2012-08-03 (Fri)
「捕虜奴隷」
静雄×臨也/小説/18禁/A5/116P/1000円
路地裏でぶつかった男に誘いをかけて逃げようとしたが学生時代に犬猿の仲だった静雄でその後捕まってしまう
ずっと復讐したかったと言い犯されるが実は臨也は昔から静雄のことが好きで…
捕虜になった臨也がヤンデレ静雄に調教される話 パラレル
表紙イラスト 那央 様
虎の穴様予約
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「おい……」
「悪かったね、でもこっちも急いでるんだ。金ならいくらでもあるから、見逃してくれるかな?」
暗くて顔までは見えないが、格好からして相手は軍人だった。この街の者か、そうでないかはわからない。でも俺がぶつかっても全く動じなかったことといい、戦闘慣れしている相手だろうとすぐに判断する。
ポケットから財布を出し札を数枚突きつけるが、そいつは動こうとはしなかった。俺自身も深く帽子を被っていたし、互いに正体はわからないだろうがこんなことをすれば怪しいのは一発だ。
「そんなもんいらねえ」
「あれ?もしかして好みじゃなかったかな。こっちは急いでるから、受け取ってくれると嬉しいんだけど。それとも別のことが、いいのかな?」
金銭に全く興味を示さないなんてこの街では珍しい。それでは他に何をしたら喜ぶか、と瞬時に思いついて札を仕舞うとわざとらしく近寄る。顔は見られたくなかったので俯いたままだが、まるで密着するように傍に行く。
どちらにしろこの男が居る限り、奥へは進めない。一人分しか通れない道だし、ここを通るのが街の外へ一番近いのだ。なんとかして気を逸らすか、退いて貰うしか方法は無い。
「どうして欲しい?俺なら手だけでも数分で出させてあげられるけど」
「……な、っ!?」
男が動揺するのが気配で伝わる。まあ正直これはハッタリだ。今までもこんな風に言い寄って躱したことは何度もある。
そうやって油断させておいて隙をついて逃げてきたので、常套手段になっていた。一度だって男とそういう行為をしたことがなければ、手で抜いてやったこともない。気さえ反らせられればこっちのものだ。
「決めないなら、勝手にするけど」
言いながら相手のズボンのベルトに手をかける。女が誘惑するみたいにわざとらしく甘い声色を出して、壁に体を押しつけようとした。脱がせたところでうまく逃げられる、と確信したのだが予想外のことが起こった。
いきなりそいつが両手を背中に回して、すごい力で抱きしめてきたのだ。一瞬動揺したが、すぐに逃げようと抵抗しようとして青ざめる。
「えっ!?ちょ、っと苦しい……っ」
「顔見せろよ」
男の冷たい声が聞こえてきたと思ったら、顎を掴まれて上を向かされる。そして至近距離で顔をはっきりと見られ、帽子まで弾き飛ばされてしまう。
向こうに俺の表情がわかった、ということはこっちも相手の表情が見えていた。暗いけれども、これなら誰かということは察することができる。そして、心底驚いた。
心臓がドクン、と跳ねて動けなくなる。
「やっぱり、臨也じゃねえか」
「は、ははっ、嘘だろ?シズちゃん?」
こんな所で会うとは思いもしなくて、動揺は隠せない。いや、本当はなんとなく予感ぐらいはしていた。
急いで街から逃げようとした理由も、この街を占拠する為にやってきた軍隊の指揮官を知っていたからだ。訓練生時代に何度もいがみ合っては校内で喧嘩をしていた、よく知る相手だった。
卒業後は軍に入り元から持っていた力のおかげで、随分と高い地位までのぼりつめたのまで知っている。他国に居ても、成果をあげる度に噂は入って来た。そんなの聞きたくはなかったというのに、常に耳に入ってくるのだ。
戦場でたった一人生き残ったとか、街を壊滅させたとか。噂は脚色されているとは思うが、どれも信じられないものばかりだ。知名度は高く、恐れている者は多い。
しかし本人は普通の人間よりも野性的な勘としての戦闘技術と、銃弾や刃物が効かない体で困難を躱してきたのだろう。裏から手を回して取り入らない限り上には行けない俺とは対極にある。だからこそ、羨ましくて憎んでいた。
会った時から。
だけど一方で愛していた。好きだった。恋心を抱いていた。
魅かれていた。
でもそれは過去のことだと頭から追いやり、忘れるようにしていた。もう卒業式前日に顔を合わせて以来なので、随分経っている。懐かしいとは思うけれど、敵対してばかりだったから交わす言葉も無い。
俺が一方的に好意を持っていたけれど、それを態度に出したこともない。伝えようとも思わなかった。だから今更再会しても、何も言いたいことは無い。
ただ恨まれていたから、見つかってしまえば本気の殺し合いが始まるのはわかっていた。ここは戦場だ。
しかも最悪なことに、俺は一番彼の怒りを買う方法で逃れようとした。金を差し出し、体で誘惑しようとしたのだ。そういうのを嫌うことは知っていたのに、正体がわからなかったのだからしょうがない。
「こんな所で会うとはよお」
「最悪だね。っていうか、離してくれるかな?」
「手前から寄ってきたじゃねえか。抜いてくれるって、言っただろ」
「っ、はは!誰が君なんかにそんなこと……」
抱きしめたわけじゃなくて、逃げないように羽交い絞めにされたのだ。常人にはない怪力で拘束されれば、全く身動きは取れない。俺だって軍人なので腕は立つ方なのだが、次元が違いすぎる。
腕の中でもがきながら焦った。必死に、どうやってこの危機から脱しようかと頭の中で考える。掴まってしまえば取り返しのつかないことになるのは目に見えていた。
相手がシズちゃん以外ならまだ逃げられるだろうが、執念深く追い回されたことはよく覚えている。捕えられたら二度と戻れないだろう、と昔から思っていた。
「こうやって金渡して、体使って、散々悪事働いてたのか」
「なんのこと、かな?」
「人身売買に麻薬。そういう最低なもんが、この街では当たり前なんだろ?どうりで臭うな、と思ったんだ」
「俺のせいだって?まさか」
「でも関わってたんだろ?だから必死に逃げようとしてんだろうが」
鋭すぎる指摘に黙りこんでしまう。これ以上しゃべるわけにはいかないし、言ったところでボロが出るだけだ。勘だけは良かったけれど、それは今でも変わらないらしい。
口で惑わせて時間を稼ぐこともできなかった。もう他に方法がないのか、と顔を顰めているとわざとらしく近づいてきて告げられる。
「絶対に逃がしてやらねえ、覚悟しろ」
「そう」
しかしそこで、とあることが閃く。身動きは取れないが体を傾けることぐらいはできるだろう。一瞬だけ不意を突ければいい。
逃げれるならなんだってする。それが例え最低な行為だろうと、世界で唯一シズちゃんにだけはしてもいいと思った。
決めると行動は早い。体重をかけるように上半身を自ら押しつけて、そのままに目の前の唇に噛みつくようにキスをした。それで気を逸らすことができれば、後で何を言われようが構わなくて。
「……ん」
「……ッ!?」
ふれあっていたのは本当に数秒だけだった。でも拘束していた手は緩み、素早く体を捩って腕の中から脱出する。そして振り返ることなく来た道とは反対側に向かって走った。すかさず怒りの声が聞こえる。
「待て、臨也ああああぁッ!!」
* * *
「探して……って、もしかして俺のこと探してたの?」
やけに普通の友達みたいに話すので危うく聞き逃すところだったが、探してたと言われて目を丸くする。卒業式の前日以来だからかなりの年月が経つ。まさかその間ずっと、俺の行方を捜していたのが本当なら驚愕の事実だ。
「あー……まあそうだな、探してたぜ」
「へえ、なんで?まさかこうやってエッチなこと強要したかったとか?」
わざと茶化すような口調でしゃべりかけたが、返事は無い。たった数年で性格が変わってしまうことなんてないだろうし、戦場で何があっても揺らがない精神だろうと信じていたのでそんなバカなと思ったのだ。
さっきだって俺が男を誘っていたことに嫌悪を示していたし、まさかそんな体が目的だなんて考えられない。そう思うのに、すぐに返答がないのがやけに気になった。
もし図星だとしたら、どうしたらいいんだろう。
「さあな」
「え?いや、そこはもっと否定してくれないと困るんだけど。媚薬使われて俺が一人で興奮しているのを見て、シズちゃんも興奮するの?」
俺に媚薬を使ったのは、強制的に射精したくなったり性欲が強すぎて何度も吐き出してしまうというみっともない姿を見たいだけだろうと思っていた。あくまで鑑賞したいだけで、そこにシズちゃんは参加しない。
きっと気持ち悪い、とばっさり言ってくれる。そう期待していたのに。
「もう少ししたらわかるだろ」
「だから、それは……っ!?」
その時急に視界が歪んだ。媚薬の事をすっかり失念していたのだが、思い出した。
さっきからやけに動悸が激しかったり汗が出始めていたのは、薬のせいだと。通常では考えられない二倍の量で襲い掛かってくるんだと。
「あ……っ、くっ!」
「ようやく効いてきたか」
「これ、なに……んぐ、ぅ」
一気に汗の量が増えて風邪を引いた時みたいに全身が火照り、小刻みに震え始めた。体の奥から激しい衝動がこみあげてきて、呼吸も一気に乱れる。唇を噛んで耐えるけれど、変な声を漏らさないようにするのが精一杯で何も考えられない。
目の端に勝手に涙が浮かび、シズちゃんが居ることもすっかり忘れて腰をビクビクと跳ねさせる。喉の奥が焼けそうなほどに熱くてしょうがない。
「あ、つ……ぅ、あ」
「じゃあさっきの、身体検査の続きするか」
「え……?」
早速意識が朦朧としかけていたので、何を言われたのかよくわからなかった。だけど煙草の火を消して携帯灰皿に仕舞うと、おもいっきり上着を左右に開いておもむろに胸の辺りに手を伸ばしてきたのだ。
やろうとしていることの意味が全く理解できなくて、怯えてしまう。嫌な予感が駆け抜けたが遅く、親指と人差し指で胸の先を摘まんだ。
「っ、あ、うぁあ!?ちょ、っと……なに、してるんだよ!」
「だから、手前がまだ何か隠し持ってないか調べてんだって」
「ふ、ふざけるのも大概にしてよ!これのどこが検査なんだよ!っていうか、こんなことして楽しいの?俺には全然、っ、う!?」
やたらと真剣な表情をしながら、人の乳首を弄ぶなんて信じられない。やたら偉そうな態度のオッサンが下心丸出しでやるような行為を、シズちゃんがしているなんて自分の目を疑ってしまう。
でも間違いなく刺激を加えていて、びっくりした。右側の胸の辺りも撫でると、そっちも引っ張り同時に痛みが走る。
「引っ張ってるだけなのに、気持ちいいのか?」
「違う!やめろ、って……こ、んな、っ、あ、ぐ……!!」
「これじゃわかんねえな。ちょっと舐めてみるか」
「舐め、る……な、何考えて、ぁ、ぅ……んぅ、う!?」
俺は男だというのにこんなことをして何が楽しいか全くわからない。いくら嫌がらせだとしても、胸を弄るなんて普通じゃないのだ。妙な不安を感じて戸惑うが、いきなり舐めると言い出してもっと驚いた。相手が女性ならそういう趣向なんだと理解できるが、大嫌いで貶めたい相手にここまでするだろうか。
しかも俺自身は、シズちゃんが好きだった。まだ好きなんだとさっき自覚したばかりだというのに、冗談じゃない。酷い屈辱だ。
せめて少しでも逃れようと腰を捩るが、先にシズちゃんの顔が近づいてきた。そしてざらついた舌でおもいっきりべろりと舐められてしまう。
「……ぁ、あ……っ、き、もち悪いから、それ、やめろって!」
「そうか?あんま嫌がってるように見えないぞ」
「目がおかしい、んじゃないの、っ……ふぁ、う、く」
「なあ、乳首勃ってきたんじゃねえのか、これ。本当は気持ちいいんだろ?」
「ち、がうって……!薬の、せい、だから、ぁ……やめろ!!」
* * *
「嫌だッ!やめてよ、っ……やめて、って、シズちゃん!!」
「しょうがねえな」
「え?」
おもいっきり叫んだ直後に大袈裟にため息をつく声が聞こえてきて、まさかと期待する。しかし望んだものではなかった。
カチッちう音が耳に届いた時には激しい衝撃が全身を襲っていた。
「あっ、ぁ、あぁ!?っ、あ、まさか……スイッチ、いれた、の……んっ」
「一時間頑張るんだろ?まだ五分も経ってないぞ」
「っ、はぁ、あ……卑怯者っ、あ、は……これ、とめて、よ」
「卑怯者か。手前だけには言われたくなかったな」
バイブのスイッチが入れられたのだとすぐにわかり、全身がガクガクと震えて止まらない。力も抜けて本格的に抵抗することができなくなり、そのままずるずると引きずられてとうとう扉の外に出る。
確か地下室だったと記憶していたので、廊下の奥には階段があった。声を抑えないときっと聞こえてしまうだろう。なのに、コントロールが効かない。
「いやだ、ぁ、っ……んっ、う、やめてぇ、よ……熱い、あつ」
「また昨日みてえにいい顔するようになったじゃねえか。思い出したか?気持ちいいって散々よがったこととかよお」
「し、らないっ、覚えてない、から……っ、やめろ、バイブ、抜いてよ、ねえ!」
なんとか玩具を抜きたくて手を伸ばそうとするのだがそうはさせてくれない。体の前で両手を拘束されているので後ろまで届かないし、動けなくなった俺の上着を掴んで引きずっている。強制的に階段の前にまで連れて来られて、頭を振った。
何も考えられなくて、ただ滅茶苦茶に嫌だという意志だけをこめる。もうさっきの約束のことなんて、今はもうどうでもよかった。
耐えられたら性行為を強要するのを、今日はやめてくれる。でも失敗すれば酷いことをする、なんて既にもう俺の中で酷いの限界を超えていた。きっとこれ以上の屈辱なんてないと。
「大声出すと誰か来るかもしれねえぞ?」
「……っ、あ」
「ほら上から声聞こえねえか?さっき下りて来る時に扉を開けっ放しにしてきたからな。絶対気づくだろ?」
「い、嫌だ……本気で、やめて、くれ……っ、あ、んあぁっ!?」」
「やめて下さい、だろうが。口の利き方には気をつけやがれ」
階段の一番下の段に座らされ、僅かな灯りと時折聞こえてくる話し声に怯えてしまう。もし誰かが来たら、見られたら、そのことが噂になったら。考えるだけで卒倒しそうなぐらい最悪だった。
あまりにもそのことで頭がいっぱいになり、呆然と床を見つめていると突然激しい刺激に堪えていたあえぎが響き渡ってしまう。どうやらシズちゃんの靴が俺の股間の下のバイブを蹴っていて、深く体の中に押し込まれたようだった。
慌てて逃れようとするが、鎖に阻まれてジャラジャラと鳴らすだけだ。パニックになった頭では、避ける方法が思いつかなくてバカみたいにその場で悶えた。
「はぁ、あっ、あ……!それ、嫌だぁ、あ、っ、やめて、よ……くるし、い、っ、熱い、あつ、ぁ」
「そうか?本当は嬉しいんじゃねえか、手前のそこガチガチに勃ってるしすげえ震えてんぞ」
「違うっ、はぁ、あ、く……しょうがない、だろ!媚薬、とバイブでぐちゃぐちゃ、ぁ、んあ……やらぁ、なか、掻きまわさないで、っ!」
「すげえエロくていいぞ。これならすぐイけそうじゃねえか」
ニヤニヤと厭らしい目つきで眺めながら靴先だけを動かす。激しい震えと奥まで入りこんで擦れているのが段々と心地よくなってきて、内心ではヤバイと思っていた。
また昨日みたいに意識が飛んでしまうなんて、もう嫌なのに抗えない。さっきまで頑なに拒絶していたことも忘れそうなぐらい、快感の飲まれそうになっていた。
「イったら、お仕置きだよな?」
「っ、あ、嫌だ!う、くぅっ、は……ぜったいに、我慢する、っ」
しかし唐突に我に返って、靄がかかり始めていた視界がはっきりして鋭く睨みつけた。流されたらとんでもないことになって、きっと戻れないと言い聞かせて唇を噛んだ。
そして、シズちゃんはまるでそれを待っていたかのように足を離す。そして俺の首輪を鎖で引いて、屈みながら顔を寄せてきた。
「我慢だ?そんなのできるわけねえだろうが」
「できる、って言ってるだろ」
「じゃあ本気でしてやるよ。ああそうだ、これ以上大声出したら間違いなくバレるからな。覚悟しておけよ」
「嫌だ、っ、んぐ……っ、んぅぅ!?」
次に何をされるかある程度予想していたので唇を閉じていたのだが、顎を掴まれ無理矢理舌を捻じ込まれては抵抗できない。息苦しさに胸を上下させ唾液を垂らしてはいたが、懸命に腰を捩って後ろに倒れとにかく逃げようとした。
しかし後孔の周辺にシズちゃんの指が添えられたのに気づいて、青ざめた。これ以上の衝撃を受けたら、と思った時には全身に電流が流れたかのような振動が伝わる。
「ふっ、んっうぅ、あ……!!んぁ、っ、ひぁ、んぐ、っ、うぅ、んっ!?」
どうやらまだバイブの振動を強くすることができたらしく、煩いモーター音を響かせながら蠢いた。あまりのことに足を大きく開いた格好のまま背筋をビクビク跳ねさせて、盛大に悶えてしまう。
我慢するとさっき言い聞かせたばかりなのに、再び意識が朦朧とし始めて口内を動き回る舌も無抵抗で受け入れるしかなかった。あまりの心地よさに、このまますべて吐き出してしまいたいと思うぐらいで。
「っ、はあっ、はっ、んぅ……ぁあ、やだぁ、あつい、もうむり、っ、ぁ、あ!」
「だから我慢できねえって言っただろうが。無駄な努力だったな」
「ちがうっ、いやだぁ、いやなのに、っ、はぁ……くるし、い、だした、い、ぁ、ああぁ、っ」
「出したいだろ?じゃあ早くしろ、な?」
唇が離れた途端に頭を左右に振って悶えた。苦しくて、気持ちよくて、薄らと目の端に涙を浮かべながら切実に出したいと訴える。理性なんてもう残っているのがおかしいぐらい、媚薬と玩具のせいで全身が熱い。
気持ちを吐露した途端、シズちゃんの口調が優しげなものに変わり立ちあがると俺の性器に靴先をつきつけてきた。ふれてはいないが、そのまま少し力を入れられると踏まれてしまう。
「ひっ、あ、ぁああ!やだぁ、ふまないでぇ、いや、っいやだ……シズちゃ、っ!!」
「ああ、踏んで欲しいって意味だろ?」
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2012-07-21 (Sat)
「繰り返し君に恋をする」
静雄×臨也/小説/18禁/A5/124P/1000円
ある日静雄は臨也が死んでいるのを見て動揺するが実は生きていて
ずっと黙っていた気持ちを打ち明けつきあってくれと告白する
二人はつきあうことになったが臨也は銃で何者かに撃たれてしまう
その時静雄は何度も同じ光景を見ていたことを思い出して…
静雄が記憶喪失になり何度も臨也のことを好きになる切ない系シリアス ハッピーエンド
表紙イラスト ひのた 様
虎の穴様予約
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「ん?なんだ、血の匂いがする……」
その時不意に独特な香りが鼻についたので、眉を顰めながら周りに気を配り警戒する。どうやらビルとビルの間の細い路地から匂う。これでは臨也の匂いがわからなくなるじゃないか、と苛立ったが引き寄せられるように匂いの元まで近づく。
いつもだったら絶対にやり過ごしていた。だけどどうしてか、その時は気になったのだ。
血の匂いに混じって、あいつの匂いがしたから。罠かもしれないし、いきなりナイフを向けられてこっちがやられる可能性もあったので足音を立てずに体だけ乗り出し路地を覗いた。
そして心臓が止まるかと思うぐらい、びっくりする。
「……ッ!?」
言葉にならない声が喉から漏れて、足が勝手に駆け出してその場を離れた。たった今見た衝撃的な何かを振り切るように、池袋の街を走る。頭の中は空っぽだった。
飯を買うのも忘れて自宅まで辿り着くと、扉に鍵をかける。指先が震えていて、少しだけ時間がかかってしまった。
そしてようやく息を吐き出し、玄関先で膝を突くように座る。全身から力が抜けていて、汗が噴き出していた。ようやく一人になったところで、呟く。
「なんで、どうして、あいつ……」
まだ混乱していて、自分が見たあれは夢だったのではないかと思いたかった。だけどはっきりと見た映像は頭にこびりついている。
「臨也、が……死んで」
言葉に出した途端にポタポタと何かが滴り床を汚す。それが涙だということに、数分気づくことができなかった。
あの路地裏で見たのは、臨也が腹から血を流し死んでいる姿だった。どうして死んでいると瞬時に判断できたのかというと、体がぴくりとも動いていなかったし不自然な体勢で倒れていたからだ。近くにあったゴミ箱にぶつかり、後ろに倒れたようで周囲にはいろんなゴミが散乱していた。
でもそれをどけようとした形跡もないし、本当に倒れた直後のまま目を閉じて寝転がっているようだったのだ。けれども血溜りができている。凶器も落ちてはいなかった。
だから多分死因は拳銃か何かで撃たれたのではないかと思う。俺自身も一度受けていて、何もできないまま倒れてしまった記憶はまだ新しい。俺が普通の人間でなかったら死んでいたと新羅に何度も言われていた。
俺が臨也を見掛けて追いかけはじめてから、多分一時間以上は過ぎていただろう。血の量は多かったし、知らない道で少し迷っていた俺と池袋の道は熟知しているあいつとは違うのだ。だから間違いなく、打たれてから数十分以上は経っていた。
それで息をしているような動作もなければ、死んでいるとしか思えない。たった一瞬見ただけでそれを判断して、逃げてしまった。
俺ははじめて、臨也から逃げた。
「あいつが、いなくなった……なんて、俺は」
助からなかった。しょうがない。そう思うのに逃げたことを後悔していた。まだ新羅に連絡すれば、生き返ったかもしれない。
だけど体が勝手に動いて逃げてしまったのだ。どうにもできなかった。悔しいけれど、俺には何もできない。
まだ臨也が死んだという実感がわかなくて、呆然と床を見つめながら頬を濡らす。どうして泣いているのか、を考えてみた。
殺すとか、死ね、とか互いに言い合ってきたわけでそれがようやく叶ったのだ。もっと喜んでもいいはずなのに、ちっとも気分はよくならない。それどころか、どうしてあんなに酷いことを言い合っていたのか、それがわからないぐらいだ。
本当に死んで欲しくて言っていたわけじゃない。そうはっきりと自覚する。
「死ぬわけ、ないだろ」
虚しいとわかっていても、言葉は止まらない。俺がいくら殴っても、怪我をさせても鬱陶しく目の前に現れてきたのだ。あれぐらいのことで死ぬわけがない、と信じたかった。決定的な姿を見ていたけれど、すべて無視していたかったのだ。
明日になればまたいつもみたいに現れて、俺を苛立たせる。そうなんだと。
あっけなさすぎて事実を受け入れたくない。銃で撃たれたぐらいで、あいつがくたばるわけがないのだ。しぶとく生きている。だから俺が落ちこむ必要はない。
「クソッ、だから……なんで、まだ涙が、っ」
* * *
「なんでも知ってるよ。シズちゃんのことなら」
「嘘つけ。じゃあ俺が手前に話したいことが何か、わかるって言うのか?」
「ははっ、わかるよ。なーんでも知ってるからねえ、聞きたい?」
こいつ俺が黙ってるからって調子に乗りやがって、と少しだけ苛ついたのでおもいっきり睨みつけてやる。本当に何もかも全部わかるっていうなら、当ててみろと。そんなことできるわけがないと。
けれども、口を開いた臨也はとんでもないことを言った。
「シズちゃんさあ……今日俺に会ったら、告白する気だったでしょ?学生の頃から好きだった、って」
「…………あ?」
「はい、当たり!俺の勝ちだね」
さすがにその言葉は流すことができなくて、その場に立ち止まる。まだ人通りの少ない池袋駅前の道で、周りの音が聞こえなくなり寒気がかけあがってくる。ショックだったけれど、それ以上に恐怖を覚えた。
どうしてわかったんだ、と尋ねていいか迷っていると肩をポンと叩かれたので大袈裟に跳ねた。
「うおっ!?」
「やだなあ、シズちゃんビビりすぎじゃない?ちょっと怖がらせすぎたかな」
「な、んだと?」
「冗談だって、冗談。こんなところで俺に愛の告白なんて、するわけないだろ?ねえ?」
ヘラヘラと笑いながらバカにするように言ったので、今度こそ本当に苛立ちが止められなかった。まるで俺に、告白する勇気がないと言っているように感じられて。
肩に置かれていた手を勢いよく振り払って、胸倉を掴み体を引き寄せて、公衆の面前でいきなりキスをしてやった。ざまあみろ、と心の中で思いながら。
「んっ!?」
「クソッ、これでいいか!ああッ!?」
「ちょっと、なんで、こんなこと……!!」
「おい、さっさと飯食い行くぞ」
「い、嫌だよ!!」
唇がふれていたのは一瞬だった。でもたったそれだけのことで、生意気だった臨也の表情が崩れたので気分がいい。極力暴力は振るいたくないし、こんなことで驚かせることができるなら安いものだ。
というか、嬉しい。だって俺は、本当にこいつのことを好きだったから。出会った頃から気になっていたというさっきの臨也の言葉はすべて正しい。
「待てって、なあ」
「離せ、って……!」
「なんでキスする時、手前抵抗しなかったんだ?」
「……な」
慌てて逃げようとしたので、黒いフードを掴んで引き寄せる。今頃になって周りの視線を感じたが、どうでもよかった。俺には臨也しか、見えていなかったから。
頬を染めて涙目になっているのが、近寄るとわかる。素朴な疑問をぶつけてこんな反応を返してくるなんて、可愛らしい奴だと思った。らしくないけど、これはこれでいいもんだと。
「なあ本当は、手前も好きなんじゃねえのか?俺のこと」
「違う!根拠のないことを言うのはやめ……」
「じゃあなんで俺の好みとか、知ってんだよ。そんなの普通はすぐ忘れちまうだろ」
理由のはっきりしないことは言うなと睨まれたので、さっきラーメンの煮卵が好きだというかなりどうでもいいことを知っていた事実を指摘する。これで追いつめた、と思ったのだが。
どうしてか、臨也の顔色が変わった。何か嫌なことでも思い出したかのように、表情を曇らせる。
「そうだね、シズちゃんは……すぐに忘れるから」
「俺が記憶力ないみてえに言うな。好きな奴のことは、ちゃんと覚えてる。あー……あれだろ?なんだ、その、えっと……」
悲しそうに俯いて小声で言い始めたので、動揺した。さっきまでの勢いはなくなって、やけに落ち込んでいるように見える。だから俺は焦って、何かを言おうとした。頭の中をフル回転させて、なんでもいいから思い出せと探る。
そして口をついて出てきたのは。
「あれだ、手前は俺にキスされんのが好きなんだろ?……って、え?」
「え?」
二人同時に声をあげる。俺自身も口走ったことの意味がわからなくて、唖然とした。だけど臨也がキスに弱いということだけは本当のことだ、と勘が何かを告げていたのだ。
こっちを見つめる表情が変わって、縋る様な弱々しい瞳で見つめてくる。これは多分、俺の言うことに期待している目だと思った。
「それって、どういう意味?シズちゃんとキスなんて、さっきしたのがはじめてなのに」
「いや、はじめてじゃねえだろ。わかんねえけど、前にもどっかでしたよな?」
「どこで?」
「どこだろうな……クソッ、なんだもやもやする!」
自分で言っておきながら、思い出せない。だけど間違いなく、俺と臨也はキスしたことがあった。必死に思い出そうと顔を顰めるが、どこでしたのかまではわからない。
なんで忘れてしまったのかとか、いつ頃だとかさっぱりだ。でも感触だけはやけに残っている気がする。
「そうだ!もう一回キスすりゃあ、思い出したりしないか?」
「な、なにそれ!っ、やっぱり不埒なことが目当てじゃないか!シズちゃんなんか、知らない!!」
「って、おい待て!返事聞いてねえぞ手前!」
* * *
「ふあ……?シズちゃん?」
「あ、悪い起こしたか?」
「っ、あぅ……ど、したのっ、まだしてたの?」
「え?」
何度も性行為をして、中も外もドロドロになっていたのでタオルを濡らし互いの体を拭いていた。途中で気絶してしまった臨也を起こさず、そのまま寝かしておくつもりだったのだ。
だけど柔らかい肌にふれているうちに、またそこが大きくなってしまって焦った。散々出したのに、まだしたいのかと呆れてしまう。仕方がないので、中には入れずに臨也の太股に性器を擦りつけて刺激し出してしまおうと腰を動かし始めたところだった。
そこで本人目を覚ましたので、動揺するのは当たり前だ。だけど、何かが違うとすぐに思った。
「入れないの?」
「……あ?」
「俺まだちょっと眠いから、寝かせてよ。勝手にここ使っていいから、ね?」
「えっ、おい!?」
「はっ、んぁあ……っ、あ、ふぅ、ん」
気怠そうに上半身を起こして俺の性器をおもいっきり握ると、自分から腰をくねらせて先端を入れた。まだ精液が垂れていたのでとろとろに湿っていて、すんなりと挿入されていく。
あまりのことに動けなかった。まるで俺が臨也の中に入れたがっているのを知っているような素振りで迎え入れたのだ。
気持ちがいいけれど、どこかおかしい。普通は自分が眠っている間に悪戯をされているとわかったら、怒るところなのに。怒るどころかふわふわとした意識の無い可愛らしい笑みを浮かべていた。
あれは絶対に寝呆けているに違いない。でもそんな状態なのに、執拗にセックスに拘るなんておかしい。まるでいつも、そうしているみたいな仕草だった。
「あ、んっ……は、き、もちい」
「なんで」
「ふぁ、く、シズちゃ……ちょっと、だけ動いて?眠い、からぁ」
言っていることは支離滅裂でおかしい。まるでセックスをしている最中に眠ることが心地いいと言っているようなものだ。ねだられたらしないわけにはいかず、少しだけ腰を動かす。
すると甘い声を漏らして目を瞑り、中をぎゅうぎゅう締めつけながら浸っていた。さっきまでとは違う色気を感じて、不覚にも俺は大きくなる。そのまま前後に動かしていると、瞼が閉じていってそのうち微かに寝息が聞こえ始めた。
「んっ……ぅ」
「クソッ!」
俺はもやもやした気持ちと、おさまりのつかない欲望を臨也にぶつける。起こさないように一定の速度で突いて揺する。眠っている相手を蹂躙する、という最低な行為なのに酷く興奮した。
起きている時とはまた異なった表情を浮かべ、眠りながら好きにされている臨也にドキドキする。まるで本当に心を許してくれているみたいに感じられ嬉しい反面、どうしてという気持ちも強い。
「勝手に使っていいって……手前は、誰に」
「は……っ、ん」
* * *
「落ち着けって、臨也!!」
「……あ」
大声で怒鳴られてようやく我に返る。醜態を晒してしまったことに、ようやく気づいて恥ずかしくなった。
息がかかるくらい近い距離に居たのに、まだ何も起きてはいないのに、パニックになっていたのだ。深く息を吐くと同時に、ぼろっと生あたたかい雫が滴った。
「守られるのが嫌なのか?それとも、俺が死ぬって思ってるのか?」
「そ、れは」
守られるのが嫌なわけでも、シズちゃんが死ぬとも考えてはいない。
離れたくないのに、大事な相手を失ってしまうのが嫌なだけだ。その気持ちを口にしたとしても、伝わりはしなくて。
「なあ俺は……どうしたら、臨也を安心させられるんだ?」
いつまでも忘れないでいてくれたら、恋人でずっと傍に居てくれたら安心する。だけどそんなことはできない。
首の力で死なない体になったのだから、例外なくすべての人間は俺の本当の姿を知ったら忘れてしまう。首の持ち主であるセルティだって、この事実は知らないのだ。だから長い間秘密は守られてきたし、今更どうやって願いを破棄するか方法を聞く術も無い。
あの事件の後に首は消えた。また探し出すなんて、何年かかるかわからない。そんな時間は無いし、願いを無効にすると言ったところで叶いはしないだろう。
俺は心の底から安心することなんて、今後一切無い。誰かに恋をする資格もないのでは、と思った。
きっと一時的にしか、許されないだろう。
「お願いが、あるんだけど……」
「え?」
「今すぐ抱いて欲しい」
「お、おい」
「抱いてくれたら、安心するから」
ゆっくりと手を背に回す。こんなところで、と思うのに気持ちは止められなかった。
いつ失うかわからないから、今すぐ欲しい。早く。なくなる前に。
これが最後かもしれない。そう気づくと、求めずにはいられなかった。
「本気か?」
「うん」
「らしくねえ、よな。手前はよお、もっと余裕な顔して……」
「変わったんだよ」
シズちゃんは明らかに困っていた。だっていつ誰が来るともわからない場所で、男同士で性行為をするのだから。きっと頭がおかしくなったんじゃないかと不振がっているだろう。
なんとか俺に冷静さを取り戻させて、と思っているに違いない。事情も話さずに受け入れて欲しいなんて甘いことは考えていなかったけど、流されて欲しかった。
「シズちゃんのせいで、君が俺を好きだって言うから全部変わったんだ。こんなつもりじゃなかったのに」
「俺が変えた?」
「そうだよ……もっと」
もっと早くこんな関係になっていれば、無茶して願いなんて叶えなかったのに。とは言えない。
自分だって好きだと言えなかった。告白する気なんてこれっぽっちもなかった。
一生気持ちはひた隠しにして、見守れればいいというささやかなものだったのだ。それが失うのが怖いと思える程に、欲張りになったなんて。
「いや、なんでもない。もういいよ」
シズちゃんのせいばかりにしている嫌な自分に気づいて、高揚していた感情がおさまっていく。すぐに冷静になって、バカなことをしたんだと自覚した。だから小声でもういい、と告げ一歩後ろに下がる。
伝える勇気がなかったから、こじらせてしまった。責めたところでどうにもならない。都合のいい部分だけを受け入れて貰おうなんて虫が良すぎるのだ。
「待てよ」
「混乱して、変なこと言った。ごめん」
「聞けよ俺の話ッ!!」
シズちゃんが足を踏み出して、せっかく距離を取ったのにそれを縮めてきた。これ以上この話はしたくないという意味もこめて、自分から謝る。
だけど耳元で怒鳴られた。なんとなく、言おうとしていることが俺には読めて。
「慰めなんて、いらない。余計なこと言わなくていいよ」
「おいさっきから勝手に一人でしゃべんじゃねえ!聞けって言ってるだろうが!!」
「聞きたくない」
「だからよお、俺は嫌だって一言も言ってねえんだよ!でもせっかくするんなら、ここじゃなくて……」
すべてを言い切る前に、口を挟んだ。
「さっきの奴らから逃げ切れたら、しよう。って言いたいんでしょ?シズちゃんの考えることなんてお見通しだ」
「なんで先に言うんだ手前!」
「俺は、そうじゃなくて」
逃げ切れたら、じゃなくて今すぐして欲しかったのにという気持ちは飲みこんだ。
逃げ切るより先に、きっと俺が追いつめられる。追いつめられた方がいいんじゃないかと、次第に考え始めていた。
シズちゃんの為に。さっき現れた奴らは、俺とシズちゃんが一緒に居るところを見ている。そのままにしていると、ターゲットが二人になってしまう。
俺は何をされても、一度は死んで後で元に戻る。だけどただの人間で、ちょっと力が強いだけのシズちゃんは違う。銃弾一発受けても死ななかったけど、何発も受けて死なない保証はない。
二人で逃げ切ってしまえば、平和島静雄もこの間の池袋の事件に関わっていると広められ取り返しがつかなくなる。それこそ、こんな体になった意味そのものが失われてしまうのだ。
さっきまで慌てて逃げていたから考えつかなかったけど、やけに冷静になった頭は冴えていた。危険をいち早く察知して、回避できる方法を思いついたのだから。迷っている時間は無かった。
「ここから出よう。きっともう外は大丈夫だ」
「あ?そう、なのか?」
「シズちゃんすごくエッチだから、俺と早くしたいでしょ?行こう?」
「チッ、余計なこと言ってんじゃねえ……」
わざと性行為を匂わせるようなことを告げて、気を逸らさせる。すると一瞬だけ頬を赤く染めて、照れくさそうに笑った。
一度心が決まると早かった。外に続く扉に素早く近づいて、振り返る。
「ありがとう」
「あ……?何のことだ?」
最後までシズちゃんの言葉を聞かずに、勢いよく扉を開けた。周りを警戒することなんて、全くしなかった。それが狙いだったから。
池袋事件の時に、俺は問答無用で殺されてもしょうがないことをした。裏切り、嘘の情報で惑わし、首の力について疑問を持っていた人達すべては記憶を失った。でもその場に居た人間がすべてではない。
首の奇跡は万能ではない。だから俺みたいな人間が、辿り着けた。
俺の悪事を知っている人達は、いくらでもいる。そいつらが事件で複数の人間が記憶を失ったことについて、元凶を情報屋の折原臨也だと決めつけるのは簡単だ。そして容赦なく始末する。
口止めする為に手っ取り早く使うのは拳銃だ。日本では普通のルートでは手に入れることができないが、相手にしているのは規格外の奴らだったから間違いなかった。
一歩建物の外に出れば、撃たれるとほとんど確信していた。
「……ッ!?」
銃声が連続して耳に届いた時には、もう血が噴き出していた。確実に殺す為には数発続くことまで、読んでいたのですぐには倒れることなく全身がビクビク跳ねる。
撃たれながらしっかりと相手を確認すると、複数の人間が見えた。俺達の事を追いかけていた奴らすべてではないと思うが、ビルの中に逃げ込んで数分はしゃべっていたのでそのうちに集まったんじゃないかと思う。
後ろに倒れていきながら、そいつらから目を離さなかった。すると途中で撃った相手も動きがおかしくなり、ぐらつくのが見えた所で地面に倒れこみ背中に衝撃を受ける。
もうわざわざ確認しなくても、俺を殺した奴ら全員が気を失い記憶を失ったことだけは確実だった。一度死んで確認しているのだから、間違いない。
「臨也ッ!!」
すぐ傍で名前を呼ばれてハッと気づく。いつの間にかシズちゃんが倒れた俺を悲痛な表情で見ていたことに。
殺した者達はその場で気を失うけど、横から見ていた通行人達は俺が死ぬまで記憶を失ってはいなかった。だから多分ただ目の前で撃たれるのを眺めていたシズちゃんも。
「手前、な、んで……!」
「はは、よかった」
口をついて出てきたのは安堵だった。普通であれば即死している程の銃弾を受けたのに、まだしゃべれる。これも首の力のおかげなのだろう。最後に与えられた特別な時間、なのかもしれない。
次は一人きりで死にたくない、という密かな願いは叶った。結果的に、今日こうして死ぬことができてよかったんだと言い聞かせる。心の中で。
「待ってろ、今救急車を」
「ねえシズちゃん、っ……わかるだろ?助からないことぐらい」
抑揚のない声で告げると、何かが落ちる音が聞こえた。動揺したシズちゃんの手から、携帯が消え地面に転がっている。これまで見たことがないぐらい、目を見開いて真っ青な顔をしていた。
俺はまるで何もかもから解放されたみたいに、すっきりとしている。痛みはあったけれど、気づかない振りをしてしゃべりかけた。
「約束守れなくて、ごめん」
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2012-06-16 (Sat)
「淫魔なのにエッチな調教をされて忘れられないの」
静雄×臨也/小説/18禁/A5/84P/800円
静雄の夢の中に入りこんだ臨也は普段と様子の違う静雄に襲われ
無理矢理エッチなことをされてしまう
その日から夢で会う度に襲われて忘れられなくなり嵌っていく
とうとう現実世界で淫魔の姿を静雄に見られて…
毎回無理やりエッチな調教をされてしまう淫魔臨也の話
※パラレルではありません臨也が淫魔だったらという話です
※触手×臨也がありますが静雄以外の18禁表現はありません
表紙イラスト さつこ 様
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「……っ、あ!?」
「なんだ、やっぱすげえ媚薬効いてんじゃねえか。今の喘ぎ声いいぜ」
「ふざけるな!違う!!」
無意識な吐息を喘ぎ声などと言われて、勘違いも甚だしいと憤る。油断してしまったことを軽く後悔したが、まだ状況は変わっていなかった。
さっき声をあげてしまった原因の蔦は、まだ胸の辺りを這い回り乳首をこねくり回していたのだから。俺は男だというのにどうしてそんな箇所をさわられなければいけないのか、責めてくるのか腹立たしい。
だけど最初に夢の中に入りこんで見た光景を思い出せば、納得する。シズちゃんが同じことをしようとしていると。
そして本物だと断言した俺には自分の手を汚さず、おぞましい化け物を使って弄んでいると。信じられないことに。
「こんなこと間違ってるって思わ……う、ぐ!?」
「間違ってるだろうな。でもどうせ、夢だろ?」
「ぅ、う……っ、都合いいこと言うんだ?間違ってるのわかってて」
「だからそういうことは手前にだけは言われたくねえんだよ」
あまりにも小さい突起を手首ぐらいの大きさの蔦触手が、無理矢理ぐいぐいと押す。惨めなことをさせる、という意味と媚薬に侵された体を昂ぶらせる、という意味があるだろう。
どうにもできないのならせめて動く口で気持ちを逸らせれば、と思ったのにこちらを見つめる瞳に変化はない。しかも暴力は嫌いで揉め事に巻き込まれたくない、と考えている癖に最近はお節介を焼いていた筈なのに、間違った行為をしていると肯定したのだ。
人間的に成長をしたらしい癖に見損なった、と言おうとしたのだがそこでわざと顔を近づけて告げられた。
「言っとくけどな、こういうことしてえのは手前だけだからな」
「……は?」
「エロいことしてえとか、焦ってる顔が見たいとか考えるのはよ。臨也だけだ、昔からずっと」
「えっ!?」
まるで雷に打たれたみたいな衝撃が全身を駆け抜けた。体を襲っている触手なんかより、よっぽどダメージを与えられた気がする。
勘違いしてしまいそうな意味深な言葉に、鼓動が早くなっていく。喉をごくりと鳴らして口を開くのを待った。
「俺の弱え心のことや、誰にも知られたくねえ汚いとこは、手前にしか見せてねえ。これから先もそうだ」
「それで?」
「だから受け止めてくれるだろ?どうせいつもの俺じゃあこうやって捕まえることもできねえし、夢でぐらい発散させてくれるよな」
「……っ」
一瞬だけ期待した気持ちが萎んで、ショックを受ける。だけどすぐに、なんでこっちが落ちこまないといけないんだと唇を噛んだ。
折原臨也なら欲望をぶつけたところで大丈夫だろ、と最低なことを言われて傷ついたなんて考えたくない。それではまるで。
「違うッ!」
「ああ、わかってるぜ。こんなこと言っても嫌がることぐらいよお」
さっきまでは怒りで頬が熱かったのに、今では異なっていた。無意識に心の中で否定したことが口をついて出ていたことに数秒気づかないぐらい狼狽している。
シズちゃんと会話は成り立っていない。自分が一人で困惑しているだけだ。もやもやと何年も胸で燻っていたことを今頃、こんな時に知ってしまって。
『折原は怖いんだろ?平和島の夢を見て、あいつの願望を知るのが怖いだけだ。だってお前は……』
「嘘だ」
からかうような九十九屋の言葉を思い出していた。あいつは相当勘がいいし、ある意味俺の事を知り尽くしている。だから客観的に見ていてあんなことを言ったのかもしれない。
当たっていた。間違っていない。そうはっきりと認めた。
「俺のこと知って幻滅でもしたか?んなわけねえよな。どうせ元々嫌いなんだしよ」
「嫌い……」
同調するように呟いたものとは、真逆の気持ちを抱いていることを。
元々シズちゃんが、好きだったと。
「こっちはよお、相当長い間ずっと手前をこうやって組み伏せて、普段は見せねえ顔を晒せたいって思ってたんだ」
「ははっ、君ってさあ……言葉の使い方がなってないよ。それじゃあまるで愛の告白でもしているみたいだけど?」
「あ……?告白って、まあある意味すげえショックな告白みてえなもんだろ」
まるでずっと俺のことを想っていた、という含みのある言い方をした。それは無意識で、きちんとした言葉を知らないから曖昧に聞こえるのだ。
恨んでいて、憎んでいて、嫌いだからといつもみたいに怒鳴らないのが悪い。大雑把な考えのシズちゃんは告白なら一緒だと切り捨てたけど、納得できなかった。
「嫌いじゃなくて、俺のことが好きだって言ってみせなよ」
「なんだと?」
それは俺自身だろ、と内心考えたが無言で鋭く睨みつける。口にするわけが無かったから、シズちゃんにわざと言わせてみようかと思ったのだ。だが。
「あー……そうか」
「なに?」
目を丸くした後にさっきまでの気迫を緩めて、まるで秘密を知られてバツが悪そうに視線を逸らし髪を乱暴に掻いた。その行動の理由がわからず怪訝な表情をしていると尋ねられる。
「言ったら大人しく俺に抱かれるか?」
「そんなわけないだろ」
「まあそうだよな。大人しい手前も変だな」
全く配慮の無い言い方に憤慨したが、叫ぶ前にはっきりと言われた。
「けどまあ、夢の中だからよ……言ってやる」
「え?」
「好きだ、臨也」
「……え」
耳に届いた瞬間頭が真っ白になる。これはどういうことなんだ、と激しく動揺した。
頭の中で同じフレーズが繰り返されて、真の意味を理解しようと脳内をフル回転させる。だけどいくら考えてもわからない。もともと感覚的にしゃべるシズちゃんと、ある程度考えてしゃべる俺ではタイプが違いすぎた。
理解不能。すなわち、言葉自体には理由なんてものは存在しないと判断した。
「簡単に言ってくれるよね」
「んなことねえぞ。っつーか手前が」
「じゃあ俺も真似しようか?好きだよ……シズちゃん」
* * *
「目逸らすんじゃねえぞ。いいか、手前は俺としてるんだからな。ちゃんと覚えておけよ」
「なにそれ、そんなの別にどうたっていい……」
「よくねえ。俺のもんだ、よそ見するなんて許さねえぞ」
「シズちゃんのもの、って」
無理矢理シズちゃんの方を真っ直ぐ向かされて、また意味ありげな言葉を掛けられた。焦らすように先っぽが押しつけられて、軽く腰が揺れていたが必死に話に集中する。
またさっきみたいに意味ありげなことを言われて、あからさまに嫌な表情をしてしまう。どうして無神経に気がある素振りをするのかと。どうせ欲望のはけ口としか考えてないのに、ただの玩具を大事なものみたいに主張しないで欲しい。
「違う、俺は……」
「こういう時ぐらい頷いとけよ。じゃねえと酷くするぞ」
「なにそれ、っ!優しくするって言ったじゃないか!!」
「やっぱり優しいのがいいのか、そうか」
「え……?」
気づいた時には遅かった。シズちゃんに試されたんだと気づいてしまい、悔しくなる。まさかこの俺が口で負けるだなんて信じられなかった。
きっと計算して言ったわけではなくて、単純に本心を探る為に誘導されただけだ。あれこれ予測してしゃべるなんて真似がいくら夢の中だとしても、できるわけがない。情報屋の俺が騙されるわけがない。
本心をあっさり知られてしまったなんて認めたくなかった。だけど目の前の男は、満足そうにニヤついている。
「化け物なんかより、俺に優しくされたいんだろ?」
「……それは」
否定するのは簡単だった。でも結果が見えていたので、しょうがなく告げるしかないんだと心の中で言い聞かせて。
「っ、そうだよ!わかったら、さっさと入れて終わらせてよ!!」
「しょうがねえ奴だな、手前」
低い笑い声が耳元で聞こえて、ぞくりと全身が震えた。またシズちゃんの思い通りになってしまった、と苦々しく思っていると腰を掴まれ眼前まで顔が迫る。
後ろに宛がわれてあと一押しすれば入る、というところなのはわかっていた。バクバクと心臓が早鐘を打ち、体に受ける衝撃に耐えようと歯を食いしばる。
「じゃあ入れるぞ。痛かったら言えよ」
「……うん」
「まあ痛いって言われても止めたりしねえけどな」
「えっ?あ、待っ……あ、んぁっ、は……!!」
直前にとんでもないことを告げられて、また騙されたとショックを受けた時にはもうしっかりと性器が捻じ込まれていた。そんなことだろう、とは思ったけど文句を口にできないぐらいびっくりしている。
意外とシズちゃんのが大きいことに。そういえばよく見ていなかったけど、感触からしてさっきの蔦よりも太い。こっちまで化け物並なのかと罵ろうとしたが、声が出ないのだ。
「やっ、ぁ、あ、これ……ぅう、っ、おっき、ぃ」
「あんまりすんなり入らねえな。もっと緩めろよ」
「む、りだ……!」
「ああそういやあ、手前初めてだったよな。じゃあしょうがねえか、ゆっくり入れてやるから」
「んっ!?」
まるでセックスには慣れているみたいに、一度挿入した塊を引き抜いてすぐさま押し戻した。すると勢いがついたのかはわからないが、さっきまでよりも簡単に異物が埋まっていく。
あまりのことに目の端に涙が浮かんで、唇から吐息がひっきりなしに漏れる。手足が不自由なのもあって、与えられる刺激に対処できずそのうち快感を覚えてきた。
「はぁ、は……もう、だめ、っ……くるし、シズちゃ……」
「なに言ってんだ?ぐいぐい食いついてきてんぞ、わかるだろ?」
「ちが、うからぁ……んう、ぅ、っは」
「また声我慢してんのか?そんな余裕があるなら、もっと激しくしていいな」
「あっ、あ、え、待て、って……っ!」
じわじわと奥に捻じ込まれていく熱い塊が、中を擦るのが徐々に感じているのは自覚していた。媚薬で淫らにされているのだから当たり前だ。俺の望んだことじゃないから、とせめてあからさまな喘ぎ声を叫ぶのは堪えていたが、また見抜かれてしまう。
シズちゃんの声色に怒りが混じった、と気づいた時には遅かった。腰を握る力が強くなって一気に最奥まで押しこまれる。
「いっ、あ、ぁあ!んぁ、あ、うそ……つき!!」
「なに言ってんだ。充分優しくしてやっただろうが。必死に声を抑えてんのもよかったが、やっぱり泣いてる方がそそるぜ」
「バカ、っ、あ、んぁあ、しね……っ、シズちゃ、なんか!」
「全然迫力ねえぞ。っつうか、エロいな」
* * *
「なあ手前は人間じゃねえのか?なんか夢の中でも同じもん見たんだけどよお、何か関係あるのか」
「教えな、っ……うぅ、あ、く」
「どうした?」
核心を突くことを尋ねながら、胸はドキドキと高鳴っていた。それは多分期待していたからだろう。
ここ数週間俺は臨也の夢を見続けていた。背中に羽根を生やしいつもとは普段外で会うのとは違う姿だったけれど、毎回同じことをする為に現れるのだ。性行為をする為に。
激しく抵抗しても夢なのだから好き勝手に苛めることができたし、終わりにはいつも泣かせて俺に好きだと言わせていた。心の底から望んでいたことが夢でも叶ったので、随分と機嫌が良かったのだ。
エロい臨也を夢に見るなんてどうかと思ったりもしたが、一週間ぐらい連続で夢を見なかった時は酷く落ち込んでしまった。だから俺にはあいつの夢が必要なのだ。
それからは池袋で何度か会うと、つい気絶させて人目のつかない場所に連れていき、こっそり抱きしめるまでになっていた。本人にはバレないようにしていたが、今回の様子だと先に起きてしまい俺のしたことを知ってしまったのだろう。
しかしそれにしても、事情が全く飲み込めなかった。もしかしたら人間じゃないかもしれない。しかも夢のことも、知っているのかもしれない。
もしそうだとしたら、俺が臨也に好きだと言っていたことを覚えていることになる。実は長年ずっと想っていたけれど口にはできずにいたことを、既に知られているかもしれないなんて。
そこで急に肩を押さえてうずくまったので、さり気なく近づいて声を掛けた。するといつも以上に、臨也の匂いが漂ってきてどうしてか頭がくらくらしてしまう。
「なんだ?」
「あっ、あぁ……嫌だ、っ、シズちゃ……」
「臨也?」
「離れて、っ、はぁ……お願い、じゃないと、俺……おかしくなるから」
やけに艶っぽい声を出したことに驚いていると、臨也が顔をあげた。眉を顰めて辛そうにしてはいるが、どうしてかさっきまでより瞳はとろんとしていていつもの鋭さは消えている。自然と喉の奥がごくりと鳴った。
「説明しろって。なにがあったんだ?」
「薬が……体熱くて、っ、精気、ほし……」
「どこか体悪いのか?臨也?」
目元が涙で潤んでいて、小声で必死に何かを呟いていたが俺には全く理解ができなかった。やけに苦しそうにしているのを見て、夢の中で見た臨也も相当エロかったが今までで一番すごいぞ、と全く関係ないことを考えてしまう。
しおらしく俺に頼ろうとしていることすらも、おかしいことなのに異常事態だ。怪我をしても、骨が折れても顔に出さなかったような奴が弱みを見せているなんて。夢では何度か強要して無理矢理曝け出させたが、全く違う。
都合のいい世界だから、いくら拒んでも最終的には俺が好きだと口にしてねだっていた。それが良かったのだが、現実はそううまくいかない。だからこそ長年恋心を隠していたのだが、ここにきて急に変わったなんて。
実は人間じゃないかもしれない、という折原臨也の秘密を知ってしまったかもしれないなんて信じられない。それに加えて、助けを求めるように縋っているなんて。
「薬が、っ……はぁ、あ、う……苦しくて、もうだめなんだ」
「薬ってだから、なんの……」
「発情して辛い、んだ……だから、セックスし、たい」
「あ……?」
一瞬聞き間違いかと思いじっと臨也の顔を眺めた。しかし荒く息をつきながら、視線をそらさずに見つめ返してくる。まさか本当のことなんだろうかと疑い始めた時に、突然右手を掴まれてしまう。
「ごめん、っ……ごめんね、ごめん、シズちゃん、シズちゃん」
「おい臨也?」
「好きに、していいから」
「なんだと……っ、くそ!!」
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2012-05-10 (Thu)
「年上の彼を恋い慕う」
静雄×臨也/小説/18禁/A5/92P/900円
恋人同士でつきあっていたはずなのにある日突然臨也がいなくなり代わりに静雄と会ったことのない15歳の臨也が現れる
すぐに好きになり静雄を振り向かせようと健気にアピールするがいつもはぐらかされてしまう
しかしある日突然抱いていいかと思いつめたように静雄が迫ってきて…
原作設定で25歳静雄×15歳臨也の年の差恋愛の話
表紙イラスト ひのた 様
書店委託ページはもう少しお待ち下さい
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「やあいらっしゃい、シズちゃん?」
目の前に現れた相手の声と、姿にそれまで考えていた何もかもが吹っ飛んでしまう。その場に立ち尽くして、一言もしゃべらず呆然としてしまった。
どうしてこんなことに、と言いたいのを喉の奥で堪えていたら手首を掴まれ部屋に引き入れられる。俺の手に比べて随分と小さいように感じられて、妙に焦ったのは気のせいだ。そんな場合じゃない。
「えっと、とりあえず俺の話を聞いてくれるよね」
どうぞ、とソファーを指差されたがまるっきり無視をして腕の中に体を引っ張りこんだ。そして確かめるように頭を撫でたり、腕や肩をさわった。するとすぐに叫びが聞こえる。
「うわあっ!?ちょ、ちょっと……!いきなりなにするんだよ、やめろって!!」
「……っ、クソ」
その悲鳴は、いつも臨也が発するものと明らかに違っていた。少しだけ声が高く、本当にくすぐったくてしょうがないという無邪気さが伝わってきて苛立つ。
きっと怒鳴られるだろうとわかっていたけれど、わざとドスを効かせて脅すように尋ねた。
「手前……誰だ?」
「誰だって、ここまでさわっておいてそういうこと聞く?まあいいけどさ……」
「臨也はどこだ」
「折原臨也は俺だけど?」
違う、と思った。こいつは確かに臨也だが、俺の知っている臨也ではない。だって。
「嘘つけ、あいつは俺と同い年だ。こんなガキなんかじゃねえ」
「へえ、じゃあ一体俺は誰なんだろうね?」
わざと話をややこしくさせるような物言いは、間違いなく臨也だ。だけど姿が全く違っていた。いや、知らないわけではなくて数年前に嫌という程見ていたが。
たった今胸で抱きかかえている臨也は、短ランに赤いシャツを着ていて学生時代のことを思い出させた。顔立ちも幼いし、背だって今よりも低い。仕草もどこか子供っぽいし全体的に体も細く、筋肉などはほとんどついていなかった。
このまま少し力を入れれば、確実に折れてしまいそうだと本能的に感じた。実際はそんなことはしないけれど。
「とりあえずさあ、この手を離してくれないかな?ちゃんと説明するから」
「……わかった」
そう言ってゆっくりと力を抜くと臨也が胸を押さえて、咳払いをした。もしかして苦しかったのか、と思い焦ったのだが。
「はあ、びっくりした。このまま握り潰されるかと思ったよ」
「そんなわけねえだろ」
「だってさあ、君ってすごい力を持ってるんだろ?俺は見たことがないから、どの程度強いのかわかんないし」
「あ?手前……なに、言ってんだ?」
急にわけのわからないことを言いだして首を傾げる。俺の力を見たことが無いなんて、そんなはずはない。入学式のあった最初の日に顔を合わせたというのに。
何かがおかしい、と違和感を覚えた時にははっきりと目の前の男が告げていた。とんでもないことを。
「君が今いくつなのか知らないけど、俺は十五歳で明日から来神高校に通う一年生だ。だから平和島静雄という人間は知っているけど、直接会ったことはないよ」
「十五、さい……っ、て……嘘だろ?」
予想外の幼さに一瞬頭の中が混乱してしまい、そんなバカなことがあるのかと思ったが、まだこいつが臨也という確証はなかった。セルティみたいな妖精がいるぐらいだから、ノミ蟲の一匹や二匹居てもおかしくない。
人間じゃないとか、人形とか、ロボットとか。とにかく本人ではない可能性を考えた。
きっと臨也自身はどこかに居て今の様子を見て笑っているに違いないと。だってそう考えなければ、人間が姿や記憶ごと何年か前に戻るなんて考えられなかったから。
「ついでに言うとね、目が覚めたらこの服を着ていたんだけどサイズが微妙に合わなかったから着替えたんだ。俺の制服が置いてあったからね。でもこれ少し汚れてるっていうか、使いこんでいる感じがする。まるで何年もこれを着て過ごしたみたいな」
「これ、臨也のコートじゃねえか」
ソファの反対側に視線を移したのでそっちを見ると、いつもあいつが着ている黒いファーコートが置いてあった。慌てて手に取って匂いを嗅ぐと、確かに臨也のものだとわかる。
でも騙されるな、と思いながら振り返ると幼い臨也が驚いて目を瞬かせていた。やけに大袈裟で子供らしい表情で。
「えっ?なんで今匂い嗅いだの?」
「あ……?これが臨也のもんか確認したんじゃねえか。間違いなくあいつの匂いがしやがる」
「匂い?え?俺ってなんか変な匂いでもするの?ちょっと待ってよ、香水とかつけてないけど……汗掻いてないし」
「違え、あれだ。なんつうか、こう……ノミ蟲臭が俺にはわかるんだ。近づいてきたらそいつがすげえ匂ってきてすぐに臨也だってわか……」
俺のことを知っているけれど会ったことがないという臨也に、一通り説明し始めたのだがなぜか目の前で急に顔色が変わる。今まで見たことがないぐらい頬を赤く染めて、うろたえていた。
睨みつける瞳は鋭いが、本気で怒っているようには見えない。殺意というものがなくて、なんだか不思議な気分だった。
「あ、あのさあ……ちょっと聞きたいんだけど、君と俺ってどんな関係なの?」
「はあ?臨也と俺のことか?そりゃあ……って、正直に言っていいのか?」
「それって正直に言うと俺がショックを受けるってこと?」
「いや、まあそうだな」
口を開きかけてすぐにやめた。こんなガキに教えていいものかどうか迷ったからだ。まだ未成年だし、あまり聞かせたくないと思ったのだ。
「いいよ、はっきり言って」
「しょうがねえな……俺と臨也は、まあ……あー……あれだ、恋人同士ってやつだ」
* * *
「おいなんか一人暮らしにしちゃあ、やけに広くねえか?」
「ねえ見てよシズちゃん、これ!」
「あ……なんで、枕が二個あんだ?」
「ベッドはキングベッドだったよ。すごいねえ」
玄関から入ってすぐの部屋を開けると寝室だったので、そこにあったものを持って戻って来たのだがそれは枕だった。部屋の真ん中にあったベッドはキングサイズだ。シングルベッド二個分のベッドだなんて、二人で使う以外に考えられない。だから。
「俺達って恋人同士だったんでしょ?実はここで一緒に暮らそうとか考えていたんじゃないのかな?」
「一緒に、って……それ、本気か?」
「歯ブラシもちゃんと二個用意されてるし、間違いないよ」
洗面所を覗いて引き出しを開けると、ご丁寧に歯ブラシが二個色違いで入っている。なんだか自分で見ていてむず痒くなってきたが、間違いない。
折原臨也は、ここで平和島静雄と一緒に同棲する気だったんだと。どんな気持ちでこんな用意までしたのかは想像できないが、場所が池袋ということと、さっき聞いた仕事場に近いという言葉だけで充分だ。
「まあ難しいことを考えるのは後にしようよ。ちゃんと電気もつくし水道も出るし、ガスだってつくんじゃないかな。うん、ここでシズちゃんと住むの決定だね」
「待てよ、勝手に決めんな。一緒に住む、ってそんないきなり……」
「いいじゃないか。何の仕事をしているか知らないけど、近いなら友達の家に遊びに行く感覚で使えばいいんだよ。ああそっか、シズちゃんって友達居ないんだっけ?」
「うるせえな、わかったよ!いいか、俺は手前が危ねえことしないか見張る為にここに住むんだからな」
「はいはい」
リビングのソファに座ると笑いながら持っていたビニール袋を机の上に置く。少し台所の方を見回しただけでも、一通りの物は揃っているようだ。随分と都合がよかったけれど、これを利用しない手はない。
折原臨也の思い通りに、ここでシズちゃんと暮らすと決める。そして、俺は本気で仲良くして奪い取ってやろうと考えていた。
大体新羅の言うことも全く信用できなくて、人間が分裂する薬なんていくらなんでもあるわけがないと思っている。つまりは、折原臨也は一人しかいない。
二十五歳の俺が十五歳まで記憶と体が戻った、と考えるのが一番妥当だ。いつまで待っても、現れるわけがない。シズちゃんは、俺が独り占めして手に入れ万が一もう一人俺が現れたとしても絶対に渡すわけにはいかないのだ。
「ねえこの様子だと、もしかしなくても探したらシズちゃんと俺のお揃いのパジャマとか出てくるのかな?」
「冗談じゃねえ。誰が手前なんかと」
「あれ?ペアルックとか嫌い?俺は結構好きだけど」
「嘘つけ!そんなの興味ねえだろうが」
「バレちゃった?」
さっきからいくつか軽い嘘を言っているのだが、シズちゃんにはことごとく見破られていた。だから薄々と、これは本気でつきあっていたのかもしれないと思うようになっていたのだ。
もしそうだとしたら、十五歳の俺を好きになるなんて難しいのかもしれない。諦める気なんてなかったけど、簡単じゃないなとため息をつく。他に俺ができることは、あと一つしか考えられなかった。
「ところでさあ、今日は仕事休みって言ってたけどどこかに出掛ける予定とかあったの?」
「別に出掛ける予定はなかったぞ。休みでもほとんどすることねえし」
「ねえねえ、大人の俺とどこにデートに行ってたの?まさかラブホしか行ったことない、とか言わないよね?」
「な、なんだとッ!?」
その時突然反対側のソファに座っていたシズちゃんが立ちあがって、凄い勢いで俺のことを睨んできた。かなり驚いたがどうやら全部当たっていたらしい。このうろたえ具合は間違いないだろう。
わかりやすすぎてつまらないなと思ったが、本人は隠し通そうとしていたのでそのまま黙って聞き続ける。
「そんなことねえ、どっか……行ったことあるぞ。そうだ、露西亜寿司の前で遭遇して一緒に食ったことある。それから、お、俺の家とか」
「へえシズちゃんの家に行ったことあるんだ。でもその様子だとまだ数回だよね?こんなところ借りていたぐらいだから、よっぽど汚い部屋なの?」
「綺麗にしてんぞ、失礼な奴だな臨也くんよお」
口調は厳しかったが立ちあがって殴る気配はない。結構バカにしていたのに、なかなか頑張って耐えてるんだなと感心する。
それよりも目的は別にあったので、唐突に話題を変える。本題に。
「あのさあ、することないならセックスしたいな」
「……あ?」
「本当は昨日だってする気だったんだろ?でも俺が未成年だからって遠慮して帰ったんだよね。でも今日はもう逃げられない、時間だって充分あるから」
「おいなに言ってんだ。す、するわけねえだろッ!」
「えーでもすごく動揺してるけど。まだ手つかずの体に興味あるんでしょ?シズちゃん好みにすることができるもんね」
あっさりと誘った途端、ぴたりと動きが止まる。まるで呼吸まで止まっているかのように見えたが少し身を乗り出すと逆に煩く怒鳴りつけてきた。
本当にわかりやすい性格だとほくそ笑む。こんなに過剰に反応されたら調子に乗って押したくなるのは当たり前だろう、と心の中だけで思う。
「いつもはラブホでしてたんだよね?この部屋かなり防音設備もいいし、多少騒いだところで隣に迷惑掛けることもない。最上階の部屋にも俺達しか入ってないみたいだし、大丈夫だよ」
「何が大丈夫、だ。ふざけんじゃねえ!」
「そんなにムキになって怒らなくてもいいよ。ははっ、シズちゃんって本当におもしろいね」
「キスされただけでぐったりしてた癖にでかい口叩いてんじゃねえ!いいか、とにかく俺はしないぞ。それこそ臨也に知れたらたった一日で手え出したってバカにされんだろうが。あいつが見つかるまでぜってえ、しねえ!!」
* * *
「泣かせたかったわけじゃねえ。なあ」
「や、やめてよ!離せって……!」
「暴れんなって、いつもみてえにキスしてやるから」
「嫌だ!いらないっ……もう嫌だ、俺は、キスだって……ほんとは!!」
なんだか嫌な予感を感じて慌てていると体を起こしてゆっくりと近づいてきたので、徐々に後ろに下がろうとした。だけどお腹の上に圧し掛かられて視界がシズちゃんで塞がれる。
キスなんて言ったけどどうせ俺じゃなくて、あいつとしたいんだろうと嫉妬心で唇が震えた。だから俺だって本当は毎朝キスがしたかったんじゃなくて、と考えていることとは真逆のことを口走ろうとしたら笑い声が耳元で聞こえて。
「ははっ、やっぱり手前は手前だな」
「な、に……?」
「なんでもねえ、こっちの話だ。いいから目閉じてろ」
どうして突然笑い出したのか理解できなくて、何度か目を瞬かせた。すると不意を突くように背中に手を添えられて焦った途端に唇が塞がれてしまう。
隙を作ってしまった自分が悔しくなって、必死に胸を押し返して離そうとしたがびくともしない。その間に口内に侵入した舌が動き回って、さっき下を舐められていた時よりも興奮してしまう。
「んっ……ぅ、あ、やだ!」
「俺は手前のことよく知ってるぜ。キスされたらいつも反応よくなってたし、嫌いなわけがねえんだよ。嘘なんか通用しねえからな」
「ば、バカじゃない、の……ぁ、っ……!?」
顔を背けて逃げようとするのに、顎を掴まれてしまい熱い吐息が漏れて体の力が抜けていく。シズちゃんはキスなんてもう随分と慣れているかもしれないが、俺は無理だ。
自分で自分の反応がわからないというのに、既に向こうには知られているなんて最悪すぎる。これはどうあがいてもどうにもできないのだ。
俺にはもうセックスするしか方法が残っていないというのに、まだ本当の意味での覚悟が固まらない。やっぱり恥ずかしい、ダメだ、したくないとぐるぐる感情が頭の中で回る。
「泣かせるまで迫っちまって悪かった」
「シズちゃ、っ……ちょっと!」
「でもやめねえ。してえ」
「え?」
てっきり泣かせたから終わりだ、と言われると思ったのに全く違っていた。強引に意見を押し通してしたいだなんて、驚きすぎてさっきまでパニックになっていた気持ちがおさまる。
冗談で言っているわけではないみたいだったし、それなりに本気なのだろう。至近距離で真っ直ぐ見つめられていたが逸らす気にはなれなかった。それはわかっていたから。
ここで抱かれなければ二度とチャンスは来ないと。折原臨也に唯一勝てることがあるとわかったのに、逃げてしまえば存在していた意義さえ失ってしまうのではないかと。
「そんなに、したいんだ?」
「ああ臨也のはじめてを俺にくれ」
「ねえシズちゃんは忘れない?その、俺としたことを……忘れたりなんか、しないよね?」
「忘れたりしねえ。ずっと覚えておくし、当たり前だろ?」
いつの間にか取り繕うことも忘れて必死に縋る様な目つきでじっと見つめていた。期待してはいけないのに、と思うのにやめられないのは本気で好きだからだ。
こんなものはただの口約束で、いくらでも破ることができる。俺自身もこれまでそうやって生きてきた。だから本気で信じたとしても裏切られて傷つくのは自分だけ。頭ではしっかり理解しているというのに。
「わかった……その、俺も協力するよ」
「じゃあいいのか?」
「しょうがないよ、だってシズちゃんのこと好きになっちゃったんだから」
「臨也」
好きだとはっきり口にして照れ臭くなったが、このタイミングでないともう言うことができないと思ったからだ。心の奥底に隠している好きで好きでたまらないという気持ちを。
深くため息をついてもう一度じっと見つめる。
シズちゃんは俺とセックスをして、二十五歳の折原臨也に会うのが目的だ。俺はシズちゃんとセックスをして、居なくなったとしても覚えていて貰うのが目的だ。
好き合っている者同士が結ばれる為のセックスではない。体だけでもなく、それぞれの目的の為だ。だからどうせならおもいっきり楽しむべきだと思って。
「やっぱりローション取って。そこのクローゼットの下に袋があるからその中に入ってるよ」
「ああ……これか?」
懸命に瞳でアピールするとシズちゃんが立ちあがってクローゼットを開けた。そして中から覚えのあるローションボトルを取り出したので頷くと、扉を閉めずに戻って来る。
そして一度は閉じかけた両足を左右に割り開いてローションの蓋を取り中身を垂れ流した。すると冷たくぬるついた独特の感触がすぐに伝わって、出すつもりはなかったのに小声で悲鳴があがる。
「ん……う、わあっ、ぁ……冷た」
「冷たいか、ちょっと待ってろすぐにあっためてやる」
「あっためなくていい……はぁ、ぬるぬるして、気持ち悪いって、いうか変な感じがするんだけど」
「大丈夫だ任せろ。まず指で慣らしてイかせてやるからよお」
「い、いかせるとか、っ、ほんと……バカじゃないの、んぅ」
さっき舌で舐められていただけでもかなりくすぐったかったけれど、人差し指と中指で後ろの辺りを擦られて背筋が震えた。始めは冷たかったローションもだんだんと熱いような気がしてきたし、微妙に入口が擦れる度に顔を顰めてしまう。
変な声だけは堪えたかったので両手で口元を押さえているととんでもなくエッチなことを言われる。シズちゃんがイかせると言うなんて、となんだか微妙な気持ちになったけど完全に嫌いじゃない。これまで散々誘ってきたぐらいなのだから、目の前で無理矢理出されるなんて想像するだけで胸が高鳴る。
「結構いいみてえだな。じゃあ指入れちまうぜ、まずは一本から」
「っ、わかった……ぁ、あっ、え、んぅ!?」
尋ねられて数秒もしないうちに待っていましたとばかりに挿入されて、一瞬息が止まる。でもすぐにじわじわと奥を目指して進んでいき、膝を立てていた足が激しく震えた。
片手を口元から外してシーツを掴むと必死に叫び声を耐えようとする。全部を堪えることは無理だったけど、徐々に熱いため息が断続的に漏れ始めて視界が潤んだ。
「すげえ狭いな。でもはじめてって、いいな。すげえ嬉しいぜ」
「あっ……そ、れならよかった、けど、はぁ」
「ほら見えるか、すげえ勢いでローションが入っていくぞ。これならもうとろとろになってるな」
「え?あ、嘘っ……もちあげなくて、いい、って!」
ゆっくりと割り入って行くだけならすぐに慣れたが、急に俺の腰を掴んで持ちあげるとアピールするように指の入った部分を見せようとした。だけどこっちは耐えるのが精一杯で眺めいる余裕はない。
仕方なくといった感じに足を元の位置に戻されたが、いつの間にか最奥まで達していた。そのまま中の壁を撫でるように人差し指が蠢いていく。
「んぁぅ……っねえ、なんか」
「やっぱりここ好きだよなあ手前。押したらぎゅうぎゅう食いちぎりそうな勢いで震えてるぞ」
「や、やめ!……ぁ、あぁ、やあだぁ……うぅ、ん」
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2012-05-02 (Wed)
鬼畜静雄全集3のサンプルです
【鬼畜魔王その後】
鬼畜魔王の書き下ろし続編
偶然から静雄を封印してしまい臨也を狙っていた魔王の従者に静雄の目の前で触手を使って犯されて…
※触手×臨也・人外獣×臨也の表現がありますのでご注意下さい
>> ReadMore
「手前らッ!臨也に酷えことすんじゃねえ!していいのは俺だけなんだよ!!」
「そうか?前に言ってたよな臨也。静雄だったら、なんでも、誰でもいいって。同じ姿してた俺らのことも、受け入れてくれたじゃねえか」
「シズちゃ、んだけ……だ」
「俺らも静雄みてえなもんだぜ?なあ、静雄のちんこがいっぱいあって嬉しそうに喜んでたじゃねえか。この化け物だって、その大好きな静雄が受け入れて欲しいって言ってんだから大丈夫だよな?」
「う……っ、うぅ」
一気に従わせることなんて簡単にできるのに、その男はじわじわと見せつけるように誘導していく。しかもシズちゃんの目の前で、過去に俺にしたように心を操る。なんて卑劣なことをするんだ、と苛立ちがおさまらない。
許せていたのは、好きで好きでたまらない相手だったからだ。こんなどうでもいい奴らに同じことをされるなんて耐えられない。なのに。
「ほら静雄もこっち見てるだろ?見せてやりてえよな、臨也が化け物に襲われて滅茶苦茶に喘いでる姿。きっと喜んで見てくれるぜ」
「見せ……た、い」
そう口にしてしまった瞬間、電流が流れたかのように快感が全身に広がる。おぞましい触手にふれられている箇所や、いつの間にか絡みついているのを剥ぎ取ろうと蠢いている部分が擦れて発熱していく。
前に魔王の力を使ってシズちゃんに強制的に淫らな体にされたけど、それと全く変わらない。相手は全然違うのに、しかもまた化け物触手なんかに襲われて嫌でたまらないのに。
「そうか、ならあっち見ろ。しっかりエロいとこ静雄に見せつけるんだ」
「や、ぁ……恥ずかし、い」
強引に体を檻の方に向けられ、足元から這いあがってくる触手が勝手に動いて床からつま先が浮いて両股を左右に開かされる。その間にも衣服を剥ぎ取るように素早く蠢いて、数秒後には腰から下は何も身に着けていない状態ではしたない格好をされていた。
鋭い視線が肌に突き刺さり、恥ずかしいと思ったらそのまま口に出してしまう。だけどしっかりと心地よさを感じていて、上のコートもずるずると脱がされていくのを静かに受け入れる。
「それ以上するんじゃねえ!手前も、自力でどうにかしろ!!」
「で、きないよ……っ、だって、俺……シズちゃんに、エッチなとこ、見て貰いたい、し……」
抑揚のない声でしゃべっているが、半分は嘘で半分は本当だ。なんでこんなことをされないといけないんだ、という憤りもあったけれど、いけないことをしているという興奮も感じていて、切なく疼くのが堪えられない。
触手がぬるぬると這い、胸や性器などの敏感な箇所を掠めてくるので体も煽られる。次第にそわそわと腰が震え始めて、後孔の周辺に化け物が群がり始めた時にはため息をついていた。
「あっ、ぁ……くすぐ、ったい、からぁ……んぅ、は」
「おい臨也、せっかくだから俺らも気持ちよくしてくれよ。今は手だけでいいから」
「んぅ、んっあ……おちんぽ、欲しい、手で、する……」
手首に絡みついた触手に誘導されて、熱い性器を強引に持たされてしまう。相手は当然白スーツの男で、反対側は着物の男が立っていた。残りの二人はどこだろうと思ったら、首に絡んだ触手が無理矢理真上を向かせて、そこに二本のペニスがあった。左右から唇目がけて押しつけられる。
それぞれをうっとりと眺めながら口を開いて含み、両手に握りこむ。熱を持った塊がビクビクと跳ねて、濃厚な臭いが漂ってくると体の奥が疼いた。
「はっ、うぅ、む……うぅ、っ、ぢゅ、うぐ、ふぅ、んぷ、うぅ……ぁ、むぅ、ん」
「さすが静雄に調教されてるだけあって、すげえうまいな。嬉しそうに吸いついてやがるし、魔王専用の奴隷ってのは違うな」
「……手前ら」
完全に視界は二本の性器で塞がれ、舌を伸ばして交互に舐めたり吸いつきながらじっくりと味わう。その間に手もしっかりと擦るように動かして刺激を与えていく。
後孔にふれている触手達は、先端からどろどろの粘液を噴き出し垂らし丹念に塗りつける。ぐちゃぐちゃと淫らな音がし始めたが、焦らしているのか入ろうとはしない。
シズちゃんの低い声が混じって聞こえたが、姿は確認できないのですぐに行為に没頭する。見られているという意識はあったけど、目の前の性器に食いつくのに必死だった。
「あっ、ふぁ、おいひ……んっ、う、おっきぃ、し、んむ……びくびく、してる、っ、う」
「じゃあそろそろ化け物触手も突っこんでやるけど、奉仕するの忘れんなよ。うまくできたら顔にぶっかけて汚してやるぜ、臨也」
「はぁ、っ……わ、かった、はやく、ばけもの、ちんぽ、ぉ、ん……ちょうだい、っ、んぅふ、ぐ、ううっうんんんぅ!!」
そしてとうとう何本かのグロテスクな触手の先端がそこに押しつけられ、手や口を動かしながら挿入されてしまう。頭の中は、欲しい欲しいという言葉しか浮かんでいなかったので、満たされた途端に甘い悲鳴があがった。
すると檻の中からガシャガシャ鎖が鳴り響いてきて、さっきまでよりも強い視線を感じる。だけど俺はそれどころじゃなくて、勢いよく奥まで競うように入りこむ触手のせいで頭が真っ白だった。
「ひっ、あぁあっ、あんぁ、ぐうぅ!……はっ、あぁ、むぅ、は、やぁ……あ、あつ、いっ、んぅ、ふ」
「あっさり化け物なんて入れられて喘いでんじゃねえ!誰でもいいのかよ、やっぱり手前は……!!」
「あいつすげえ臨也のこと疑ってるぜ。本当に酷い扱いしてんな。でも今日からは俺らが可愛がってやるからよ」
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【鬼畜魔王その後】
鬼畜魔王の書き下ろし続編
偶然から静雄を封印してしまい臨也を狙っていた魔王の従者に静雄の目の前で触手を使って犯されて…
※触手×臨也・人外獣×臨也の表現がありますのでご注意下さい
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「手前らッ!臨也に酷えことすんじゃねえ!していいのは俺だけなんだよ!!」
「そうか?前に言ってたよな臨也。静雄だったら、なんでも、誰でもいいって。同じ姿してた俺らのことも、受け入れてくれたじゃねえか」
「シズちゃ、んだけ……だ」
「俺らも静雄みてえなもんだぜ?なあ、静雄のちんこがいっぱいあって嬉しそうに喜んでたじゃねえか。この化け物だって、その大好きな静雄が受け入れて欲しいって言ってんだから大丈夫だよな?」
「う……っ、うぅ」
一気に従わせることなんて簡単にできるのに、その男はじわじわと見せつけるように誘導していく。しかもシズちゃんの目の前で、過去に俺にしたように心を操る。なんて卑劣なことをするんだ、と苛立ちがおさまらない。
許せていたのは、好きで好きでたまらない相手だったからだ。こんなどうでもいい奴らに同じことをされるなんて耐えられない。なのに。
「ほら静雄もこっち見てるだろ?見せてやりてえよな、臨也が化け物に襲われて滅茶苦茶に喘いでる姿。きっと喜んで見てくれるぜ」
「見せ……た、い」
そう口にしてしまった瞬間、電流が流れたかのように快感が全身に広がる。おぞましい触手にふれられている箇所や、いつの間にか絡みついているのを剥ぎ取ろうと蠢いている部分が擦れて発熱していく。
前に魔王の力を使ってシズちゃんに強制的に淫らな体にされたけど、それと全く変わらない。相手は全然違うのに、しかもまた化け物触手なんかに襲われて嫌でたまらないのに。
「そうか、ならあっち見ろ。しっかりエロいとこ静雄に見せつけるんだ」
「や、ぁ……恥ずかし、い」
強引に体を檻の方に向けられ、足元から這いあがってくる触手が勝手に動いて床からつま先が浮いて両股を左右に開かされる。その間にも衣服を剥ぎ取るように素早く蠢いて、数秒後には腰から下は何も身に着けていない状態ではしたない格好をされていた。
鋭い視線が肌に突き刺さり、恥ずかしいと思ったらそのまま口に出してしまう。だけどしっかりと心地よさを感じていて、上のコートもずるずると脱がされていくのを静かに受け入れる。
「それ以上するんじゃねえ!手前も、自力でどうにかしろ!!」
「で、きないよ……っ、だって、俺……シズちゃんに、エッチなとこ、見て貰いたい、し……」
抑揚のない声でしゃべっているが、半分は嘘で半分は本当だ。なんでこんなことをされないといけないんだ、という憤りもあったけれど、いけないことをしているという興奮も感じていて、切なく疼くのが堪えられない。
触手がぬるぬると這い、胸や性器などの敏感な箇所を掠めてくるので体も煽られる。次第にそわそわと腰が震え始めて、後孔の周辺に化け物が群がり始めた時にはため息をついていた。
「あっ、ぁ……くすぐ、ったい、からぁ……んぅ、は」
「おい臨也、せっかくだから俺らも気持ちよくしてくれよ。今は手だけでいいから」
「んぅ、んっあ……おちんぽ、欲しい、手で、する……」
手首に絡みついた触手に誘導されて、熱い性器を強引に持たされてしまう。相手は当然白スーツの男で、反対側は着物の男が立っていた。残りの二人はどこだろうと思ったら、首に絡んだ触手が無理矢理真上を向かせて、そこに二本のペニスがあった。左右から唇目がけて押しつけられる。
それぞれをうっとりと眺めながら口を開いて含み、両手に握りこむ。熱を持った塊がビクビクと跳ねて、濃厚な臭いが漂ってくると体の奥が疼いた。
「はっ、うぅ、む……うぅ、っ、ぢゅ、うぐ、ふぅ、んぷ、うぅ……ぁ、むぅ、ん」
「さすが静雄に調教されてるだけあって、すげえうまいな。嬉しそうに吸いついてやがるし、魔王専用の奴隷ってのは違うな」
「……手前ら」
完全に視界は二本の性器で塞がれ、舌を伸ばして交互に舐めたり吸いつきながらじっくりと味わう。その間に手もしっかりと擦るように動かして刺激を与えていく。
後孔にふれている触手達は、先端からどろどろの粘液を噴き出し垂らし丹念に塗りつける。ぐちゃぐちゃと淫らな音がし始めたが、焦らしているのか入ろうとはしない。
シズちゃんの低い声が混じって聞こえたが、姿は確認できないのですぐに行為に没頭する。見られているという意識はあったけど、目の前の性器に食いつくのに必死だった。
「あっ、ふぁ、おいひ……んっ、う、おっきぃ、し、んむ……びくびく、してる、っ、う」
「じゃあそろそろ化け物触手も突っこんでやるけど、奉仕するの忘れんなよ。うまくできたら顔にぶっかけて汚してやるぜ、臨也」
「はぁ、っ……わ、かった、はやく、ばけもの、ちんぽ、ぉ、ん……ちょうだい、っ、んぅふ、ぐ、ううっうんんんぅ!!」
そしてとうとう何本かのグロテスクな触手の先端がそこに押しつけられ、手や口を動かしながら挿入されてしまう。頭の中は、欲しい欲しいという言葉しか浮かんでいなかったので、満たされた途端に甘い悲鳴があがった。
すると檻の中からガシャガシャ鎖が鳴り響いてきて、さっきまでよりも強い視線を感じる。だけど俺はそれどころじゃなくて、勢いよく奥まで競うように入りこむ触手のせいで頭が真っ白だった。
「ひっ、あぁあっ、あんぁ、ぐうぅ!……はっ、あぁ、むぅ、は、やぁ……あ、あつ、いっ、んぅ、ふ」
「あっさり化け物なんて入れられて喘いでんじゃねえ!誰でもいいのかよ、やっぱり手前は……!!」
「あいつすげえ臨也のこと疑ってるぜ。本当に酷い扱いしてんな。でも今日からは俺らが可愛がってやるからよ」
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