ウサギのバイク リセット Another ⑤
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2011-05-31 (Tue)
*拍手連載「リセット」の別EDの話 16話からの分岐です
静雄×臨也 ※18禁注意

臨也に何があったのかをすべて知り静雄が助けに行く話
※今までの雰囲気と違い18禁要素強めです

* * *


暫くして体も熱もおさまったので、全裸のままベッドに横になり少しだけ休息を取りながらぼんやりと考えていた。当然のことながら、これからのことだ。
大体の仕掛けは既に終わっている。シズちゃんの周りの人間への根回しとか、俺の悪い評判を散々振りまいておくこととか。そうした方が、死んだ後に株があがるからに決まっているから。

「でもまさか、こんなことになるなんてね…」

最初に好きだ、つきあってくれと告白した時はこんなつもりではなかった。もう少し別のものを想像していただけに、こうやって男達に組み敷かれた今でも現実とは思えなかった。
見せられた死に際の映像は、確かに血と気持ちが悪い精液まみれで転がっていたがあれは直前にそうされただけだと。まさかこんなに早く呼び出されて、こういう行為をされるなんて想像していなかった。
しかも薬なんて使われて、一晩で価値観はすべて変わった。それこそシズちゃんを見る目も。
きっと今寝顔なんてうっかり見てしまったら、体の奥底が疼いて自分でも嫌悪する感情が浮かんでくるに違いない。そんな性欲なんて、いらなかったというのに。

「シズちゃんも、いつか誰かとあんなことを…」

ふとよぎった考えに、酷く胸が締めつけられた。息苦しくなって、涙がぼろりとこぼれ始めてしまう。薬のせいかはわからないが、うまく感情がコントロールできなくなっていた。
でもさすがにシズちゃんの前で泣くわけにはいかないので、今だけだと微動だにせず誓う。こんな女々しいことを考えたくはないのに、頭は勝手に想像を広げていく。
俺の知らない誰かと、そういう淫らな行為をしている姿で。ギラつき、欲望に支配された瞳を鋭く見せていて。でもそれは違うかもしれない、とも思った。
きっと俺以外には、そんな厳しい視線は向けない。きっと優しく穏やかに笑いながら、気づかうように囁きかけるだろう。それが、本当の姿なのだ。
でもそれはきっと、一生見られないだろうと。そんなシズちゃんなんて、いらないとも。
つきあってくれ、と告白した時はそういうのも少なからず期待した。でも結局、その言葉の意味さえも理解していなかったと知って一人で勝手に失望して。諦めた。
今回のことだって、回避しようとすればいくらでもできた。別に最後の日にあの男達に犯されて殺されればいいわけだから、事前にこんな目に遭う必要もない。
けれども確実に俺自身に関わらせていたほうが、きっと確率は高くなる。あいつらが俺を殺して、シズちゃんが生き続けるという選択肢が。
始めから俺の中には二人が同時に生きるという選択肢は無かった。やろうと思えばできたかもしれないけれど、現実としてシズちゃんだけはコントロールできないのだから失敗すると。
そうしてこっちだけが生き残ってしまえば、一生後悔する。だから生きる、という考えは始めからなかった。なくていいと。

「俺の願いが叶うなら、それでいい」

無駄な毎日を生きるより、願いの方が大事だから、これから先どんなことが起きても大丈夫だと。どんなに汚されても、狂わされようとも、あと少しの短い時間さえ我慢すればいいのだ。
終わりがあるから、それに向かって耐えられる。だから勝手に体を変えられたことも、使われたことも些細なことに思えた。悔しさとか、嫌悪とか、苦しさとか全部を忘れられた。
手首の跡をチラリと眺めながら、最後の日まで絶対に隠し通す決意をする。人の役に立つ、体を使った汚いことをしていたなんて知らるなんて耐えられない。
そんな裏の部分なんて、見せたくはない。この行為がどうしても必要なものだったと説明するのも面倒だし、同情やそれこそ嫌悪の目で見られたらたまらないから。

「好きだけならまだいいけど、欲情して性的対象で見てたなんて…ねえ」

気持ちが悪い、と自分自身で思いながら目を閉じた。あそこに帰ったら、この薄汚い感情はしっかり蓋をして再び行為を強要されるまで一切考えないようにしようと決めた。




「よく何もせずに逃げ出さなかったですね」
「無駄なことぐらい、知ってましたから」

再び呼び出されて指定された場所に向かうと、前とは違うところだった。どこかの大き目なスタジオで、そこがどういう目的で使われているかぐらい事前に調べていた。
きっと数日は戻れないだろうな、と見当をつけながら昨日までのまるで夢のような日々を思い返そうとしたがそれはできなかった。背後と左右から体を抑えつけられて、再びそれを見せられたから。

「……っ」

遠慮なく注射針が首の根元に差し込まれて、すぐに体が硬直する。嫌だ、嫌だと思いながらも抵抗は全く見せずに、瞳は宙を虚ろに眺めていた。
きっとシズちゃんの前でみっともなく泣いてしまったり、感情の起伏が激しいのはこの薬の副作用か何かではないかと勝手に思った。些細なことで喜んだり、落ち込んだり。
そうやって過ごすのはよかったけれど、疲れるとも思った。接触すればするほど、余計な気持ちは膨らんでいくし未練のようなものだって生まれてしまいそうになる。
だからこれ以上近づいてはいけないと思って、こいつらに会う前にシズちゃんの弟に会って嫌われる要素は作ってきた。だからまた次に家に戻った時には、大丈夫だと。これ以上掻き回されることはもうないだろうと。
それなりに楽しかったけれど、もうこれ以上辛いだけの、苦しいだけの思い出なんていらなかった。最後の瞬間に、悔やまない為にも。

「はぁ……っ、う……」

徐々に視界がぐらりと歪み覚えのある感覚がじわじわと蘇ってくる。倒れそうになる体を周りの男達が支えて、全部注射針が引き抜かれるとすぐさま手を引かれて場所を移動させられる。
それまでは待機室らしきところに居たのだが、廊下を歩きとある部屋の扉の前で一度止まる。その時にはもう、息苦しくてしょうがなくなっていた。

「そういえば、あなた今あの池袋の喧嘩人形と一緒に暮らしているという話を聞いたのですが」
「……え?」

どうしてそこでこんな話が出てくるのか、一瞬意味がわからなかった。朦朧としていた意識を必死に繋ぎ止めて、相手の男を睨みつける。一体何が目的なのだと、視線だけで尋ねた。
するとそいつはニヤリと口の端を歪めて、それから笑い始めた。そうしてようやく、俺はシズちゃんと住んでいることを暴露させられてしまったのだと気づいた。

「いやあ、まさか本当だとは。じゃあ話が早いですね。わかっているでしょうが、下手に抵抗したり逆らえば同居人がどうなるか」
「……俺を脅してると?」

今更そんなことをしなくても逃げたり抵抗したりしないのに、と思いながら苛立ちを隠さずに向けた。すると以前会った奴とは違い、少し頭の切れているらしい男が声を出して笑う。

「今日は映像を撮るので、そんなことをされたら困るのですよ。それに視聴者は、従順になったあなたが性欲に溺れるところが見たいのですから」
「好きにすればいいですよ。全く逆らう気なんてありませんから」

頬がじんわりと熱くなっていくのを感じながら、きっぱりと言い捨てる。すると相手の目の色が少し変わり、こっちを射抜くように見つめてきた。

「あとあなたを知る者のほとんどが知りたい、と思っていたことをどうしても言わせたいのですよね」
「なんですか、それ」

急に言っている意味が分からなくなって、顔を顰めた。含ませるような言い方ではなくはっきりして欲しい、と胸を上下させながら思うが文句は口にしない。
数秒待っていると、ジロジロとこっちを見ていたそいつが衝撃的なことを告げてきた。

「弱み、ですよ?」
「は?」
「折原臨也の弱みを知りたい、と考えていた連中は相当多いですからね。それを暴露してもらおうかと」

弱みと言われてすぐに思いつくものは特にはなかった。そんなものがないから、この世界で今まで生きてこれたわけだし、形振り構わず色んなことをできた。だから何を今更と。
もしかしてさっきの薬に自白剤か何かが仕込まれていて、こいつが考える俺の弱みとやらを暴露させられるのかとそう考えた。実際にはほとんど合っていたのだが。

「あの新宿の情報屋がどうして長年争ってきた池袋の喧嘩人形にあっさり捕まって、仕事を辞めなければならないぐらい堕ちたのか。まあ憶測に過ぎないし、現場を見たという情報も少ないようなので確定的なものではないと思ってたのですが」

その時になってようやく、何か嫌な予感がすると気がついた。すべて遅かったのだが。

「あなたが平和島に告白をして、甘い同棲生活を送ってるなんていう噂が一部の人間の間であるらしいのですが」
「はあ?それ、本気で言ってますか?いくらなんでも、突拍子がなさすぎて……」

「さっきまでは全く信じていなかったのですが、今あなた酷い顔をしていますよ」

「……っ!?」

指摘されて慌てた。そんなはずはない、と思い込んでいたのに薬のせいかわからないが顔に出ていたのだ。でも会ったばかりの男がここまで俺のことを見破るなんて、おかしいと少し思った。
しかしその疑問もすぐに解決される。

「前にあなたと仕事をさせて貰った時は、もう少しまともな反応をしていましたよ?」

男の言葉に、思い出したのは遠い昔に似たようなことを尋ねられた覚えがあるなと。弱みを当てましょうかと言われ、今と同じようにシズちゃんの名前を出されたことがあったのだ。
その時の相手が、この男で。どうして今更になって、巡り巡ってまた同じようなことを尋ねられているのかと。

「そういう趣味の人間は多いですから、おかしくないことですって言いましたよね?まあでもこれであなたの口から、平和島への気持ちという弱みを聞けるなら満足です」
「待てよ!そんなこと、俺が口にするとでも……!」
「ええ、言わないとどうなるかぐらいは二度口にしなくてもわかりますよね?」

やられた、と思った瞬間に扉が開かれて中に連れ込まれる。そいつとすれ違ったのは一瞬だったが、勝ち誇ったような顔をしていた。
嘘でもいいから、シズちゃんのことが好きなんだとカメラの前でしゃべらないと帰れないのだと、知った。

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