ウサギのバイク リセットAnother 23
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2011-09-12 (Mon)
*拍手連載「リセット」の別EDの話 16話からの分岐です
静雄×臨也 ※18禁注意

臨也に何があったのかをすべて知り静雄が助けに行く話
※今までの雰囲気と違い18禁要素強めです

* * *

「…ふ、あっ?」
「やっと起きやがったかよ」

突然肩を揺さぶられて目を覚ますと、目の前にシズちゃんの顔がドアップであって心臓がドキンと激しく跳ねた。一瞬で頭の中がパニックになり、慌てて飛び起きようとしたところでバサッと音がして視界が真っ暗になる。

「ちょ、っとなにこれ!」

慌てて手を伸ばしてそれを掴んで見ると、俺の黒いシャツだった。しかも汗の匂いなどはしなかったから、新しいものだ。
なぜこんなものをシズちゃんが持っているか、と疑問を抱いたが部屋の中を探し回って見つけたというのが正しいだろう。普通のことだ。でも俺達にとっては普通じゃないことで、そこでようやく自分の体もまじまじと見つめて口を開いた。

「さっさと着て起きろよ」
「っていうか待って!な、なんで俺…パンツ履いてるの?あれ?」
「そりゃあ俺が風呂場で全部洗ってやって、シーツも替えて、下着も履かせてやったに決まってるだろうが」

何を今更、と言いたげにあっけらかんと言われて絶句する。そこでようやく昨日起きたことが全部一気に頭の中を駆け抜けて、頬がかあっと熱くなった。
完全に忘れていたわけではないけれど、改めて全部思い出すとそれはそれで恥ずかしい。恥ずかしくて死にたくなる。

「朝からそんなエロい顔してねえで、早く服来て起きろ。下行くぞ」
「え、エロい顔ってなにさ…!っていうか、下行くってなんで一緒に行くの?」
「体辛えだろうが。ちょっと俺でも疲れてるぐらいだからよお、動けないのはセックスしたせいだとかうるさく言いだすだろ手前は」
「…っ、それは間違ってないけど」

なんだかこんな風に全部俺の言う事なんかわかってて、それで先に行動されるというのは歯痒い。今まで何も知らなかった癖に、と思いながらも朝から喧嘩するのも嫌だったので黙ってシャツを着始める。
そして次に手渡されたズボンが、俺の部屋着の半ズボンだったことに少し驚いて顔をあげた。

「ねえ一体これどこからみつけてきたの?そこのクローゼットには入れてないはずだけど」
「あ?知らねえよ、なんか着てりゃいいんだから早くしやがれ」
「まさかわざとこれ渡したんじゃないよね?シズちゃんってかなり変態だったし、俺の半ズボン姿とか素足が見たいとか…」
「さっさとしねえと、このまま担いで行くぞ」

まるで脅すような口調で怒りを含ませながら告げてきたことに、内心妖しいと思う。聞かれたくないことがある時は俺に対しても乱暴に告げて、逃げようとする。今までもずっとそうだったので、随分とわかりやすい。
ただその対象が俺自身に関することで、これまでとは全く違うことを除けば。

「もういいよな」
「えっ?うわ、待ってなんでまた横抱きにするんだよ!これ恥ずかしいから嫌だって言ったじゃないか」
「家の中だからいいだろ。いちいち文句言わねえと気が済まねえのか?嬉しいって素直に言え」

ようやくズボンを履いたところで前ぶれもなく腕が伸びてきて、そのまま真正面から抱えられた後に昨日池袋から新宿に帰る時にされたような抱えられ方をした。あの時はもう疲れてたししつこく咎めなかったけれど、もう次は嫌だと思っていたのだが。
そのまま俺の話なんか聞かずに廊下に出て、平然と階段を下りながら呆れたようなため息を漏らした。しかもまた、俺が実は密かに喜んでいることを知っているかのような口ぶりで呟いたので言葉が出なくなる。
そのまま一階の事務所のソファに座らされて、なぜかすぐ横にシズちゃんも座った。

「あれ?朝ご飯食べるとかそいうのじゃないの?」
「そうか朝飯まだだったな。オムレツでも作って後で食べるか」
「は?後でって…なに、なんか今からあるの?」

朝ご飯は後回しという言葉が気になって、ソファにしっかりと背中を預けながら首を傾げた。しかしシズちゃんはなぜかチラリと時計を眺めたので、何かを待っているのだろうかと勝手に推測する。
どういうことだろうかともう一度尋ねようとして、その前に玄関のチャイムが部屋に鳴り響いた。突然の事だったのであからさまに肩をビクッと震わせながら玄関の方を眺めたが、既にその時にはシズちゃんが立ちあがり勝手にインターフォンの電話を取り相手に応答していたのだ。

「えっ、ちょっとなんで…!?」
「出てきてやるから大人しく座ってろ」

一度だけこっちを振り向いてそう言ったが、なぜかやけに楽しそうな顔をしていた。その表情になぜか嫌な予感がする。
さっきから何度も余裕な表情をしながら俺の先回りをしていたし、明らかに待っていた様子。必死に頭の中で考えて、まだきちんと説明して貰っていないあることに気がついた。

『時間を戻ってきた、とでも言ってるの?』

「あ…っ!」

それは俺が昨日セックスをする前に尋ねて、シズちゃんはそうだとはっきり言った。
まだ信じられない点がいろいろあったけれど、本当のことならこれから起こることもだいたい知っているということで俺は青ざめる。

「だめ!待って、待ってよシズちゃん…!」

慌てて立ちあがろうと手に力をこめたが、その前に本人が帰って来た。手には小箱を持っていて、ああやっぱりと悟る。俺の頬がひくりと震えた。

「さて、じゃあこれを開ける前に…一応聞いておこうか?」
「…なにを」
「どうしてこれを幽と選んで、俺に贈ったんだ」

容赦のない言葉に頭を抱えたくなる。中身を開けずにこんなことを言ったということは、何が入っているかは当然理解しているのだろう。
しかも俺が幽くんと一緒に買いに行って箱の中の物を選んだことまでバレているのだから決定的だ。まだ頭の中が整理がつかないので、答えに迷う。ここまで知られていれば今更隠すことも、隠す必要もないのだが。
俺が殺されたらきっと素直にプレゼントも受け取ってくれるだろう、という下心があったので一生懸命に選んだんだ。と本当のことを言うのは恥ずかしすぎる。

「なんだ、だんまりか?都合の悪いことはそうやって逃げんのか?」
「そういうつもりじゃないけど」
「じゃあ教えてやろうか。俺はなあ幽に電話して、手前がすげえ嬉しそうにここで暮らしてたことを話してたって聞いて…それでやっと好きなんだって気づいた」
「え…?」

急に何を言いだすのかと思ったら、俺の横に座り直して真剣な表情で告げてきた。

「まあなんとなく自分でもそうじゃねえかって考えてたんだけどよお、手前が俺のことを好きなんだって知って俺は臨也のことが好きになった。好きだってはっきりして、それから最初に告られたことも思い出して…すげえ後悔した」
「そう、なんだ…」
「ああそうだ。好きだってようやく自覚した瞬間から、後悔しかしてねえぜ俺は」

真っ直ぐな瞳が怒りに満ちていて、背筋が震えた。やけに胸の奥も苦しくて、自分のやってしまったことに、やろうとしたことに気づく。自分勝手だったと。
俺は俺のことが精一杯で、残された者のことなんてこれっぽっちも考えないわがままな奴だった。もし自分が同じことをされたら、怒るに決まっている。

「こりゃあトラウマだよな?好きだった相手がいきなり酷い姿で殺されて、それが計画的なものだったって知ってよお。もう本人を殴って詰め寄って泣かせてやるしかねえ、って本気で思ったぜ俺は」
「だから殴りに来たって言うの?」
「そうだな、そのまんまだったらそうしてたかもしれねえ。でも後で全部教えて貰った。手前がどんな目に遭ってたかなあ」

確かに恋愛なんて今までろくにしたことがないシズちゃんが、突然相手に死なれたら心に傷を作るのもしょうがないかもしれない。そうなる理由はわかるし、殴りたいっていう意地だけでこうやって時間を遡ってきたのならすごいと思う。
しかしそこで急に視線を外して、俺に起こったことを知っていると言い出した。昨晩だってそう言っていて、散々翻弄されてしまって。
少しだけ詳しく聞くのが怖い、と思いながら口にした。

「全部教えて貰ったって、全部って…なにを?どこまで?俺の何をどう知ったの?」
「知りてえか?」
「知りたいよ、やましいことがありすぎてわからないからね」

薄く笑ってそう告げれば、確かにあれは酷かったと抽象的に言ってきた。こうやってシズちゃんが優位に立っている状態は初めてで、歯痒く思う。
元はといえば俺自身がしてきたことなのだが、あんなことをしなくても実は誰も死なないとか、こっちは知らないのに知っていることが多い。それら全部を、もう俺とは関係ないからと切り捨てることは簡単だったが、真実を知りたい。
こうやって死んだ後のことを話されることだって、充分興味があるのだ。だからといって俺はどういうつもりだったかと詰め寄られても困るけど。

「だから…」

暫くは口を閉ざしていたけれど、ようやく開いたところでタイミングがいいのか悪いのか、またチャイムの音がした。青ざめながら顔をあげると、ニヤリと笑うシズちゃんと目があって、ああこれはダメだと思った。
きっとネチネチ詳しく聞かれるんだと、これまで見ることのなかった一面に戸惑いながら唇を噛んだ。

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