ウサギのバイク リセットAnother 24
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2011-09-14 (Wed)
*拍手連載「リセット」の別EDの話 16話からの分岐です
静雄×臨也 ※18禁注意

臨也に何があったのかをすべて知り静雄が助けに行く話
※今までの雰囲気と違い18禁要素強めです

* * *


「いいかぜってえ動くんじゃねえぞ、モノだけ受け取ってくるから」
「わかったよ」

立ちあがると再度こっちを睨みつけながら偉そうに言ってきたが、腰が辛くて動けないし逃げ切る気力もないからそんな迂闊なことはしないのにと思う。でもこうやって何度も尋ねてくるのは、俺がシズちゃんを置いて逃げた過去が何度もあるからだ。
それはもうどうやっても覆らない。きっと何年経っても信用してくれないに違いないだろう。

「しょうがないことぐらいわかってるけどさ…」
「待たせたな、トムさんから鍵貰ってきたぜ。一緒に開けてみるか?」
「どうせ中身知ってるんでしょ?はあ…そういえば俺の財産全部シズちゃんにあげることにしてたよね、まいったよ」

額を手で押さえながら、深くため息をつく。わざとらしく鍵を見せながらまた横に座ったので、観念する。
するとこっちをじっと見ながら何かに気づいたように驚いた表情をして、それからまたさっきのように嫌な笑いを浮かべた。これ以上は何も言わないでくれ、という抗議は聞いてもらえないだろう。

「そうか…全部俺のもんなのか。手前も、手前のもんも何もかも。そりゃあいいな」
「何かよからぬこと考えてないよね?」
「そうだな、とりあえず俺に逆らったらどこにも行けねえってことぐらいは覚えてろよ」
「え?」

一瞬言われている意味が解らず、ぽかんと口を開いて呆然とした。それがちょっとした脅しだと気づいた時に、ようやく俺自身が今全く何も持っていなくて全部シズちゃんのものになったと知る。しかもその中に俺自身も入っているだなんて、ただのノロケだ。
俺に言ってどうするんだよ、と凄みながら天然なことを言っているシズちゃんに今日何度目かわからないため息をつく。

「別にシズちゃんに頼らなくても、他に頼る相手ぐらいいるし」
「ああそうか、そうだったよな。俺はすっかり忘れてたぜ、あれだ、あいつ誰だ」
「あいつ?」

急に雲行きが怪しくなったので怪訝な表情をしながら尋ねると、シズちゃんの口からあり得ない名前が出てきた。

「つくもや、って誰だ。手前の何なんだ」
「…えっ!?」
「しらばっくれんじゃねえぞ!俺の声使って手前にエロいこと散々しやがったし、殺したのもあいつだったな。昨日直接携帯に連絡してきやがった癖に繋がらねえんだよ」
「ま、待って…なんで?」

俺の顔は真っ青だった。九十九屋のことを知っているのは、今のところ俺の周りにはいない。だからシズちゃんがその名前を口にするはずがなかったのだ。
でも全部知っている、のだから知っていてもおかしくはないかもしれない。だけどあいつを上回る情報を持っているだなんて、普通にありえなかった。
シズちゃん一人の力ではここまではできない。そう考えながら直感的に思い出したのは。
未来を指し示すコインのことだ。

「なああいつだけは他の奴らと、門田とか新羅に接するのと違ってたよな?俺にも見せたことねえようなことだって、してたよな?」
「なにを、言ってるの?」
「俺に相手にされねえからって、つくもやって奴のこと…好きになりかけてたんだろ?俺の代わりにしてたんだろ?」
「…ッ!?」

なんで、とただ混乱することしかできなくて何度も目を瞬かせた。そんなのは嘘だと言ってしまえばいいのに、俺の口は全く動かない。それでは肯定しているのと同じだというのに。
そんなの本当に気まぐれで、壊れかけた体と心が少しだけ九十九屋に傾いただけだ。しかもそれはシズちゃんの声を聞かせてくれて、正確に俺の望んだことを言ってくれるあいつに揺れ動いただけで九十九屋自身が好きなのとは違う。
代わりにしていたのは確かだけれど、シズちゃんのことが心底好きだという前提があるからだ。シズちゃんが好きでなければ、あいつの作るシズちゃんも身代わりなんてしない。
そう丁寧に説明すればいいのに、唇は震えて動かない。やましいことをしたという自覚が、あったから。

「都合の悪いことを言われたからって、黙ってるんじゃねえ。いつもみてえにいいわけしてみたらどうだ」
「…そ、れは」
「俺には一言も相談しねえで、あんな奴に好き勝手されて…手前は本当に大馬鹿野郎だ!!」

そう怒鳴られた瞬間に急に目が覚めたような気がした。だから改めて自分のしたことを考えて、少しだけ体が震える。
あの時の俺はなにもかも精一杯だったけれど、やろうと思えばなんだってできた。振られるの覚悟で告白ができたぐらいなのだから、その気持ちを常に持ち続けていれば呆れられるとわかっていてシズちゃんに相談することだって。

「そりゃあ鈍感で傷つけちまった俺も悪いけどよお、もっと信じてくれてもよかったじゃねえか。俺が好きになるまで諦めずに待っててくれりゃあ…」
「シズちゃん」
「俺は悔しい。手前にひでえことした奴らも、九十九屋って奴も殴り殺してえぐらい嫉妬してる。俺だって、俺だって…」

そこで急に唇を噛んで目を逸らした。それを見て、反射的に身を乗り出してシズちゃんのシャツにしがみつく。
だってシズちゃんが泣いてしまう、と思ったから。

「手前が俺に助けて欲しいってずっと訴えてたみてえに、俺も手前を助けたかった。もっと早く」

その言葉を聞いて、勝手に胸が熱くなり目の端にじんわりと涙が浮かんだ。あまりに進撃な言葉は深く突き刺さって、それから溶けた。
一人で寂しくて、辛くて、冷え切っていた心をゆっくり溶かしてぬくもりを与えるように。

「あー…だから、泣くんじゃねえって。マジで手前はノミ蟲じゃなくて泣き虫だな」
「っ、う、うるさいよ…泣かしたのはそっちだ」

シズちゃんが泣いてしまうと思ったのに、逆にこっちがいつの間にか泣かされてしまっていてまた勝手にペースをもっていかれたと少し拗ねる。
でもこういうのなら別に悪くないなと目元を擦って真正面見ると、ちょうど顔が近づいてくるのが見えて。

「ふ、あっ…ん…ぅ」

驚いて半開きになっていた唇をかぷりと噛まれてそのまま舌が挿入される。それがやけに熱をもっていたように感じられて、もしかしてもう欲情しているのではないかと焦った。
まだ起きたばかりだし朝っぱからサカるのは止めて欲しいと思うのに、強く体をどかすことができない。それはつまり内心俺自身も期待している、ということで。

「あ…っ、やぁ…あ、まってまだ、朝ごはん食べて、ない…っ」
「うるせえな、俺は手前の泣き顔見ると条件反射で欲情するようになってんだよ」
「な、んでそんなことに…っ、じゃあ前も、あの時もそう、だったの?」

すぐに唇は離れていったけれど、そのまま流れるように首元に顔を埋めて匂いを嗅ぐようにしながら指先でなぞられたので慌てた。すると泣き顔で欲情するんだと言われて、思い出したことがある。
それは自分の身に起こっていることが辛くて、どうしようもなくなってシズちゃんに隠れて泣いてしまいそれを見つかった時のことだ。まさかあの時もそんな気持ちを抱いていたわけがない、とは思ったが揚げ足取りをしたくて言った。すると。

「俺から逃げようとして泣いてた時か?ああ、そうだな…ありゃあ欲情してたのか。手前が別人に見えて、ムラムラしやがったもんな」
「じゃあ、っ、シズちゃんははじめから…エッチなことしか考えてなかったんじゃ、ないか」
「エロいこと考えて何が悪いんだ。つうか、始めからもっとそういうところ俺に素直に見せてたらもっと早く惚れられたんじゃねえか?」
「なにその言い方っ、惚れさせなかった俺が悪い、みたいなっ…あ、もう、や、やぁ!」

話をしながらしっかりと体を密着させて、今度は耳朶のあたりを撫でながら唇を寄せて息を吹きかけてきたので背筋がぞわぞわした。
わざと耳元でしゃべっているのは、俺がかなり体が敏感になっていろいろ弱いだと知ってるからだ。本当にもうやめてくれないと本格的に反応してくる、と思っていると助け舟の音が聞こえた。

「チッ、忘れてたぜ。まだあったな」
「はあっ…よ、かった」
「新羅とセルティだろ?出てきてやるから、そのままで待ってろ。そんなエロい姿、あいつらにだって見せる気ねえんだからな」

言いながら名残押しそうに俺の首筋を人差し指で撫でてから立ちあがった。後ろ姿を見ながら、俺は呆然と言った。

「もしかして、さっきからシズちゃんが全部応対に出てるのは…俺の姿見られたくないから?」

それから改めて自分の体を眺めると、手首には縄の跡が残っているし、体中赤い鬱血の跡がついている。これじゃあダメだよな、と納得してソファの上で両足を抱えてぶらぶらと揺らしながら暫く待った。

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