒しか経ってないから当たり前なのかもしれないが。
話す用なんて全く無いのだが、効果が現れるまで時間を稼がなければいけないのはわかっていた。

「いや、まぁそうだな…てめぇに言うかまだ迷ってるんだが…」
「へぇ、はっきりしないなんて珍しいね。ますます興味が沸いたよ。いいよ、悪いようにはしないから教えて」

表情を綻ばせながら問い詰めてくる様子から、もう少し時間が掛かると思ったので緊急措置を取ることにした。


「その前に…トイレ借りていいか」

「もう!なんだよ!!ここまで勿体ぶっといて逃げるの?シズちゃんってそんな奴だった?どっちかというと俺がよく使う手だよね、仕返しとでも言いたいの?」

盛大に文句を言いながらも指で場所を示してくれた。どうやら廊下のほうにあるらしい。
時間は稼げるがこれでは薬が効いてきたか確認できないな、と思いながらとりあえず立ちあがって行くことにした。
中に入り扉を閉めて聞き耳を立ててみるが音はまったく届いてきそうになかった。
ポケットから携帯を取り出して時間を確認しながらとりあえず五分くらいそのままで待ってみた。
さすがにこれだけ時間が掛かっていれば、向こうもただ待つのが暇でコーヒーを飲み干してしまっているかもしれない。そのほうが薬の効果が完全に出やすいだろう。

そろそろいいかと思い水を流して、わざとゆっくりとした動作で歩き部屋の中に戻った。扉を開けた瞬間に罵声が聞こえてくるかと思ったが、なにも言われることはなかった。
それに淡い期待を抱きながらソファーに座り直すと、目の前の相手はどうでもいいような表情でこちらを見つめながら衝撃的なこと言った。


「まさかシズちゃんに薬を盛られるなんて思わなかったよ。とんだ失態だね」


こんなに早くバレるとは思わなかったので動揺しかけたが、臨也はいつものようにナイフを出して襲ってくるような雰囲気はなかった。怒ってすらいない。
わざとらしくため息をついてみせたが、その一つ一つの動きがいつもと違うのをなんとなく感じていた。

「しかもどれだけ入れたか知らないけどさ、結構ヤバイよ?依存性も無いし後遺症も残らないから使われた本人もわからなくて、ただ数時間記憶が抜け落ちてて寝てたのかな?ぐらいにしか思わないんだよ」

どういう経緯でサイモンの手まで渡ったかはわからなかったが、悪意のある者に使われなくてよかったと思った。臨也みたいな奴にこそ使うべきだ。

「だからね、きっと俺シズちゃんに薬盛られたことも…下手したら出会ったことも忘れちゃうかもしれない。怖いよね、しかも使おうと思えば薬を持ってる限り何度でも俺に使えるんだよ?最強じゃん」


「そんなに怖いもんなら、なんで俺に話したりしてんだ」
情報屋の癖に重要なことをべらべらと話しているのに疑問を感じて問いかけた。奴の考えていることが全くわからなかった。

「さぁね…ただ、責任くらいは取って欲しいなと思って」
「責任?」


「今晩だけでいいからさ、つきあってよ」


俺のほうに笑いかけてきた臨也の嫌な笑顔に、少しだけ苦痛の色が混じっていた。


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