ウサギのバイク リセット Another ①
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2011-05-10 (Tue)
*拍手連載「リセット」の別EDの話 16話からの分岐です
静雄×臨也 ※18禁注意

臨也に何があったのかをすべて知り静雄が助けに行く話
※今までの雰囲気と違い18禁要素強めです

* * *


「これはどっちだ?」
「折原さんが死ぬ寸前に間に合う方ですね」
「そうか…」

手のひらのコインが表がどちらで裏がどちらかは聞いてはいなかったが、裏を指し示していた。なんとなくそれだけで察することができた。この選択肢があまりいいものではないのかもしれないと。

多分これは、俺のわがままなのだろうと。

普通に考えて、すべてをリセットした方が臨也の体もそのままだしそこから新たに始まることだってできる。いくらでも関係を築けるというのに、それを選ばなかった。
自分で選ばずに運命に身を任せたのは、未練があったからだ。すべてをやり直すことは悪いことだとは思わない。でもそうしたとして、今までの俺達は何だったのかと。
最後には死ぬとわかっていて奔走した、臨也のあの気持ちを完全に捨ててしまうなんて、それはあんまりなのではないのか。

俺はあいつを、一人で死のうとしていた臨也をどうしても助けてやりたかった。


傷つけて悪かったと謝って、抱きしめて、そして――好きだと。


きちんとした自分の言葉で伝えたかった。それが一番ストレートで、俺のしなければいけないことなのだ。
勝手にごちゃごちゃと一人で考え込んで、こんなことを引き起こしてしまったあいつに対して言わなければいけない大事なことだ。

「ったく、本当に面倒くさい奴だよな…」

ため息をつきながら、持っていた手紙をポケットに仕舞った。そうして目の前の相手に向き直った。そうして、告げた。

「全部を教えてくれるんだろ?」
「ええそうですね。あなたはそれを望んでいますよね?」
「ああ」

どれが嘘で、本当の事なのかだいたいわかるけれど臨也のことだ。俺には全く分からないことで悩んでいたのかもしれない。だからもしそれを知ることができるのなら、教えて欲しいと思った。
気がつかなかった数日間のことを知ることができたなら、きっと俺に対していろいろプレゼントをして驚かせてきたように、俺もあいつを助けて驚かせることができる。
どんな反応でもいいから、目の前で臨也が俺に対して喚き散らしてバカだと罵る姿が見たかった。

臨也にきちんと会って、助けてやることだけが俺の願いだ。

「頼む」
「わかりました」

男に向かって真剣な瞳でみつめながら、胸は勝手にバクバクと高鳴っていた。どんなものでも受け入れる覚悟はあるけれど、やはり怖いのだなと、じゃああいつはもっと怖かったのかと唇を噛んだ。



「やっぱり、わかってても嫌だよねえ。こんな奴らを相手にしないといけないなんてさ」
「おい情報屋さっきからうるせえぞ、しゃべれなくしてやろうか」
「はいはい、すみませんでした」

背後には二人の男が立っていて、俺の前で先導するように歩いていた男が怒鳴ってきた。逆らう気なんてなかったし、何より武器を一切持たない丸腰の俺が勝てるわけがなかった。
ナイフは全部シズちゃんに壊されてしまったのだ。それを買い直して、家に持ち帰らなければいい話なのだがそうしなかったのは約束したからだ。
自分がただ不利になるだけなのにバカだなと思ったが、今まで嘘ばかりついてきて、最後にはきっと大きな嘘をついてしまうのだからこれぐらいは守りたかった。
ナイフを持っていたところで、こいつらから逃れるつもりはないのだから。
背後の二人は俺が暴れないようにそれぞれナイフを突き出していて、狭い路地裏を延々と歩かされていた。といっても場所は池袋なので、事前にシズちゃんの取り立て先は把握していたが内心ドキドキしていた。
バレたって構いはしないけれど、昨日の様子だと怒鳴られるか不機嫌な顔をされるには違いない。

『なんか俺の知らねえところでコソコソ人と会ってんのがむかつく』

そう言われた時は驚いたけれど、嬉しかったのは事実だ。前は俺の仕事に対して興味すら示したことが無い。ただ胸糞悪い仕事だ、と言うだけで。
だからシズちゃんが変わってきたのに戸惑いつつ、胸があたたかくなるような気持ちだった。それを素直に伝えられたらよかったのかもしれないが。

「着いたぞ、ほら中に入れ」

その時明らかに裏口らしき扉の入口でそう言われたので、ため息をつきながら無言のまま前の男の後に続いた。



「情報屋を辞めるとこうなることぐらい、あんたはわかってたよな?」
「ええわかっていましたよ。でもどうしても辞めなければいけない事情があって…」
「抵抗せずにここまで来たことは褒めてやるよ。でもだからと言って容赦はしない。せいぜいこっちは稼がせてもらうわ」

連れて来られたのは随分と広くコンクリートが打ちっぱなしの部屋で、室内には家具などは何も無かった。男が数人居るだけで、明らかに一番派手な恰好をしている奴が俺に話掛けてきた。
その間に他の奴は俺の手首に縄を結んで後ろ手で拘束し、これから何が行われるか物語っていた。
どちらにしろ、俺だって知っている。あの見せられた俺の最後の死体らしき体には、血に混じって汚い精液が全身に飛び散っていた。だからこれからは逃れられないのだ。
逃げてしまったら、代わりにシズちゃんが死んでしまうから。

「他の組の奴らにも飼われてたんだろうが、手前を見つけたのが一番早かったからな。もう手だししてこない。あんたはもう俺達のものだ」

同じ白いスーツなら粟楠会の四木さんの方が断然似合っていたな、と思いながらそいつの話を聞き流していた。何を言ったところで、聞いたところで、運命は変わらないのだ。
しかし一つだけ厄介だとすれば、この組が薬を中心に取り扱っている連中なぐらいだ。他の仕事を手広くするわけでもなく、薬とそれに関わる風俗だとか人身売買だとかそれが中心だった。
だから組の中のそれなりに偉そうな男の傍に立つ二人の男が、気になっていた。どちらかというと堅気の者だが、纏う雰囲気がどことなく違っていて、不思議だった。
俺があまり会ったこのない種類の人間なのだろうと思ったが、ということはつまり。

「じゃあ俺らは明日の朝ぐらいに、情報屋さんが大人しくなった頃に会いに来てやるよ。それまでせいぜい頑張って、いろいろ仕込まれるといい」

それだけを言い残すと、何人かの男達と一緒に扉から出て行った。わざわざ説明されなくても、わかってる。俺は残った奴らの手で、商品に変えられるのだと。
男相手に足を開く、淫らな商品に。

「あんた顔が綺麗だからすぐ人気出るな。まあ身元が怪しいから数回しか仕事は無いだろうが、いい薬もあるしすぐに金を稼げるようにしてやるからよ」

その言葉に対して俺は顔を背けることしかできなくて、不機嫌な表情を隠さないまま床に座らされて服が切り刻まれていくのに従っていた。何かを考えることは、しないほうがいいだろうと思った。
それこそシズちゃんのことを思い返してしまったら、きっとこれから同じ部屋で過ごすことができなくなる。だから感情をすべて押し殺そうとした。それが甘いことだと気づいたのは、後からだったが。

「こんな強い薬を使うのは初めてなんだよな。噂ぐらいは聞いてたが、たった数回で廃人になるぐらい酷い効果で気持ちよくなれるってなあ」
「…っ」

服を脱がしていたのとは違う男が、コートを押しのけて肘の辺りまで下ろし、直後に後ろから首筋に針を突き立ててきた。俺にとってはよく見る光景でも、自分が受けるのは初めてだった。
だからどんなものか知らなかったし、少しだけ侮っていた節があった。でもすぐにそれを後悔した。

「この澄まし顔が一瞬で変わるぐらい、最高だって」

「……っ、うぐ…ふ、うぅ、ん……あ、っあー……!?」

打たれた薬の効果も、打たれた女がどうなったかも全部知っていたのに、自分の身に起こって初めて実感した。これはやばい、と。
そんなつもりは全く無かったし、俺だけは大丈夫と過信していたものがあっさりと崩れ落ちた。中身が全部体の中に流しこまれて、針が引き抜かれて数秒してから体に急激な変化が訪れた。
声を抑えるどころか、座っているのも辛くて床に倒れ込みながらも主に腰から下をビクビクと跳ねさせていた。視界が明るくなったり暗くなったり、何度もフラッシュバックする。
取り繕う暇なんてなくて、今自分に起こっていることさえも夢のように思えた。それぐらい現実味がなくて、厄介な媚薬だった。

「はっ、あ…はぁ、あ、うぅ…くっ……」
「これじゃあ俺達の声も聞こえないか?でも言う事を聞いてくれねえと、調教する意味がないんだよな。まあまずは体に覚えさせてやるか」

耳元で囁かれたはずなのに、全く頭の中に響いてこなくてぼそぼそと聞き取れない何かしか伝わってこなかった。うるさいぐらいに自分の息遣いだけが聞こえてきて、苦しかった。
全身は熱く火照っていて、手が自由に使えたら頭を掻きむしるぐらい衝動的なものを感じていた。拘束されている手首を滅茶苦茶に振り回す。けれども怖いのは、そうしても痛みはなかったのだ。
ふわふわとした心地よさしか襲ってこなくて、痛覚が麻痺しているのだと知った。だから余計に、際限なく自分の体を痛みつけるような動きもできた。

「はいはいそれ以上傷つけたらこっちも困るから。ほらしっかりしろよ情報屋さん?」
「あ、うぅ…くあ、はっ、はぁ……」

全身の動きが止まったのは、肌の上に冷たい粘液がとろりと垂らされたからだった。でもそれもすぐに熱くなって、どうしようもなかった。

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