ウサギのバイク リセット Another ⑬
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2011-08-28 (Sun)
*拍手連載「リセット」の別EDの話 16話からの分岐です
静雄×臨也 ※18禁注意

臨也に何があったのかをすべて知り静雄が助けに行く話
※今までの雰囲気と違い18禁要素強めです
* * * 「確かにこりゃあ、全部だな」

ようやくしゃべることができて、ほっとした。だって今までずっと頭の中に臨也の感情が全部濁流の用に流れ込んできて、一方的に映像を見せられているような状態だったから。
慌てて目元を拭うと、あたたかい涙が滴っていた。でもこんなもの、あいつが苦しんできたものに比べたらちっぽけなものだ。

「覚えてますか?戻れる時間は、最後の日の彼が出て行った後の時間でそれ以外へは戻れないことを」
「ああそうだったな。まあ正直さっきの選択肢がどっちがよかったかなんて、知らねえ。でもこんなの見せられた後じゃあ、こっちでよかったと思う」

俺が見せられたものは普通ではありえないものだった。人の気持ちなんて、本人にしかわからないものでそれを垣間見るなんてあまりいいことではないだろう。
でもその深い意味も知らないで、望んでしまった。何が起こったのか知りたいと。だから痛い程必死に訴える気持ちに、圧倒されてしまった。
好きとか嫌いとか、そういう次元ではなくてもう臨也を助けられるのは俺しかいないと。俺以外の奴にできるわけがないし、させないし、できることなら願いを叶えてやりたい。
助けてくれと訴えていた気持ちを、手を伸ばして掴んで抱きしめてやりたくてしょうがなかった。

「じゃあさっさと時間戻してくれ。あれこれ考える時間も惜しい」
「では…」
「ああ待った!待ってくれ、聞き忘れてた」

じれったくて手の中のコインを握りつぶしそうになっていたが、唐突に思い出した。肝心なことを聞き忘れていたからだ。さすがにこれを聞かないと、俺も安心できない。
それはずっと臨也が気にしていたことで、それのせいで死んでしまったし相談すらしなかったわけで。でも俺は最初に聞いていた、選択肢に不幸になるものなんてないと。

「俺が死ぬってのは、嘘なんだろ?本当はあいつが死ぬ必要もなかったんだろ?」
「…ええそうです。お見事ですね」

なんとなく気づいていたことを口にすると、あっさりと言われる。内容は腹立たしいモノだったけれど、自分の勘が間違っていなかったことに安堵した。
だって臨也が死ぬのと引き換えにあいつの願いが叶って俺が好きになったのだとしたら、時間が戻ることでその願いの効力もなくなる。でもそんなことはないと知っていた。
間違いないく俺の意志で臨也の事が好きになり、手に入れたいと思ったのだ。

「さっさと捕まえてやるよ」

そう言った次の瞬間急激な眠気に襲われて、視界が歪んで意識が途切れた。

「……ッ!?」

勢いよく布団から起きあがると、目の前でハンカチが服の上に落ちるのが見えた。そこまでは、一度経験したことがあるからわかる。そうしてベッドサイドの時計を見て、安堵した。
時刻はまだ昼前でこの間とは違う。違うと言うのがどういう意味か頭で理解する前に勝手に体が動いて、クローゼットからズボンとシャツを取り出す。早く、早くと気持ちが焦っていた。
しかしその時、携帯の着信音が鳴り響いて驚く。確かにこの後新羅に連絡しようと思っていたが、一体誰だろうかと。とりあえず相手を視ずに通話ボタンを押して、全身が震えた。

『やあ、シズちゃん』
「手前ッ!?いや違う……誰だ手前は!!」
『あれえ?もうバレちゃったのかなあ、おかしいなあ』

聞き覚えのある臨也の声がして一瞬嬉しい気持ちがこみあがてくるが、すぐに気づく。あいつが直接連絡してくるわけがないと。知っているのだ、今頃本人は門田に会いに行っているところだ。
だからこの声を真似ている相手は誰だと怒鳴りつける。全部のことを知っている俺は、そいつのことを間接的に気づいていたけれど。

「臨也じゃねえのは知ってんだよ!ああ、なんつったか…そうだ、つくもや、って言ってたか」
『へえ、俺のこと知ってるの?一体それはどこからの情報で知ったのかなあ?ずっと監視してたのに、まさかシズちゃんの方が気づくなんて』
「そのふざけたしゃべり方やめろってんだよ!あいつの真似なんかしてんじゃねえ!そうだ手前は俺の真似して臨也にエロいことしやがった奴だったよな?」
『あ、ははははっ、すごいなあさすが化け物だ。予想の斜め上をいってくれるねえ』

携帯電話を少し強く握ってしまい、ミシッと音がしたので慌てて左手に持ち変える。そのまま耳に当てながら着替えを続けた。こんな変な奴に構っていられるほど暇じゃないと。
だって俺は一度すべてを経験しているのだから、どこに臨也が行くのか知っているのだ。

『ねえ君は今からどこに行くんだい?やけに急いでるみたいだけど』
「だからノミ蟲を止めに行くんだろうが。わかりきったこと聞くんじゃねえ、切るぞ」
『おや?もしかしてどこに行ったらいいのか知っているのかな?折原臨也がどうなるかも、知っているの?』

通話ボタンを切ろうとした寸前に、向こうが急に声色を変えた。やけに甘ったるい臨也の声が聞こえてきて、ギクリとする。何か知られてはいけないことをしゃべりすぎたのではないかとそこで気づいた。
こいつが怪しがるのも当然だ。あの臨也を罠に嵌めるぐらいできる奴で、正攻法では臨也の居場所なんて見つけられないのだ。なんとかしなければ、と咄嗟に思った。

「知らねえ、あいつのことは匂いを辿ればわかる」
『本当に君はわかりやすいねえ。なるほどそうか、じゃあ場所を変えるしかないな』
「なんだって…?」

唐突に言われたことに眉を顰めて唇を噛む。見破られることはだいたい想像していたが、その後の言葉に嫌な予感を覚えた。まさか、と混乱しているうちに上機嫌な声で言われる。

『今から俺と勝負をしようじゃないかシズちゃん!ターゲットは折原臨也。で、どっちが早く捕まえられるか』
「おい、手前ッ!?」
『まあこっちはあいつの直接行き先を伝えて待つだけだから、簡単だけどね。匂いで見つけられるんだろ?それとも愛の力、かな?』
「ふざけんじゃねえ!つくもや、手前ぶっ潰してや…っ!!」

茶化すように臨也とのことを告げられて、一気に頭に血がのぼった。大声を出して怒鳴りつけると、向こうは突然通話を終えたのかガチャッという音の後にはツーツーと虚しい音が響いてきたのだ。
既に着替えを終えて部屋から出ようとしていたところなので、そのまま苛立ちを足音に響かせるようにドンドンと階段を降りる。
でも冷静さを失っている場合ではなかったので、すぐさま携帯の電話帳を開いてそいつに初めてかけた。数コールした後に驚いた声が聞こえてきた。

『…もしもし?』
「門田ッ、あいつを…臨也を見てねえか!」
『え?どうしたんだ急に?何かあった…』
「いいから会ったか、会ってねえか言え!こっちは急いでんだ!!」

玄関の扉を乱暴に閉めて、廊下を歩きながら事情を説明するのも面倒で省いて怒鳴りつけた。さっきの男への怒りがまだ完全に抜けていないせいもある。
でもどうしてもあいつより先に臨也を見つけなければいけなかったので、態度を変えなかった。するとその時ゴソゴソと音がして、明らかに向こうに何かがあったと思える叫び声が聞こえてきたのだ。

『…おい、待て!臨也!!』

「あ、あいつ…まさか今ちょうど会ってたのかよッ!?」

遠くで門田の叫ぶ声がして、そこで言い淀んでいた理由を知る。バタバタと音がしたが、それが臨也の走り去る足音だとしたらマズイと思った。
とりあえずマンションの外に出て池袋方面に走りながら、ひたすら返事があるのを待つ。すると数十秒経ってから、ようやく向こうから声が聞こえてきた。

『悪い…あいつに逃げられた。どうしたお前らなんかあったのか?』
「いいから臨也はどっちに逃げて行ったんだ、教えてくれ頼む!」
『待て静雄、落ち着け!わかった俺も協力する、だから事情を…』

その時不意に頭の中に閃いたことがあった。あの妙な男が知らなくて、俺だけが知っていることが一つだけあってそれが確かなら臨也の向かう場所がわかるかもしれないと。

「あいつには、臨也には話してたのが俺だってバレてねえんだよな?」
『ああ、静雄のことには気づいてないみたいでただ急いでたよう…』

最後まで聞き終らないうちに通話ボタンを切った。門田には悪かったが、今ので確信したのだ。間違いなくあいつは最後に死んでいた場所に行くのだと。
妙なことを噴きこまれようが、必ずあそこで死のうとするはずだ。だって最後まで場所と死に方に拘っていたぐらいだ、それ以外の場所に呼び出されたとして了承しないだろう。
だから臨也はあの倉庫に、行く。

「そうだ、問題があるとすりゃあ…俺がよく場所を覚えてねえぐらいか」

走りながら苦笑した。あの時は無我夢中で臨也の匂いを辿っただけだったから、はっきりとここだったと覚えてはいなかったからだ。でも池袋に居るなら見つけられないわけがない。
だから大丈夫だと口の端を吊りあげて笑った。今度こそ絶対に、死ぬ前に助けると。そうして俺が、すべての奴らを蹴散らしてそれから。

「好きだって、告白してやるよ」

再び鳴り始めた携帯電話の電源を切って、ポケットに入れると速度をあげる。でもその着信が門田ではなく、別の相手だったと気づいたのは随分と後のことで。
それを知っていて相手と話をしていれば、もっと早く臨也を見つけられていたかもしれないと後悔した。



「うーん…やっぱり出ないよねえ」

たった今連絡があったので携帯を鳴らしてみたのだが、すぐに留守番電話に繋がってしまったので違うなと思う。なぜか場所を変えると連絡があった後に、立て続けに九十九屋からも言われた。
なぜかシズちゃんが目を覚まして、俺の事を探していると。どんな冗談かと思ったが、気にはなったのでこうして連絡したのだ。でも向こうは出ない。
自分の目で確かめたわけではないので不安ではあったが、とりあえずは当分は大丈夫なはずだ。携帯をポケットに仕舞いそのまま立っていると、目の前に黒い車が停車する。
自動で扉が開いたので何も言わずにその車に乗り込む。車を手配するからそれで逃げ回れと九十九屋に提案されたのだ。

「まああいつも自分の用意した舞台を壊されるのは、嫌なんだね」

小声で呟きながら中に入ると、広い車内に数人の男達が居てすぐに腕を取られて縄で拘束される。俺が提示した条件は、二つだ。
絶対にシズちゃんにあの場所を知られないようにすることと、どうなろうと最終的に倉庫に連れて行ってくれればそれまでは何をしてもいいと。つまりは、車の中で犯されてもいいということだ。

「やけに大人しいな折原。もしかして薬を打たれるのが怖いのか?」
「別にそんなことは無いよ。暴れたところで、好きにするんだろ」
「そうだな、もう薬は使うなって言われたが少しぐらいならいいよな?今からその生意気な顔を、だらしない顔に変えてやるよ」

目の前の男が注射針を取り出したのを見ても、何の感慨も沸かなかった。まだ死ぬという実感が沸かないからかもしれない。コートの襟をおもいっきり掴んで引っ張り、すぐさま針を肌に突き立てた。
軽い痛みと共に、一気に視界がぐにゃりと歪む。もう規定以上の薬を打たれて、少しだけ体がおかしくなっていることにはとっくに気がついていた。

「…っ、あ、ふ…ぅ」

その時どこからかシズちゃんの怒鳴り声が聞こえてきたような気がしたけれど、外の様子は見えなかったから幻聴だと笑った。いつの間にか池袋を過ぎ新宿に居たことを、俺は知らなかったのだ。
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