ウサギのバイク リセットAnother 27
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2011-09-18 (Sun)
*拍手連載「リセット」の別EDの話 16話からの分岐です
静雄×臨也 ※18禁注意

臨也に何があったのかをすべて知り静雄が助けに行く話
※今までの雰囲気と違い18禁要素強めです
これで最後です!

* * *

「そんなの忘れるわけねえだろうが。だいたい手前だって、忘れて欲しいなんて思ってねえのに嘘書くんじゃねえよ」
「…ちょっと待ってよ。俺は本気で君に俺のことを忘れて生きて欲しいって書いたけど」
「じゃあ教えてやるよ!死ぬ直前に手前が不安がって必死に考えてたのは、俺に忘れられることだったんだよ!忘れないでくれって、訴えてたんだよ!それが本心なんだよ!!」
「えっ…」

突然怒鳴られても、こっちはただ呆然とするだけだった。
ドタチンに託した手紙の最後に慌てて書いた本音は、俺のことは忘れてというものだったのに実は真逆だったなんて。でもそう告げられて、納得する部分もある。
シズちゃんにすべてを忘れられて、たまに思い出されるだけだなんて今までの数年間のやり取りは何だったのかと。簡単に忘れられないぐらい、互いの心に深く刺さっていたのに。

「それと…戻りたい、助けてくれって言ってた。だから俺はその願いを叶えることにしたんだよ。だからこうして今二人で居るのも、臨也の願いが叶ったからだ。お前が望んだことなんだよわかったか!!」
「願いって…これが俺の本当の願い?」

最初に未来を指し示すコインに願ったのは『シズちゃんが俺のことを好きになってくれますように』ということだった。
けれどそれは途中で恋人同士という意味ではなく、友人としてなんだろうなと解釈した。でも最終的に前日には恋心を抱き始めていて、それで本当に死んでしまってから好きになってくれた。
だけどシズちゃんは違うと言う。
忘れて欲しくない、戻りたい、助けてくれという三つの願いがあってそれが叶ったのだと。
死んでしまった最後の記憶がないのだからわからないけれど、随分とわがままだったのかと知った。シズちゃんに好かれるだけでなく、もっとと欲を求めたのだから。

「まあ手前の願いなんて小さいもんだけどな。俺と暮らせただけで幸せだなんて書いてた部分は、バカじゃねえかって思ったぜ」
「あれのどこがバカなんだよ…!」
「ほとんど一緒に居なかったじゃねえか。ちょっと飯食って、話して、テレビ見て、当たり前のことをしただけじゃねえか」
「お、俺にはその当たり前が、ちっとも当たり前じゃなかったんだよ!奇跡だよ、奇跡だった。二人で喧嘩せずにいられただけで奇跡なんだよ!君にはわからないだろうけどね!!」

これまで二人で過ごしてきた数日間を、当たり前のことだとバッサリ言われるのは納得いかなかったので叫んだ。俺は一瞬一瞬をすごく大事に思って、しっかりと記憶の中に刻みつけたのに。シズちゃんにとってはなんでもないことでも、嬉しかったのにと。
だけどそんな訴えを覆すようなことを言われる。

「あんなのただのきっかけとか、まだ始まりじゃねえか!もっといろいろあんだろうが!一人で幸せ感じてんじゃねえ、俺も幸せにしろよ!!」
「は…?」
「二人で幸せになんのがカップルってもんじゃねえのか!?だから俺が幸せにしてやるから、何をしてもらいてえか素直に言いやがれ!そんで嬉しかったらしっかり笑えよ、わかったな!!」
「あ…あぁ、うん」

いきなりのことで驚いたけれど、あまりに正論すぎて言葉が出なかった。
二人で幸せになる、ということを考えたことなんてない。だから余計に、俺の考えていた、感じていた幸せが独りよがりだったことを知る。
好き合っている者同士が同じ気持ちにならないと、それは幸せだなんて呼んではいけないのだ。

「まいったな…シズちゃんにそこまではっきり言われるなんて。うん、間違ってはないよ。よくわかった」
「そうか、じゃあとりあえず今してもらいてえことを言え」

恥ずかしくて俯きかけた俺に、シズちゃんははっきりと言葉を求めてきた。だからもう隠さずに告げることにした。

「抱きしめて…それだけでいい」

「わかった」

とてもシンプルな願いに応えるように両手が伸びてきて、そのままシズちゃんの腕の中に抱かれる。
このソファで肩に凭れながら眠った時も、夜に一人でここで眠った時も、最後だと決めて別れの挨拶をした時も。

ずっと、抱きしめて欲しいと思ってた。

どれも叶わなかったけれど、ようやく願ったものを手に入れることができて満足だ。だから泣いてしまうのはしょうがなかった。

「笑えって言ったじゃねえか」
「うぅ、っ…く、しょうがないよ…っ、これでも嬉しい、つもり、だから」

またボロボロと涙を流す俺を見て、シズちゃんは少し呆れていたけれど優しく頭を撫でてくれてそれが余計に止まらない原因になっていた。これでようやく胸に抱えていたなにもかもをすっきりと吐き出せて、お互いに本当の意味で恋人同士になれたような気がする。
不意にテレビ画面を見ると、難病で死にかけていた女性の病気が奇跡的に治ったという感動の場面だった。俺は絶対に死んでしまって互いに離れ離れになるラストを想像していたけれど、全く違っていたのだ。

「ほんとダメだね…シズちゃんには敵わない。一生勝てる気が、しないよもう…っ」
「手前が勝ってあんなことになるんなら、ずっと負けてろよ。それにつくもやとの賭けにも勝ったし、誰にも負ける気はしねえな」
「九十九屋との賭けって…なんだったの?」
「あいつより先に臨也を見つけて助けることだ。俺が手前を見つけられなかったことはねえからな。どこにいたって探すのだけは、得意だぜ」

九十九屋とそんなやり取りをしていたのも驚きだったけれど、口だけではなくきちんと実現させたことがすごいと思った。俺はあいつに勝てなかったけれど、あっさりとシズちゃんが勝ったわけだし、そういうところがすごいんだなと笑う。
きっとこれからも、何があろうと、どんなことが起ころうと見つけてくれるんだろうなと信じることができた。

「こんなすごい相手とこれまでやり合ってたなんて思えないなあ」
「そうだな、こういう弱々しいところをよく今まで隠してやがったよな。まあでもバレちまったもんは、しょうがねえだろ。潔く全部見せやがれ」
「…まあ努力ぐらいはするよ」

言いながら自分から背中に手を回して、おもいっきり強く掴みそれから頬を擦りつけた。すぐにあたたかい体温が伝わってきて心地よくなる。さっきの行為のせいもあって、少しだけ眠気が襲ってきたのだ。
それを見たシズちゃんは、無理矢理頬をペチペチと手のひらで叩いてきた。

「寝るなって。そういやあ俺はまだ大事なもん見てねえんだよ」
「は…?なに、なんのこと」

急に思い出したかのようにソファに俺を座らせて立ちあがると、テーブルの上に置きっぱなしだった箱を手に取って乱暴に包装紙を解きながら開け始めた。こっちもすっかり忘れていたのに、今頃になってと呆れながらも見守る。

「ねえそれ…前に開けなかったの?」
「そうだ。手紙だけ読んで、中身は確認してねえんだよ」

同封していた手紙は机の上に置き、箱を開けるのに苦戦する姿を眺める。まさかそれを開けなかっただなんて、と驚きながらそれぐらい動揺していたんだろうなと推測した。死人からのプレゼントなんて、確かに貰ってもあまり嬉しくないかもしれない。
もうそれは、ただの俺からのプレゼントでしかないけど。

「これ、腕時計か…?」
「そうそれを幽くんと一緒に選んだのさ。結構悩んだけど、まあすぐに壊すだろうなってわかっててそれにした。少しの間だけでもいいから、持ってて欲しいなって」
「時を戻ったことといい、なんか縁があったのかもな。もしかしたら」

驚きながら銀色のシンプルな腕時計を取り出して、何度も目の前で眺める。まさか選んでいる時はこんな姿を見れるとは思わなかったけれど、見れて良かったなと思う。
プレゼントはあげた時の相手の反応を見るのが、一番楽しいから。といっても俺はあまりこういうことをした記憶はないけれど。

「大事にしてよね」
「ああそうだな、大事に仕舞っておく」
「あれ?使ってくれないの?」

それを腕に嵌めることなくすぐに戻すと、机の上に置き直してそれからこっちを見た。

「どうせ手前のことだ。常に身につけて覚えておいて欲しいとかそういう意味があったんだろ?でもそれなら必要ねえなって思っただけだ」
「…外れてはないけど。なんで必要ないんだよ」
「わざわざ毎日つけてなくても、これからずっと顔合わせてくんだろ?俺達恋人同士じゃねえのか?」
「なるほどね」

未だ慣れない恋人同士という言葉にむず痒い気持ちになりながら、少しだけ微笑んだ。するとシズちゃんも同じように笑ってくれた。

「それに俺は大事なもんは、誰の目にもふれさせねえように取っておく性格なんだよ」
「へえそれは意外なことを聞いたねえ」
「だから、大事な大事な手前も誰の目にもふれさせねえように…俺のもんにしておくぜ」
「えっ?」

言いながら腕を引っ張られて抱きあげられると体が浮いて、また腰を掴まれながら横抱きにされていた。おもわず情事の残るそこから垂れたものが太股を伝ってこぼれたが、全く気にしていない様子だ。
俺は嫌な予感しかしなかった。

「どこ、行くの?」
「プレゼントの礼をしてやるからよ、臨也」
「礼って…まさか!?もういいよ、いいから!セックスはもういいから、やめて!!」

明らかに寝室に向かって歩くシズちゃんの腕から逃れようと必死だったけれど、それはかなわずに再び押し倒されるまであと少しだった。


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